002
彼女のことは何も知らないけれど、このままほっておくことも出来なかった。
事務所に、連れていって仮眠室へ彼女を寝かせた。
すると郁さんも、事務所に来た。
説明をしに、響と郁さんが別室に行った。
彼女がいつ起きるか分からなくて、一人だったらそう思うと俺は残った。
話が終わっても、彼女は目を覚ますことはなく
「二人で、起きるまでそばにいてあげて。明日、話出来るようだったら、ちゃんと聞いてあげよう。病院も行った方がいいのかな?」
「俺達も、彼女のことは何も知らないんで、色々聞いてみないと」
「分かった。お前らが話聞いて、俺も出来たらするから」
「分かりました」
結局、朝まで目が覚めることはなかった。
★★
『ここ、どこ?』
当たりを見回すと、そばに男が二人そばにいた。
起きた気配で、目が覚めたのか蓮も目が覚めた。
「あっ、おはよ。大丈夫?」
『だ、誰?』
「えっ?」
『ここはどこ?』
「ここは、俺達の事務所だよ。昨日のこと覚えてない?」
『昨日?昨日は家にいたよ?』
「えっ?」
「あ、おはよっ。起きてたんだ(笑)」
「響。ちょっと」
「うん。」
別室に呼んだ。
「ちょっと待ってて」
そう、彼女に言い残して。
「何?どしたの?」
「彼女、昨日のこと覚えてない。」
「えっ?」
「それよりも、昨日は家にいたって言うんだけど」
「なんで?」
「分かんない」
「とりあえず、彼女に話聞いてみる?」
「だな」
部屋に戻ると、また状況が変わっていた。
≪あ、あの・・・昨日助けてくれた人ですか?≫
「えっ?」
俺達は、訳が分からなかった。
「えっと。さっき、家にいたって」
≪それ、私じゃないんです。≫
「どういうこと?」
≪あ、あの・・・≫
そう言うと、突然ふるえだしたんだ。
「ごめん。無理に言わなくていいから。」
そう言って、蓮は抱きしめて落ち着かせた。
「ごめんね」
≪いえ。私こそごめんなさい。助けてもらったのに。あ、私の名前は、はる(ちい)です。≫
「俺は、ひびき。」
「俺は、蓮。」
≪ひびきさんと蓮さん≫
「俺の本名はひびきって読むんだけど、みんなからって”きょう”呼ばれてるんだ。呼び捨てでいいよ」
≪でも・・・≫
「じゃぁ、せめて敬語はやめよ?俺達、もう友達でしょ?」
怖がらないように、蓮はそう伝えた。
≪友達?≫
「せっかく知り合ったんだもん。友達。」
≪あの・・・≫
「ん?」
≪一緒に行って欲しい所があるんです。そこに行ったら、私の事が分かるんで。≫
「分かった。俺ら二人で行っていいの?」
そういうと、うなづいた。
この時間なら、郁さんももう来てる頃だろう。
響が、説明して彼女と3人で行くことにした。
その途中で、メンバー何人かに会ってしまい囲まれた。
はるっていう子は、響と蓮の後ろに隠れてしまい、震えていた(苦笑)
「大丈夫だよ。俺達の仲間だから。」
≪ごめんなさい。≫
「昨日のことは聞いたよ。落ち着くまでは、ここにいたらいいから。」
≪でも、私は・・・≫
「いいのいいの。俺達もいて欲しいし(笑)」
少しは事情を知ってるのか、枢さんも言った。
≪私がここにいると、迷惑かかるんで≫
そう言うと、黙ってしまった。
それ以上、話かけて欲しくないオーラが漂ってしまった。
「はるちゃん。いこっか」
うなづくと、3人で出て行った。
「なんか、複雑そうだな」
「ですね」
★★
連れていって欲しいって言われたのは、ある場所だった。
そこに案内されると、はるちゃんに気がついたのか
「昨日はどこにいたの?」
とか、色々聞いていた。
「あのっ」
「あ、ごめんなさい。連れてきてもらったのに。」
「いえ」
「あの昨日、彼女が襲われそうになってた所、助けたんです。」
簡単に説明した。
「そうだったんですか。ありがとうございます。どうぞこちらへ。」
「昨日は、はるを助けていただいたようで、ありがとうございました。」
「いえ、当然のことしただけです。」
「あのここは・・・」
「ここは、養護施設です」
その人はここの所長さんだった。
「えっ?」
「彼女は、なんと?」
「なんにも。行って欲しい所があるって聞いて。来たんですけど」
「そうですか」
「一つ、聞いていいですか?」
「はい」
「目が覚めた時、昨日のこと覚えてなかったんです。恐怖でただ忘れてるなら、それでいいと思ったんですけど」
一呼吸おいてから
「昨日は、家にいたって言ったんです」
所長さんは、息をのんだ。
「これって、どういうことでしょう」
しばらく沈黙していたが
「私には、これから話すこと。あなた方に信じてもらえるかは分かりません。でも、はるがここにあなた方を連れて来たってことは、会って間もなくても信じれる何かを感じ取ったからでしょう。」
そう言って、教えてくれた。