表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

第四話 滅びの火



第四話「滅びの火」




「…見失った!」


アラナはその場に立ち止まり言った。


「どこに…行ったんでしょう?」


「あいつ…赤髪だったよな…?」


アラナに続いて、ノアとハランも立ち止まり言った。

そして三人は息を切らしながら、追っている赤髪の青年がいないか、辺りを見渡す。





「あぁ、でも俺達が捜しているのは赤髪の女の方だけどな」


とアラナが言った。


「なら、王様が言ってた赤髪の…」


ハランは、そう言いかけるとノアが言った。


「はい、何かしら知っているかもしれません…」


「ここは、いったい何処だ…?」


青年を追いかけ、しばらく歩いていると三人はいつの間にか、人気のない村の集落にたどり着いていた。



そこには、何軒かの家が建っていたのか、焼けて崩れた痕跡が残っていた。


「火事でも、あったのか?」


ハランは家の焼け跡を見て、そう言った。




すると、背後から突然低い男の声が聞こえ、三人は思わず身構えた。


「この村に何のようだ?」


その男は高身長で、がたいの良い丸刈りの頭をしていて、強面な中年の男だった。


「…あなたは?」


ノアが聞くと、男は言った。


「先に聞いたのは俺だ」



すると、その男の偉そうな態度が気に障ったのか、ハランの隣にいたアラナの表情が変わった。



それに気づいたノアは、また失礼な事を言い出しそうな、アラナを阻止するように前に出た。


「…失礼しました、私達ハヌルの者でして、人捜しでミランダに来ました」


「人…」


「はい、赤髪の女を捜してるんですけど…」


何か、知っていませんか?そう言うとノアは男の顔を伺う。


「さぁ…知らねぇな…」


男は急に顔を背けると、三人は怪しい、そう思った。


「俺達、さっき駅の方で赤髪の男に遭遇して、もしかしたら何か知ってるんじゃないかと、追ってここに辿り着いたんです」


そして、今度はハランが話すと、男は目を合わさずに言った。


「赤い髪をした奴なんて、此処にはいねぇよ…」


「おじさん、なんか…?」


アラナがそう言いかけた時、ノアは咄嗟にアラナの口を手で塞ぎながら慌てた様子で言った。


「そうですか、分かりました!では失礼します!」


そうして、三人はその場を離れた。
















「おい!なんで聞かないんだよ?あのおじさんは怪しい!何か知ってるぞ?」


ミランダ街に戻ると、アラナは眉間にしわを寄せて、いらいらしている。


「はい、きっと何か隠してるでしょう」


ノアはアラナとは裏腹に、冷静な態度だった。


「じゃあ…!」


とアラナは言った。


「…でも、あの人に聞いても簡単に本心を話してくれるとは思えないな」


と考え込みながら、ハランが言う。


「はい、僕も思いました…ですから、街の人達に聞きに行くんです」


ノアは頷きながら同意した。


「そうか…何かしら手がかりが、あるかも知れない」


「はい!」


そしてハランとノアの二人は、先に歩き始める。


「おい、本当かよ?わざわざ遠回りして…」


とアラナは大きなため息を吐くと、仕方ないと言わんばかりの表情で、二人の後を追う。






そして、ミランダ中心街と書かれた看板を通り過ぎ、広場を歩いてる時だった。


ハランは、樹木の枝に風船の紐が引っかかっているのに気がつく、するとその瞬間、強い風が吹いた。


突然、吹いた強い風に、風船は揺ら揺らと低空飛行に、ハランの元へとやって来るのを、アラナとノアは唖然として見ていた。


そして、ハランは自分の元に来た風船の紐を手に取り握ると、まだ五才くらいの少年がこちらを、じっと見ていた。


すると、ハランは片手で風船を持ちながら、少年に聞いた。


「君の?」


ハランは少年と同じ背の高さにしゃがみ込むと、少年は頷いた。


「はい、これ」


そう言うとハランは少年に風船を渡す。


「おにいさん、まほうつかいなの?」


すると、風船を受け取った少年が、首を傾げながら言った。


あっ、しまった!という表情に変わるハラン、どう少年に説明しようか戸惑っていると、後ろにいたノアとアラナが、慌てて少年の近くに来ては言った。


「か!神様が!」


とアラナはわざとらしく、大きな声で言いながら空を指差す。


「あ!風の神様の仕業ですね!きっと…!」


とノアも説得するように凄い勢いで頷く。


そして特別な力を操れる事が、ばれないように三人は少年に向かって、ぎこちなく微笑む。


「そっか!ありがとう!風のかみさま!」


そう言うと少年は、すっかり信じた様子で、空を見上げながら、笑顔で風の神様にお礼をして走って行った。


「…おい、ハラン!」


「ハランさん、力の事は内密なんですから気をつけてください!」


「子供だったから誤魔化せたけど…次は無理だからな」


「本当ごめん、つい…うっかり」


とハランは申し訳なさそうに謝る。















そして三人は市場に着くと、果物を売っているおばさんに、赤髪の青年の事を聞いてみる。


「いらっしゃい、新鮮な果物はどうだい?」


「…では、りんごを三つ頂けますか」


そうノアが言うと、はいよ!とおばさんは紙袋を取り出しては、りんごを詰め始めた。


「あの、ちょっと聞きたいんですか…」


すると、ハランがおばさんに質問をする。


「ん?なんだい」


「俺達、この街で人を捜してるんです、赤髪の女って知ってますか?」


すると、おばさんのりんごを詰めていた、手が止まった。


「…カルミアの事かい?」


「…知っているんですか!」


ハランは、食いつくように聞いた。


「知ってるも何も、赤髪の女と言ったらカルミアしかいないよ…カルミアは火事で全焼してしまったルルド村の、村長の娘だよ」



再び、りんごを詰め始めたおばさんは話を続けた。



「心優しくて、この街でも知らない人がいないくらい目立つ、美しい容姿の娘だった…だが、カルミアは流行り病にかかり、亡くなってしまったんだよ…」


「亡くなった…⁈」


ハラン達は、驚いて顔を見合う。


「ええ、十年前に一人息子と旦那を残して、まだ若いのに…」


とおばさんは、少し涙ぐみながら言った。


「息子さんは、今…」


とノアが聞いた。


「シン?今日はまだ見てないね、店にいるんじゃないかい?」


「店…?」


「ええ、あの子の父親が花屋で庭師をしているからね」


「あの、もしかして…息子さんも赤髪ですか?」


「あら、そうだよ!あの子に会ったのかい?」


「はい、先ほど見かけまして…」


すると、ノアの隣にいたアラナが乗り出すように言った。


「けど、おばさん、そいつ店から何か盗んだみたいなんだ」


「盗んだ?」


「はい、小太りのおじさんが何かを盗まれたって言ってました」


と今度はハランが言った。


「小太り…?あぁ!ザックスのことね、村長の弟よ、シンのことをよく思ってないんだよザックスは、あの日以来ずっとね…」


「あの日、以来…?」


「詳しい事はシンの父親に聞きな、ハモンド・ナータリーって言えば、結構有名な庭師だよ、少し前までは王城に仕えていたんだからね」


おばさんが自慢げに言うと、ハランとアラナは咄嗟にノアの顔を期待の眼差しで見た。



「…いや、僕はその人…知らないです」


ノアは困りながらも、そう応えると、二人は少しがっかりした様子だった。


「そうか、知らないか」


「おばさん、その人は今どこにいる?」


「あぁ、今の時間帯だと…広場にいるね、荷馬車に花を積んだ花屋は見なかったかい?」


とおばさんは、時計を見て時間を確かめながら言った。


「ありがとう、おばさん!」


アラナが礼を言うと


「ありがとうございます!」


ノアも礼を言った。



そしてハランは金貨を払い、りんごが入った紙袋を受け取ると、おばさんが言った。


「はいよ!それと私は、おばさんじゃないよ!バーバラだ!」


「ありがとうございます、バーバラさん!」


そうハランが言い直すと、バーバラは微笑んだ。











ハラン、アラナ、ノアの三人は街を少し歩くと広場に出た。


そしてバーバラの言う通り、荷馬車に花を積んだ花屋を見つけると、驚いた事にそこには先ほど会った、強面な男が花を売っていた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ