9話 イケメンは心までイケメンだからイケメンらしい
PVの数が数倍に跳ね上がってて、めっちゃビビりました。
「あれ?お前、桐原じゃん」
さて、俺はこの状況どうすればいいのだろうか。
休日に生まれて初めて女子と映画に行ったらクラスメイトに出くわした。それもスクールカーストでは、トップと言ってもいケメンと。
落ちつけ桐原伊織……俺は冷静、クレバーだ。この状況まず俺がすべきことはそう、一度整理して現状把握だ。
そんな当たり前の思考にたどり着くまでに既に檜山と出くわしてから3秒かかってしまっている時点で、明らかに冷静な対応ができているとは言い難いのだが、テンパっている伊織は当然そんなことには気づけない。
今の状況は、あれだ。休日にクラスメイトと出くわしているって状況だ。ここで今まずいのは水無月が一緒にいるということだ。つまり檜山からするとこの状況は、クラスの陰キャ男子が正体不明の見知らぬ美少女と歩いているという状況だ。
別に水無月とは付き合っているわけでも、ましてや友達ですらないのでやましいことなど何もないのだが、休日に、男女二人きりで、談笑しながら映画に来ているのだ。何らかの関係に誤解されても仕方ない状況だと思う。
そこまで考えたところで檜山が吹き出した。
「ぶふっ、はははは!なんでそんなに固まってんだよ桐原!」
「え、そんな固まってたか?」
俺は首をかしげる。おかしいな?そんなつもりなかったんだけどな……。
というかよくよく考えてみれば、そんなに焦ることじゃなかったんんじゃね?と思い始めていた。
別に檜山になんと思われても俺にとっては何のマイナスにもならないし、それに事実として俺は水無月と何もやましい関係じゃないので、例えばクラスの中で何と言われようとそれは事実と違うのだから何とも思わない。
「んで、随分かわいい子連れてるけど、映画館で二人っきりってやっぱ、そういう感じ?」
と、檜山は笑顔で楽しそうに聞いてくるなんか面白いもん見かけたって顔してるんだけど……。
「いや別に違うよ。そんな関係じゃないからな」
俺は普段通りなんの動揺もしてないかのように装ってそう言った。
「へぇ、そうなのか。でも意外だったわ。桐原が休日に女子と二人きりで出かけてるなんて」
檜山はそう言いながらいつものイケメンスマイルでニッと笑って見せた。
……何気に俺バカにされてるっぽいけど憎めないんだよなぁ。これがこいつがイケメンたる所以か。
「それよりも、檜山こそどうしたんだよ。こんなとこにで1人で」
俺はさりげなく話題を逸らして、檜山がここにいる理由について聞いてみた。
……つーかそもそもこいつ休日に見かけたからって話しかけてくるほど仲良かっただろうか。
あぁ、もしかして。
「(水無月のとこの組織の処理ってこいつらの記憶の改ざんとかもしてんのか?)」
小さな声で水無月にコソッと話しかけると、水無月は控えめにコクリと頷いた。
……まぁつまりは昨日の記憶は消えて多分それの代替された記憶がはいっているのだろう。その影響によって檜山は俺と仲が良くなったと思っていると。……どんな記憶にしたらそうなるんだろうか。
かなり気になる所ではあるがその場では軽い世間話だけして、それぞれの映画を見て別れた。
なお、水無月と映画に行っていたことはあまり他の人には言わないで欲しいと言ったら、
「まぁその子かなり可愛いからやっかみなんかを買うかもしれないしな。大丈夫だ、言わないよ」
と理解のある反応を貰う事ができた。
……やはりイケメンは性格もイケメンなのだろうか。
「いや〜映画面白かったな」
身体をバキバキと言わせながら伸びをして、映画館を出ながら俺は水無月にそう言った。
「本当に、面白かったわ……」
かなりの迫力と素晴らしい作画、更にはかっこいいBGMに大満足だった。
水無月も同じ気持ちなのか妙に気持ちがこもった言い方をしていた。
「私、映画館に映画を見に来たの初めてだったのだけれど、本当に楽しかった。本当に来れてよかった……」
そう言いながら歩く水無月は歩いていく。
映画館に行くのは初だったのか……。
「また、気が向いた時にでもいくか」
水無月の心から満足したような表情を見て思わず俺は口に出していた。その言葉を聞いた水無月は一瞬キョトンとして、
「……!え、ええ!約束よ!」
と、完璧な笑顔で言った。
思わず言ってしまった直後に俺は人と関わらないようにしているのに何を言ってるんだ。と思ったが、この笑顔を見てるとまぁいいかと思えてしまうんだよなぁ……。
本当に美少女はズルいと思う俺だった。
最近、物凄く眠気が取れないんですが、皆様は元気に過ごしていますか。
なんかいい睡眠方法とかないものですかねぇ…
それはそれとして評価、感想、ブックマークをしていただけると作者は感謝で跳ね回ります。