07
投稿ミスで06と07が同じ内容になっていました
修正します、すいませんでした
街の外へ出て街道から少し外れた所へ来た
「これに乗って行くぞ」
シンシアが何か呪文を唱えると何も無い所から大きな馬が現れる
「あの…これ馬じゃないよね?デカイしゴツいし質感もなんか違う」
「儂が作った馬型ゴーレムじゃ、速くて強いのに従順だぞ」
「俺、普通の馬すら乗った事ないけど大丈夫かな?」
「大丈夫じゃ、儂の作ったゴーレムなんじゃから」
(今からお前が作った暴走ゴーレムを取り押さえに行くんだけど?)
そうツッコミたいがぐっと堪える
要らん恨みを買って報酬を下げられたらたまったもんじゃ無い
馬型ゴーレムが膝を曲げて身を低くしたので小柄なシンシアでも簡単に背に乗れた
俺も覚悟を決めてシンシアの後ろに座る
そしてゴーレムは俺たちをのせたまま立ち上がった
よく知らないが、おそらく普通の馬ならできない乗り方だろう
「では行くぞ、しっかりと掴まっておれよ!」
そう言うとシンシアは馬型ゴーレムを勢いよく走らせた
「あーーーーーー!速い速い速い!」
「並の馬なんぞ比べられん速さじゃろ!」
「待て待てマジ速いから!コレはダメなヤツだから!いやほんと怖いって!マジで!」
「そうじゃろう!このゴーレムは自信作なんじゃ!すごいじゃろー!」
「お前話聞いてんのか!だから速すぎだって!マジで怖いって!」
「うむうむ!お主なかなかよい反応をするのう!」
「あーーーーー!木があぶなっ!」
「おおぅ!今のはちと危なかったのう!」
「お前マジふざけんな!シャレになんねーっての!あーーーーー!」
「アハハハハハハハハッ!楽しいのう!」
一時間ほど走らせてようやく目的地の近くまできたのか、馬型ゴーレムは速度を落とし始める
「お主よ!乙女を何だと思っておるのじゃ!儂の体を無遠慮に弄りよって!この非常時に何をしておるのじゃ!」
「無茶言うなよ…あんなに飛ばすから落ちないように必死にしがみ付いただけじゃないか。そもそも起伏もなん無いのに乙女とかどの口が言うか」
「な…なんて事を言うのじゃ!しっかり出るとこは出ておるわ!散々揉みしだいておいてなんて言い草じゃ!」
「ああ、あれ腹じゃないのか、悪い悪い」
「あーー!言ったな、お主それを言ったな!それはもう宣戦布告と見なすぞ!泣いて詫びを入れたくらいでは許さんからな!」
お互いハイテンションなまま一時間も密着していたからか、テンポの良い掛け合いが出来る程馴染んでしまった
ちなみにこの内容のやりとりはもう3回目だ
「まぁ冗談はこの辺にしとこう。例のゴーレムはどのあたりにいるんだ?」
「むむ、今のを冗談で流されるのも業腹じゃが致し方ない。そうじゃな、ここから歩いて数分かの。そこで儂の結界で封じてある。まだ保っておれば良いのだが…!」
そこで言葉を切ってシンシアが警戒を強めた
ほぼ同時にフィーからも警戒心が伝わる
「タツキよ…」
「ああ、こっちでも補足した。あと数秒でここにくる!」
急いで馬型ゴーレムから降りて戦闘態勢に入る
「では手筈通りに頼む!気をつけるのじゃぞ!」
「任せておけ!」
お互いの視線が交差した次の瞬間、林の奥から高さ3メートルを超えるゴーレムが現れた
バギバギと音を立て進路上の木を薙ぎ倒しながらこちらへ向かってくる
その速度は常識外れなものだった
(あんなデカくて重そうなのになんて速さだ…)
本来なら攻撃力・防御力に特化したゴーレムは動きが遅い
さっき移動に使った馬型ゴーレムなどはかなり特殊な例だろう
シンシアが技術の粋を結集して作り上げたと言うだけはある
「ではゆくぞ!強制停止!」
打ち合わせ通り、まずシンシアが手をかざし管理者能力を発動する
暴走ゴーレムの動きを遅くする事は成功したが、シンシアの表情は厳しい
「うむぅ、止まらぬか!それに長くは持たぬ!」
事前に聞いた通り、ごく短時間しか効果を持続できないようだ
俺はスリングを構える
ゴーレムまでの距離は約8メートル程
下から掬い上げるよう振り上げ、素早く腕を下に振り切る
ビュン、と音がして暴走ゴーレムへ小瓶が飛んでいき、右膝に当たると砕けて中の液体が飛び散った
言うなればクイックモーション的な投石方法だ
射程は短めで威力も低いがスリングを1回転だけで投げるため、速射能力に優れている
中距離での使い勝手は抜群である
間を開けずにスリングを構え直し同じく左膝を狙う
続けて両肩と股関節を狙いスリングで小瓶を投げつける
再び両膝を狙っているとゴーレムが少しずつ速く動くようになってきた
「すまぬ、限界じゃ…」
疲労困憊でふらつくシンシアには後ろへ下がってもらい、ここからは俺一人で暴走ゴーレムを引きつける
敢えて走って近づき暴走ゴーレムの間合いに入った
「お主!それは無謀じゃ!」
シンシアが叫ぶ
しかし急にゴーレム動きが鈍くなり、ガリガリと音が聞こえてきた
振り下ろしの拳が俺へと向かって来るが、足を止めずに最低限の動きで回避してそのまま股の下をくぐり抜ける
ぎこちない動きでゴーレムがこちらへ振り返るが、俺は構わず各関節を狙いスリングで小瓶を投げつける
暴走ゴーレムはかなりゆっくりとした動きになっていた
ゴーレムが近づいた分だけ後ろへ下がり、スリングで先程と同じく各関節を狙い続けた
そうしてとうとうゴーレムは身動きが取れなくなる
「シンシア、前と後のどっちに倒す?」
シンシアは信じられない、と言った表情でこちらを見ていた
「…お、おお!仰向けで頼む!」
「了解」
インベントリからさっきの倍の長さのスリングを取り出しで構える
投げる瓶のサイズも倍の大きさだ
今度の長いスリングは頭上でヘリコプターの様に何度も旋回させてから投げる
ビュゥン、と低い音がした刹那、大きな鈍い音があたりに響く
暴走ゴーレムの頭に投げた瓶が当たり、固まった体勢のまま仰向けに倒れた
「念のためもう少し離れて待とう。あと数分で完全に動かなくなるはずだ」
そう伝えるとシンシアは複雑な表情をして仰向けに倒れたゴーレムを眺めていた
「これでいいはずなのじゃが、こうも呆気なく無力化されてしまうとは…」
このゴーレムは暴走してしまったが、性能だけなら最高の出来だったらしい
ゴーレムマスターとしての誇りを傷つけてしまった様だが、さすがにそこまで面倒を見きれない