003
ZWEITEメンバーがようやく休憩した頃、ちいはメンバーにタオルや水を渡した。
「ありがと。」
≪私には、これぐらいしか出来ないから(苦笑)≫
「そんなことないよ。いてくれるとすごく励みになるっ」
「うんうん。はやく郁さん達に追いつきたいもんね。」
≪応援してるっ≫
「やったーっ」
って、嬉しさのあまり抱きついた。
「あっ」
そう思ったときは既に遅くて、蒼穹以外は息をのんだ。
≪蒼穹くん?≫
「あ、ごめんなさい(´・ω・`)」
ぱっと、離した。
≪大丈夫だよ(笑)≫
「ちい。大分、平気になってきたな」
≪うん。≫
「けど、あんまり無理すんな?無理な時はちゃんと言えよ?」
≪分かった。蓮くん≫
そう言いながらも、きっと我慢する娘なんだって蓮は分かっていた。
だから、俺がいや俺達が敏感に気づいて対処しなければならない。
まだまだ、不安定要素は消えてないのだ。
≪あっ、蓮くん≫
急に、ちいが叫ぶように俺を呼んだ。
「ん?あっ、行くぞっ。」
『えっ?』
蓮は、いまいちよく分かっていない彼女を引っ張ってスタジオを出た。
「蓮は、いつも冷静に判断するな」
「ほんとに。俺だったらあんなに冷静に出来るか分らない」
「俺も」
蓮は、会議室に向かった。
ZWEITEである俺が、会議室に行く用事はまずない。
けど、彼女と会ってからはZWEITEとERSTEの仕事内容を把握しなければならなかった。
それは、逆に響も同じことだった。
今のところ、マネージャーを介すことは出来ないから、響と連携を取るしかないんだけど。
一息ついて、会議室のドアを叩いた。
そして、会議室のドアを開けて中に入った。
「会議中すみません」
「いや、大丈夫。もう大事な話は終わってるから。」
「じゃぁ、俺はこれで」
そう言って、会議室を出た。
いつものことだが、その後しばらく動けなかった。
「・・・」
★★
「はる?こっちおいで」
響は、膝に座らせる。
大人しく彼女は座った。
「え~ずり~。俺のとこにもおいでよ。はる」
「(笑)どうする?はる」
響は、分かってて聞いた。
『ここにいる』
小さな声だった。
「ちぇっ。まぁいいや。いつか俺の膝に乗せるぜ~」
と、張り切ってた。
「枢んとこには、絶対行かないよね~(笑)」
朔弥くんが言うと
「まぢ?」
「俺もないんですよね(´・ω・`)」
と、悲しそうな澪。
「変態コンビには、近づかないんだな(笑)」
「それ言ったら、響だって同じだろ?なのに(´・ω・`)」
「まぁ、響は特別だろ(笑)」
「そういう郁さんはどうなんです?」
「俺?さぁな(笑)」
と、濁した。
「え~ほんとに俺らだけ?」
「さて、仕事仕事(笑)」
「はる。どうする?」
『今日は、何するの?』
「これから撮影だよ。PV撮りに行くんだよ」
『見てみたいな』
いつもは、あんまり興味を示さないのに
「おっ。じゃぁ、行こうぜ~」
そう言うと、はるは俺から降りた。
『荷物取りに行ってくるね。蓮ちゃんとこだよね?』
「俺も行くよ。」
そういって、二人で会議室を出て行った。
★★
「郁さん?」
移動は皆で、でもはるは車に乗るとすぐ寝ちゃうんだ。
これは昔からみたいで(笑)車酔いするから酔う前に寝るらしい。
でも、起きた時がいつもドキドキなんだよね(苦笑)
今日は、移動距離が短いから興味を惹かせて起こしておかなきゃ。
「はる。お菓子食べる?」
『うんっ』
今は、朔弥くんになついてる(笑)
「う~ずるいっ。みんなばっかり。」
「枢さんも、澪もはるの目線になればいいんだよ。」
「してるのに?」
「多分、何か企んでるって目をしてるのがバレてるんじゃないの?(笑)」
「だって、かまってくれないから」
「どっちが子供なんだか(笑)」
それを見ていた朔弥が。
「はる。これ枢にあげておいで(笑)」
『うん?』
しかし、なんだかんだ言いつつもなついてるはるだった。
『枢くん、食べる?』
「はる~(´∀`)食べるっ。あ~ん」
口を開けて待っていると、枢はてっきりはるが入れてくれると思っていたのに、はるが、口に入れようとした時、誰かが静止した。
郁さんが、ゼスチャーで「し~」ってしたからはるは黙ってた。
入れたのは、郁さんだった。
しかも激マズなやつ。
「まずっ。はる?」
はるを見ると、笑ってた。
はるが、微笑むことはあっても、声を上げて笑うことはあんまりないからみんな驚いてた。
「ナニコレマズイ。」
隣に座ってた郁さんが、メチャ受けて笑ってた。
「ん?あー面白っ」
「郁さんでしょ。はる。持ってるの頂戴。口直しっ」
『はいっ。』
そう言って、口に入れてくれた。
「ありがと。」
すると、はるは枢の膝の上に座った。
「!!はる~」
「はる。何かされそうになったら、これ口に入れな」
って、さっきの激マズなものを渡された。
『うん(笑)分かった』
しっかり握られてた。
「せっかく座ってくれたのに、地獄だ(泣)」
みんな笑ってた。
撮影は順調にいってた。
出番によっては、俺がそばにいてやれなかったり、メンバーが誰もいなかったりするけど、わがままも言わず大人しくしてた。
もうちょっと、わがままでもいいのにね(苦笑)
まだまだ、遠慮してるんだよ。
撮影は、夜中までかかった。
全員が、終わるまでいるからね。
次の予定が個人の仕事ではいってない限り、最後はパフォーマーのシーンだった。
最後のチェックが終わって、速攻着替えてようやくはるの所行ったら案の定寝てた(笑)
郁さんの膝を枕がわりにして。
「郁さん。すみません」
「全然(笑)むしろ嬉しいけどね。」
「俺のとこには来ないんですぅ~ひどい(´;ω;`)」
一緒にいた澪は、しょんぼりしていた。
「あと、澪くんだけだな(笑)頑張れっ」
「絶対、応援してないくせにヽ(`Д´)ノ」
「(笑)」
『う・・ん』
「寝てていいよ。」
頭をなでると安心したのかまた寝てしまった。
「起こしちゃうとこだった(-_-;)」
「郁さん、お母さんみたい(笑)」
「そうかな?でも、懐いてくれるのは嬉しいね。気になっちゃってさ。そばにいないと(笑)」
「郁さんが父親にも母親にもになれますね(笑)」
「皆で、家族になれたらいいですね。はるのためにも。」
「そうだね。心配しなくても、響もちゃんと頼られてるから(笑)」
「いや、実際そうなのか。ちゃんと支えられてるか分からなくって(苦笑)蓮くんの方が頼りになるし、しっかりしてるなって思うことも多くって」
「そんなことないよ。響もちゃんと見れてるって」
「枢さん」
振り返ると、枢さんがいた。
「一緒にいる時間が、オレらよりも多いから分からなくなってるだけで、オレらから見たらちゃんと見れてるし、彼女も響を頼ってるから(笑)そんな顔すんな。はるが見たら悲しむよ。」
「そ、そおっすね。はるの前では、笑ってないと。」
はるの頭を撫でながら微笑んだ。