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家督争い

島津家家系図(子世代官位読み版)

【宗家(伊作家)】

×    ×

日新斎→貴久→修理大夫義久(又三郎)→亀寿姫

   |   |           × ||(結婚)

   |   →兵庫頭義弘(又四郎)→陸奥守久保

   |   |           |

   |   |           →大隅守忠恒

   |   |

   |   →右衛門督歳久(又六郎)⇒三郎次郎忠隣*

   |   | ×

   |   →中務大輔家久(又七郎)→中務少輔豊久

   |               |

   |               →源七郎忠仍

   |×

   →忠将→右馬頭以久(又四郎)→右衛門尉彰久

   |×

   →尚久→図書頭忠長(又五郎)→河内守忠倍

                 |

                 →新納近江守忠在(島津久元)

                 |

                 → 堯仁丸


【薩州家】

 ×   ×   ×

→忠興→実久→薩摩守義虎(又太郎)→薩摩守忠辰

      |           |

      |           →三郎次郎忠隣*

      |           |

      |           →備前守忠清

      |           |

      |           →忠栄

      |           |

      |           →忠富

      |           |

      |           →忠豊

      |×

      →三葉忠継


×は故人

(薩州家の三郎次郎忠隣は、宗家島津歳久の養子に入っている)

 七年前、西暦1453年、薩摩が桜島の謎の発光の後、見知らぬ世界に移動した。

 当時、何も分からない島津家では、急ぎ非常態勢に切り替える。

 島津四兄弟の弱点、それは次世代の不足であった。

 長兄義久には男児がいない。

 長女を分家の島津薩摩守義虎に嫁がせて縁を結んでいた。

 その為、孫は薩州家の忠隣、忠清、忠栄、忠富、忠豊となる。


 次兄義弘には五男があったが、長男鶴寿丸は既に亡く、四男万千代丸も転移後に床に伏し、翌年死亡する。

 次男の如意寿丸、三男の米菊丸、五男の長満丸がいた。


 三弟歳久にも男児がいない。

 薩州家の次男で、義久の孫にあたる忠隣を養子として迎えていた。


 末弟家久の子は、元服して又七郎忠豊を名乗っていた。

 後に名乗りを改めて中務少輔豊久となる。

 もう一人の男子は東郷家に養子に入り、東郷重虎(忠直、忠仍)と名乗っていた。

 しかし、家久の母親は身分が低い。


 色々考えた結果、次兄義弘の子、如意寿丸を急遽元服させて又一郎久保とし、義久の三女亀寿と婚約させた。

 それが決まった日、義弘は蹴鞠で遊んでいた米菊丸を呼び出す。

親父おやっど様、新しか蹴鞠の技を覚えもした!

 縦に回転を掛けると、相手の前で急に沈む鞠筋ドライブとなりもす!

 どぎゃんですかい!?」

 浮かれる我が子の頭を押さえつけ、いきなり前髪を切ると

「おはん、今日で元服じゃ。

 又八郎忠恒と名乗りを改めよ」

 そう有無を言わさず命じる。

 「鞠は友達、怖くないよ!」等と言っていた純真な十歳の稚児は、いきなり大人の仲間入りをさせられ、軍を指揮させられたり、都市の行政を任され、根切りの命令を出す身となり、次第に闇を抱えていく。




 それから八年が経ち、陸奥守島津久保が急死した事で島津の家督騒動が巻き起こった。




------------------------------




「俺いは遠慮申し上げる」

 義久の孫で歳久の養子の忠隣が言う。

 既に歳久の養子でもあるし、謀反というか自立を果たした薩州家の血筋である事も気にして、忠隣は辞退をした。

 それは予想されていた。

 だが

「そいなら、俺いも遠慮申し上げもんそ」

「俺いも遠慮しもす」

「俺いも資格無かチ存じもす」

 一斉に拒否されたのは想定外だった。


 スパルタから駆け付けた島津義弘が見た目に怒りを噴出させながら、床几を叩く。

「なんじゃ、おはんら、島津の家督がそがいに嫌か?

 こん腐れ二歳にせどもが、理由わけを言え!!」


 最年長の豊久が語る。

「俺いにゃ当主は無理じゃ。

 散々頭が足りんだの、鉄砲弾のごたる男チ、莫迦にもされちょったでな。

 俺いが当主にでんなってみィ、ゆっさしかせんど」

 確かに、訪問国の重要人物の首を取ったり、反省がてら派遣されたイングランドで内戦の一方の当事者の軍を勝手に指揮したり、前科がある。

 それもそうだ、豊久に任せてはいけない、となる。


「俺いは東郷の家に養子に入った出戻り者。

 一度他家の養子に入ったで、父の家ならともかく、宗家を継ぐ資格はございもはん。

 それに、俺いが当主にでんなったら、兄サァはどねいなっと?

 俺いは兄サァを家臣扱いすっ事も、兄サァの暴走を止めっ事も出来ん!」

 本音は後半だな、と判断しつつ、なる程忠仍も無理そうだと一同は思う。


「俺いはこん中で一番若輩者。

 それに、俺いを親父おやっどサァから引き離したら、こん猪親父何すっか分からんぞ。

 手綱を持つもんが必要じゃろ」

「おい、又八、おはん親を何チな物言いすっとじゃ」

 だが、スパルタオリンピック計画での島津義弘の暴走を上手くまともな形に戻した忠恒は、確かに義弘の目付け役として必要だろう。


「いっそ、薩州家の又助殿(忠清)を養子に迎えたらどうじゃ?

 御館様の孫じゃろ」

「待てぃ、そいじゃと三郎次郎殿(忠隣)の立場が無かろう。

 弟が兄より上になっぞ」

「俺いは気にしちょらんが……」

「それに薩州殿(忠辰)の動きも分からん。

 耶蘇に取り込まれる元になるかもしれん」

「そうじゃ、俺いもおはんが島津の棟梁となっ事バ気にせん。

 源七郎、おはんがなれ」

「無理じゃ!

 仮に俺いが当主になったとして、兄サァは俺いを首投げしたり、裸締めしたり、五所蹂躙絡みで叩きつけたりせんと、約束出来っか?」

「う……うむ…………」

「大隅守殿(忠恒)、おはんは政治まつりごともよう出来るし、おはんが良か」

「ほお?

 俺いを当主にしたら、蹴鞠で居反頭越蹴足バイシクルキックが出来んものは戦場に出させんど。

 そいでも良かか?」

「……練習する」

「……俺いもじゃ」

「……大隅守殿、敵前回転浮鞠受サツマニアン・ルーレットに続く新技を作ったのか……。

 それはもう蹴鞠と言えっか知らんが、おはんが当主なら練習するわい」

「待て、おはんら、戯言ざれごとじゃ。

 こないな事で将を決めていたら、勝てる戦も勝てん」

「そうじゃ、又八、真面目にやらんか!」

「いっそ父上が跡目を継いだら良か」

「おお、そうじゃ。

 兵庫様が後継ぎになれば良か」

「おはんら馬鹿か!

 六十二歳の兄上の後に六十歳の俺いを跡目とか、意味が無かじゃろ!」

 確かにえんらくの後にうたまるでは長くは保たない。

「誰でん良か!

 早う後継ぎになり、帝都の亀寿姫と婚儀をすっとじゃ!」


 ここから流れが更に混沌となる。




------------------------------




「お断り申し上げます!」

 白人女性が入って来て怒鳴る。

義母ジャンヌさぁ

「おお、おはんがジャンヌ・ダルクか。

 会えて光栄じゃ。

 じゃが今は身内の話合い、出て行って貰おう」

「私は豊久殿の義母です。

 身内です。

 そして、私が居る限り、豊久殿に別の女性を近づけさせはしません!」

「武家は男児が何人おっても足りん!

 側室は必要!

 そいが分からんか!」

「我が娘が産めば良いのです!

 十人だろうと二十人だろうと!」

 シャーリーは母親がとんでもない事を言っているのを知らない。

 しかし、何故か島津義弘には気に入られたようで

「そん覚悟なら良か!

 又七! 二十でも三十でも子を産ませい!」

「俺いが枯れっわ!!

 五、六人が限度じゃ!」

 ジャンヌがニヤリと笑い、豊久は失言に気づく。

「聞きましたよ、婿殿。

 しっかりお願いしましたよ」


 複雑な表情で聞いていたのは、もう一人の既婚者で婿養子の忠隣である。

 一人男児はいるが、それでは足りない。

 舅の歳久から、無言の圧力を感じる。

 豊久が迂闊に五、六人と言った時、歳久から弟の家に対する競争心のようなものが忠隣に伝わって来た。

(ここは何も言わん事じゃ。

 阿に対しては吽。

 激流に対し激流で立ち向かっても、飲み込まれ、砕かれるだけだ。

 激流を制するは静水。

 激流に身をまかせ同化する……)


「亀寿と結婚するなら、又八(忠恒)か源七郎(忠仍)じゃな」

 豊久が話の流れを強引に戻した事に、忠隣は感謝する。

 逆に二人は(余計な事を……)と思う。


「俺いには許婚いいなずけがおっで、大隅守殿がここは相応しかな」

「源七郎殿、何を言いやる?

 亀寿は兄嫁じゃど!

 兄嫁を弟が奪うチ、小柴垣草紙エロマンガのようなもんじゃなかかい!」

「光源氏も朧月夜あによめに手を出したのだし、大した事は無か」

「大した事じゃろ!

 光源氏はそん後に、須磨に流されちょっじゃなかか!」

「いいから、又八どんが亀寿を娶れ!」

「嫌じゃ!

 なんで俺いがあげな女子おなご

 源七郎どん、おはん婚約解消して、おはんが娶れば良かたい」

「俺いかて嫌じゃ!

 ないごて俺いが許婚(いいなずけ)泣かせて亀寿なんざ娶らにゃならん!」

「おはんら、もうよか!!!!」


 見るまでもなく、島津義久の怒気が火花放電してるような感じにヒリヒリと伝わって来る。


「おはんらの性根は……よう分かった……。

 そげな嫌がる者に……惟宗島津の家督はやれん。

 薩州殿(島津忠辰)に書状を送り、又助殿(忠清)を養子に迎えっ旨……伝えるとする。

 ……皆の者、大儀であった」

 声は低く、足音は荒く、義久が奥に下がって行った。


------------------------------


「伯父御、怒っておったのぉ」

「ちと亀寿が事を悪ノリして言い過ぎたの」

「俺い等が従姉妹だし、ちと言い過ぎたで、気が引けるの」

「しかし、伯父上の背後に怒りの生霊スタンドバ見えやった気がすっな」

生霊スタンド

 六条御息所が夕顔の君や葵の上を取り殺した遠隔自律型アレか?」

「おう、我等も御館様の怒りに取り殺されんよう、気ィ付けんとな」

 かくして忠恒はアテナイに、豊久と忠仍は出水イズミールに戻って行った。

 忠隣は義父歳久と鹿児島から少し離れた日置に戻ると、有無を言わさず衣服を剥がれ、奥方(歳久長女・湯乃尾)の寝所に投げ込まれ幽閉される。

「おはんら、次に出て来る時は三人でな!」

 知将歳久もいい加減、焦っている。




 だが、島津家子世代がわざわざ集められ、争った事は単なる時間の無駄にしかならなかった。

 ビザンツ帝国皇帝コンスタンティノス11世が、島津忠恒を後継者に指名し、亀寿を自分の養女として嫁がせると言い出したのである。




------------------------------




「ないごてな!

 ないごて皇帝がわいらの家督に介入すっとな?」

 忠恒の非難の叫びが木霊する。


 主君とはそんなものではある。

 コンスタンティノス11世の頭には、ブルゴーニュ公が島津家久の嫡男の岳父になった事が意識としてあった。

 皇帝から見れば、あの最強の将イェヒ・シマンシュの一族は、ブルゴーニュ公、ひいてはカトリック陣営に取り込まれているのだ。

 そこで、シマンシュの宗家は正教会陣営に引き込みたい。

 シマンシュの宗家は、カトリック陣営のシチリア公の三男を養子に迎えようとしている。

 ならば、きっと家督相続したいに違いない、現サツマニア王の甥、アテナイ宰相として優れた政治をしている器量人を後継ぎにさせてやろう。

 聞けば、サツマン人らしい気の荒さは有るものの、ケマリという球技を愛する穏やかな人物だと言う。

 フィレンツェのコジモ・デ・メディチも、高い政治力と経済理解度を評価していると聞く。

 兄嫁と結婚しなければならない、それを憚って断っているのも、キリスト教倫理的に理解出来る。

 なんと慎ましやかな男なのだ!

 ならば、亀寿姫を皇帝の養女とする事で、一旦島津家から籍を抜き、兄嫁だった事を無かった事にすれば問題解決だ。


 そう計算した皇帝は、島津家に使者を送り、アテナイ宰相タナトス・シマンシュを後継者として帝都に送るよう命じた。

 義久は断っても良かったが、やはり次男の忠隣を差し置いて三男の忠清を宗家当主とする事を気にしたのと、アテナイで見せた忠恒の政治力を評価し、話し合い全てを無効とし、皇帝の勅命という形で忠恒を後継者に任じたのであった。

 確かに皇帝の目論見通り、島津義久に恩は売れた。

 だが、島津忠恒に対してはどうで有ったか……。


 忠恒は、泣く泣くギリシャとイタリアの蹴鞠リーグの経営権と運営を後任に引き継ぎ、帝都に向かった。




 そして、一連の話を聞いた亀寿姫は泣いていた。

「私って、何なの?」

おまけ:

(ひい)様、相すまんこってす。

男衆を箍から外して暴れさせたら、貴方様の運命だけはどげんしても変えられもはん。

又八郎どんを婿にした時点で、貴方様の運命はほぼ決まりもした。

多少まともに出来るか気張ってみます。

すまんこってす。

(ヒロイン(?)枠埋まってるしなあ)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 亀寿姫も蹴鞠を始めればいいんじゃないかな? ボールは友達! 気に食わん男衆の顔にドライブシュートじゃ!
[一言] そっちの意味で家督争いかぁ。押し付け合いじゃねえかwww。 薩摩藩での悪久公はまぁ、よくも悪くも戦乱が終わった安定期だからこその好き放題っぷりだったろうし、この世界なら大丈夫じゃないかなぁ…
[一言] まぁ、史実と違い親族がそれなりに居るから其処迄酷い事にはならんだろうが。
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