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26話 関係ないなんて言わせない

「き、きりはらくん、なんで、ここに……」


 あまりに気が動転し過ぎて、今までわざと呼んでこなかった彼の名前を呼んでしまった。


『ん?あ、ああ、って水無月!?ええ……何があったんだよ』


 どうやって、どうして、という疑問が頭の中を駆け巡るが、それどころではない。

 はやく、早くここから逃がさないと、禍津が来てしまう。彼が死んでしまう。


「桐原君今すぐ逃げて!そこにいる影山を連れて、早く!!」


 そこで桐原君は倒れている影山に気が付いたのか、慌てて駆け寄る。


『……っ!?か、影山!?大丈夫か!くそっ!【エクスヒール】!』


 桐原君は上級に分類される回復魔法を使うけれど、大した効果は見られない。これは、桐原君の魔法の問題ではなく、影山の状態があまりにひどいせいなのだろう。


『とりあえず、ここから離れたところに連れて行くのが先決か……。魔力消費に関してはもうこの際諦めようか。【テレポート】』


 影山を抱えた桐原君の姿が瞬時に消える。

 どうやら彼は、どうやっているのかは分からないが国直属の組織が張るような結界でも搔い潜って空間魔法を使うことができるらしい。


 ふう……。

 息をつく。影山と桐原君の目の前の危険が去ったことによって少しだけ落ち着く。これで取り敢えず桐原君は助かる。影山も助かる……と思う。


 あまりに冷静じゃなさ過ぎたわね…。私が焦ったってなにもできることなんてないのに。


 そうしてふと水晶を見ると、そこには桐原君が転移して戻ってきた姿が映し出されていた。



「……えっ?」



 どうして。その言葉が頭の中をぐるぐると回る。


 ここは危険なことぐらい彼もわかっているはずだ。それに空間魔法は大量に魔力を消費するはず。影山に対して使っていた上級の回復魔法のことと併せて考えると、もう桐原君にはほとんど魔力が残されていないんじゃないだろうか。


 桐原君はきょろきょろと何かを探すようなそぶりをした後、この遠見の水晶を見つけると私のことをじっと見た後、言った。


『……水無月、お前はそこで死ぬ気なんじゃないのか』


 桐原君にそう言われて私は思わず、固まってしまう。桐原君があまりにも突拍子もないことを言い出したから意味が分からなかった……という訳ではない。むしろ反対で、完全に図星だったからだ。


『そのお前がいる場所。……詳しいことはあんま分からないけどさ、あそこに見えてる魔法陣。アレ壊されたら、お前永遠にそこから出てこれないだろ』


 ……その通り。入り口である魔法陣が潰されてしまえば、もう私にはこの場所を能力で破壊するしか脱出する方法がなくなってしまう。しかし、それをすれば確実に世界に甚大な被害をもたらしてしまうので私はそれをやるわけにもいかない。


 だからいっそのこと、こちらの世界で死ぬことで、間違っても耐え切れなくなり、能力を使って脱出するような真似をしないようにしようと考えていたのだ。


「……君には関係ないことでしょ。いいから早くここから離れて!」


 そういうと桐原君は怒ったような、悲しいような顔をして、ふぅ……とため息をついた後、私のことを睨む。


『関係ない?ふざけるなよ。お前から俺に関わりだして、お前が弟子にしてほしいって言いだして、勝手に俺の心の中に居座ったんだ。自分の言葉には責任を持ってもらうぞ』


 それは今まで私のことを拒み、弟子にすることを断ってきたことを完全に棚に上げた身勝手な発言。けれど、私はなぜか反論する気にはなれず、黙って下唇をかむ。


『今更関係ないなんて言わせないぞ、水無月葵。お前はここで俺に助けられるんだ』


「っぁ……」


 何か話そうとしたが、声が震え、言葉にできない。今私が一番欲しかった言葉をもらい思わず、その言葉に今すぐ縋り付いてしまいたくなる。けれど、それをする訳にはいかない。


 頼られるのはつらい。

 私はそれを身を以って知っている。彼にそんな思いをさせるわけにはいかない。そんなことを頼むなんて残酷なことは私にはできない。そんなものを背負わせてしまえば、彼は死んでしまう。


 だから私は叫ぶ。


「わ、私は!助けてほしくなんて、ないわ!」



『……だったら!なんでお前は!泣いているんだよ!』



 私よりさらに大きな桐原君の叫びで、私が涙を流していたことに初めて気が付き、慌てて目元を拭うが、もう、だめだ。一度涙に気が付き、目を背けていた自分の本心を突き付けられて、完全に私は決壊した。


『助けてほしいんじゃないのか!どうしようもないんじゃないのか!だったら、変なことを考えず、自分の心に正直に、みっともなく、自己中心的に、「助けて」って言って、終わったら「ありがとう」って言う。それだけでいいんだよ!友達、なんだろが!!』


 私が彼との関係をつめたくて言った言葉。ありふれた言葉だけど、それを聞いた瞬間におもわず、言ってしまった。




「……助けて、桐原君」






『ああ、分かった。全部任せろ』



 彼は私の消え入りそうな声で求めた助けに、笑顔で応えた。


 その笑顔を見て、私は何の根拠もないのだけれど、本当に彼が全て何とかしてくれるような気がした。


主人公がやっと主人公っぽくなりましたね。


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