14話 友達
「いや、うっす~らと嫌な予感はしてたんだけどさ……やっぱお前かよおお!」
この前戦った蜘蛛のモンスター、さすがにあの個体よりは弱い様子だが、厄介な点では変わりない。そんな奴らが大群で向かってくるという目の前の惨状に眩暈がしそうになるが、それを堪えてヨロイドウシを構える。
「よし、伊織ここは俺と協力して各個撃破していこうぜ!倒した数で報奨金が出るらしいから折半な!」
そう言いながら影山は俺の隣に並ぶと、刀を構えてその刀に真っ黒なオーラみたいなものを纏わせた。これがこいつの能力だろうか。
「俺の能力は『闇法師』!暗い場所で強化されたり、攻撃力を上昇させたりできる」
……と、疑問が顔に出ていたのか、影山は蜘蛛からは目を逸らさずに能力の内容を言う。初対面の俺に言うことじゃないと思うのだが……。
「オーケー。なら影山は、能力であの蜘蛛の動きを止めることはできるか」
「お安い御用だ。【闇鎖牢】」
影山から闇が広がり、近くの蜘蛛を大量に拘束した。……てか、どんだけ固めるんだよ。便利な能力だ。羨ましい。
「さすがにここでたくさん魔力を使うわけにはいかないから、あの拘束30秒しか持たないぞ!」
蜘蛛たちに向けて走り出した俺に向けて後ろから影山の声が聞こえる。
30秒か…仕事としては十分すぎるな。それなら俺も出し惜しみはせずに行こう。
「【鎧通し】!」
【極冠:ヨロイドウシ】の装甲貫通効果を発動させる。ただし、この能力が発動するのは敵一体につき一度のみ。つまり、この蜘蛛どもはすべて一撃で沈めなければならない。
さらに俺は二枚の呪符を取り出し、空中に投げる。その符にはもう既に最初から魔力を込めてある。
「〈解凍術式〉【部分強化:目】!、【心眼】!!」
解凍術式。
術式だけを込めた状態にしてあとから魔力を込めて使う通常の呪符とは違い、呪符自体に最初から魔力がこもった状態にしておくことで、使用時に魔力消費なしで使うことができるという便利なものだ。
まぁこれだけ聞くと最強に聞こえるのだが、残念ながらというか、当然というか、欠点も存在する。
魔力が込められた状態の呪符は、いわば破裂直前まで膨らんだの風船のようなものだ。軽い衝撃を与えるだけで簡単に暴発してしまう上、とても不安定なので呪符に流れる魔力の流れを制御できなければこれまた即座に暴発してしまう。
そのため、持っているだけでもそれなりに気を遣わなくてはならない代物なので、普段はあまり使わないのだが、今回は何かの役に立つかもしれないと思って持ってきたのが幸いした。
そして今発動した効果は動体視力の強化と、魔力の流れを見えるようにする効果。さらに自身の進退強化もすでに行っているので、これでさっさと片付ける準備ができた。
「よっ、喰らえ」
本来の身体能力じゃ絶対に出せないであろうスピードとジャンプ力で、身動きの取れない蜘蛛へ飛び掛かり、一撃で核を貫いていく。
この前の死闘が嘘みたいに簡単に倒せるな。こいつらがこの前の個体に比べて弱いことを加味しても、やはりきちんとした装備に心強い味方がいるとやりやすさが圧倒的に違うわ。
――しかし、俺はこの時油断していた。
ここまで蜘蛛を簡単に倒せているのは高速のおかげだということはわかっていた筈なのに、時間のことを一切考えていなかった。
最後の一体に飛び掛かる。
「これで、終わり……っ!?」
瞬間、蜘蛛は動き出していた。
蜘蛛の動きを阻害していた闇はあたかも元から何も存在していなかったかのようにあっさりと霧散し、蜘蛛は一番近くにいる敵、……まぁ当然のことながら、空中で無防備になっている俺に向けて攻撃を放つ。
「あ、やば、これ、死……」
だがしかし、俺が予測した蜘蛛の足で串刺しにされる未来は来なかった。なぜなら。
「あれ、こいつ……もう死んでる?」
直前にその鋭利な足を俺に向けたところで蜘蛛はすでに死んでいた。その死に方は、そう、まるで、ついこのあいだ俺が助けられた時のようだった。俺が呆然として蜘蛛の死体がモンスター特有の瘴気に変わっていく様を見ていると、後ろから聞き覚えのある声同士が言い争っているような声がした。
「この戦いの中何やってるんだあいつ等は……」
そちらを見ればやはり、水無月と影山が言い争っていた。
「で……ど!こ……は…し……ですからね!」
なに話しているかまではさすがに分からなかったが、どうやら何故か水無月が影山に怒っているようだ。……というか、水無月って影山と話すときは敬語を使っているんだな。
「さっきは助かった。水無月ありがとう」
とりあえず、言い争いを止める意味でも感謝を伝える意味でも、水無月に話しかけた。
「いいのよ、あれぐらいお安い御用だし、それに、その……と、友達を助けることは当然でしょう?」
と水無月は少しだけ頬を赤らめながら言ってきた。
「えっ」
予想外の言葉に思わず固まってしまう。
「えっ、何、その反応。もしかして勝手に友達なんて言ってしまったから迷惑だった……?」
「い、いやそんなことはないぞ、そ、そうだな友達だよな」
友達か……。考えてみれば、出会ってからそこまで経っていないけれど俺、水無月と友達と呼んでいいぐらいになれてたんだな。友達居なさ過ぎて正直分からないな……こういうところでボッチなのが悔やまれる。
そんな会話を水無月としていると、何故か影山が「こいつマジか」とでも言いたげな、信じられないモノでも見るような顔でこちらのほうを見ていた。
「なんだよ」
「い、いやなんでもないぞ」
本当にどうしたのだろうか。
周囲では戦闘音が響いている中、この場所だけは微妙な雰囲気になっていた。
死力を尽くして倒した相手がボスの取り巻きだった時の絶望感よ。……リアルのゲームだったら確実に「クソゲー!!!」って叫んでますね。笑笑
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