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5話 最強術師(美少女)が弟子になりたいらしい

 それから、気絶した片山を置いてきた空き室を見に行ったが、まだ気絶していた。どうしようか考えたが、そのままにしておくことにした。


 今日見た蜘蛛のモンスターは、夢か幻覚のようななにかだとでも思ってもらおう。


 多分、しばらくはクラスの中で旧校舎の化け物の噂が流行るだろうが、それくらいで終わると思う。


「それで……結局お前はなんなんだ?」


 学校から出て、家に向かいながら俺を助けた少女に向けて問う。


「何って言われても困るのだけれど……私の名前は、水無月栞(みなづきしおり)です。一応魔術組織に所属しているわ。」


 少女改め水無月栞はそう名乗った後、俺の方をじっと見つめる。


 なんだろう。

 俺の顔になんかついてるのだろうか?


「……?どした?」


 と言うと水無月はまた呆れたように「はぁ……」とため息を着く。


 俺、呆れられすぎだろ。


「……察しが悪いわね。私は名乗ったのだからあなたも名乗ってほしいわ。なんて呼べばいいのか困るのだけれど。」


 そんなこと言われたってこちとら生まれてから、ここまで、正真正銘折り紙つきのド陰キャだ。

 急に美少女に命を救われて、流暢に感謝を述べて自己紹介するなんてハードルが高過ぎるんだよ。


 ……なんて悲しい愚痴を心の中で言いながら、俺はここでなんて言うかを考えていた。


 ぶっちゃけ俺はこういう組織と関わりたくない。

 魔術組織とか、そういうのに入るとまず間違いなく普通に平穏な学生生活は送れない。


 俺は魔術を使って生きていくつもりなんてないし、出来ることならむしろ極力使わず平穏に過ごせればいいと思ってる。

 その上でそんな魔術組織なんかに関わるのはただのアホだ。


 こういう組織は見境なく能力のある奴をスカウトしまくる。それぐらいならまだいいのだがそれで入らなかった場合、敵と見なされ秘密裏に消される、なんて事も無くはない。


 そんな危険があるのに、俺は名前を教えていいのだろうか?


 心の中で考えていると、水無月がクスッと笑う。


「助けたのにすごく警戒するのね……まぁ当然かしら。それにすぐ名前を教えないのも正解よ。むしろ簡単に教えてたら、説教してた所だったわ」

「う……なんかその、すまん」

「別にいいのだけれど、君のことはこれからも"君"って呼ぶわよ」


 美少女に助けられた上に気を使われた。


「……んじゃあ、お言葉に甘えさせてもらう」


 なんとなく罪悪感があるが、まぁ、そこは仕方ない。


「えーっと、一応聞くけれど、君が私のいる組織に入って貰うことは、できるかしら?私達の組織は……」




「それは無い」





 言葉を被せて食い気味に俺は即答する。


 当然だ。平穏に過ごしたいのに魔法を使わせられる組織に行くなんて、冗談じゃない。


「そう、よね……」


 水無月が何故か若干落ち込んでいるように見える。


 何故だろうか。

 正直、俺の程度の強さの術士ならそこら中に居る。

 俺にそこまでこだわる理由がないだろう。


「……分かったわ。」


 意外にも彼女はあっさり聞きいれてくれた。


「今回の件の後始末は私達の組織で全て行っておくわ。」

「……え、いいのか?」

「ええ、というより君、後始末できないわね?」


 その通りだ。ぶっちゃけ後始末と言われても何をすればいいかすら理解していない。

 だからその申し出はありがたかった。


「んじゃあ、とりあえず重要な事は話終わったよな?帰ってもいいか?」


 そう言うと、水無月は何か言いたげな顔をする。


「……ぁ、えっと、その」

「…どうした?」


 なんとなく嫌な予感がしたが、気のせいだと思い水無月に聞く。


「その……無理矢理誘うのは私もどうかと思っているわ。もう勧誘したりはしない。……だからこれは私の個人的な『お願い』よ」


 と、水無月は先程までのクールな感じとはうって変わった、態度でモジモジとしている。


 俺に頼み事……?

 何だろうか。全く想像もつかない。


 そして、水無月は覚悟を決めたように深呼吸をすると真剣な顔で、大きな声で言った。





「私の師匠になって貰えないかしら!」



 ……


 …………?


「……はい?」


 訳が分からず呆けた顔をしてしまう。


「だから!私の師匠になってほしいと言っているの!!」

「悪い、脈絡無さすぎてマジで言ってる意味がよくわからないんだけど。」


 本当に意味がわからない。

 何故急に、助けられた相手に師匠になって欲しいと言われているのだろうか。


 水無月は少し落ち着いたのか、クールな雰囲気に戻って、普通に理由を話し出す。


「悪いわね、急に変なこと言ってしまって。ただ先程のは冗談でも何でもなく、本当に私の魔術の師匠になって欲しいのよ」


 落ち着いて言われても訳が分からない。

 どういうことだ?……というかそもそも師匠も何も水無月の方が俺より何倍も強いだろう。


「私は、現存するどの術師よりも強いわ」

「……お、おう?」


 いきなりの最強発言にちょっと引いてしまうが、水無月は気づかなかったのかそのまま話を続ける。


「それは私の能力が最強だからなのだけれど、実は……私、魔法がものすごく苦手なの。特に、その……魔力の制御と操作が苦手で……」


 そこで思い出したのはさっきの治療だった。なんでか知らないがこいつはわざわざ初級の魔法を使っていた。確実に中級、上級のが魔力効率も良いのに。


「あ、そういえばさっきの回復魔法って……」

「ええ、あれもそうね。私、自前の魔力量で無理矢理に高出力の魔法を発動できるのだけれど、本当に一部のものを除いて初級の魔法しか使えないの。」


 初級の魔法しか使えないって、どれだけ魔力操作下手なんだろうか……。


「無理矢理ゴリ押しで威力を上げた初級魔法では、効率、速度、安定性どれにも欠けるわ」


 というか、それで世界最強ってマジなのか……?



 ──だけど。



「命の恩人に対して、めちゃくちゃ心苦しいんだけどさ、悪いけど俺はお前の師匠になるつもりは無いんだ」


 水無月には本当に申し訳ないが、俺はもうそちらの世界に関わりたくない。


 いや、関わっちゃいけないんだ。


「え……そ、そう」


 明らかにショックを受けた顔をする水無月に罪悪感がすごい。だけど、俺がそちらに行けばお前が……。


 俺はそちらの世界に必要以上に関わるつもりはない。




 絶対に。

『魔術組織』…世界中に存在していて、組織の規模はピンからキリまである。世界で一番大きい組織は「国際魔術師連合」どの国、地域にいるかは関係なく、さらに犯罪組織に入っていなければ、どの組織に所属していても入れるので、ほとんどの術師が所属している。先進国はどの国も独自の魔術組織があり、国によっては術師に所属を強制する国もある。

 術師によっては核よりも強力な兵器にもなりうるので外交に使われることもあるとかないとか。


よければ評価、ブクマをよろしくお願いします。、

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