36話 純愛と書いてヤンデレと読む
???「純愛だよ」
「久しぶりに寄っていこうかね」
目に入ったのはゲームセンター。下校途中に何となく気が向いて、いつもと違う道を歩いていたら見つけたので、久しぶりに寄り道でもしようと思い入ることにした。
いくつか妹用に、ぬいぐるみでも取っていこうか。そんな風に取れそうなお菓子や、妹の喜びそうなぬいぐるみをとったりして店内を回っていたのだが、ある程度取ってそろそろ帰ろうか、というあたりで知っている顔を見つけた。……というより、話しかけられた。
「よっ、桐原……だったよな」
そんな風に俺に話しかけてきたのは、この前の禍津との戦いにも参加していた、影山秀介だった。影山は俺の顔を見て少しニヤッと笑った後、その場で頭を下げてきた。
「……え、いや、おい」
あまりに唐突な予想外の行動に、思わず固まってしまう。周囲の人もなんだあいつら、という目でこちらを見ては通り過ぎていく。
「この前は本当に助かった。お前がいなかったら確実に俺は死んでいた」
そういった後、影山は顔を上げ、その整った顔に笑みを浮かべながら続ける。
「もし、これから困ったことがあったら遠慮せずに俺のことを頼ってくれ。できる範囲内にはなるが全力でお前の力になる」
「……お、おう?」
ま、まあ影山はかなり実力のある術師だし、悪いことではないか。
「つか、意外だな。影山もゲーセンとか一人で来るんだな」
なんというか、どちらかと言うと友人とわいわいしているような、陽の人というようなイメージだったんだが。
「たまにしか来ないけどな。こう見えて、クレーンゲームは得意だし、レースゲームとか、音ゲーとかも結構得意なんだぜ」
「お、まじか。じゃあ一緒ににやるか?」
俺がそう言うと、影山は少しだけ微妙そうな顔になって頬を掻いた。
「あー悪い。俺これから待ち合わせがあるんだよ。また今度誘ってくれ」
「お、そうか。ならまた今度やろうな」
その後、影山はゲーセンを出るということだったので、俺もキリがよかったし丁度いいと一緒に店を出た。……のだが。
店を出てすぐのところで、一人の少女が明らかに不良らしい男に絡まれていた。どうやらナンパらしい。
「な?いいだろ?一時間だけでいいからさ!」
……うわ、やっすいナンパだ。まだ夕方で人通りも結構多いというのにここまで堂々としてナンパできるのは逆にすごいと思う。
少女の方を見れば、スマホを弄って不良のことはガン無視を決め込んでいる。こっちもこっちであそこまで無反応を決め込めるのはすごいと思う。もはや見えてないのかと思うぐらいだ。
「おい!無視してんじゃねえよ!やさしく誘ってたら調子乗りやがって……」
不良男は少女にあまりにも相手にされないことに腹が立ったのか、少女の肩をつかんでそう言った。……やさしくって言葉の意味を知らないのだろうか。
「……なんですか。私彼氏がいるって言ってるでしょう」
少女はなおもスマホを見たまま、けれど少し苛立った様子で言った。
ふと、影山はあのナンパを見てどう思っているのか気になりちらっと見てみると、普段の余裕のある様子からは想像もつかないぐらい真っ青な顔をして、ダラダラと大量の冷や汗を流していた。
どうしたんだコイツ。
そんな風に見ていると、不良男は少女に無視され続けてヒートアップしてきたのかだんだん声を大きくしながら喚き始めた。
「だいたいよお!そんなどこの誰かも分かんねえ奴より俺の方が満足させてや……」
「やっべえ!!」
不良男がそう言いだした瞬間、影山はとんでもない焦りようで少女達にむけて走り出し、不良男と少女の間に入った。
「まてまてまてまて、ストップ!ストップだ!!」
「あん……?なんだてめぇ」
突然の乱入者に不良は困惑していたが少女の反応は違った。
「シュウ君!もう、遅いですよお!」
少女の方と知り合いだったのか……?というか、なんかあの少女ポケットから取り出そうとして……あれもしかして、ナイフか?
「それはそうと、お兄さん。私のシュウ君のことをバカにしましたか……?ねえ、私の、私だけの最高にかっこいい彼より満足させる……?」
少女からものすごい殺気のような気配がする。いつの間に俺は殺気とか感じ取れるようになっていたんだ……?ただの少女のはずなのに、何故か関係ないはずの俺もゾクッとする。
え、何アレこっわ。
「はい!そこまでだ!茜」
影山が慌てて少女のことを止めに入る。多分止めてなかったらまじでシャレになんないことになってた気がするから、ファインプレーだと思う。
「あんたも!命が惜しかったらさっさとどっか行け!」
あまりの少女の変貌具合にポカーンとしていた不良男も、影山のその言葉で正気を取り戻したように「あ、ああ」とだけ言って逃げていった。
いや、ええ……?とりあえず色々言いたいことあるけどさ、影山お前、彼女持ちだったのかよ……。
「……んで?影山、そっちの子誰だよ」
「あーまぁ、さっきの会話で察してると思うけど、俺の彼女の館澤茜」
その後影山達が向かう方向と、家の方向が途中までは同じだったので流れで途中まで一緒に歩いているのだが、本当に早く帰りたい。
彼女さんの、館澤さんはこちらを見ながら笑っているはずなのになんか怖いし。これ、あの場で別れるべきだったのでは?
「シュウ君に友達いたんだ……へぇー私の知らない友達……後でシュウ君とおはなししなきゃね……」
などと、時折ブツブツ呟いているのが、本当に怖い。影山は気がついていない様子だし……。
遠い目をしながら歩いていると、ボソッと影山が話しかけてきた。
「茜はさ、ちょっとだけ独占欲が強いみたいなんだ。だからなんかあったら、その、すまん」
「ちょっと……??つーかおい、謝るな。諦めるな。その時は助けてくれるよな?な?」
わー影山が死んだ目をしてるー。全然笑えないんですけどー。
「どうしました?私に隠れてなにかお話ですか??シュウくん私に隠し事してるんですか??」
「い、いやそんなことないぞ?」
こっわ!こっわ!!いや、目のハイライト消すのやめてくれません?やめてください。(懇願)いや、ちょっ、近づいてこないで。影山と話しててくれ頼むから、いや近い近い近いって!
「シュウ君に変なこと言ったり、余計なことをしたりしたら、覚悟しておいて下さいね……?」
「ヒェッ……」
耳元でボソッそう囁かれた後、俺は心を無にして家まで帰った。
その後、家に帰った俺は疲労でベッドに倒れ込む羽目になった。影山も苦労してるんだな……。
すみません、大分お待たせしました。でも、ある程度2章の方向と言いますか、大まかな感じは決まったのでこれから頑張っていこうと思います。
そういえば、昨日独占欲の強い恋人から別れましょうと言われる夢を見ました。起きた後、正夢じゃないかと不安になってしまい、スマホを確認してふと気が付きました。
自分、恋人なんてもともといないじゃん……。
それはそれとして、ブクマ、感想、評価をお待ちしています。




