表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/71

21 手紙を受け取れば終了


 睨み合う私達だったが、彼はいきなりにこっと微笑んできた。

 つい目を奪われてしまったのは、その距離感かもしれない。

最後に会ったのはいつだっただろう。もう、私が亡くなった年を追い越しているんだろうか。あれからどれだけの年月が流れたのだろう。


【いけないな。思っていたよりも子供だったからびっくりして、つい喧嘩腰になっていた。ごめんね、アレナフィルさん。怖かっただろう? よく言われるんだ。私の口調はとてもきついとね。私も、毎日のように無人の家を訪れていた苛立ちを君に向けるだなんて、すべきじゃなかった】

【あ、いえ、平気です】


 どの言い回しも共通語だ。

この一気に切り替えてくるところが可愛くない。反省しているのかいないのか全然分かんなくなっちゃう。

 やっぱりこんな子供に対して害意を抱くべきではないと思い直したんだろうか。それとも愛の妖精アレナフィルちゃんから滲み出る慈愛のオーラに心打たれて悔い改めたんだろうか。

 いやいや、あの粘着質な弟が簡単に絆される筈がない。

 思えばどんなセクシー系や可愛い系の女の子達でも目もくれなかった子だ。それとも姉が亡くなったあとは宗旨替えしたとか。

 分からない。あまりにも情報が少なすぎる。


【私がこの国に到着した時、君、ここにいたよね。あの時、声をかけていればよかったのか。子供を倒れるまで働かせているだなんてひどい国だと思って、つい立ち去ってしまっていたけれど。もう、大丈夫なのかい?】


 やめてと言いたくなる。

そんなよそ行きの優しそうな声を出さないで。本当に心許した相手への優しい声との違いに思い出すから。

 私のことを心配しては早く大人になりたいと拗ねていた顔、私に抱きついては甘えていた顔と全然違う優しげな表情と声は、あまりにも私の知らないものになっていた。本気で泣きたくなる。

 手を伸ばせば抱きついてきたあの子は、いつだって私だけを見ていた。

 滲みかけた涙を隠すように視線を床へと向ければ、オーソドックスなデザインの紳士靴が映る。


【いえ、ここには私から雇ってほしいと頼んだんです。無理に働かされてなんかいません】

【そうなのかい? だけどそれなら私の所で通訳のバイトをしないか? 私の尋ね人は君だったわけで、君は通訳もこなせる。私はこの国に不慣れだし、案内とかもしてほしいな。今、学校は長期休みなんだろう? ここよりは高い給料を約束しよう。倒れるまで仕事をさせたりなんかしないよ】


 うん、罠だ。一気に目が覚めた。

 泣きたい程に沈みきった気分も一気に要警戒で急浮上だ。

 倒れたのはお前が原因だっちゅーの。自分がやっていたことを思い出せ。いい人そうなことを言っても私は騙されない。

 なんで危険な罠の中に自分から入り込まなきゃならんのだ。


【あの、いえ、私、お金に困ってバイトしているんじゃなくて・・・。税関ならしっかりしているから親も安心していられるからここで働いているだけで、・・・それに、親の許可を得ていない男の人と二人きりとか、そういうの、禁止されてるんです】


 まさかあの頃もこうやって私の周囲の人を一度自分の所に取りこんで始末していたんじゃなかろうなと、そっちが案じられて仕方がない。

いきなりの引っ越しは一体何があったのか。そして私を見るなり姿を消すようになっていたのは何が原因だったのか。

 まさかこれだけ時間が経ってからそれを私の体で知ってこいという皮肉な話じゃないと信じたい。

 私が誰よりも可愛がっていたかつての弟は、アレンルードの独占欲さえ可愛いものだと言える程にどこまでもおかしかった。うん、いくら可愛くてもこいつと縁を再び結んではならない。私の人生が破壊されてしまう。

 それ以前に今そのまんま生命の危機だけど。

 そこで空気を読まなくてもいいのに読みすぎる通訳の人は、でっぷりしたお腹を揺らして割りこんできた。


【もしかして、私に気兼ね、していますか? 私は、クラセンさんの所に案内する通訳で、雇われました。もうこれで終了です。それでは、明日からは無しということで、いいですね?】

【ありがとう。結局、回りまわってここに戻ってきてしまったが、あなたはとてもいい通訳だった】


 明日から仕事は無しなら今日は最後まで仕事をすべきだろう、そこの通訳。

 だから嫌なの、サルートス国の緩さって。お前もファレンディア人ならちゃんと契約違反を指摘しろ、かつての弟よ。


【次回も、よければご指名を。 

「クラセンさんという人はすぐ戻ってくるんだろう? なら心配いらないね。後は任せたよ、アレナフィルさん」

では、私はここで。さようなら】

【さようなら。次も指名させていただきましょう】

「いえ、この人、そのまま連れてってください」


 逃がしてはいけない。この通訳は私の命綱だ。第三者がいればまだリスクは減るが、二人きりになったら何が行われるかが分からなすぎる。

 こんな危険人物の前に可愛い女の子を置き去りにしないで。ちゃんと回収して。

 それなのに未成年が必死に引き留めようとする表情を読み間違えるこの通訳は駄目すぎた。


「大丈夫。心配しなくてもその人はきちんとした紳士だよ、アレナフィルさん。いや、私もね。クラセンさんとあなたを探してずっと家に帰れなくてね。本来は三日程度で終わる仕事だったんですよ。長く雇わせて申し訳ないやら何やらでね。サルートス上等学校からも彼と私の身元確認が行われるまであなたの情報はもらえなかったからね」


 無人の家を訪ね続ける外国人と通訳の姿に、近所の人が同情してバーレンの職場を教えてあげたらしい。だけどサルートス習得専門学校は休暇中。

 それでも守衛に事情を説明してみたそうだ。わざわざ遠い国から訪れたのだからと校内にいた講師を通じて学部長に連絡を取れば、その証拠の手紙にあったアレナフィルは今現在サンリラで滞在中なのが税関事務所を通じて上等学校まで身元確認された後だったという事実。

 良くも悪くも私は習得専門学校でも上等学校でも第二王子エインレイド関係者ということで、学校関係者は皆がその名前を知っていた。動向も把握されていた。

 それゆえに念入りにも違う通訳を通じて、身元確認がファレンディア国まで行われたらしい。この通訳の人も本当に通訳なのかが通訳派遣事務所まで問い合わされたとか。


「す、すみません」


 普通はそこまで日数がかかるものじゃないんですけどねと、首を傾げている通訳は知らない。恐らく王子関係者ということで王城が動いたからこそ、身元確認に日数がかかったことを。

 言えない。言える筈がない。

 それはともかくとして、私を捜している間、通訳料金だけじゃなく全てのホテル代と食事代とお茶代は彼が負担していたわけで、今日の営業時間内に自分を雇っている通訳派遣事務所に行って少しでも差し引いてあげないと気の毒すぎると、通訳には通訳なりの事情があったらしい。


(そんなの明日でも処理できるんじゃないかと思う私がおかしいのだろうか。だが、そういうものだと言われてしまえば何も言えない。だって私は通訳派遣事務所で雇われたことがない)


 少しでも通訳代金を割り引いてあげるよう事務所に掛け合わなくちゃいけないからと、変なところで親切な通訳の人は立ち去ってしまった。

 だけどひどくない? 通訳ならこの人を宿泊しているホテルに送っていくまでが仕事じゃない? この国に不案内な人をここで放置していく? 


(ああっ、こんな危ない子を置いてかないでぇっ)


 思えばあれから十日以上経っていたかもしれない。

 改めて考えればたしかにひどいことをされてしまったのかもしれない。

 二人はずっと無人のクラセン家を訪ねていたのか。そしてやっと近所の人に聞いてサルートス習得専門学校まで行って、・・・身分を証明して、事情を説明して、それでやっとバーレンの居場所を聞いてここに戻ってきたと。

 うん、嫌気がさした気持ちはよく分かる。


【その年でファレンディア語を話せるのは凄いね。アレナフィルさんか。アレルさんでいいのかな?】

【あ、はい。えっと、私の方は・・・】

【ああ、私はロッキーと呼んでくれればいい】


 そういう子だよねっ。

 私は、今すぐ目の前の男をゴミ箱に捨てたくなった。

 どうしてこの子は私よりもこんなに背が高くなってるの。ほっぺた掴んでねじねじしたい。どうして私はここで説教できないの。

 ああ、言いたい。心の底から言いたい。

 なんでお前が私のニックネームを名乗るんだよっ。おかしいだろっ。

 いいや、落ち着くのだ、私。この子がおかしいのはいつものことだった。矯正不可能な生き物だから仕方ないんだよ。

私は目の前にいるかつての弟をもう一度見てから深呼吸する。自分はできる女だから諦めを知っているのだと己に言い聞かせる。


【ロッキーさんですか。フルネームをお聞きしても?】

【ああ。トール・トドロキ。トールが名前で、トドロキが姓だ。この国の名前に比べたら短くてびっくりだろう? そうそう、君のフルネームを聞いても?】


 いきなりぶっこんできやがった。人畜無害そうな顔でにこにこしながら何なの、こいつ。


(いつからトオルっつー名前になったんだよっ。この大たわけっ)


 外国に来てまで偽名を名乗る不審人物。なんかもうそれだけで最悪の展開が分かる。ここで彼が私を殺しても、手配されるのは(とおる)(とどろき)という架空の人物だ。

 皮肉が効きすぎてて笑えない。それともその名にさえ意味を持たせているというのだろうか。

 こんな奴にフルネームを名乗るなんて冗談じゃない。

 だが、私は嘘の名前を告げるわけにいかなかった。既に私はこの辺りでちょくちょくとバイトをしている。ファレンディア関係の人は私のフルネームを知っているのだ。ましてや彼はバーレンから私にまで辿り着いている。もしかしたらそれなりに私の情報を集めたかもしれない。


【ウェスギニー・インドウェイ・アレナフィルです。ウェスギニー・インドウェイが姓、アレナフィルが名前です】

【可愛いお名前だ。では、ここの仕事が終わるのはいつかな? 未婚のお嬢さんに訳の分からない外国人が近づいたとあってはお父上も心配されるだろう。ぜひ、ご挨拶させていただきたい】

【えっと、父は仕事で留守です。今、保護者は父の友人であるクラセン先生なんです】


 まともな社会人らしいことを言っているが、子供の時点でまともじゃなかった奴が大人になってまともになるものなのか。

 私は怪しまずにはいられなかった。

 父を暗殺されてはたまらない。アレナフィルの父親であるウェスギニー子爵を調べたら、ウェスギニー子爵邸ぐらいすぐに出てくる。何があろうと接触されないように動かなくては。

 

【そう熱く見つめられると、おじさんもドキドキしてしまうよ。ボーイフレンドはいるのかな、アレルさん?】

【はい、仲いい男の子が四人います。同じ学年だから試験前の勉強も一緒にやりますし、遊びに行く時も一緒です。今は長期休暇で会えませんけど、会ったら色々と話したいことが沢山なんです。ロッキーおじさんも、学生時代ってガールフレンドいました?】


 少なくともこれでクラブメンバーに危険は無い筈だ。少なくとも現在、私と会ってない少年達に彼の情報は流れていないのだから。

 最後の質問は、せめて知りたかったからだけど。

 少しは少年らしい時間を過ごせたのだと私は思いたかったのかもしれない。


【そうだねぇ。私はどちらかというとガールフレンドは年上が好みだったかな】


 うん、期待した私が間違ってたね。

 どう判断するべきなんだろう。この会話を突き進んではいけない気がしてならない。いや、まさか外国人の少女に対して変なことは言わないだろう。そう信じたい。


【そうなんですか? あまりにも年齢差がありすぎるのって、ちょっと何か心にコンプレックスみたいなのがあるんじゃないかなって思っちゃいますけど。実はぁ、ちょっと粘着質っぽいところがあったりしません?】

【・・・そう思うんだ?】


 低く問い返してくる声に、虎の尾を踏んだってことは分かっていた。

 だけどバーレンを守る為には仕方がない。だって私はこの子が何をやってみんなを遠ざけていたのか知らないのだ。

 まずは挑発して攻撃する相手を私に絞らせるべきだろう。うちの家族もバーレンもクラブメンバーも巻きこめない。

 そう思っていた私の頬に、すっと彼の手が伸ばされる。

 その手つきに、心のどこかが痛んだ。私の中にいた少年は、こんなにも成長してしまった。


【だけどアレルさん。聞いたらいつもそのクラセンさんと一緒なんだろう? 自分こそ年上の男性とつるんでるなんて、何か心に鬱屈したものがあるのかな?】


 そう来たか。なんというブーメランだ。

 いやいや、私はバーレンにブラコンをこじらせているわけじゃない。私達は利益供与で結ばれたパートナーだ。そして未成年が親の保護下にいない以上、保護者になりうる大人の保護下にいるのは当然だ。


【未成年は大人の監視下で保護されていなくてはならないのです】


 私は世界の真理を告げるがごとく、重々しくその常識を教えてあげた。

 

【ふぅん。オレンジがかった黄色い髪に、濃い緑の瞳か。アレルさんは、まるで私の色を濃くしたかのようだね】

【大丈夫です。性格はとっても薄いですから】

【そうなんだ? 十分、濃さはありそうだけど】


 うふふ、あははと微笑み合う私達は、肝心なやり取りを避けながら、軽くペシペシと言葉のパンチを繰り出している。

 だけどこのままではバーレンが戻ってきてしまう。先にこの危険人物をどこかへ連れていき、バーレンと会わせないようにしなくては。

 

【ロッキーさん、どちらに宿泊されてるんですか? 何でしたら先に送っていって、改めてクラセン先生とご挨拶に行きますけど】

【それなんだけど、夕食を一緒にどうかな? 実は一人で食べる食事が辛くてね。何よりこの国の料理って内臓料理ばかりだろう? せめて同席者がいないと皿が片付かない。君はまだ話が通じそうだ。できれば魚料理を頼んでもらえないか?】


 内臓料理ってそんなに出てきたっけ? うちではそこまで出てこなかった気がするけど。

 それとも私が知らないだけでサルートス名物なの? 実は地元の人の方が名物料理を知らないってよくある話だよね。

 それに魚料理なんてどこでも頼めばあると思う。


【何の為に、通訳を雇ってたんですか? あっさりした料理を頼んでもらえばよかったでしょう?】

【彼のサルートスに来たらコレというお勧め料理が、濃い味付けの内臓や肉料理ばかりだったんだよ。この国の人は毎食、お肉を食べるものだとか言われたが、道理ではちきれんばかりの肉体をしているわけだね】


 ぼやく彼は、男性としては細身な方だ。ウェストなんて、一定数の女性が羨むサイズである。

 そして帰ってしまった通訳の男性は、まさにぼよよんとしたリンゴのような体形だった。


(三食お肉って、ルードじゃあるまいし。そんな極端なお肉生活してる人、あの通訳さんぐらいじゃないの?)


 だけど私は知っていた。この子はくどい味付けのものが苦手なのだと。

 あれから何日経っただろう。その間、彼はこっそり栄養剤でしのいでいたのではないだろうか。同席者の食べる量をチェックしていない無神経な人って実は多い。

 あの通訳は費用を割り引きしてもらえるようにといなくなっちゃったけど、外国に雇用者をそのまま置き去りにしていくぐらいに気が利かない人だった。自分が満腹になったら同席していた雇用者も満腹だろうと思い込んでいたかもしれない。


【仕方ありません。サルートス・ファレンディア語の対比本、買ってあげます。それがあればどこのお店でもお魚と野菜料理食べられます】


 旅行者が使うと便利な、二ヶ国対比本。一般的なメニューも解説付きで載っていたし、どういうものが食べたいといったフレーズもあった筈だ。

 あれは普通に市販していい本だから、倉庫にもあったと思う。社員割引きで一冊譲ってもらおう。

 そして魚料理を食べ終わるまで私が殺されることはないようだ。




― ☆ ― ★ ― ◇ ― ★ ― ☆ ―




 決して私が無能だったわけではない。私ができない子だったわけではないのだ。

 そう、仕方がなかった。だって社会人の常識としてまずは保護者に挨拶するものだからと、かつての弟がどこまでも譲らなかったのだから。

 何より妻帯者の男が友人の娘と二人きりでよその街に滞在とか言われたら、普通は不倫じゃないかと疑うものだそうだ。純真な子供を食い物にしているのではないかと、まともな大人ならまずは子供を保護するそうだ。

言われてみればそうだった。

だけどな、・・・お前が言うかっ?

思えばあまりにも悲しい程に私の意見が通らない一幕だった。


【とりあえずお魚料理が美味しいお店に連れて行こうと思うので、レン兄様は先に帰っててください】

【ちょっと待ってくれ。フィルちゃんを連れて帰らなかったらどうして帰宅しないんだと責められるのは俺なんだぞ】

【やはり親御さんも一緒なのでしょうか。是非ご挨拶させていただきたい。私とていきなり外国人の成人男性が未成年の女の子に会いに来たら親が心配することは当然だと考えます。それともやはり二人きりの旅行には理由があるのでしょうか】


 外国人から、お前はまさか未成年の女の子に手を出しているんじゃないだろうなといった目で見られたバーレン。

 彼は教育に携わる人間としての己のプライドを優先しやがった。


【言われてみればフィルちゃん、これは彼に疑われても仕方がない状況だぞ。まさに俺の名誉の為、この誤解を解く必要がある】

【ちょっと待って。私がいれば十分でしょう、ロッキーさん。クラセン先生は関係ありません】

【いいかい、アレルさん。子供は保護されてなくてはならないが、保護者がそれに値する人間であることは更に重要だ。何が十分か十分でないかは君が考えることではない】

【妥当な意見だ。俺とて子供に手を出すような人間で講師をしていると思われたくはない】


 そんな感じでバーレンを守ろうとしても、バーレンがそれを良しとしなかった。

せめて三人で食べに行くのが最低限の譲歩で、できることなら他の軍人達を巻きこめと言外に伝えてくる。

バーレンにはかつての弟のヤバさを伝えていたが、会ってみれば世間一般常識的にまともな主張をしてくるものだからバーレンも彼の意見をそれなりに尊重するときた。

何かが間違ってる。

そう、この場で全ての決定権は私にあるべきだ。それなのに一番権限がない。


【だからってあのお兄様達を料理店に呼んだらお肉祭り。もうロッキーさん、お肉に飽き飽きしてるのに】

【あー、そんならうちで食べればいいだろ。何ならディナーボックス買っていけばいい】

【アレルさんはお兄さんがいるのですね。だから妻帯者との旅行が許されたのですか?】

【言い方がとてもいかがわしく聞こえる。なんてことだ】

【ああ、もうっ。それなら私が作るよ】


 子供なので定時で帰ることのできる私だけど、今日はファレンディア人のお客がいたということで早退が認められてしまった。税関事務所とはとても働く人に優しい職場である。私以外の人に対してはどうだか分からないが、少なくとも子供には優しい。

 そしてあまりにも言い争ってたらボロが出そうで、私ももう諦めるしかなかった。ここはもうダメダメ寮監達でも軍人なんだし、自分の身は自分で守れると信じるしかない。

 それにあれから栄養剤ですませていたかもしれないとなると、ちゃんとまともなご飯を食べさせてあげたかった。

 

【いつもお買い物しておうちでご飯を作っているのです。お魚料理メインにしてあげます。いいですか、ロッキーさん。食べられないものは食べなくていいんですからね】

【料理って君が作るの?】

【そうですよ。マーケットで食べたいお魚と野菜、選んでいいですよ】


 なんか好青年を演じているかつての弟が、無理して食べられないものを食べて吐いてからでは遅い。無理して脂身たっぷりなお肉を食べないようにと私は言い聞かせた。

 もう面倒だからバイト先で二ヶ国語対比本を八冊程買う。あの寮監達にはそれを渡そう。

買い物しながら今夜の献立を考えることにして、マーケットの中にあるジューススタンドにまず寄った。


「レン兄様は好きなの選んで。・・・えっと、お兄さん。そこのレモンを丸ごと絞って二つのカップに分けてください。お水はここまでで。シロップはお気に入りの蜂蜜持ってきてるの」

「はいよ」


 このサンリラは気温がそれなりに高い。私は作ってもらったレモンウォーターに持ち運びしている蜂蜜と塩を入れる。

 私はバイト先でも水分補給を忘れない、とてもできた少女だ。ビタミンCや塩分の大切さだって忘れない、とても素敵な女の子だ。


【思ったよりも汗をかいてると思うから飲んでください。入れたのはアカシア蜂蜜と塩です】

【そんなのを持ち歩いてるの?】

【気づいてないのかもしれませんが、あまり顔がよくないです。まずは飲む。()っぱかったらもっと蜂蜜あげます】


 同じものを私が飲むならこの子も飲むだろう。バーレンはアイスコーヒーを頼んでいた。

 

「レン兄様、蜂蜜入れる? お塩もあるよ」

「ん? じゃあちょっぴり入れてくれ。当然だが塩はいらん」


 スタンド前にあるベンチに並んで座り、一気飲みした私だが、かつての弟の顔がおかしいのが気にかかる。


【ロッキーさん。顔が変です。疲れてるなら座ってていいですよ。寂しくないように、クラセン先生を置いていってあげます】


 思えば寂しがり屋な子だった。外国に一人ぼっちで心細くなってしまったのかもしれない。

 何かあると私の腰に両腕を回してくっつき、じっと耐えてる子だった。


【面と向かって顔が変とか言われたのは初めてだ】

【普通は言わないな。フィルちゃんの無神経はいつものことだがちょっとひどくないか?】

【だけど愛想笑いもできてないし、表情が止まってるの。ロッキーさん、外国に来て疲れてるんです。お野菜とお魚買ってくるだけだから大人しく座ってなさい。クラセン先生はあなたより体力ないから置いてけぼりにできないし、あなたがいないと作ったご飯が余っちゃいますからね。慌てずゆっくり飲むんですよ】


 私は立ち上がってよしよしと頭を撫でると、早速野菜コーナーに行くことにした。あの子は倒れる寸前まで無理することがある。だから強引にも休ませなきゃいけないのだ。

 野菜売り場では束になったヤングコーンが安く売られていた。ここは抱えるぐらい買ってもいいだろう。葉のついた人参も美味しそうだ。

 お肉がないと暴れ出しそうな面々を思い浮かべてカートにどんどんと入れていくと、ふと気づいたら後ろに二人が来ていた。


【別に体調は悪くないよ。買い物は僕が持とう。ところでどれだけ君は食べるの?】

「あのな、フィルちゃん。愛想笑いができてないから体調不良ってひどい言いがかりだぞ」

【まあ、買い物はこれで終了だからいいとしましょう。これはほかの人の分もあるんです。さあ、帰りますよ】


 食費ぐらいは払うと言われたけれど、かつての弟が食べる分など無いも同然だ。三人で買い物袋を手分けして持つと、アパートメントでは客を連れて帰ったというのでまずは尋問にかけられそうになった。

 なんということでしょう。302号室にはもうみんなが揃っていたという、家主を無視した暴挙があったのです。


「えーっと、説明はお料理しながらっ。さ、そこどいてください。ほらほら、みんなご飯ができるまでのんびりドラマ見ていていいですよ」

【ロッキーさん。今からフィルちゃんがご飯を作りますから、ここからは私が通訳をしましょう】

【はい。・・・つまりファレンディア語を話せるのは二人だけなんですね?】

【そうなりますね】


 とりあえず二ヶ国語対比本をどどんっとテーブルの上に出して、それぞれに分けるように言ってから私は人参のすりおろしに取り掛かった。

 口を動かしながらも手を動かす。私は偉い。


「えーっと、アレルちゃんの亡くなったお母さんがお友達になったファレンディア人の弟さん、ですか」

「はい。母のお友達だったファレンディアの女性に、いつかお会いして母のことを聞かせてくださいと、お手紙を書いたところ、弟さんがちょうどサルートスに来る用事があったそうなんです。それでお手紙を配達しがてら、打ち合わせをと・・・」


 事情を聞き出してこようとするドルトリ中尉は、何かと私に男女交際を勧めるくせに、いざ私が男の人を連れて帰ってきたら、何故「説明してもらおうか」モードに入るのか。

 柔らかな水色(ベビーブルー)の髪に、紺色の瞳をしているドルトリ中尉は、私に対して何を考えているのか今一つよく分からない。

 

「お名前は、トドロキさんだそうです。ロッキーと呼んでほしいそうです」

「呼ぶのはいいんすけどねえ、アレナフィルお嬢さん。そもそも言葉が通じるのがクラセンさんだけじゃどうしようもなくないですか?」

「だからその為に、質問内容の言葉を指させば何を聞いているかが分かる対比本があるわけじゃないですか」


 オーバリ中尉は横着で困る。テーブルの上にあるそれをまず見よ。

 (とおる)(とどろき)と名乗った時点で、バーレンはその偽名に気づいた筈だが、顔に出すことなく、笑顔で話していた。


【さすがに可愛い妹が初めてのボーイフレンドを連れてきたら尋問に入っちゃったようでしてね。ま、その内に落ち着きますよ】

【沢山の兄がいるんですね。誰もが全然似ていませんが】

【親戚筋の兄代わりですからね】


 私だって弟をポイって放り出してから逃げたいのは山々だけど、きちんと食べてなかったと思えば心配になる。

 そして私が父の友人に当たる妻帯者と不倫関係にあるのではないかという濡れ衣もまっぴらだった。そんなふしだらな女の子では、ファレンディア国に行ってもあの家に入らせてもらえない。

 私は他にも保護者がいるアパートメントに連れてきて、彼に対して「私とクラセン先生は、別に年の離れた妻帯者との道ならぬほにゃららなんかではありませんよっ」と、証明しがてら料理を作る羽目になった。

 まさかもう皆が来ているとは思わなかったから、食前酒でも出しておこう。


「とりあえず食事ができるまでこれを飲んでてください。スティック野菜でも齧りながら。

【食事ができるまでこれでもどうぞ。トマトを中心にした野菜ジュースです】

 スティック野菜は好きなソースを勝手につけてくださいね」


 他の人には小さなショットグラスに冷えた酒を入れて出したからちょっと爽やかに始められるだろう。氷を散らばせたガラス皿の中に小さなショットグラス。とても涼し気でいい感じ。

 かつての弟には生姜の絞り汁を僅かに加えたトマトベースな野菜ジュースを、カクテルっぽくお酒用グラスに注いで出しておいた。


(内臓料理なんて、一口で吐き出してしまうような子だったのに。内臓料理は臭み消しで味付け濃いから)


 おかげでもう私の腕はフルスロットル、幾つもの料理を並行しながら作るしかない。こういう時こそオーブンにお任せ料理の出番だ。

 ヤングコーンはオーブンで皮ごと焼けば、各自で皮を剥いてもらって塩だけで食べられる。


「はい、ヤングコーンのオーブン焼き。そのまま皮剥いて食べてくださいね。あ、私のはお皿に三つ置いといてください。人参のグラッセは少し冷えてからの方が美味しいかも」

「アレナフィルちゃん。剥いた皮はたべられないよね?」

「はい、リオンお兄さん。ひげは食べられるけど、皮は剥いてお皿の脇に置いておいてください。邪魔だったらゴミ箱へポン」

「分かったよ。じゃあアレナフィルちゃんのも皮だけ剥いておこうか?」

「リオンお兄さん、とても素敵な人だなって以前から知ってました」


 人参をグリルしてグラッセにしたものは、スパイスを散らしておいた。熱々な状態よりも冷えた方が美味しいと思う。


「はい、どうぞ。あーん」

「わーい」


 ネトシル少尉はいい人だ。皮を剥いたヤングコーンを持ってきて食べさせてくれた。

 やっぱり一人だけお預けより、立ち食いでもおなかに入ってくるものがあると元気が出てくる。私は揚げ物用のオイルを用意した。


「今日は野菜料理が多いな」

「大丈夫です。豚肉のフライにワインビネガーソースを絡めたのなんて、じゅわーでこってりだし、挽き肉入り包みを揚げたのだって熱々でフォークが止まらないですよ。だけど今日はどんなお酒が合うかなぁ。うーん。多分、辛口の澄んだお酒が合うと思うんですよね。フォ・・・、ガルディお兄様、物足りなかったら追加で作るから言ってください」

「いや。客人に合わせたメニューなんだろう? いい子だな」

「えへ、ありがとうございます。なんか濃い味付け苦手なのに、お肉と内臓料理ばかりで吐きそうな感じだったらしいんです」


 珍しくフォリ中尉が褒めてきたので、私も遠慮なく褒められておく。


「何か手伝えることはあるかい、アレナフィルちゃん」

「それならリオンお兄さん、冷蔵庫にあるの、カットしてもらっていいですか?」


 焼いた茄子(なす)と汁気を少しとったトマトと炙った青魚を層にしておいたマリネ仕立ては、野菜の割合が多いから食べやすい筈だ。本当は酒の肴で作ってあったものだけど、おかずにしても悪くない。冷蔵庫で食べられるのを待っていたマリネはいい感じに味がしみこんでいた。

 

「それなら俺が切ろう」

「ありがとうございます、レオカディオお兄様」


 ネトシル少尉が盛り付けに自信なさげだったのを見てとったのか、ドネリア少尉が冷蔵庫から取り出してカットしてくれた。

 大きな四角い皿にカットしたものを盛り付けてくれたけど、こういう時に人それぞれのセンスが出る。私なら個別で小皿にカットしたものを入れただろうけど、ああやって盛り付けられるとおしゃれっぽいよね。

 ネトシル少尉は軽くパンをトーストしてくれていた。


「エビのスパイススープは辛そうであんまり辛くないけど、スパイスがあるから食欲出るんです。冷たいものばかりだと胃腸を冷やしますらね。

【ロッキーさん。先にスープ飲んだ方がいいですよ。スパイス仕立てで辛そうだけどそこまで辛くないです】 

あ、エビはまだお代わりできます。手が汚れたらこれで拭いてください」

 

 このスープは、香辛料が食欲を増進させるのだ。元気がない胃腸でも、食べようって気になる。

 皆にエビで汚れた手を拭く為の濡らしたミニタオルを配って席に着くと、皆も既に始めていたこともあり、わいわいがやがやと話し始める。

 揚げ物をどっちゃり作っておいてよかった。みんな野菜よりお肉な人だけに消費が激しい。


【ワイン蒸しした貝のズッキーニソースは、パンにつけて食べてください。フライや揚げたものはお肉だから食べられなかったらお魚料理食べるといいですよ】

【たしかに肉は一生分食べた後だけど。ピーマンのグリル焼き、中に何か入ってる?】

【よく太ってるからピーマンに見えるけど、青唐辛子なんですよ。だけどあまり辛くない青唐辛子です。チーズが入ってるから火傷しないように気をつけて】

【そうなんだ。・・・ん、たしかに熱々だ】


 あまり辛くない青唐辛子にチーズを詰めてグリル焼きしたものは酒の肴だけど、お肉よりは食べやすいだろう。そう思ったのは間違ってなかったようだ。かつての弟は気に入ったようで食べていたけれど、軍人組は中に入っているチーズをソース代わりに豚肉のフライをどんどん食べている。

 ワイン蒸しした貝にズッキーニのソースを合わせたものは、これだけでパンが消費できてしまうと思ったのだが、ちびりちびりパンを食べているのはバーレンとかつての弟と私だけだった。

 

「で、ロッキーさん。お仕事は何を? この国にはどんな用事で来たんっすか? お姉さんの手紙の配達だけじゃないですよね?」

【彼は、仕事のついでに姉の手紙を届けるなんて、なんて親切な人だろうと感心している。お仕事は何をしているのかと、尋ねた】

【私は、体の補助を行う物を作る仕事をしています。例えば体の機能を一部失った人に義肢を作ったり、車いすでは目の位置が低くなるので動かない足を動いているかのように見せかけて移動できる道具とか、そういうものですね。義眼も作ります。サルートス国からそれを輸入したいという問い合わせを受けて、こちらではどれぐらいの設備があるのかを見に来ました】

「ロッキーさんは、義肢や義足、義眼など、更に生活の手助けをする機能を持たせたものを作っているそうだ。サルートス国で取引をもちかけてきた会社の設備を見に来たらしい」


 バーレンが通訳してくれているのがありがたい。

 かつての弟は私がまさかこれだけの男の人達に囲まれているとは思わなかったらしく驚いていたが、バーレンもいい加減な男だった。

【どれも親戚筋の男ばかりで、フィルちゃんは皆を兄だと思って育っている。だから父親も安心して仕事に行っている】

と、説明して、軍人組には、

「保護者である父親に挨拶するのは当然だと主張するので連れてきたが、お宅らはみんなフィルちゃんの兄代わりで、同じ一族繋がりということにしておいてくれ」

と、それで終わらせた。

 どんだけ女の子が生まれない一族なんだよ。

 おかげで間違った認識が発生中だ。


【サルートス国では一族の繋がりがとても深いのですね。そしてこれだけの数の保護者がついていても、バイトをさせるとは、なかなかたくましい教育方針です。しかも皆さん、その体格で教育者とは、この国は文武両道を実践しているようだ】


 バーレンの通訳がいい加減すぎたこともあったが、軍人と言うよりも学校で先生をしていると言った方があまり警戒されずにすむだろうという思惑で、彼らの職業は学校の先生として紹介されている。

 どんだけ教職に就く一族なんだよ。

かつての弟に彼らの情報を渡さないという意味では賢いのかもしれないけど。

 いつの間にか酒を飲むことを覚えていたらしい弟は、食事を終えた後はネトシル少尉に誘われて、同じカクテルを飲み始めた。

 

【ロッキーさん。あまり胃腸、丈夫じゃないなら、お酒は控えた方がいいと、思います】

【毎日の内臓料理が苦手なだけで、別に胃腸は弱くないよ。肝臓も強いんだ。だけど心配してくれてありがとう、アレルさん】


 嘘だ。

 彼はずっと嘘をついている。

 名前も嘘、仕事も嘘、体質だって嘘ばかり。


【そうそう。姉からの手紙を渡さなきゃいけなかったんだ。アレルさん、連絡をくれたら港まで迎えに行くから安心して来るといい。姉も、友人の娘さんに会えるのを楽しみにしている】

【ありがとうございます、ロッキーさん】


 皆の前で手紙を開けば、知らない筆跡で書かれていたファレンディア語の手紙。



『 アレナフィルさんへ

  お手紙をありがとう。リンデリーナさんのお嬢さんに会える日がくるだなんて、とても嬉しいわ。

  ぜひ、いらしてくださいね。その時は迎えに行きますから、どこかに泊まるだなんて寂しいことを言わないでちょうだい。

  あなたのお母様との思い出を語り合う日がくるのを、指折り数えて待っています。 愛華(あいか)(とどろき) 』



 リンデリーナはファレンディア国へ行ったことなどない。

 誰もが噓つきなのだ。

 そしてこの私も・・・。




― ☆ ― ★ ― ◇ ― ★ ― ☆ ―




 (とおる)(とどろき)と名乗ったかつての弟は、それなりの高級ホテルに宿泊していた。

 バーレンとオーバリ中尉、そしてネトシル少尉がホテルまで送っていったが、私は女の子なので夜に出歩くものじゃないからと、行かなかった。

 ホテルで背を向ける自信なんてなかったから、このまま部屋で見送る方がいい。


【ファレンディアでまた会いましょう、アレルさん】

【はい。まずはお金を貯めて、いつか行ってみたいです。その時にはお世話になります】


 こっそりとネトシル少尉には、彼には油断しないように、そして出されたものを口にしないようにと言っておいたが、彼は小さく頷いたかと思うと、何事もなかったかのように出て行った。

 さすがは用務員姿で王子の護衛をしているだけはある。要注意人物の前で、不審に思われる動きをしないのだ。

 バーレンとネトシル少尉が気をつけているなら、オーバリ中尉がポカしてもどうにかなるだろう。

 私はそう思った。

 手紙を渡した以上、彼はもう私と会う理由などない。

 

(行かない方がいい。だって私は死んでいる。それなのに愛華がまだ生きているような小細工をして、私を(おび)き寄せてどうしようというの)


 どうしてあの手紙がかつての父ではなく弟の手に渡ったのか。

 尋ねたくても尋ねられず、今となっては知らない顔を見せる弟に、私は戸惑っていた。

 何を考えているのかが分からない。私を疑っているならば警告すればいいだけなのにそれもなかった。

 ファレンディア国でなら私を処理しやすいと考えたから? だけど現地で行方不明になる方が国際間の問題も発生するだろう。行き先が分かっているのだから。


「アレナフィル嬢。元気がないな。あのファレンディア人がそんなに気になるか? 会話は適当に切り上げるくせに、ずっと見ていた。それこそアレナフィル嬢の好みとは真逆の体つきだが、そこが良かったのか?」

「そんなんじゃないですよ、フォリ先生。あの人、昔知っていた人によく似てるんです」


 リビングルームでクッションを抱えていたら、隣に座ったフォリ中尉が頭を撫でてくる。

 父が恋しい。こんな時、傍にいてほしい。

 それでも一人じゃないことにほっとして、誰でもいいから甘えたくなった。


「どんな人だったんだ? 他人を見て思い出す程、懐かしい人なんだろう? 今夜の料理は穏やかな味付けだったが、その人が好きな料理だったのか?」


 ああ、やっぱり薄味すぎたんだ。だからソースや調味料は出しておいたんだけど、そりゃ味付けの時点でちょうどいい味にしておいてほしかったよね。ごめんなさい。

 だけど今日だけはあの子の味覚に合わせてあげたかった。わざわざ海を越えてやってきたあの子に。

 あの子の好きな料理、・・・・・・思えばあの子は何が好きだったんだろう。


「好き嫌いを私に告げてくれたことはなかった気がします。何を作っても美味しいって言ってくれたから。だから私は気づかなかった」

「・・・何に?」

「好き嫌いを口にできなくなる程に、私に依存していたことを」


 一口食べて、美味しいと喜ぶ顔は知っている。だっていつものことだったから。

 だけどあの子の好物を私はリクエストされたことがなかったと、今になって気づいた。

 いつでも笑顔で、あの子は私と美味しいねと言い合っていた。たとえ味付けや焼き加減に失敗しても、次はどうしよう、こうしようって言いながら美味しいお店に買いに行けばいいよねって感じの着地点ですませては一緒に出かけた。

 たとえ私の周囲にある人間関係を破壊する困ったちゃんでも、あの子と私の間に流れる時間はいつだって笑顔で埋め尽くされていた。

 優しい思い出はあまりにも遠い。

 抱きしめてあげたくても、今の私にそれはできなかった。


「それは、・・・俺にはよく分からんが、それだけそいつがアレナフィル嬢を好きだったってことじゃないのか? 男なんて単純だ。大好きな相手が自分の為に持ってきてくれたなら、市販のミルクをコップに入れて運んできてくれただけでも最高なんだよ。それを依存だなんて言ってやるな。そいつの大好きな気持ちが迷子になるだろう」


 そうかもしれない。あの子は私のことが本気で好きだった。

 私の姿を見つけた途端に笑顔になるあの子を、私も愛していた。

 あの子なら私が作った物全てが好物だと断言するだろう。そういう子だ。


「ひどい。私よりフォリ先生の方が分かってる」


 依存ではなく大好きなだけだった。それなら救われるけど、本当に今もそうだろうか。

亡くなった人は日々に疎くなり、今はもう思い出しもしないのかもしれない。

 それとも覚え続けていたからこそ海を越えてやってきたのか。

 結局、私に何もせず去ったあの子は何を考えていたんだろう。土壇場でやはりこんな子供に大人げない真似をするべきじゃないと取りやめただけ? それとも居場所を突き止めた以上、改めて仕切り直すの?


(別に殺されたいわけじゃない。だけど何を考えているのかが分からない。自分の名前を隠している時点で、やっぱり物騒なことしか思いつかないのに、どうしてあの子は何もせず帰ったんだろう)


 あの子が何をやらかすにしても、私が盾になればいいと思っていた。だけどあの子は特に愛想笑いもせず、仕掛ける為の工作もせず、ただ普通に食事をしていった。

もしかしたら保護者達があまりにも筋骨隆々タイプだったから今日のところは私への攻撃をやめただけかもしれない。延期しただけで諦めてないのかもしれない。

いや、手紙なんてものを渡した時点で疑われる手がかりを残している。それならもう殺す気はないのかもしれないけど、本当にそうだろうか。

 分からない気持ちがぐるぐると渦巻く。

 あの子はどうして私のニックネームを名乗ったんだろう。もう亡くなって十年も過ぎた存在など、忘れてくれてよかったのに。




― ◇ – ★ – ◇ ―




 落ち込みはしたけれど、あれから彼は現れなかった。


(まさかあの手紙を手渡す為だけに海越えてきたの? ないよね、ないない。だけどノーリアクションっておかしくない?)


 ネトシル少尉には、改めてあの時どうして何も口にするなと言ったのかを尋ねられた。


「実は、レン兄様の自宅を訪ねても毎日留守だったのでストレス溜めてたらしくって、会った時には毒殺されそうなぐらいの危ない気配を出してたんです」

「この暑い中、ずっと留守で、職場の習得専門学校を教えてもらっても部外者、しかも外国人相手じゃあけんもほろろな対応だっただろう。そりゃあ殺意も芽生えるか。ま、殺されなくてよかったよ」


 それじゃ仕方がないなぁと、ネトシル少尉は笑って納得してくれた。

いい人だ。いい人すぎる。

 本当に信じているのかどうかは不明だけど、あれからフォリ中尉も私に問いただすことはなかった。無神経でオレ様な人だけど、フォリ中尉は本当に相手が傷ついている時にはそれをかきむしらない。


(レンさんは、ダメもとで今の状況をあの子に言ってみろって言うけど、せっかくのあの家に行ける招待状みたいな手紙を無駄にするのも・・・。だけど行くこと自体が罠な気がするし)


 そうこうしている内に、父がやってきた。グリーンのシャツにデニムのズボン、サングラスといった姿は、誰がどう見ても貴族には思えない。

 302号室に現れた時には私の願望による幻覚かなってちょっと疑ったぐらいだ。

 だけどそんなことはどうでもいい。幻でも何でも、この人だけは私を受け入れてくれるって思えたから。


「パピー、会いたかったっ」

「私もだよ、フィル。お前と過ごす塩水湖での時間を捻出する為、仕事も片づけてきたんだ。ところでキセラ学校長から聞いたんだが、ファレンディア国の税関に喧嘩を売ったんだって? うちの妖精さんはほったらかしにしておくと、すぐご機嫌斜めになってしまうんだな。八つ当たりされた税関には同情しておこう」


 リビングルームで父を見るや否や抱きついた私を抱きしめ返してくれた父は、服で隠れる位置に幾つかのかすり傷を作っていた。

 やはり父は危険な地域に行っていたんだろう。私とてファレンディアで生まれ育った人間。子供の頃はよく分からなくてもレスラ基地の規模を見てしまえば気づくことはある。あまりにも軍備に力を入れているのに、国内状況が平和すぎると。

 それでいて国内の物流と物価を考えればどこからその軍事費を持ってきているかということだ。だけどそういうことに子供が気づくのはおかしいだろう。

 私は何も気づかないフリをして、父をリビングルームのソファに押し倒した。

だってやっと父が来たのだ。もうこれは父を堪能するしかない。


「八つ当たりなんかしてないもんっ。フィル、悪いことしてないっ。だってわざと外国に出すそれ、嫌がらせ的に作ってたんだよっ。あれは上司に責任とらすべきっ。きっと上司も早めに部下の悪事が分かってホッとしている。フィルは、そう思うっ」


 父の上に馬乗りになって主張すれば、くっくと笑う父も別に怒ってはいないようだ。

 この父に怒られたことなんてないけど。


「はいはい。それで含有量のチェックまでして、改定させたわけか。我が国にとってはいいことだがね。まあ、目立つようなマネは程々にしておこうな? 私はお前をずっとおうちに置いておきたいのに、こんなに可愛くてしかも有能なんじゃ、みんながお前を誘拐しに来てしまうじゃないか」

「誘拐はイヤ。フィル、パピーと一緒にいるの」

「そうだな。玄関に山積みされていた本も頑張って片づけなくちゃいけないもんな。やっぱりお前の居場所はうちだけだ」

「うんっ」


 私も、かつての弟に出会って心が疲弊しきっていたのだろう。

敵か敵じゃないのかが分からない。何を考えているのかも分からない。これから何をされるのかされないのかも分からない。

 分からない尽くしで心がハムスターの回転走りだ。

 だから父の顔を見た途端、もうこれで安心できると思ってしまった。私を安全な場所に閉じこめて全ての我が儘を叶えてあげると言う父は、この気持ちを隠さなくていい人だ。

 愛していることを伝えられないことも、愛したくても愛されないことも、全てはただ悲しいだけだから。


「パピー。もうフィル、一人で寝るの、寂しかったよ。パピーのベッド、いつも空っぽ」

「ごめんな。今夜は一緒に寝よう。私もフィルやルードは何をしているかなと思いながら、土埃が舞う空を眺めていたよ。ほら、ご機嫌を直して。お前が見つけたお店はあるのかな? まだ私とディナーデートぐらいしてくれるんだろう?」


 きっと舞っていたのは土埃だけじゃないだろう。だけど戻ってきた父に、私は当たり前の平和な日常だけを渡してあげたかった。

 愛しているという思いと言葉は、相手を勇気づける魔法だと思う。


「うんっ。やっぱりフィル、パピーとのデートが一番なのっ」

「私もだ。可愛いフィル」


 だからリビングルームで父の膝に座ってごろごろと甘えながら頭や頬にキスしてもらっている内に、私の勇気も復活していった。

 自分じゃない温もりに、自分が一人じゃないのだと分かる。寂しさに震えなくても味方だと言ってもらえることで心が穏やかになる。

 全てが違う自分ではもう何も言えない虚しさが引き寄せる罪悪感を忘れることができた。


「それで行きたいお店はあるのかい?」

「えーっと、それならね、会社のお姉さん達が教えてくれたんだよ。ファレンディアっぽいお料理だけど、サルートスっぽくもあるの。美味しいんだって」

「へえ。なんてお店? 予約を入れなきゃな」


 かつての弟が気にならないわけじゃないけれど、今は疲れて戻ってきた父を(いた)わってあげたい。そして私も父に甘やかされたい。

 だから父が戻ってきたら連れて行こうと思っていた店の名前を挙げてみる。


「早めに行けば予約なくても大丈夫って。あのね、税関事務所の裏の通りで、青い旗が目印らしいの。シンボルツリーが赤い葉っぱの木なんだって。たしかね、ソボリントボリンって名前だった。ソボリンはフォークの神様で、トボリンはスプーンの神様らしいの」

「ナイフの神様はなんて名前なんだろうな。じゃあ、日が暮れかけたら出かけようか」

「うん」


 甘えたいのは、忘れたいからかもしれない。幸せな自分があまりにも申し訳なくて、だからこの甘い夢に溺れていたかったからかもしれない。

 かつての弟に、ここまで変わった姿では何も言えなかった。


「少し髪が伸びたね。フィルは花のように可愛いから、今日の夕食には髪にリボンをつけてお出かけしてくれるかい?」

「うん。何色のリボンがいいかなぁ」

「フィルは似合わない色がないから難しいな。ああ、だけど蝶みたいに広がる幅広のリボンがいい。私にとってフィルはいつだって綺麗に咲いている花のお姫様だからね」


 当たり前のように守られ、愛されている生活。

 よしよしと撫でてもらって、父の膝の上に座りながらアイスティーを飲ませてもらったりしていたら、いつの間にか、ダイニング・キッチンルームに皆が集まってきていたらしい。


(え? いつ来たの? さっきまで誰もいなかったよね?)


 ハッと気づいたら、みんなが私達の様子をじーっと見ていた。父は別に誰に見られていようが気にしないといった顔で、平然としていた。

お父様、気づいていたなら教えてください。


(もしかして、ずっと聞かれてた? というか、見られてた?)


 私はこれでも貴族令嬢だ。人前ではちゃんとお父様と呼んでいる。パピーと呼んでることは内緒だ。

 いや、彼らも今来たばかりかもしれないしねっ。うん、そうだよ。今来たばかりだったんだよ。

 状況を把握した私はこほんと咳払いして、気を取り直した。


「えーっと、それじゃあ皆さん、今日の夜はお外に食べに行きましょう。お父様、私、バイト先で美味しいお店を教えていただいたんです」

「なあ、フィルちゃん。もう取り繕っても遅いものってあると思うぞ」

「何のことですか? 意味わかりません、レン兄様」


 嘘も貫き通せば真実になる。歴史がそれを証明している。だから私がパピーに甘えていた事実は存在しなかったのである。終わり。

 そして私はネトシル少尉とヘアアレンジを楽しんだおしゃれをして、父と手を繋いでそのお店に行くことにした。


(みんなで楽しくお食事会。なんか仲良しっぽい。うん、みんな仲良しで平和なのが一番だよ)


 ファレンディアの貿易会社で働く人達が美味しいと教えてくれたお店は、サルートス国人にも食べやすいファレンディア国の味付けだ。そういうのってもうドッキング料理だよね。

 予約を入れてくれたのでみんなで出かけてみたら、やはりどちらの料理とも言えずにうまく融合している料理店だった。幾つかのテーブルをくっつけた大きなテーブルで食べる。


「お父様、これ美味しい。海藻がプチプチしてるの」

「海藻なんて味は無いだろう? ・・・ん、面白いな」

「知らなかったら魚卵と勘違いしちゃう」

「そうだな。ほら、フィル。あーん」

「あーん」


 父もまた私が好みそうな味の料理があったら食べさせてくれたけど、なんか野菜の比率が高かったのが気になるところだ。なんでみんなお肉をそこまで食べるのかな。

 それでも私はずっと父の横に座ってゴロゴロと頭や背中を撫でられていた。


(だけどお父様。私の両脇がパピーとレンさんで、二人共お酒を頼まないところが気になります)


 こっそり飲んだのはお誕生日会だけなのに。

あの時のスパークリングワインが、「私は高級ワインなのよ。可愛いフィルちゃんに飲んでほしいわ」って言ってただけだったのに。

 ちょっぴり気になるところはあったけれど、人気なお店らしく一人客や二人連れ、はたまたグループで来ている人とか、店内はとても賑わっていた。


(あれ? あの金髪って・・・)


 他人の空似だろうか。

 帰る時、私の斜め後ろのテーブルに座っていた男性客が、弟とよく似た金髪だった気がした。

 顔は違う方向を向いていたし、じろじろと見るのも失礼だから、確認はできなかったけれど、あの纏う空気が似ているような気がした。


(まさかね。だってもうこの街にいる必要ないし、もう帰国したよね。暇なわけないんだから)


 そんな私の肩を抱いて、父がもう店を出ようと促す。


「フィル? どうした? もう眠くなったかい? おんぶして帰ろうか?」

「ううん、何でもない。あのね、お父様。せっかくだから最後の夜はゆっくりお散歩して帰るの」


 明日の朝はゴバイ湖に向かう。塩水でできたゴバイ湖は、どんなに水底へ潜りたくてもぷかぷかと浮かんできてしまう湖だ。

 きっと楽しいに違いない。

 会計をすませた私達は、出入り口に向かって歩きながらお喋りをした。

 

「今日は早く寝ないとね。朝、寝坊したら大変だよ、アレナフィルちゃん」

「リオンお兄さんの方が寝坊するんだよ。だって私、毎朝、みんな起こしに行ってるし」


 まるで私がお寝坊さんみたいなことを言うネトシル少尉は、私が出がけにカラーリングしてあげたのでちょっと髪型が色っぽい。このまま帰宅するのがせっかくのセクシー青年の持ち腐れすぎるけど、こればかりは仕方あるまい。


「一体お前達は何をやっていたのかな。フィル、起きない奴は自己責任だ。どうしてお前が起こしに行く必要があるんだ」

「だってヴェインお兄さん、いつもお目覚めの時にぐずるんだもん。だけど一人だけコーヒー運んであげるのはずるいって言われたんだもん」


 父が呆れた顔をしているけれど、私は悪くない。毎朝、302号室の住人だけお目覚めドリンクを運んでいたのが、何故か同じ階のフォリ中尉とネトシル少尉にまで配達が増えていた。

 みんな自分だけ仲間外れだと思うと悲しくなるらしい。

 私、かえってアパートメントよりも別荘の方が楽だったんじゃないかなって気がしている。

 いいけどね。どうせもう最終日だし。

 明日はゴバイ湖に向かってしばらく塩水湖を楽しんだら、数日後には温泉町フォムルに行くのだ。


「フォムル、どんな感じなのかなぁ。やっぱり温泉といえば泥パックかなぁ」

「のぼせないといいがな。そういう意味で、女専用浴場に一人というのは心配か。いや、今なら男装すればいいのか? うん、男装して男専用浴場に来れば安心だぞ?」

「フォ・・・ガルディお兄様、なんで私に男装させようって思うのかが分かんない。ついでに全然安心じゃない」


 紅一点って、もっとちやほやされるものだと思うのに何かが違う。だけどもういいや。

 サンリラで買った水着もばっちりな私は、父の水着も購入していた。きっとあの水着はゴバイ湖で大活躍してくれるだろう。


「わぁ、もう真っ暗」


 店から外に出れば、空はもう太陽の名残りなどなく、星が瞬いていた。

 神様、この夜空のように深い闇色のセクシーな水着を父にください。 


「太陽の光を浴びるパピー、きっと素敵。やっぱりパピーには黒が似合う」

「おーい、フィルちゃん。ここは真実を告げておいてやる。お前さん、父と娘の立場を入れ替えたらほとんど犯罪だからな? お前さんが父親でフェリルが娘なら、いずれ逮捕案件だからな?」


 肝心の父が気にしていないのだからどうでもいいだろうに、バーレンは私がまるでセクハラを父に仕掛けているかのような言い方をする。


「えー。レン兄様だって、姉様がいたら同じこと思うでしょ? やっぱり魅力ある体は楽しまないと。ただの黒だけじゃ駄目。そのラインを引き立てる何かも必要」

「いや、うちの妻なら黒の水着よりは、・・・いや、黒もいいか? だけどティナの場合、黒よりは白だと思うんだがな」


 私とバーレンは、ここで肉体を引き立てる水着とはどうあるべきかといったテーマについて語り始めた。

 こういった趣味にまつわる問題提起と考察はアパートメントまで帰る時間を有意義に使うと言っていいだろう。

 私達はお互いの趣味を尊重し合い、語り合える同志だ。


「やはり可愛さは欲しいもんだ。妻にはいつまでも清純さを忘れないでいてほしい」

「欲望に正直になりなよ、レン兄様。本当は違うものを夢見ている。フィルには分かる。白なんてね、結局は『あれ?』なんだよ」


 父は父で、オーバリ中尉やネトシル少尉、そしてフォリ中尉らと何やら話していた。

 同じ軍人として色々と気になることがあるのかもしれない。父はフォリ中尉みたいな基地所属、ネトシル少尉みたいな近衛所属と違うらしくて、みんなは何かと父のことを知りたがる。

 だけど私が知ってるのはいかに父が私を愛しているかだけだ。父は軍のことを私達にはまず教えない。だから私はこういう時には父から距離を取り、話に加わらないことにしていた。


「そうかねえ。結局人は基本に戻ると思うけどな」

「姉様の場合はちょっと恥じらう系がグッとくると思う。デザインが問題で、白はやっぱり下着っぽくてちょっと水辺のドキドキには物足りないと思うんだよね」


 男の人は、仕事があると目の色が変わってしまうと思う。

 女の人は、それを家で待つことしかできないのだろうか。


(どこに行ってたのか分からないけど、やっぱり情報交換とかあるんだよね。だって誰もが軍人さんだもん)

 

 私は、弟に似た人がいたことをすっかり忘れていた。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ