第20話 戦いと、乱入
一方、亜紗と沙良の戦いは激しさを増していた。
「降り注げ、光の雨!!」
沙良が杖を空間に一振りすると、何十もの光り輝く魔法の矢が現れる。その矢は全て亜紗に向けられていた。
無数の矢の雨が放たれる。
「小さき者よ」
全く動じていない亜紗が言葉を発する。
すると、彼女の周りに黒い小さな球が幾つも現れた。
「行け」
亜紗の言葉に反応するかのように、小さな球が礫のように光の矢に向かって飛び出していく。
魔法同士が衝突し、爆発音が次々と起こった。
ようやく音が鳴り止む。恐ろしいことに2人とも無傷で立っていた。
亜紗の魔法が光の矢を全て撃ち落としたのだ。
「光の奔流!」
普通の人間ならば無傷ではすまない攻撃を防がれ、意気消沈しているかと思いきや、沙良は即座に次の魔法を繰り出していた。
巨大な光の渦が魔法杖に収束し、一気に放たれる。光の台風とも言える攻撃が亜紗を狙った。
直線上にいた、軍の特殊部隊が為すすべもなく倒れていく。
「飲み込め」
博物館内が激しく揺れ動いていた。その暴風の中を真正面から亜紗が漆黒の魔法で対抗する。
先程よりも大きな黒い球体が、沙良の魔法を飲み込んでいく。
「君の魔法は素晴らしい。どれだけの鍛錬を積んだのか。だが、光は闇を飲み込むものだよ」
光の渦が全て飲み込まれようとした時、亜紗の目に飛び込んで来たのは、自身の魔法を利用して眼前に迫る沙良だった。あろうことか、光の渦に飛び込んできたのだ。
その手には魔法で作られた光の剣を構えている。
「ッ! 広がれ!」
亜紗が咄嗟に魔法で盾を展開する。
直後、魔法と魔法がぶつかり合う激しい音が響いた。
「さすが、魔法使きっての天才と呼ばれるだけはありますね」
「接近戦は苦手なんだがな……」
剣を受け止めた亜紗の表情は冴えない。
沙良が光の剣に力を込めていくと、徐々に亜紗が押され始めた。
「私はあの人の剣になることを決めました。あなたたちのような旧態依然の名家がいなければ…!」
沙良の執念にも似た思いに応えるように、光の剣が輝いていく。
ちょうどこの時、マハルとトウザの戦いに決着がつこうとしていた。
その気配と魔力を察知した亜紗が、叫ぶ。
「マハル!?」
「あら、余所見をしてて大丈夫です――か!」
遂に、亜紗の魔法盾にヒビが入る。
「ッ!」
だが、光が闇を貫くことはなかった。
両者だけでなく、その場にいる全ての者が動きを止めざるを得ない出来事が起きたのだ。
「何の真似だ? 小僧」
トウザの刀はマハルではなく、自分に向けられた何かを斬っていた。
左手を見ると、真っ二つにした石ころがある。それは、朽ちたショーケースの小さな欠片であった。
トウザが犯人へ目を向ける。
その視線が捉えたのは、いつの間にか近くに来ていた歩だった。
「すまないけど、大切な姉ちゃんなんでね」
「姉……?」
この世界のマハルに兄弟はいない。
歩の答えに眉をひそめるトウザだったが、自分の注意を引くための戯言と判断した。
「何にせよ、邪魔をするなら……」
ほんの数秒、歩から意識を外しただけ。
次にトウザが気付いた時には、歩がマハルの目の前にいた。
「!」
「アンタは昨日の……」
今初めて歩の存在を認識したマハルが驚きの表情を浮かべる。
一方の歩はマハルの様子を気にすることなく、その首に掛かっている古ぼけたペンダントに手を触れる。
「それに触るな!」
「姉ちゃん、悪い」
あろうことか、歩はマハルに抱きついていた。
直後に眩い光が辺り一帯を包んだ。




