28話 あの日の続きを
忙しすぎてしばらくお待たせしました。
いつも通り中学校が終わり、誰もいないマンションの一室に到着すると、僕は鞄を置くなり、携帯ゲーム機を取り出しソファーに寝ころびながらゲームを始める。
「伊織~!たっだいま~!」
ゲームをし始めて暫くすると玄関の方からガチャガチャと音がして、1人の男が入ってきた。すこし茶色がかったサラサラな整った髪に、細めの体格、どこか僕と似たような顔つきをした眼鏡をした男。僕の父さん、桐原悠介だ。
「あっつ苦しいわ!父さん!!」
帰ってくるなり、飛び込んでくる父さんをゲーム機を持ったまま体を捻って無理矢理よける。
「はっはっは!何言ってるんだよ伊織。いつも通りだろ?」
だからウザいんだが??
いつも通りアホみたいな絡み方をしてくる父さんを追い払おうとしていると、手に持っていたゲーム機からゲームオーバーの音が鳴る。
「あー!父さんのせいで死んだ!!」
「おっ!ゲームやってんのか。実は父さんも買ったんだ。一緒にやろうぜ」
今僕がやっているのは、ピンクの悪魔が敵を食べ、能力を奪いながら進んでいくゲームで、通信プレイで協力もできる。
僕のやっているゲームを見るや否や、父さんはどこから出したのか同じゲームを取り出し、俺の返事も聞かずに通信画面を見せてきて協力プレイの催促をしてくる。
「……仕方ないなぁ」
僕も通信画面を開き、協力プレイに同意する。
……今やってるステージが難しいから仕方がない。決して僕が父さんとゲームをしたかったからではない。決して。
「そういえば、凛は今日も爺さんのとこか?」
ゲームをやりながら父さんは僕に聞く。妹の名前を聞いて、僕は少しだけ気分が重くなる。
「……うん。僕とは一緒にいたくないんだってさ」
「そっか」
僕の言ったその言葉で、父さんは苦笑する。
「俺もな~母さんの買い物に、付き合おうか?って聞いたらフラれちゃったよ」
だからいつもは一緒に帰ってくるのに今日は一人だったのか、と心の中で納得した。
「父さんと母さんはラブラブじゃんか……」
僕の父さんと母さんは結婚してそれなりに立つのにかなりのラブラブ具合だ。子供の前だろうとお構いなしにイチャつくので子供の身からすると、さすがにもう少し自重して欲しい。
中学生にもなって親から「弟と妹どっちが欲しい?」などと聞かれるのは恐怖でしかない。
「そうだなー、伊織は凜に対して優しくしろよ?……そう、まさに俺が父さんがお前にするように!」
こちらを見てドヤ顔をかましてくる顔が妙にイラッとしたので、お父さんの操作しているキャラから能力を奪い取った上で、ボスに向かって突き飛ばした。
「あっ!ちょ!?伊織、おま……やっべ体力赤!!」
その後、僕はボスの攻撃を避けることだけに専念して援護は一切しなかったのに、父さんは無能力の状態でボスを倒しきってまたドヤ顔をかましてきた。あそこからなんでクリアできるのか。解せぬ。
父さんとしばらくゲームをしてから、父さんが夕飯の準備をしなきゃいけないということでゲームは終わり、僕はソファーに座ってテレビを見ていると、玄関の方でドアが開いた音がした。
「ただいまー」
帰ってきたのは、ウェーブのかかった黒のロングヘアの、どこかおしとやかな印象を与える女性だった。……と言うか、桐原百合。僕の母さんだった。
僕はチラリと横目で見ながら「おかえりー」と声をかけると、母さんは手に持っていた荷物を置いて僕の座っているソファーの後ろに移動すると、そのまま僕を抱きしめた。
「ちょ!?か、母さん離れ…いや、力強っ!?」
引き剥がそうとするが、全然引き剥がせない。こんなに力が強いのは職業柄か。
「伊織ー!んー今日も息子がかわいい!」
あの、分かったから離してくれませんかね……。
「ちょ、母さん……力つよいって」
背中をタップすると母さんはやっと離してくれた。
まったく、息子を絞め殺す気か。
「はぁ……おかえり母さん、今日の仕事は大丈夫だった?」
「そうねぇ……悠介さんがかっこよかったわよ」
さ、参考にならない……。
ちなみにだが、仕事というのは術師のことだ。父さん達はどこの組織にも所属はしていないが、外注という形でいろいろな組織から依頼を受けて輸入を得ているらしい。
親的には子供たちには術死の世界にかかわらせたくないらしいが、魔力の多いものは狙われやすくなるため、せめてもの自衛の手段をということで、僕はいろいろ学ばせてもらっている。妹の凛だけは
は関わらせないために基本的にすべて隠し通しているが。
凛は勘がよく、隠し事をしていることに気がついている節がある。そのせいもあってか、秘密ごとをしている僕のことが凛には気に入らないらしい。
そう考えた時、また、家のドアが開く音が聞こえた。入ってきたのは当然ながら妹の凜だと思っていたのだが、何故か俺と同じくらいであろう少女を連れて入ってきた。
……?誰だ?
妹の友達かと思ったが今まで妹が家に友達を連れてきたことはないし、友達というには少し年齢が離れすぎている気がする。まあそれでも友達という可能性が無いわけでもないのだけれども。
「ただいま」
唖然としている僕や両親に、いつも通り凛は言う。
「……凛?お友達?」
母さんはキラキラとした目で凛のことを見る。凛が家に友達を連れてきたことなんてなかったから、うれしいのだろうか。ただ、いつも家族にやってるみたいな殻味方したら絶対に引かれると思う。
「友達なんかじゃない。ウチの部屋の前でなんか困ってた様子だったから連れてきただけ」
そうそっけなく言うと凛は自分の部屋に戻って行ってしまった。
え、連れてきた人置いてっちゃうの?
そう思った時に父さんが「ああ!」と声を上げた。
「そっかそっか。君が例のお嬢様だね」
お嬢様?どっかの会社の令嬢か何かが父さんに用があるのか?
「はい。私は水無月家の水無月栞というものです。今日は桐原悠介様にお父様から手紙を持ってきました」
そう言って、水無月栞は父さんに手紙を差し出す。
父さんは受け取るとしばらく読み、「……へぇ」と声を上げた。
「水無月家は術師の名家だから大抵のことは自分のトコで何とかすると思っていたからどういうことかと思えば……なるほどね。分かった、この依頼承るよ」
父さんが頷きながらそう言うと、水無月栞は表情を明るくして父さんの方を見る。が、倒産の言葉はそこで終わらず、僕の方へいたずらを思いついた子供のような表情で言った。
「ただし、僕じゃなくて伊織がね」
「……へ?」
急に飛び火したんだが。状況がつかめないから、関わらないように何もしゃべらなかったのに巻き込まれた。混乱する僕を置いて父さんは続ける。
「僕が君に教えられることは大体伊織でも教えられる。もし本当に伊織から学ぶことがなくなった時には僕が直々に教えてあげるよ」
僕は状況がわからな過ぎてそんなことを言う父さんに本気で困っていた。
教えるって何をだ?大体俺が父さんの仕事を手伝ったことなんて一度もないのにそんなの大丈夫なんだろうか。
「しかし、お父様は私に対して桐原悠介という術師に習って来いと言っていたのですが……。それに、並の術師では私のこと教えるなんて……」
困ったような顔でそう言う水無月栞に父さんは笑みを崩さずに、
「それが嫌だというのならこの話はなしだ。大丈夫、責任を取れと言われたら僕が全部取るさ」
その言葉で水無月栞は、諦めたように溜め息をつく。
「分かりました。そちらの伊織さんに教えてもらうことにします」
そう言って、僕の方へと近づいてきて「よろしくお願いしますね」と言ってきたのだが、僕は本当にどういう状況なのか分かんなくて、倒産にどういうことなのか目で訴える。
「まあつまり、その美少女は今日からお前の弟子ってことだ。よろしく頼むぞ」
は?弟子……?弟子ってあの弟子……だよな?
「はああああああ!?」
俺の困惑の絶叫が家中に響き渡った。
最近死ぬほど忙しいので投稿ペースを週一にしようと思っています。暇な時間ができ次第投稿しようと思っているので見て言って下さいね。あと、感想、評価、ブクマをよろしければお願いします。投稿を加速させてくれます。




