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第十話 それぞれの覚悟


第十話「それぞれの覚悟」







あれから数日が経ち、ハラン、アラナ、ノア、シンの四人はまだセデラルに滞在していた。




その理由は、選ばれし者の最後の一人が見つかり五人が揃った事によって神の心臓が反応した。




そしてどうしてかは分からないが、それと同時にハランの弟レオンの容態が急変したからだ。




医師のドミニクによるとレオンの心臓は段々と弱ってきていて、神の心臓が反応したあの時、確かにレオンの心臓が一瞬止まったと言っていた。




早くしなければレオンの心臓が持たない、早く神の心臓をレオンに移さなければ…ハランは逸る気持ちを抑えて考えていた。




「ハラン、少し寝たらどうだ?」




すると、アラナが病室にいるハランに声をかけた。ろくに何も食べずに、ずっとレオンの側をつきっきりなハランをアラナは心配していた。椅子に座り、少しやつれた顔をしている。



「あぁ、大丈夫…」


「…あのな、そんな顔されて言われても説得力ないんだけど…」


「え…?」


「目の下のくま凄いし、顔色も悪いしやつれてる、俺は医者じゃないけど、それくらいわかるよ…」


「ドミニク先生にも言われた…」


「だろ?だから休めよ」


「でも…俺が休んでる間に、もしレオンの身に何か起きたら…て考えると気が休まなくて…」


するとアラナは大きく溜息をつくと、下を向くハランの肩を掴む。




「あのな、俺達だろ?今はお前一人じゃないし俺達もいる、俺もノアもシンもレオンのこと心配なんだよ!」


「…そうです!僕達を頼ってください!」




そうアラナが言うと、少し隙間が開いている扉の間から突然声が聞こえた。



ハランは驚きながらも声がした方へと顔を向ける。



「交代でレオンの様子を見ようぜ!な!」




いつ出て来ようか様子を伺っていた、ノアとシンが隙間からひょっこり顔を出して微笑む。




「こいつらも声かけづらいんだよ、そんな顔してるから…」


「二人とも、ごめん…心配させて!」



ハランは椅子から立ち上がりアラナ、ノア、シンの顔見る。



「ありがとう、じゃあ少し休ませてもらおうよ」



ハランは申し訳なさそうに言うと立ち上がり病室から出た。




そして、閉めた扉を背にハランは立ち止まり一呼吸つくと歩き出した。




あまり自分の家に帰るのに足が進まなかった。いろいろな大切な思い出が蘇って、一人だとより一層鮮明に思い出してしまうから




もう戻らないあの幸せな時を思い出すと、涙が溢れてでてきてしまう。




ハランは少し歩く速度を上げて扉を開ける。

















「おかえり」




そこにはカウンターでゼンがハランの大好物カレーライスを作って待っていた。




「ただいま」




そう、ハランが帰ってきた先は自分の家ではなくイチゴイチエだった。




カウンターの席に座るとゼンが言った。




「その顔は何か言われたんだろう?あいつらに」



とゼンは少し笑みを浮かべながら食器を洗っている。



「うん、もっと俺達を頼ってくれって、お前は一人じゃないんだからって…」


「…俺、頼るのに慣れてないというか…みんながいるのに自分だけで何とかしようとしてた、気をつけないとレオンだけじゃなくて、みんなまで失ってしまう気がする…」



「ふーん、そうか?あいつらはそんな事でお前のこと見捨てたりしないと思うぞ」




ハランは静かに頷くとゆっくり話し始める。




「…だから正直、どうしてこんなにしてくれるのかわからない…

だって、神を復活させればみんなの願いは叶うのに…俺の願いの為に自分の願いを犠牲にしてる」


「ルナ?が言ってたことは事実だ、みんなに協力してもらうなんて綺麗事で本当はみんなを利用してしまっているんじゃないかって!」




「覚悟はあるんだよな?」


「…え」


「それだけ助けたいんだろう?」


「助けたい…俺の命に代えてでも良いからレオンを助けたい!」


「なら、みんなは利用される覚悟できてるんだろう、だからお前は堂々とあいつらを利用すれば良い」


「…みんなに、どう感謝してもしきれない」


「じゃあ、ハランは全てが終わったら恩返しなきゃだな」




ハランは目に涙を浮かべながらも大きく頷くと、ゼンが作ったカレーライスを頬張る。

































「次ここから脱走しようとすれば、お前の命はないと思え」




長髪の男はそう言うと部屋の扉を閉める。




「…くそ、このままじゃ…!」




ルナは両手を強く握りしめる。




確かに、あいつらが言っていた選ばれし者と神の心臓は何か関係しているのかも知れない。実際に五人が集まり心臓が反応した。ならば、神を復活させるにはあの四人は必要なのか…。




そんな事を考えていると、突然扉が乱暴に開いた。外から入ってきたのはチョーだった。




「残念だったなぁ、今度こそ逃げきれると思ったのになぁ」




いつも声が大きなチョーは何故か小さな声で徐々にルナに近づいて来る。




「…」


「なあ、知ってるかぁ?お前がもう用無しなのはぁ?たまたま聞いたんだよぉ」


「…何をだ?」


「ルカが死んだらぁ、弟のおまえに受け継がれるのかと思ったのになぁ、別の奴が神の器をもってるだからお前じゃない、お前はもう用無しなんだよぉ」



ガハハ、と馬鹿笑いするチョーは続けた。



「お前はここで死ぬんだぁ」


「なんだと、そんなはず…」


「だから今ここで、この俺様が親切にお前をさくっと殺しちまおうかってぇ、どうせ死ぬんだぁ?悪くねぇだろう?」




こいつ狂ってる、殺気を感じたルナは徐々に後退りする、今何も持っていない状態でこいつを相手するのは危険すぎる。




チョーの使う魔術は力で、力を上下自由に操れることができる。そしてチョーは重たい大きな武器を持ち戦う。力で勝てないルナは焦りを感じていた。




速さで万が一逃げきれたとして、その後どうする?ここには俺の味方はいない、すぐにまた捕まる。




そしてルナは唾を呑み込むと覚悟を決めた。



























「つまり、俺達は何者なのかわからない奴に攫われたあいつを助けに行かねぇと駄目ってことだな!」


「はい、簡単に言うとそうです」


「でもさー、協力してくれる感じじゃなかったぜ?」


「問題はそこだよな」




テーブルを囲み、シン、ノア、アラナは乗り出すように作戦会議を始める。




そこにゼンがやって来てはテーブルにコーヒーがそっと置かれる。



そしてコーヒーの香りが漂う中、先ほどから黙っていたハランが口をあけた。





「もし、俺達が神を復活させる方向に進めれば…」




と言いかけてアラナが遮る。




「は?ハラン本気で言ってんのか!あいつの目的は神を復活させて死んだ兄を生き返らせること、禁忌を犯そうとしてるんだよ!俺達がそれに手をかしたら、どうなるか分かってるだろ?」


「…」


「ハランお前、また同じことをしようとしてんのか!」


「…わかってるよ、生き返らすことはだめだってことは…!」


「じゃあ…!」


「でも、神の力を返して復活させて神の力でみんなの願いも叶って全てがうまくいくなら、俺はそれでも良いって思ってる!」






沈黙が続く中、ノアが話し始める。




「確かに、全てはうまくいきますね…」




少し俯き加減に言った。




「けど…僕達、人々の未来はないです、神を復活させればもう後には戻れない、現に今争いが起きていますが、それ以上に酷い事になります…」



「この国もこの世界も…きっと滅びます」



「だから、父が神の心臓を誰にもわからない場所に封印したんです」



「ご、ごめん…!俺また無神経で自己中なことを…!」



「いえ、良いんです…誰もが望む世界は神が存在する世界です、王じゃなく神が全てですから…」



とノアは少し寂しそうに儚げに頬を緩ませた。






「もし神を復活させるなら俺は協力できない!」


「アラナ…!」



アラナは真っ直ぐ見つめて言った。




「俺は世界が滅びるなんて、ましては俺が愛する故郷がなくなるなんて絶対したくないんだよ!」




「帰る場所がなくなるのは嫌だよな、俺の過ちでルルド村はもう無えけど、俺も建て直す為に神を復活させない選択を選んだんだ」



とシンが言った。




そしてハランは再び謝罪する。




「みんな、何度もごめん…神か復活することで世界が滅びるなら…」







「そんな世界誰も望んでない」


さっきまで近くで聞いていたゼンが言った。



だろ?と微笑む。一斉にゼンの方へと振り向くと、ゼンはテーブルに何かを置いて言った。



「今度、甘い系も出してみようと思うんだけど…どうかな?」



とハラン達の目にうつったそれはプリンアラモードだった。




「…美味しそう!」


「味見しろってこと?」


「うわぁ、僕初めて食べます!」


「また、初めてかよ!逆に何を食ってんだ?お坊ちゃんは!」


「お坊ちゃんて言わないでください!」



とハラン、アラナ、ノア、シンはほぼ同時にプリンを口に運ぶ。






「「美味い!」」


ハランとアラナは言った。



「ありだな!」



シンは何故だか上から目線な口調で言うと、隣にいたノアは美味しさのあまり言葉にできないのか、何度も頷きながら感動している。




「そんなに喜んでくれると作り甲斐があるな」


とゼンは嬉しそうに微笑む。





「よし!美味しものも食ったことだし最後の一人を助けに行きますか!」




「なんでお前が仕切るんだよ」


とアラナは腕を組み不服そうに言った。




「おい!俺は!お前らより年上だぞ?」


シンは他の三人を順番に指差す。




「はいはい、動きがうるさい」


「おい!なんだその態度は!」


と軽くあしらうアラナの態度にシンは腹がたったのか怒鳴る。




ほらほら二人とも良い加減にしろ、とゼンは言い合ってるアラナとシンの間にはいる。












「俺…!」




すると、急に大きな声をだしたハランにみんなの動きが止まり、視線はハランに集中した。




「みんなが覚悟を決めている中、俺は心のどこかでまだ覚悟ができてなかったのかも知れない…神の心臓がレオンの体に封印出来なかったら、もし失敗したら…!神を復活させなかったこと後悔しそうで…怖かった…!」


「でももう、迷ったりしない後を引いたりしない!前に進む、みんなと!」




ハランはその場を立ち上がる。




するとアラナ、ノア、シンの順に立ち上がる。




「今、覚悟を決めたから!だから、行こう!最後の一人を救いに!」




三人は頷く、大事にしっかりと。










「けど、遅い…」


とアラナはわざと不貞腐れたように、ぼそっと呟く。


「ごめんて…!」


焦りながらもハランは尽かさず謝る。






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