27話 意地と、意志と、覚悟と、
短いかもです
「やあやあ、まだ術師がいたのか」
水無月と話して、覚悟を決めたところでまるでタイミングを見計らっていたように出てきた一人の男。こいつが、このアホみたいな魔力の主か。近づいてみると、そのヤバさが改めてよくわかる。普段の俺なら何とかして速攻で逃げてたな。……今回ばかりは逃げる気なんてさらさらないが。
あんだけ水無月に啖呵切っておいて、ここで逃げるなんて流石に俺にもできない。
「随分とタイミングいいな。待ってくれてたのか」
そう言うと、男は笑う。
「ああ、少し前に近くにいてみていたよ。おかげであの水無月栞の意外な一面という面白いものも見えたよ」
随分と優しいことだ。いや、舐め切られてるのか。そりゃこいつから見れば、俺の魔力なんてそこらのミジンコと大して変わらないだろうからな。しかもさっきまで影山を運んだ時と、回復魔法でほぼすべての魔力を使ってしまっているためほとんど戦う力も残っていない。
正直に言えば勝てる要素なんて…………。
――――実は、ひとつだけある。
だが、正直に言ってしまうと、アレだけの啖呵をきって覚悟を決めたつもりでも、これを使うのは躊躇ってしまう。
「さて、水無月栞は私に圧倒的な力を見せてくれて、その後に私に挑んできた術師は諦めず、戦う術師というものの可能性を見せてもらった」
男は両手を広げ、こちらを見て笑顔で言う。
「君は、私に何を示してくれるのかな?」
そこで男から、とんでもない威圧が放たれる。思わず震えてしまいそうになるような強大な気配。
逃げてしまいたくなる。だけどここで逃げてしまえば、大量の死人が……違うな。
深呼吸をして、1度落ち着き、俺は俺自身に問いかける。
俺にこの国の見知らぬ人のために、心を砕き、命を賭して全力で戦うだけの覚悟はあるか。
答えはNOだ。そんな殊勝な考えなど俺には持ち合わせてなどいない。そもそも、俺の力では手の届く範囲すらも守ることができないのに、どうして見知らぬ人を救う余裕があるだろうか。
じゃあ、妹のためならどうだ?
凛のためになりふり構わず全力を出せというならどうだろうか。
……部分的にYES。凛のためなら全力で戦い、死ぬ覚悟だって出来ている。
けれど、きっとそれは今じゃない。この状況が後々確実に凛の命を脅かすものになるだろうと分かっていても、きっと俺は目の前で危機に陥っている凛を見ない限り全力を出さない。
いや、出せないと言うべきか。
……回りくどい話は終わりにしよう。
俺は水無月栞のために、過去のトラウマを乗り越えて全力で戦うことができるか。
出会ってそんなに経つわけでもない俺のことを、「友達」だと言ってくれて、俺の命を救ってくれて、そしてあの水晶の向こう側で涙を流している、俺と同い年くらいの少女を全力で助けるだけの覚悟はあるか。
……ああ、分かってるさ。
自分の中での答えなんて、とうに出ている。
「さぁ、精一杯抗ってみてくれ。〈刀が現れる〉『傲慢』」
男の手元にものすごい勢いで光る刀が現れて、それを引き抜いて構えてくる。七つの大罪系、傲慢……なるほど、これも運命ってやつだろうか。
構えられた刀が超高速で俺に振り下ろされる。
……さあ、覚悟を決めろ。
俺は、水無月のために全力で戦えるか。
「…………ッ!!『暴食』ッ!発動!!!」
……その答えは、YESだ。
能力に、封印されていた記憶が溢れ出す。
――――――――トラウマが、フラッシュバックする。
ま、毎日投稿はさすがに厳しくなりました。
というか、リアルが忙しすぎ!!!
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