突進公敗れる
サツマン人の会話
「ペーター・フォン・ハーゲンバッハの重税ってどげんな?」
「人頭税、冠婚葬祭税、経営税、十分の一税等じゃが……」
「分からん! おはんの話はいっかな分からん!
じゃから、何公何民じゃ?」
「詳しくは分からんが、全収入で三公七民らしか」
「なんチな? そん程度で苛政とか言われっとな?」
(※島津家の税率八割は穀物のみ、しかも二期作目とか副業は免除)
「そういや、信州の真田家は税率十五公無民とか聞きもした」
「取れ高より年貢の方が多か?
酷かお家があったもんじゃの!」
(※上田城時代の真田家は、牧場収入、温泉収入、門前町からの収入等を誤魔化す為、全部米換算で届けた結果、石高九万石に対し、歳費は十五万石で借り入れ無しとかになってしまい、どんな税の取り方してるんだ?となったとか。
徳川時代も米換算だと判らない帳簿になる為、歴代上田藩主は銭である貫高で政治してたとか。
ヨーロッパといい真田といい、全収入で計算されると、米麦年貢とは比較が面倒。
以上、中世ヨーロッパの税と島津家の年貢、どっちが酷いか調べていて、どっちもどっちという結論になったお話でした)
盟約者同盟軍は、ブルゴーニュ公国に対し宣戦布告する。
しかし彼等はブルゴーニュ公国軍に直接向かわず、反対側、イタリア側にあるサヴォイ公国を攻撃する。
これに対し、ブルゴーニュ公シャルルは客将ジャック・ド・サヴォイと、代官でアルザス地方に苛政を敷いた結果殺害されたペーター・フォン・ハーゲンバッハの弟のエティエンヌ・ド・ハーゲンバッハに6800の兵を預けて出撃させる。
サヴォイ公領からもロンバルディア傭兵5000が駆けつける。
だが盟約者同盟軍は先んじてエリンクール城を攻略。
遠路駆けつけたブルゴーニュ軍を疲労のピークで迎え撃つ。
ジャック・ド・サヴォイの軍勢は敗北し、4000の兵を失った。
これで盟約者同盟軍は引き返そうとしたが、ベルン軍は踏み止まって引き続きブルゴーニュ軍と対峙しようとした。
同盟軍は仕方なくそこに残り、ブルゴーニュ軍との小競り合いには尽く勝つ。
この盟約者同盟の勝利を見た、サヴォイ公領に隣接し、ブルゴーニュ公国が庇護していたシオン公国が反ブルゴーニュ陣営で蜂起する。
しかし、空を落とすでもなく、人型機動兵器も無いシオン公国は、サヴォイ公国によって盟約者同盟からの援軍共々あっさりと鎮圧され、逆に領土を失う事になる。
この戦いは、エリンクールの戦いとは逆に、距離の近いサヴォイ公国が、援軍の為にシオン領に長駆した同盟軍を破ったものだった。
ここまでブルゴーニュ陣営と盟約者同盟は1勝1敗である。
シャルルはこの間、アルザスと隣接するロレーヌ地方を懐柔していた。
父のフィリップ善良公以来、工作は進んでいて、ロレーヌ侯ルネ・ダンジューは追放され、ブルゴーニュ領に収まる。
そして遂に、シャルル自ら盟約者同盟との戦いに出撃する。
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アルプスの行者・輩慈は、ベルン近郊の木こりの子・アーダルベルトという設定で、同盟軍の槍兵として従軍していた。
山薩摩も大概な凶暴な連中である。
元々ベルン市だけが戦う気満々で、単にアルザスからブルゴーニュ勢を駆逐するだけでなく、他国まで攻めて、そこの城塞に居座ってしまった。
他州は「ベルン! 一緒に国に帰ろう!」と呼び掛けていた。
そのベルン兵他数百人が立て篭るグランソン城塞にシャルル突進公が18000の兵を率いて襲来。
グランソン城は湖を背後に立つ要塞で、完全包囲が難しい。
水運を使って補給、援軍要請を出した後は守備兵数百人が万の兵相手に奮戦したが、ついに陥落した。
投降兵を見下ろし、シャルルは命じる
「皆殺しにしろ」
と。
シャルル突進公はリエージュ戦争で、許したって反抗を止めない、だったら皆殺しにしてしまえ、と学んでしまった。
そして投降者を全て縛り首にし、街道に晒した。
これを援軍の同盟軍が目撃する。
途端に彼等はブルゴーニュ絶対殺害部隊に変わってしまった。
「ブルゴーニュ軍、殺さねば!殺したら!殺す!殺せば!殺そう!」
(この身内贔屓なブチキレっぷり、懐かしかなぁ)
輩慈はそう感じた。
同盟軍は3隊に分かれてブルゴーニュ軍に挑む。
(え? 三方に分かれて敵を叩くって、各個撃破してくれと言ってるようなもんじゃろ?)
輩慈は忍び故に現実主義者である。
兵を割るとブルゴーニュ軍より少数になり、少数は多数に勝てないと計算した。
輩慈は自分の居た薩摩がまず、その「多数が少数に勝つ」という現実を無視した、「少数が大軍を蹂躙する」非常識な存在である事を忘れていた。
いや、目の前に薩摩軍が居たら忘れる事はないが、周囲にいるのは盟約者同盟軍である。
勝てるのか?
グランソン城への援軍をも打ち破るべく、シャルルは18000の兵を持って待ち構えていた。
そこに同盟軍7000が攻撃をしかける。
「なんだ、あれっぽっちか。
蹴散らせ!」
ブルゴーニュ軍の火砲が火を噴く。
しかし同盟軍は死に物狂いで戦う。
「聖母よ加護を!」
そう叫びながら密集し、槍の穂先を揃える。
その長大な槍を使った方陣に、金羊毛騎士団の馬上槍も、ブルゴーニュ示現流の刃も届かない。
頑健な抵抗に苛立つ突進公。
そこに同盟軍第2陣6000人が到着する。
「突撃!」
「しまった!
余りにも強固な抵抗に、援軍はこいつらだけだと思っていたが、まだ居たか!」
更に第3陣7000人も到着した。
「ぶっ殺せ!」
気づけばブルゴーニュ軍18000は同盟軍20000に三方から攻められる形になっていた。
「全軍………………撤退!」
突進公は悔しい命令を出す。
ブルゴーニュ軍は多くの物資、特に貴重な大砲や、シャルルの個人的な財宝を捨てて逃走した。
西薩摩対山薩摩の戦いは山薩摩に軍配が上がる。
グランソンの戦いは、シャルル突進公の敗北として全欧州に知れ渡る。
突進公率いるブルゴーニュ軍はヨーロッパ最強の一角と恐れられていた。
それを蹴散らした盟約者同盟軍。
ブルゴーニュ軍の被害は1000程度だが、財宝を置き捨てにした為手持ちの金が不足し、イタリア傭兵4000が給料未払いから離脱した。
ブルゴーニュ公国に代わり、盟約者同盟の強さが鳴り響いた。
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グランソンの戦いで敗れたとは言え、早期の撤退命令でブルゴーニュ軍の人的被害は小さい。
再戦して汚名返上したい欲が、炎となってシャルルの心を焼く。
だが、ふと彼は師の声が聞こえたような気がした。
「執着しちゃならんど。
一撃を信じ、後は切り替えねばいかん」
シャルルの剣の師、東郷重位は武者修行で、度々1対多数の死合いをして来た。
その時に学んだ事を、剣術に活かしている。
「一つ、起こり(初動、攻撃の気配)を見せるな」
「一つ、一撃を信じ、一太刀に全てを注ぎ込め」
「一つ、一太刀の後は執着せず、次の敵を見据えよ」
「一つ、敵は一人見かけたら十人は居ると覚悟し、絶えず気を張り、不意打ちに備えよ」
「一つ、気を周囲に張れば、道端に落ちている釘を踏むような不覚も取らぬ」
「一つ、寝ていても厠に立とうと敵は気にせぬから、常に己も武具も万全にせよ」
「一つ、万物は己の武具となるから、活かして戦うべし」
冷静になってみると、シャルルは師の教えに従っていない。
確かに少数ながら堅固であったが、その先陣に拘り過ぎた。
敵が三方に分かれて攻撃して来ると察知出来なかった。
奇襲や包囲戦を「される」心構えが出来ていなく、対処する戦法も考えていなかった。
そして、不完全な武器で再戦しようと考えている。
(一度、トヨヒサか師匠に会って頭を空にしてみるか)
シャルルはそう思い、全軍にフランドル及びデジョン、ルクセンブルグへの撤退を命じる。
エティエンヌ・ド・ハーゲンバッハにアルザスを守らせ、必要ならルクセンブルグのジャック・ド・サヴォイが救援するよう命じ、彼は影武者を置いて船出した。
だが、シャルルは義弟豊久とは会えなかった。
豊久は国替えの為、ダルマチアに視察に出ている。
ラグサ共和国の領域を犯さぬ場所で、どの方面にも便の良い地に城を築く為である。
帝都で皇帝家久と会見したシャルルだが、ここでは援軍を出せないという残念な話を聞く。
とは言え、ルイ11世にもフリードリヒ3世にも援軍を出さないので、条件は一緒だ。
最後の希望として東郷重位と会いたい旨を伝えると、それは許可された。
シャルルは薩摩国に入国。
東郷は薩摩半島が黒海に突き出た先端、坊泊郷の地頭をしているが、その地での貿易の実務は代官に任せ、本人は鹿児島に居て、帳簿管理と剣術指南の仕事をしている。
(しかし、貧乏な国だなぁ……)
フランドルという欧州で最も豊かな地の一つに住まうシャルルは、サツマニアを見てそう思う。
そして許可を得て会えた師・東郷重位もまた、ブルゴーニュ公国基準で貧しい家に住んでいた。
「師よ、どうせならフランドルに来ませんか?
もっと豊かな生活を用意しますよ」
そう言うシャルルに
「俺いには世話になった宮殿の寝所も、武者修行中の洞窟も、こん家も、寝床に変わり無か。
居るべき場所に居るだけごわす。
シャルル殿、おはんも本来ここに居ってはいかんの。
じゃっどん、居るべきでは無かが、来るべき理由は有ったのじゃろうの」
ブルゴーニュへの移籍を拒否し、かつ要件を尋ねる。
シャルルは修行をし直したいと言った。
東郷は教えるべき物は無いと言う。
学ぶのではなく、見い出すのだ、己のすべき事を。
今は迷いで心が濁っているから見い出せないだけだ。
「どれ、久々に立ち木打ちでもすっか!
ついて参れ」
そうして連れて来られた山中で、良いと言うまでひたすら立ち木に木刀を打ち込まされる。
最初こそ邪念が混ざっていたシャルルだが、打ち込んでいる内に色々と剥がれて来た。
ブルゴーニュ公である負担、許しても裏切る周辺の敵への殺意、盟約者同盟への復讐心、神聖ローマ皇帝への野心、諸々が落ちて一介の剣術使いシャルル・ド・ヴァロア=ブルゴーニュになる。
そうして改めて気づく。
「師よ、この植物は何ですか?
初めて見ました」
東郷は、弟子がやっと周囲の自然に気づく余裕を取り戻した事で微笑む。
「こいは竹じゃ」
「タケ?」
「そういや、こん地では見かけんかったな。
まあ、竹は竹じゃ」
「はあ……」
「鋭ッ!」
東郷は早業で竹を切ると、節を抜いて器を作った。
軽く、強固で、何にでも加工出来そうである。
竹の水筒に水を入れ、飲むと東郷はシャルルに言う。
「良か、今宵は野宿じゃ。
明日の朝、面白かものバ見えっど」
そう言って、島津家剣術師範とブルゴーニュ公は、木に寄りかかり眠る。
翌朝早くに起こされるシャルル。
「師よ、それは何ですか?」
「筍じゃ」
「タケノコ??」
「食え、美味かど」
確かに美食家のシャルルも食べた事の無い味、ヨーロッパ人では最初に口にする味であった。
これを見せようと野宿??
「あいを見い」
見ると、タケノコから青い芽が伸びている。
「あん芽をよお覚えとけ」
そして朝稽古。
みっちり汗を流したシャルルは、信じられないものを見る。
「え?
な?
タケノコの芽が、もう俺の背丈を超えている?」
「左様。
人の成長も同じじゃ。
ちょっと目を離すと、己よりも上に行かれる事がままある。
おはんも今に安住せず、絶えず成長するよう、励みあれ」
東郷は道徳的に話を纏めたが、シャルルは東郷の斜め上に成長していたので、竹を見て別の事を思った。
(このタケを斜めに切ったものは殺傷力のある槍に変わる。
そして、あっという間に成長する。
このタケをブルゴーニュに植えよう。
この植物が繁殖すれば、無限に武器を製造出来る!)
シャルルは東郷に礼を言う。
そして帰国前にもう一度この山に立ち寄り、たまたま近くでタケノコ獲りをしていた農民から竹の育て方を聞くと、反対を押し切って竹を持ち帰った。
鹿児島で待機させていた従者にも持たせ、相当数を持ち帰る。
そうして盟約者同盟の槍部隊に対する切り札、
ブルゴーニュ竹槍隊が編制される。
……そしてフランドルの植生は、竹に侵略されてしまうのであった。
(後に、チューリップ竹戦争という、侵略植物から商品植物を守る壮絶な戦いが起きる事になる)
おまけ:
錦江湾を船出しようしたシャルルに、多数の若者が数百人立ちはだかる。
ヨーク家のヒャッハー連中といい、慣れてるシャルルはとりあえずぶん殴るが、骨がある事に相手も反撃して来る。
小半刻、拳で語り合う。
お互い肩で息をするようになって、
「ブルゴーニュ公であらせられもすか?
我等を兵として召し抱え居ただけもさんか?」
そう言われた。
聞くと、十字軍後に生まれた子たちは、部屋住み労働力として三男くらいまでは良いが、四男、五男、六男あたりは
「おはんら、何時までも親の脛齧っておらんで、いずこかへ出仕せよ」
と言われている。
七男、八男以降は
「居たの?」
的扱い。
(薩摩親父「作り過ぎてもうた……」)
農作業でも長男にいじめられ、実際の農作業は小作人にも劣る。
親父が死を乗り越えた後の繁殖行為だった為、励み過ぎ、どの武家も余るくらい子が居るから養子の口も無い。
「仕えるのも、誰でん良か訳じゃごわはん。
先程の(拳での)語り合いで、ブルゴーニュの殿様は俺いどんらが命懸けで仕えるに足る方と知りもした。
どうか、我々を登用下され!」
七男以降はまだ十代より下で、親も面倒ながら元服までは無料飯を食わせている。
三男から六男あたり、二十代前半から元服直後くらいは、そろそろ自分で生きる道を探せとか言われている。
国土寒冷化で、分家を立てても「田分け」で本家ごと滅びかねない。
僧侶も飽和状態。
学者、東ローマの官吏や法務官、商人になる数も多いが、大概の無学な若者は他家への仕官や傭兵になりたいと思っていた。
(傾奇者をやると、親父からチェストされる)
薩摩の人口構成はかなり歪つになっていた。
子作りし過ぎで特定の年齢層が厚い上に、長男至上主義と島津本家の石高はむしろ減ってる事から、部屋住みが発生している。
子が多いから女性も多いが、彼女達も「四男以降に嫁ぐくらいなら、長男次男の妾になる」と、上に寡占されている(そして人口増大世代で子を作るから、孫世代も分厚く、末弟たちは生涯無職確定)。
低収入、仕事無し、底辺扱いで結婚も出来ない、そんな層が行き場を求めている。
そのエネルギーは大変なものだ。
やがて彼等が新天地への大規模な移民となる。




