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4.オレ様、村人たちに魔力を分け与えて最強の兵士にする。


 アーサーが辺境にやって来てわずか二週間。


 アーサーの魔力によって食料を安定して栽培できるようになった村には、辺境の各地から次々と人が集まって来ていた。


 既に村には百人以上の人間が集まっている。

 その多くが、辺境の地で明日をも知れぬ生活を送っていた者たちだった。


「私たちの力では救える人の数に限界がありました。ご主人様のおかげで、多くの者が飢え死にしなくてすみます」


 村の長ヒルダはアーサーに心の底から感謝して頭を下げる。


「領地のために力を尽くすのは当たり前だ」


 アーサーはそう言って済ました表情を浮かべるが。


「なに内心にやけてるんですか」


 シャーロットがアーサーの頰を指でつつく。


「おい、だからやめろ……お前のせいで威厳が……」


 アーサーは心底嫌そうな表情を浮かべるが、シャーロットは気にしない。

 実際、アーサーが内心で笑みを浮かべているのは事実だった。


 相変わらず粗末な建物が立ち並ぶ不恰好な村ではあったが、人が増え自然と笑顔が増えていた。

 アーサーは少しずつ発展する村に、確かに手応えを感じていたのだ。

 そして、それはいくさばかりしていた時には感じられなかったものだった。


 もっと村を発展させていくぞ。アーサーは内心そう決意する。


 ――――だが、村が発展してくると、それに目をつける輩も現れる。


「あ、アーサー様! ヒルダ様! 大変です!」


 アーサーたちの前に、村人の一人が慌てて駆け寄ってくる。


「どうした?」


「コモノの役人が、税を納めろとやってきたんです!」


「なに?」


 コモノは、ドラゴニア外縁部の男爵領だ。

 辺境の地から近いところにある。


 アーサーとヒルダは建物を出ると、外で小太りの役人が待っていた。

 男は見せつけるようにガタイの騎士10人ほど連れていた。


「お前が、この村の責任者か」


 役人は偉そう聞いてくる。


「ああ、そうだが。聞き間違えじゃなければ、オレ様の領地に課税すると?」


「その通りだ。見た所それなりに作物の収穫があるみたいじゃないか。これで税を免れようなどとは言わせないぞ」


 アーサーは両手の平を天に向けて首を傾ける。


「ここはお前の男爵領じゃない。課税する権利はないはずだが」


 アーサーが言うと、役人はそれを否定する。


「この地はコモノ男爵の領地だ。今までは大した収穫がなかったから徴税を免じてきただけのこと。今までの寛大な措置に感謝しろ」


 役人の表情からは、自分の言っていることが明らかに不当な要求だと理解していて、それでもなお横柄に要求しているということが感じられた。

 もともと筋を通そうなどとは思っていないのだからたちが悪い。


「貴族の腰巾着野郎の戯言に付き合う時間はない。帰れ」


 アーサーが言うと、役人は顔を真っ赤にして声を荒らげる。


「なんだと!? お、お前! なんだその横柄な態度は!? 俺は男爵様の使者だぞ!? こんなみすぼらしい村に住んでる分際で男爵様に逆らう気か!?」


 ヒートアップする役人。しかしアーサーは鼻を鳴らし役人の言葉を一蹴する。


「とにかく帰れ」


 そう言った瞬間、脇に控えていた騎士たちが後方に吹き飛んだ。


「なッ!?」


 アーサーは一歩も動いていないにも関わらず、従えていた騎士たちが一瞬で無力化されたことに役人は絶句する。


「男爵様とやらのお仲間の騎士は随分弱いな。もしかしてお前はもう少し強いか? 試してみるか?」


 アーサーが言うと、役人は後ずさりする。


「おおおお、お前! だだ、男爵様が許さないぞ! 千人の兵でこの村を丸ごと焼き払ってやる!!」


 そう言い残して役人は踵を返し、逃げて行く。


「ご主人様、ありがとうございます」


 ヒルダがアーサーが役人を追い払ったことに対して礼を述べる。

 しかし他の村人たちはおどおどしながら聞く。


「で、でも男爵は本当に千人の兵を持っています。攻められたらこの村はおしまいです!」


 村人たちは男爵の持つと言う千人の兵士に震えていた。

 確かに、ひ弱な村人たちがどうにかできる相手ではなかった。


 しかしアーサーからすれば恐るるに足らない存在だった。


「安心しろ。お前たちの力で返り討ちにできる」


 アーサーが力強くそう言うと、村人たちはお互い視線をやりあってからアーサーに尋ねる。


「私たちが? いくさなどしたことないのに?」


「問題ない」


 アーサーはそう言うと、その場にいた村人に命じて村中の男たちを広場に集めさせた。

 集まったのは、男たちと言ってもいかにもみすぼらしくやせ細った者たちばかりだ。とても前線で戦えそうには見えない。


 しかし、それでもアーサーはこの者たちが千人の兵士と戦えると言う確信を持っていた。

 

「そうだな、お前がいいか」


 アーサーは男たちを見渡して、その中でも特にひ弱そうな少年を選んだ。


「ぼ、僕ですか?」


 少年は指名されて、おどおどしながら前に出て来た。


「そこの地面を殴って穴を開けてみろ。人一人埋まるくらいの穴がいい」


 アーサーは突然そんな無茶振りをする。


「地面に穴!? 拳で!? 無理ですよ!」


 少年は当然のようにそんな反応を示す。


「安心しろ。オレ様がお前に力を与えてやる」


 と、アーサーは少年の肩に手を置く。

 そして次の瞬間――少年の顔つきが変わった。


「こ、これは!?」


「オレ様の魔力をお前に分け与えてやった。どうだ力が湧いて来ただろ?」


「は、はい!」


「それじゃぁちょっと地面を殴ってみろ」


 少年は膝をつき、その拳を地面に突き刺す。


 すると、


 ――――ズコーン。


 そんな嘘みたいな轟音が村に鳴り響いた。

 そして次の瞬間、本当に地面に大穴が開いていた。


「お、おいまさか!?」


 村人たちは騒然とする。

 気弱そうな少年が、突然拳一つで大穴を開けて見せたのだ。驚かないはずがない。


 誰より少年自身が驚いていた。


「オレ様の魔力を分け与えれば、誰でもこれくらいはできる。ここに集まった男たちは全員、拳一つで岩をも砕き、魔法銃の弾丸も剣の斬撃も跳ね返す、無敵の兵士になる」


 アーサーは男たちに語りかける。

 ――その様は、やはり生粋の将軍のそれだった。


「だから案ずるな。何千人の敵が来ようが、この村の平和はお前たち自身で守れる」


 アーサーが言うと、男たちは興奮気味に拳を突き上げて答える。


「おおおおッ!!」


「アーサー様についていきます!!」 


 †


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[一言] アーサーといえばエクスカリバー魔力でぶんまわすのを期待します(仮)www
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