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となりの世界は魔法世界  作者: きの
第2章 双つの生命
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第31話 シアの、行き先

「あれからもう2週間近く経つんですね」


 感慨深げにエルが顔をあげる。過去を思い出していたようだ。


「常連さんも出来たんだって? 良かったね」


「はい、お陰様で!」


 花に負けないくらいの笑顔が眩しい。


「あの……」


「すいません」


エルがまだ何か話したそうな雰囲気だったが、お客さんが来てしまう。歩は軽く手を振った後、この場を離れるのであった。



――その日の夜、営業後のグレッグの店内にて


「さて、皆揃ったようなので、始めるとしよう」


 声を発したのは、白衣姿の亜紗だった。その場にいる者は、歩、真春、グレッグ、そして、


「あ、では私からいいですか?」


「ああ、麗羽くんか。問題ない」


 覇道麗羽がいた。向こうの世界と同じく着物姿である。


「というか、何で麗羽さんがいるんでしたっけ?」


「歩さん、酷いわ~。あんなに私のことを口説いてたのに」


「歩?」


「え!? いや、姉ちゃんあれは違くて……」


「なんじゃ、気が多いやつじゃの」


 パン!

 小気味良い音のした方を見ると、亜紗が手を叩いて皆の注意を引いている所だった。静かになったことを確認した亜紗がわざとらしく咳をする。


「麗羽くんは博物館の件でも裏で尽力してくれた。今回から事態を知るオブザーバーとして参加してもらっている」


「なるほど」


 歩が目を当人に向けると、ひらひらと手をこちらに振っている。真春も疑惑の目線を向けていたが、そっちはスルーすることにした。後が怖かったが。


「で、麗羽よ。続きを」


 グレッグが麗羽に話を促す。


「ああ、はい。博物館の方ですが、魔力濃度を測定しました。数値的には、異界への扉は閉じているかと。今も辺りは封鎖してます」


「うん、それについては私も同意見だ。扉は閉まっているとみて違いない」


 亜紗が頷く。彼女が賛成することで俄然説得力が増していた。


「で、シアの方はどうなんだ?」


 グレッグが急かす様に亜紗に問いかける。亜紗はいつもと変わらぬ涼しい顔で淡々と告げた。


「ここ2週間ずっと魔力も含めた診断をしていますが、数値に異常はありません。ずっと目覚めない原因だけが分からない状態です」


「シアちゃんが目覚める可能性は?」


 皆が聞きたかったことを真春が代表して聞いた。聞きにくいことを彼女は毎回ズバッと言う。


「分からない。明日目覚めるかもしれないし、目覚めないかもしれない」


 静寂が辺りを支配する。重苦しい空気に耐えられなくなったのか、麗羽が手を挙げた。


「あのぅ、本当になんの異常も手掛かりもないんですか?」


「……1つ気になっていることはある」


 亜紗が手元のデータを再度見ながら答えた。


「なんじゃ?」


 グレッグが身を乗り出す。亜紗に詰め寄るような勢いであった。グレッグの普段からは想像できない様子に戸惑いながらも、亜紗が机に資料を置き並べる。


「シアちゃんのデータです。ここを見て下さい。意識が戻らない時から、ずっと魔力が微かに漏れ出ている」


「魔力が……」


 皆、考え込むような仕草をする中、歩だけが頭にクエスチョンマークを浮かべていた。


「あの、魔力が漏れ出ているのは変なんですか?」


 その言葉に8つの目が一斉に歩の方へ向く。この世界に来てから日が浅いことに気付いた亜紗が解説をした。ここにいるメンバーには、歩と真春、麗羽がアウェイカーであることは話してある。


「通常、人間の体から魔力が漏れることはない。人は魔力を溜めこむ構造をしているからね。あるとしたら、魔力暴走時だが、こんなにも長期間漏れ出ることはあり得ないんだ」


「そうね、でもシアちゃんから魔力が漏れ出ているとして、それが何を示すのか……」


 真春が考え始めるのと同時に、再び沈黙が訪れる。今度は誰もが思案顔になっていた。そんな中、


「ああ、それは分かってました」


 そう答えたのは歩だった。


「何? 知っていたのか?」


 亜紗が驚いた顔で歩の方を見つめる。他の皆も同じような反応だ。その反応を気にすることなく、歩が言葉を続けた。


「自信が持てなかったので、言えなくて。それよりも、その漏れ出た魔力の行き先を探ることはできませんか?」


「魔力の行き先じゃと?」


 分かるのか?という表情でグレッグが亜紗を無言で見やる。


「ふむ、魔法省で開発中の新らしい魔力検査機を使えば大丈夫かと。ですが、入手が……」


「ああ、それなら家が資金援助してる代物さかい、何とかなりますわ」


 亜紗の懸念を麗羽がすぐさま払しょくする。


「待て。シアの漏れ出ている魔力の行き先が分かったとして、どうなる?」


 グレッグが当然の疑問を口にする。その口調には期待と疑念が入り混じっていた。それをかき消したのは、歩の確信に満ちた声だった。


「シアの行き先が分かります。きっとそれは……」


 歩が指差した先にあるものは――博物館の方向、異界に通じる扉がある場所だった。

次は1週間後予定です

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