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8話 生まれて初めての同級生との映画は

 いやさ、行くことは確かに決めたよ?

 うん、行くって言ったからな?だけどな……


「お前なんか距離近くね?」


 俺がそう言うと、水無月はキョトンという顔をして、


「そうかしら?一般的なカップルの距離だと思うのだけれど」


 ……はぁ。俺はその分かりにくいボケにため息をつく。


「2つ言わせてもらうぞ」

「どうぞ」


 俺は水無月の俺をからかうような笑みを睨みながら言う。


「俺はお前の彼氏じゃない、というか友達ですらない。あと、一般的なカップルは四六時中こんな歩きにくいレベルまで密着して歩かない。ついでにお前のキャラが崩壊している」

「3つ言ったわね」

「うるせえ」


 く、くそ、欲しかったツッコミを欲しかった位置にくれるのがまた悔しい。しっかり細かい会話のボケまで拾ってきやがる。


「それで、映画館だっけ?何見に行くんだ?」


 と俺が聞くと、水無月はクスッと笑う。


「乗り気になってくれたの?」

「あぁ?……いや別に、ただどうせなら面白いのを見たいだろ」

「ふーん?そうね」



「……なんだよ」


 水無月のその顔はとても楽しそうだ。プイッとそっぽを向いてしまったが別にそちらに面白いものがあっただけで、決して恥ずかしかったわけではない。


「あ、それで映画なのだけれど、このアニメの劇場版なんてかしら?」

「へぇ、水無月アニメとか見てんのか?」

「自慢ではないけれど録画して必ず三度は見返すくらいには大好きよ」


 俺たちが見るのは、一般人の高校生だった主人公がある日ひょんなことから魔術組織に属することとなって必死に生きていくという物語だ。もとは漫画からアニメ化した物で人気が出たため最近映画化していた。バトル漫画なのだが、主人公の人生観や、主人公の友人キャラの決意など、バトルシーン以外のかっこよさもあり、俺は大好きだ。


 水無月はその雰囲気から、あまりこういったアニメなどは見なさそうだと思ったので意外だった。


「そうね、漫画は普通に好きだからそれが映画化したとなると見てみたいのよ。それに、君、恋愛映画とか見てても退屈でしょう?」


 確かにその通りだ。ぶっちゃけ映画館の暗い状況であまり興味のない映画を見ながら数時間も起きていられるとは思えない。そこら辺も分かって、水無月は俺のために選んでくれたのだろう。


 ……まぁ自分が見たかったというのもあるだろうが。


「……で、君はそれでいいの?」


 水無月はそう聞きながらも、もう既に映画館に向けて歩き始めている。俺の答えは聞くまでもなくもう分かっているんじゃねーか。


「ああ、俺も見たいと思っていたし、丁度いいからそれにしよう」

「そう。それは良かった」


 そう言って水無月は笑顔になる。

 態度はクールなくせに意外に表情は豊かなんだよな、こいつ。客観的に見ても美少女だし、さぞかしモテるだろう。


「お前俺と二人きりで映画見なんか見に行ってもいいのか?」


 思わず聞くと水無月はキョトンとした表情をする。


「……?どうして?私が二人きりだと何かまずいことでもあるのかしら?」


 ……本気で言ってんのだろうか。


「いや、お前彼氏は?」


 俺がそういうと、フフっと楽しそうに笑い出す水無月。……こいつずっと笑ってないか。


「ふふっ、ごめんなさい。思わず笑ってしまったわ。私に彼氏なんていないわよ」

「へ?なんで?」


 俺はちょっとその意味が分からなかった。

 こいつなら性格はともかく、その容姿なら確実にモテるだろうに。


「そもそも私が誰かと付き合うには私は秘密が多すぎるのよ。なんと言っても私は魔術師なのだから、隠さなきゃいけないことばかりよ」

「ああ……」


 成程。言われて納得する。


 そりゃ秘密だらけの職業で秘密だらけの組織の一員でそこで魔物達と戦ってます。…なんて間違いなく言えないだろうし、そんなこと言おうものなら、下手すれば異常者扱いされてしまうだろう。

そんな状態で誰かと付き合うことは厳しいだろうな。


 納得した様子の俺に水無月は続ける。


「そんな関係私だって嫌だし、多分実際に付き合っても上手くいかないでしょう。だから私は学校でもあまり深い関係の友人はつくっていないしね」


 たしかにな。俺も学校でのクラスメイトとの関わり方とか考えた方がいいのかな。…まぁ深く関わる友達なんてそもそも居ないんだけどな。


 そんなことを考えているうちに映画館についていた。


 俺は水無月と映画に行くときは嫌だと言っていたが、今から見る映画は意外に楽しみだ。俺は普段一人で過ごすことが多いので、アニメや漫画なんかを結構見る。『魔術廻旋』はその中でもかなり好きなものだったので映画を見に行こうと思っていたものの、一人で行くのは味気ないし、かといって妹を連れていくのも、妹は基本的にアニメや漫画を見ないので行っても楽しくないだろう。


 ……そこで友人を誘うという発想が出てこなかったのがまた陰キャの悲しいさだめだ。


「何か食べる?」


 シアタールームに入る前で水無月が聞いてくる。


「んーやっぱポップコーンだろ?あとコーラで」


 というと、水無月もポップコーンを頼んでいた。ちなみに、俺がキャラメル、水無月が塩だった。


 水無月は一粒を大事そうにつかんで恐る恐る、まるで初めて食べるかのように慎重に口に運ぶ。


 サクッと小気味のいい音がして水無月の顔がほころぶ。


「随分おいしそうに食べるんだな」


 その様子を見て思わずそう口に出してしまう。そう言うと、慌てたように水無月は表情を真顔にもどす。


 ……いや今更遅いから。

 思わず笑ってしまうとジト目で見られる。


「べ、別に。た、ただ本当においしかっただけよ!あっ、君のもおいしそうね!」


 そう言うと水無月はひょいっと俺のポップコーンを食べる。


「ん~これもなかなか」


 そう言って表情を緩ませるこいつを見ると怒る気も失せるな…


 俺達はそんなくだらないやり取りをしながらシアタールームに向かう。




 ああ、白状してしまおう。この時の俺はきっと初めてのことで、楽しくて……油断していたんだ。

 それに、同級生と出かけるのなんて初めてなので予測のしようもなかった。




 ここはうちの高校から近いところに位置している。駅からも近い。


 ……まぁつまりは、


「あれ?お前…桐原じゃん」

「ん?えっ、あっ……」


 俺は、シアタールームに向かう前のトイレからちょうど出てきていたクラスの人気者のイケメン、檜山祐太郎と出くわしていた。


美少女と映画デート……いいっすね(血涙)


皆さんはアニメとかは見ますか?私はかなり大好きな部類に入ると思います。



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