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25話 闇纏羽衣・極

 影が、闇が、全身を覆いつくし、ギチギチと音を立てて身体に纏わりつく。体が一回り大きくなったような錯覚を味わいながらも、前を向こうとして……殴り飛ばされた。


「はっはっは。大技は発動前に潰すに限る」


 俺は、地面にたたきつけられる前に背中から影を出し翼のようにして逆に禍津に向けて突っ込む。


「変身中に攻撃するなんてマナーのなってない神だなぁ!」


 そのまま殴り掛かるが、障壁に阻まれる。くそ、オートで権能を発動できるのか。


「はあぁぁぁぁ!!」


 禍津もノータイムで応戦してきて殴り合いになるが、互角。


「はぁ!?こっちの力は20倍ぐらいになってるはずだぞ!」


 いくら殴ろうが、切りつけようが全て『傲慢』の権能による障壁によって阻まれる。ふざけんな。どんな防御力してるんだよ!


 仕方が無いのでとりあえず攻撃はして、禍津の3分間魔力を削り続けることにした。そうすればここで勝てなくとも、()が楽になる。


「なるほど、面白い。その覚悟に敬意を評して全力で相手をしてみせよう。」


「え、いや、むしろ全力出さないでくれていいんだけれども」


 俺の発言に対しても禍津は全力で戦う気のようだ。

 おいおい勘弁してくれない?今でも、もう色々いっぱいいっぱいなのに。


「〈全てを貫く光が敵を追い討ち滅ぼす〉〈我が魔法は増殖する〉『傲慢』」


 放たれたのは光のレーザーのようなもの。多分まともに生身で受ければ即死級。そんなものがものすごい勢いで連射されていく。


 咄嗟に左に飛んで避けるが、光は軌道を気持ち悪いぐらいに曲げてこちらへと向かってくる。


 ホーミング付きとか笑えないよ!?いくつもの俺を追ってくる光。当然ながら攻撃の方が俺の移動速度より早いので避け続けることなんて出来ない。

 …くそ、一か八か。


 光が一斉に俺に当たり、大爆発を起こす。


「ははは。流石にこれは回避出来なかったか。中々に面白かったよ」


 そう言いうと、ここらを囲っている結界のほうへと向かう禍津に、爆発の中から飛び出した俺は掴みかかり、地面に叩きつけた。


「ぐっ!?どうして……?」

「ようやくまともにダメージが通ったよ」


 痛みに呻き声を上げる禍津を見てふぅっと息をつく。きっと今ので終わったと思って自動防御を切っていたのだろう。


「君…何をした……!」


「俺のやった事は単純。攻撃を殴って弾いた(・・・・・・・・・)だけだよ」


 俺の『闇法師』の能力によってできる影は、ありとあらゆる魔法を弾く、という特性がある。……まあ、あまりにも強すぎる魔力で魔法を打たれたらその限りではないが。


「『傲慢』らしく慢心して死になよ」


 そのままたたみ掛けるようにひたすら殴り続ける。しかし、自動防御状態を再度発動したのかその攻撃は禍津には一撃も当たることはなかった。

 くっそ固い……けど。


「残念だったな。君が私に殴りかかるのが、あと一秒だけでも早ければ食らっていただろうに」

「いいや。これでいいんだ」


 あの自動防御は一見無敵にも見えるが、きっと一定の防御力しかない。その証拠に、水無月の情報の中に自動防御の話なんてなかった。きっとあいつは水無月に自動防御を使えなかったんだろう。それはつまり、あいつの『怠惰』は自動防御では防げなかったので手動で対応する必要があったということ。つまりは、一定以上の攻撃ならあの自動防御を突破できることになる。


 だから、俺は今、この瞬間に俺の放てる中で最高の一撃を放つ。さぁ、ここで終わらせようか。


 刀を鞘にしまい、居合の構えをとる。


「……?っ!?……しまっ、間に合わ……」

黒刀一閃(こくとういっせん)闇纏(やみまとい)(てん)……っ!?」


 刀が抜けない。

 いや、違う。体が動かない。


 そこで俺は初めて自分の体に意識を向け、ギシギシと明らかに出てはいけない音が出ていることに気が付く。


 くっそ……。

 後ちょっとだったってのに、ここで限界、か。


 そのまま前に膝から崩れ落ちる。ああ、でもかなり消耗させれたし仕事としては十分かな……。


 意識が途切れて倒れる前に、もう一度だけ禍津のほうを見る。



 ――――そこに見えたのは、先程まで戦っていた神が完全に復活した姿だった。



「はぁ……?ふざけ、んなよ……」


 魔力に至っては最初見たときよりも増えている。

 回復できるんなら最初から使ってくれよ。


 く、くそ、これじゃ、ほんとに……むだ、じ、に……。


















「影山!影山!!」


 話しかけても水晶の向こう側で倒れて気絶した影山に反応はない。


 禍津は影山が倒れた後、瀕死の影山に対しての興味はなくなったのか、ここら一帯を覆っている結界の方を確認しに行った。


 まずい。まずい。まずい。

 このままだと、あの神は日本に甚大な被害を与えるだろう。あの神は強い。並の術師では抵抗すらできないままに殺されてしまうだろう。


 私は、どうすればいい?どうすればこれ以上の被害を減らせる?どうすれば目の前の影山を救える?


 答えはとうに出ている。どうにもできない。私はここから見ていることしかできない。


 本当は私が、私が全部救わなくちゃいけないのに。


 だめだ。だめだ!だめだ、だめだ、だめだ!!!

 私が全部救わないと。私が守らないと。私が「最強」なんだから。私を助けてくれる人はいないんだから、私が私も含めて全員助けなくちゃ。


 ――――誰か助けて。


 どこからか声がした気がした。


 うるさいうるさい!そんなこと言ってる場合じゃないのよ!私が、私が全部助けないと!!


 ――――誰か助けて。


 また、声が聞こえる。


 うるさいって言ってるでしょ!!私を助けられる人なんていないの!だから私が全部助けるのよ!


 ――――誰か、助けて。


 声は、消えない。


 私しかいないの!この世界でみんなを助けてあげられるのは、私だけ。世界で一番強くなってしまった私だけなのよ!!!


 だから!私は……。


『これはひどいな……少し、遅すぎたか』


 そのとき、手に握りしめていた水晶から声が、聞こえた。

聞き覚えのある、声がした。この場所で聞こえるはずのない声。


「きり、はらくん……?」




 ……それは私が一番聞きたかった声で、けれど今この場所では一番聞きたくなかった声だった。




『闇法師』……闇属性系統の能力中最強。武器に闇を纏えば空間も切れる。闇で防御すれば魔法は完全に無効化できる。闇を生み出してそこに紛れたり、視認できる範囲でなら光量が一定以上の場所に転移もできる。まさに万能。


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