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第十一話 信念



第十一話「信念」







速さには自信があったルナは、追ってくるチョーを何とかして撒いたが、このまま逃げ切れるとは思えなかった。



荒く吐く息を整え、ルナは角の隅っこで身を潜める。


「どこに行ったぁ?!ここからは逃げられなぁい!分かってるだろう?!」


チョーの声が段々と近くなるのが分かる、これからどう動くか思考を働かせていると、突然外の方から大きな音が聞こえた。




「あぁ?なんだなんだ?!」



チョーは外の方に気をとられていると誰かがやって来た。


「チョー、ルナがいないぞ?!」


「シカクかぁ、俺があいつをやる邪魔すんなぁ!」


「…チョー、おまえルナを逃したのか!あいつらが来たんだぞ?!」


「あいつらぁ?」


「あぁ、ルナのお仲間だ!ルナを助けに来たに決まってるだろ、何してんだてめぇーは!彼の方にばれる前にルナを探すぞ、急げ!」



二人はルナが身を潜めている方向へと歩みを進めてくる。





助けに…?俺が選ばれし一人だからか…好都合だ、俺も利用するだけしてやる。


ルナは音がした方が気になるが、なかなか諦めてはくれない二人に見つかれないよう息をころす。





段々と二人の足音は近くなる。




すると、シカクは大きなため息を吐くと言った。




「ほんと、お前はバカだなチョー」


「なんだとぉ?やるのかあぁ!?」


「はぁ、俺をやってどうするんだ………し!気配がする…!」


とその場に止まり、シカクは今にも何か言いだしそうなチョーの口を片手で乱暴に塞ぎながら言った。







…くそ、気づかれたか…!?





チョーとシカクはルナが隠れてる方へと再び歩き出す。






「そこにいるのは分かってんだぞ、諦めて出てこい!」


とシカクが言う。














「おぉ!やあっと出てきたかぁ!」


「大人しく戻るんだ、ルナ」


「おれが殺る!」


「チョー、何言ってんだ!殺すなんて彼の方が許しはしない!」


「でもよー、あいつは用無しなんだぜぇ?」


「…は?」


シカクは初めて聞いたと言わんばかりの唖然とした表情になっていた。





「その事なんだが、なぜ俺が用無しなんだ?器が他にいるって?」


すると、二人の前に姿を現したルナは問う。




「な、なんだと?!確かなんだな?チョー!」


シカクはチョーを見る。


「あぁ、彼の方とベリアルが話してたぁのを聞いたんだぁ!間違えじゃねぇ!ルカが死んだ後、神の器はルナお前じゃなくちげぇ奴に受け継がれたってぇな!」


と馬鹿でかい声でチョーは続ける。


「だから今夜、ベリアルに殺されるんだぁ!だったら俺がお前を今ここで殺る!前から気にくわない奴だと思ってたんだよぉ!彼の方と兄貴の力がなきゃあ、なんもできなぁい甘ったれのお子ちゃまにはよぉ!」









…ふん、何もない人間は用無しか…薄々感じていたが、それを聞いたルナは呆れて言葉もでてこない、むしろなんだか笑けてくる。兄貴も俺も利用されてただけか…。



真実を聞かされたルナはその場を立ち尽くす。



兄貴は力がない俺を守ってくれてた。神の魂を受け継がれし者で神の器でもある兄と何もない弟、双子なのにこんなにも違う。




そして兄貴は受け継がれた力を誇りに思っていた、いつか選ばれし仲間達とこの世界を平和にしてみせると言っていた。




なのに…兄貴から神の魂を受け継いだわりに俺は死んだ兄貴を生き返らすこともできず、無力な自分に嫌気がさす。





今日消える命ならいっそのこともう、兄貴のもとに行くか……生き返らせることができないんじゃ意味がない。



「兄貴が望んでいた未来、叶えられそうもない…な…」


そう呟き、絶望で弱気になっているルナはその場から動こうとしない。






「おぉ?もう降参か?そうだよなぁ!死ぬ運命ならいつ死んでも同じだもんなぁ!」


チョーは馬鹿でかい声を出し、ルナに向けて武器の斧を振りかざした。







「「ルナ!!」」





その時だった。




遠くから微かに聞こえた誰かの声と、ルカが俺の名を呼ぶ声が重なって聞こえた。




ルカ?!その瞬間、ルナの体は咄嗟に予備で隠し持っていた短剣でチョーの斧を止めた。



「おぉ!?どうしたぁ!やる気かぁ!?」



「やばいぞ!あいつらだ!」



「くそぉ!」



チョーとルナは短剣と斧でぶつかり合う。だが、力のあるチョーにルナは押されていた。





すると突然、室内なのに勢いよく風が吹き、そのせいでチョーは斧ごと吹き飛ばされ壁に突っ込んだ。



「チョー!」



シカクがチョーに駆け寄る。




ルナは体力減少で床に崩れ落ち、掌から短剣が離れた。



「ルナ!大丈夫か?」



ハランはルナの体を支えた。



「お、まえ…?」



「おい!おい!大丈夫かよ!」


シンはそう言いながら肩を揺さぶるが、ルナは眠るように気を失った。










ハラン達はルナを角の方へと避難させて、チョーとシカクの方へと向く。



ハランの風の力によってチョーも気を失っていた。





「悪いが、そいつを連れて行かれちゃ困るんだよな」


そう言うとシカクは武器の太刀を出した。




「ここで争う気はないです、僕達は貴方達のボスと話がしたいので」


とノアが言う。


「あ?彼の方と?!ふざけるな、彼の方は今は表に出ることはできない!まだ不完全なんだ!」



「不完全?」



「あぁ、その為に俺達が動いてる神の心臓とその器が必要だからな」



「…器?」



「だから、お前達に動かれたら困るんだよ!神を復活させようとしてるだろうが、そうはさせねぇ!」



「神を復活させることはしない」


今度はハランが言った。


「はぁ?」



「だが、心臓を渡すことはできない」



「なんだと…?!」



「あんた達が何企んでいるかは知らないけど、あんた達の思い通りにはさせない!神の心臓は俺達が封印する!」




「封印する?!お前ら何言ってるのかわかってんのか!」



シカクは驚いた表情をさせながら言った。



「神の心臓を封印させるだと?だったら尚更ここでお前らは死んでもらわないとな、彼の方が復活できない」





シカクはお得意の二刀流と何かの武術のような動きでハラン達に迫る。





「待て」



そして低音で冷たい声が聞こえたかと思えば、その声と同時にシカクの動きが止まった。



「ベリアル…!」



その男の周りから殺気が物凄く、重たい空気が纏う。そのベリアルと言われた長髪の男はハランの前に立つと話し始める。






「貴様ら、そいつを連れてどうする?」


「神の心臓を封印する」


とハランはベリアルの目を見て言った。


…ふ、とベリアルは静かに頬を緩ませたが一瞬にしてもとの表情に変わる。


「…何が可笑しいんだ?」


「そいつを連れて行っても無駄だ、貴様らの思い通りには動かない、そいつは神を復活させる事が目的だからな」



そうだ、例えルナを連れてセデラルに帰っても俺達四人の意思だけが同じじゃ意味がない、五人の意思が同じじゃないと…ルナの意思が変わらない限り、心臓を封印する事はできない。



「わかってる、それでもルナを連れて帰る…!」



今度は、大きく腹を抱えて笑うベリアルにハランは驚いてベリアルの顔を見る。




「…悪いが人の心というのは、そんな簡単に変わる事などない」





笑いが落ち着いたのかベリアルは話始める。





「そいつが貴様らにとって最後の希望なのかも知れないが、せいぜい頑張ると良い、それより先に彼の方が復活する」





彼の方…?





「チョー!大丈夫か?」


シカクが言った。


すると、さっきまでハランの風の力によって気を失っていたチョーが目を覚ました。



「てめぇー!逃がすかぁー!」



と怒りに狂ったチョーが武器を振り回してハラン達に襲いかかって来る。



「やめろ」



だが、ベリアルの低音で冷たい声でチョーの動きが止まった。



「今回は見逃すが次はないと思え」


とハラン達にベリアルは告げる。






そして、ハランは気絶しているルナを抱えて、四人はその場を離れると、暫くして遠くからチョーの叫ぶ声が聞こえた。





「くそぉぉぉー!」









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