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ドラキュラ対鬼島津三度(前編)

■スパルタ島津家陣容

【島津家】

 島津兵庫助義弘(当主)

 島津久四郎義清


【川上党】

 川上上野介久隅

 川上左衛門尉久利


【鎌田党】

 鎌田出雲守政近

 鎌田蔵人頭政冨


【伊勢党】

 伊勢雅楽助貞真

 伊勢平左衛門貞之


【その他】

 長寿院盛敦

 奈良原質

 中馬大蔵允重方


【傘下都市】

 スパルタ、アルゴス、コリントス


【傘下地域】

 マケドニア、テッサリア


(アテナイ等ギリシャ本土は皇帝家久領)


※スパルタ島津家はマケドニア、ギリシャ、ペロポネソス半島を支配する。

米が辛うじて採れる地域な為、義弘一統が移住して民と一緒に農耕している。

薩摩国内と同じ郷中教育がなされ、また「一緒に戦えば君も今日からサツマン人」な為、民は先祖返りして凶悪化したが、軍事国家だから治安は極めて良い。

スパルタ領民の3倍の農奴を保有している。

薩摩軍総兵力は三千人だが、スパルタ軍が六千人、傭兵が五千人と合計一万四千という戦力。

ただし、農繁期は動きたくない。

 ヴラド3世は苛烈な支配者である。

 ある時、ワラキア領内で荷を盗まれた商人の訴えを聞いて犯人を捕らえ、荷物を取り戻した。

 商人に荷物を返す際、家来に命じて密かに荷物の中に貨幣を余分に忍ばせた。

 商人は、荷を改めて余分な貨幣に気付き、正直にこれを告白する。

 公は笑い、

「正直者で助かったな。

 もしお前がその金の事を黙っていたなら、盗人と同じく極刑に処していたところだ」

 と告げたという。

 恐ろしい君主である。

 しかし、誠実な相手には、相応の礼を取るようだ。




------------------------------




 スパルタ島津軍は、刈り入れの終わった野を進む。

 ヴラド3世も、島津軍による略奪を防ぐ為、刈り入れを急がせた後は、食糧を持って島津軍の進路から離れるように命じた。

 準備が済んでから、ヴラド3世は島津義弘に宛てて戦書を送る。

 スパルタ兵の農奴の収穫も同じ頃に終わる為、両軍ほぼ同じ条件であった。


 決着を付けようと迫る両軍。

 スパルタの偵察隊が妙な報告をする。


 黄金の鎧に赤マントのヴラド公を発見し、追跡していた。

 だがヴラド公とその部隊は忽然と消える。

 そして、突如背後に現れ、奇襲を受けた。

 まるで時でも止められたかのように、ヴラド公の部隊が消えて、現れた。


 流石に島津義弘は騙されない。

「そいは縮地の法っちゅう、詐術じゃ」

「何と?」

「こいじゃな」

 義弘は三国志の描写を語る。



##########


 蜀の丞相諸葛孔明が北伐に出て、司馬仲達率いる魏軍と隴西で対峙していた時の話である。

 諸葛孔明の四輪車を見た魏の偵察部隊は、諸葛孔明を攻撃する。

 しかし、歩兵に四輪車を押されて退却する孔明に、騎馬部隊が追いつけない。

 恐れを為した魏軍は、征西副都督の郭淮まで攻撃に加わるも、歩兵に四輪車を押されている孔明に追いつけず、馬がバテ始める。

 すると前方の孔明が急に消えたと思ったら、背後から現れたり、先回りして退路に現れたりした。

 これは仙術だと魏兵は怯えてしまい、陣から出なくなる。

 その隙に諸葛孔明は、隴西地方の麦を全て刈り入れ、自軍の兵糧とした。


##########



「なる程、やり様が一緒ごわすな」

「こいは、影武者が同じ衣服、同じ四輪車に乗っていたから騙されたのよ。

 諸葛孔明は黒衣の兵に北斗七星の旗に四輪車と目立つ出で立ちじゃ。

 それ故遠目には入れ替わっても同じ者にしか見えんわけよ。

 ヴラドも同じじゃ。

 わざと黄金の鎧に赤外套等と目立つ格好にしやったで、中の者が違うとは気づかんようじゃの」

 目立つものに目を奪わせて、肝心な部分から視線を逸らす技法(ミスディレクション)

「では対策は?」

「こいは隠れ場所が無ければ出来ん手妻(手品)じゃ。

 見失ったチ思うたら、後ろを見て適当な隠れ場所を探す事じゃ。

 そう多くの兵は隠れられん」


 あっさり種明かしをした義弘だが、違う事で気になるものがあった。

(ないごて偵察隊等に奥の手バ見せた?)


 これは奥の手等ではない。

 撒き餌だ。

 気づかせる事で別の罠に嵌めようとしている。

 それは一体何なのか?


 島津義弘とドラキュラ・ヴラドの戦いは、銃火を交わす前に、既に始まっていた。




------------------------------




 戦場に付くと島津・スパルタ軍からは多数の偵察部隊が出る。

 だが、帰隊時刻になっても四半数が戻って来ない。

「ヴラド奴の仕業じゃろう。

 戻って来た者はどこを見て来たか、伝えい!」

 偵察部隊は、真正面の敵本隊を調べに行ったもの以外、戻って来ていなかった。

「ふん、俺いどんら、伏兵のど真ん中に居るチ思った方が良か」

 恐らくは四方八方に伏兵を置き、しかも黄金鎧に赤外套マントの影武者が含まれているだろう。

 影武者のヴラドが神出鬼没に現れては消え、島津軍を翻弄させる、それは「当然やって来る戦法」として考える。

 問題は、それが全てなのかどうか。

 敵に手の内を先に見せて、その通りにまた攻撃する程度なら可愛い相手だ。

 そんな程度なら11年前の転移直後に、島津忠長・伊集院忠棟率いる三万の鎮西軍に撃破されただろう。

 読ませた上で罠を仕掛けてくる。


 ジャンケンは、出す手を教える事によって別のゲームに変わる。

 麻雀は、四枚の同じ牌の内三枚が硝子牌で、彼我の持ち牌が中途半端に見えていると、かえって萎縮して動き辛い。

 中途半端な情報は作戦を硬直させる。


 この時代、まだ生まれていない麻雀で例えるなら、ヴラドは中中中、撥撥撥と副露フーロし、捨て牌に一枚も字牌が無い様子なのだ。

 ここで消極的になるならヴラドの手の内に落ちる。

 島津義弘とは、そこであえて白牌を打ち込む男なのだ。

 ロンと叫ぶ一瞬の隙に、卓をひっくり返す為に。

チョンボ(12000)役満(48000)より傷が浅かど!!)


「おはんら!

 敵は四方八方から神出鬼没に現れるじゃろう。

 分散して全部叩け!

 こいが作戦じゃ」

「そいは作戦でも何でも無か!

 手薄になった本陣を狙われたら、どげんすっとですか?

 兵庫様は桶狭間の今川治部大輔、厳島の陶尾張守、河越夜戦の扇谷修理大夫のごたるなりたかですか?」

「おはんは莫迦か?

 縮地ン法バ知っちょる俺いが、ないごて敵ン悪巧みに引っ掛かると思っか?

 こん作戦はなア……まあ、俺いにも考えが有っで。

 もう議バ言うな!」

 年取ったせいか、説明が面倒臭いようだ。

 せめて本国から援軍に来る新納”鬼武蔵”忠元の到着を待ってから、という意見も出たが、義弘は今こそ合戦だと譲らない。

 ともあれ、単なる兵力分散では無いようだから、部下たちも手勢を率いて、己が持ち場でワラキア兵に対する。




------------------------------




「待っていたぞ、オーガ!

 この東欧の頂点に君臨する俺だが、貴様との決着だけは運命だと思っている。

 勝って、貴様の血肉を喰らい尽くし、飲み干してくれようぞ!」

「やれやれ、若造が生意気言っちょるの。

 俺いが遊んでやっで、掛かって来やい」

「老いぼれが!

 貴様の軍など生っちょろい事を教えてやるぞ!」

「この島津兵庫頭義弘、老いて益々盛んで在ると知るが良か!」


 古式に倣い、単騎総大将同士が出て、開戦の挨拶を交わす。

 お互い、ラテン語で話すなんて相手を思いやる気は無い。

 母国語で罵る為、通訳は癇癪持ちの総大将の八つ当たりを受けないか、冷や冷やしている。

 だが、帰陣した両将は今迄に無いくらいご機嫌であった。

「オーガ奴、達者なようで何よりだ!」

「ヴラド奴、以前より威圧感が増しておる。

 随分と強くなったようじゃの」


 そして肉食獣の笑顔で

「喰い甲斐が有る様で楽しいぞ」

 とそれぞれワラキア語と中世薩摩弁で吐いた。




 正午、開戦。

 ヴラド公の騎馬隊が突っ込んで来る。

 そして丘陵に差し掛かり、消えた。

 すぐに左後方から喚声が上がり、黄金の甲冑に赤マントの武将が見える。

「あいは偽者じゃ、影じゃ!

 我等はまずあいを叩き潰すぞ」

 川上久隅勢が別働隊に向かう。


 別働隊は突っ込んで来る川上勢に慌てる事無く、馬首を返して後退し、また消える。

「慌てるな!

 必ず隠れちょる!」


 すると右後方から黄金の甲冑、赤マントの将に率いられた部隊が出現する。

「俺いたちが相手になっど!」

 伊勢貞成、長寿院盛淳らが対処する。


「我等スパルタ衆は、正面に突撃じゃ!

 ヴラドは前に居るわ!」

 島津義弘馬廻とスパルタ衆が誰も居ない正面目掛けて突撃する。


「貴様、見ているな!

 このヴラドの居場所を掴んでいるな!」

「何を白白しか!

 俺いを此処に呼ぶ為に手の内見せたじゃろ」

 周囲の兵士が

(どこからこんな大声出るんだ?)

 と疑問に感じる大音声で会話する鬼と串刺魔。

「手の内?

 消える騎馬隊(バニシングドライブ)はただの余興に過ぎん。

 貴様には取って置きを見せてやるぞ!」

「そいを見っ為に来た!

 早よ見せい!」

「オーガよ!

 見て、満足したら、死ねい!

 出でよ! 軽騎兵ユサール!」


 周囲を埋め尽くす騎兵部隊が現れた。

 その数、およそ3万。

 川上勢、伊勢勢等と戦う部隊も3千ずつである。

 よくもこれだけの馬を用意したものだ。

 しかも彼等は甲冑を付けていない。

 薩摩の二匁筒でも、当たれば戦闘不能になるだろう。


「鎧を着ていようが、死ぬ時は死ぬ。

 だったら、今死ね!

 俺の為に死ね!

 だが、一つ真実を教えてやろう。

 当たらなければどうと言う事は無いのだァァァァ!」

 かくしてヴラドは、防御力を放棄し、短銃と軽湾刀のみを武器とした軽騎兵ユサールを主力として鍛え上げた。

 神出鬼没ミスディレクションな騎兵戦法も、軽騎兵ユサールの超高速が助けていた。

 さらにヴラドは、異端、魔女と呼ばれる隠者を探し出し、この地方で古くから飲用されていた大麻と合わせた『鉄砲弾を受けても痛みを感じず、戦い続ける狂気の薬』を調合させた。

 先陣を任せる者たちに

「俺の血を飲めば、不死の身体となれる」

 と偽って飲ませた。

 先陣の軽騎兵は、狂気ゾーンに入り、興奮し、薩摩の二匁弾が当たっても痛みを感じずに戦い続ける。


「川上様、打ち破られもした」

「伊勢勢、長寿院勢、散り散りになりもした」

 伝令が来る。


「どうだ?

 これで貴様は三方から囲まれ、嬲り殺される。

 鬼シマンシュよ、俺の勝ちだ!」


 しかし、島津義弘は笑う。

「覚えておくんだヴラド……。

 三方から囲めば圧勝できるじゃと……。

 莫迦じゃなかか?

 そげなこざかしい事と無関係の所に……、

 島津は存在する……!!」


「スパルタ兵!」

 青少年たちが「応ッ」と叫ぶ。

いにしえのマラトンの戦いが如く、テルモピュライの如く、ただただ前進せい!

 脇を見るな、戦友ともの肩だけを担げ!

 重装歩兵ファランクスの真の力、見せてみい!」

 スパルタ名物直進行軍が始まった。


 日本の戦国時代、主戦力は槍である。

 薩摩には転移後も大規模な竹林が在る。

 この竹を膠で固める「打柄うちえ」という、軽くて長くてしなやかな柄を作る技術がある。

 こうして、アレクサンドロス大王のマケドニア重装歩兵のサリッサに負けない、三間半(6.3メートル)の長柄を持った新スパルタン重装歩兵ファランクスが正面攻撃を開始した。


「薩摩ン衆!

 スパルタの二歳にせバ守っとおせ!」

「応!」

 義弘の手勢は、ワラキア軍の側面攻撃からスパルタ重装歩兵を守る為に、自らを盾と為す。

 薩摩兵は「若者(にせ)を殺して我々が生き残ったら恥だ」と、ワラキア騎兵の攻撃に立ちはだかる。

 スパルタン隼人たちは「こうまで守られてるのに、正面の敵を打ち破られねば、スパルタ人の恥だ」と思い、前行く者が弾に当たって倒れても、その屍を踏みつけて前に前に進む。

 何より島津レオニダス義弘が、重装歩兵の中心最前列で、下馬してスパルタ兵と肩を組み、共に歩みを続けている。

 義弘を守ろうと、小姓が身を盾に、銃口のある方角に身を曝している。

 狂者の行進に対し、ワラキア騎兵も狂気に酔い、返り血を飲みながら薩摩軍に疲れ知らずな反復攻撃を仕掛ける。

 取り囲む狂気が突き進む狂気を削り殺す前に、突き進む狂気がヴラド3世の本陣に辿り着いた。


「望み通り、来てやったど、ヴラドォォォ!」

「オーガ・シマンシュ!

 それでこそだ!

 貴様は俺がその首を取ってやる!」


 島津義弘は大薙刀、ヴラド3世はランスを構えた。

 大将同士の一騎討ちが始まろうとしていた。

鬼対ドラキュラが少年ジャンプ的展開になって来たので、似た話を追加。


おまけ:

北欧を一通り歩き終えた東郷重位は、北海を渡りスコットランドに移る。

北欧ではバイキングの子孫たちと試合し、そして技を伝授。

バイキングアックス示現流が生まれる。

弟子たちの船でスコットランドに渡った東郷は、変わった噂を聞いた。

ある洞窟に化け物が居た。

既に討伐されたが、そいつらは人を喰らう悪鬼だと言う。

東郷は、なんと無しに立ち寄る事にした。


そこは異様な気配がする。

そこに居たのはソニー・ビーン一族という。


怠惰で粗暴な性格であったソニー・ビーンという日雇い労働者は、労働を嫌って家を飛び出し、性悪な女と知り合ってノース海峡に面した半島付近にあるバナーン・ヘッドの海岸の洞窟で暮らし始めた。

労働を嫌ったこの男女は、糧を得る為に通り掛かる旅人を襲い、自分達の存在や犯行が露見しないよう、必ず相手を殺し、死体を洞窟に持ち帰る。

最初は旅人の遺品を売って生活していたが足りず、やがて飢え始めた2人は、殺した人間の肉を食べ始めた。

ソニー・ビーンと妻は共に性欲が旺盛であり、男8人、女6人の子を儲け、さらにその子供達は、近親相姦を繰り返した結果、最終的にビーン一族は48人とも50人とも伝わるほどの大家族となった。

子供達は教育は全く受けず、言葉もたどたどしかったが、旅人を襲って取り逃がすことなく殺害し、解体して食糧に加工する技術を学び、強力な殺人集団となった。

彼らは人肉のみを食料としたという。

このビーン一族により、300人以上、話によっては1500人という犠牲者が出た。

完全武装のスコットランド軍により、全滅させられたというが……


「そこに居るんは分かっちょる。

 出て来やい」


東郷は自分を睨む気配を感じ取っていた。


「出でい!!!」


東郷が一喝すると、成る程、異形の人間のようなモノが10人ばかり現れた。

そして襲い掛かって来る。



あの恐ろしい洞窟の方から恐怖の絶叫と、なんとも表現し難い

「キィィィエェェェィィヤァァァァ!!」

という声に、離れた場所を通る馬が驚き、やがて馬上の人間も気付く。

もしかしてソニー・ビーン一族の生き残りがいたのか!

グラスゴーに報告が飛び、また国軍が討伐に出動した。


そして兵士たちが見たのは、左右から袈裟懸けに斬られ、Vの字に斬り落とされたソニー・ビーン一族の残党の首から胸にかけての人体パーツ、合わせて13個だった。

恐怖の悲鳴を挙げていたのは、ソニー・ビーン一族の方だったのだ。

どの死体も同じ太刀筋、つまり一人によってソニー・ビーン一族残党は全滅していた。


スコットランドは、更に恐ろしい化け物が現れたと恐怖する事になる。


※薩摩藩同士討ちの寺田屋事件。

斬り合いが始まった中、一人座って戦わず、首を晒していた柴山愛次郎は山口鉄之助に斬り殺されるが、その太刀筋が左右からほぼ同時袈裟懸けでのVの字で、その形に首が落ちたとか。

(なお示現流には天空剣Vの字斬りは技として有りませんので)

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― 新着の感想 ―
[一言] ボルテスV笑った
[気になる点] 直進行軍は男塾ネタなんだろうけど 蒲生氏郷が実際にやってたはず
[一言] 維新のー夜明けはーもう近いー♪︎ >天空剣~
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