5.オレ様、村人たちの初めての戦いを見守る。
――コモノ男爵領。
「――男爵様! 辺境の村人に騎士たちがやられました!!」
アーサーたちの村から追い出された役人は、コモノ男爵領に帰り、主人にそう懇願した。
「なんだと!? 貧民の分際で私に逆らうと言うのか?」
コモノ男爵は声を荒らげる。
「どうか兵を出して奴らを討伐してください!!」
「当然だ。いますぐ討伐してやる」
男爵は立ち上がり、自ら兵を率いる準備をする。
†
「アーサー様!! 街の方から軍団が現れました!!」
村の外で警戒に当たっていた男が、アーサーの元に駆け寄って来てそう報告した。
「そうか。人数は?」
アーサーは冷静にそう聞き返す。
「……千人ほどです! おそらく男爵領の兵士の全軍です!!」
アーサーは、役人が言っていたことが単なる脅しではなかったことに少し感心する。
「ご主人様。どのように戦いますか」
そう聞いてくるヒルダに対して、アーサーは端的に答える。
「作戦などいらんだろう。正面から迎え撃てばいい」
「……承知しました!」
千人の足音による低音の地響きが、威圧的に鳴り響く。
――だが、村人たちが臆することはなかった。
アーサーに分け与えられた魔力によって、無敵になっていることはわかっていたからだ。
「お前たち! 余に逆らった罪は重いぞ!!」
兵の中央にいる豪華な服に身を包んだ男が、村人たちにそう語りかける。
その身なりから、彼がコモノ男爵だと分かった。
――村の男たちは、男爵の言葉にも怯むことなく、横列を組んで迎撃体制を整える。
それを見たコモノ男爵軍の兵士たちは鼻で笑った。
「馬鹿な奴らめ。魔法銃も持たず的みたいにまっすぐ並んでやがるぜ!」
男爵軍の兵士たちは、魔法銃の射程に入ったところで、銃撃の構えを取る。
「蹴散らしてやる! 一斉射撃用意――撃て!!」
コモノ男爵がそう命じると、魔法銃の青白い閃光が一斉に放たれる。
――――だが。
「うぉおおおおっ!」
村の男たちは一斉に男爵軍に向かって駆け出した。
彼らは真っ向から男爵軍の銃弾を浴びる。
しかし、銃弾は村人たちに当たると、そのまま跳ね返されて四散していく。
「なッ!! バカな!!」
生身の体で銃弾を跳ね返す村人たちの姿に、男爵軍の兵士たちに動揺が走る。
「どうなってんだ!? 化け物か!?」
そして男爵軍の兵士たちが、次の弾丸を準備する前に、村人たちが敵の先頭列に殴り込みをかけた。
彼らが拳を振るうと、兵士たちが次々吹き飛ばされていく。
「なんだこいつら!?」
「た、助けてくれぇ!!」
魔法銃の弾丸をはねのけ、前線に殴り込んできて次々兵士たちを吹き飛ばしていく村人の姿に、男爵軍の兵士たちは戦慄するしかなかった。
あっという間に前線は崩壊する。そして村人たちは、男爵のところまで到達しようする。
「お、お前たち! 余を守れ!!」
男爵が周りの兵士たちに喚き散らすが、兵士たちは混乱の最中にあり、男爵のことなど忘れて我先に逃げ出そうとしていた。
男爵は逃げ出そうとする兵士たちと、迫り来る村人たちとを交互に見て、次の瞬間たまらず踵を返す。
「うわぁぁぁあぁ!!!!!!!」
そう叫びながら、男爵が全速力で逃げ出す。
もはや男爵軍の中に村人たちと戦おうとする者はいなかった。
――こうして男爵軍千人と、辺境の村人数十人の戦いは、あっけなく幕を下ろしたのだった。
「うぉおお!!」
「アーサー様万歳!!」
そんな村人たちの声が辺境の大地に鳴り響くのだった。
†