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〜オタサーの姫伝説〜
「あ~あ、ヒマだし、お菓子でも食べよっと。」
わたしは口を開けて、ポイっとお菓子を放り込んだ。
むしゃむしゃむしゃ。
お金持ちの食べるお菓子って、ほんとにおいしいーっ。
満足したわたしは白いデッキチェアで足を組み直し、目を閉じた。
ほほをくすぐるように、爽やかな風が吹いてゆく。
ここは、セレブの集まる別荘地。
小ぎれいな身なりのご家族やお子様やらが、集まって、アフタヌーンティーなぞをなさっているのである。
「はぁ、満足」
わたしは小さなため息をついて、
いつしか眠りこんでいた。
そして、時はすぎ……
ふと目をさますと、
あたりの風景は、すでに夕刻に差し掛かっていた。
うっすらと暗くなってきた森の奥から、ふいに、鳴き声のような音と、異様な気配がしてくる。
「ここって、ただの別荘地よね…」
すっと、わたしは立ち上がった。
何かが森の中を駆け回る、ガサガサという音。
迷い込んできた獣か、それとも、それ以外のなにかか。
空が青から濃い紺に変わっていく_________そのとき。
空気が変わった。
草がさざめく。
そして、普通の人間の1.5倍ほどの大きさの、黒い人の姿が現れた。