第13話 自分?との、対話①
「そう怖い顔をするな。まずは、座って話そうじゃないか」
眼鏡を掛けた一条歩がソファに座るように促す。
警戒しつつも、歩は来客用のソファに座った。
お互いが向かいあうように座った所で歩が話を切り出す。
「君がもう1人の一条歩だって? 自分に似ている人は世の中3人はいるらしいよ」
「間違いなく俺はこの世界の一条歩だよ。お前だって、無意識に気付いているはずだ。似ている云々ではなく、俺たちは存在が同じだと」
「……」
いくら言葉や頭で否定しようとしても、歩の体は頷いてくれなかった。
冷や汗をかきながらも、歩は当初来た目的を思い出し頭を無理矢理切り替える。
「それより、シアに会わせてくれないか?」
「それを話す前に、一条歩という名前が2人いては混乱するだろう。俺のことは零と呼んでくれ」
口角を少し釣り上げ、不敵な笑みを浮かべる。
本来なら腹の立つ態度だが、この男に限っては不思議と似合っていた。
「……シアは?」
「彼女は元気だよ。怪我ひとつない。ただ、ここではなく、我々の別のアジトにいる」
「別の場所だって?」
零の答えに歩は内心舌打ちする。
「心配するな。こちらに協力してくれれば、明日にでも解放することを約束する」
「協力? 何を僕にさせる気なんだ?」
「望むのは1つ。……世界を変える手助けを一緒に頼みたい」
冗談とは程遠い面持ちで答える零に対し、
「は?」
思わず間抜けな声が出る歩であった。
零の隣に座った沙良を見るが、相変わらず涼しい顔をしている。
「お前も、この世界での魔法使がいかに横暴なのか見ただろう? 俺は、魔法が使える者が全てを支配するこの世界を変えるつもりだ」
零の口調は真剣そのものであった。
それに加え、瞳に宿る決意を見て、歩も真面目に答える。
「なぜ僕が必要なんだ?」
「……この世界の建国王を知っているか?」
「? 確かアースオールだったような」
「そうだ。突如この世界に現れ、戦乱の世を統一。平和を取り戻したアースオールは――お前と同じ異世界からの来訪者だよ」
突然の告白に言葉が出ない歩に対し、零は口調穏やかに話を続ける。
「順序だてて話そう。今から千年前、この世界は戦乱の最中だった。乱立する国、衝突と戦争。更に追い打ちをかけたのが、異世界からの侵略者だ」
「異世界からの侵略者?」
「侵略者は魔族と呼ばれていたらしい。魔族は強大な力を持っており、瞬く間にこの世界を蹂躙していった。……そこに彗星のごとく現れたのが後の建国王アースオールだ」
「アースオール……」
歩が独り言のように呟くが、零は話を続ける。
「アースオールは人間でありながら、別次元の力を持っていたと言われている。その力と、後に大魔法使と呼ばれるグリン・サンデーと協力し、魔族を撃退することに成功。魔族が来たと言われる異界への扉を封じ、この国を建国したとされている。建国後、戦で功を挙げた魔法使に地位を与えた。そして今では、魔法を使えるどうかで人生が左右される世の中になったわけだ」




