宿屋少年のファイ
ファイは、自分が手伝いをしている酒場『ポックリハゲタカ亭』に併設されている宿『火ノ神寝室』の一室へとミサキを連れてくる。
「お前、東の国から来たってことは踏破者ってことか!?」
「う、うんまぁそういうことになるかな」
話がかみ合わないような感覚をうけ頭の上にクエスチョンマークを浮かべるミサキ
ファイは、飲み物を持ってくる。ファイは、ミサキに対して好奇の目を向けながら話す。
「へー、名前はなんていうんだ?」
「えっと、私の名前は月明美咲っていいます。美咲って呼んでくれると嬉しいな」
美咲は、ファイが持ってきた水を飲む。喉元で水がパチパチと弾ける。
「炭酸水……?なにこれ?」
「おっと、すまねぇ。東から来たってことは硬水なんだっけな。ここ軟水なんだ」
(なんすい……?お水に固い、やわらかいがあるなんて、さすがインドねー)
「それにしても、君が日本語を喋れてよかったよー。……アニメのお陰かしら」
「?。何を言ってるのかさっぱりわからねぇが。なぁなぁ、踏破者ってことは何かしらの能力とかギフトとかか使えるんだろ!?見せてくれよ!!」
「?なにそれゲームの話……?」
ファイは、そこで何かに感づく。
「あっ、もしかして魔物の毒か呪いのせいで記憶がねえのか?」
少女は、そこで少し考える。そういえば、インドの記憶があまりない。
(もしかしたら、薬か何かをあの赤い女の人達に盛られた可能性がある……?)
「そうかも……気が付いたら赤い建物の中で目が覚めたし……」
「へー、神殿の中か」
「まぁ、そーいう事になるのかな?」
「――――ねぇ、記憶を取り戻す方法はないの?」
「俺もそこまでは知らんなぁ。神官様に聞いてみねえと」
「わかった。わたし行ってみる!」
ミサキは、飛び上がるように立ち上がる。
「おいおい、ちょっと待てよ。今街に出たらまたあの馬鹿に出くわすかもしれねぇだろ。」
ミサキは今日あった出来事を思い出す。もしあのまま、あの男に乱暴をされていたとしたら。彼女は身震いした。
「まぁ、今日ここに泊められるかじいちゃんに聞いてみるよ」
「……わかった。ありがとう。」
「ん!いいってことよ」
ファイは、屈託のない笑顔で返事をした。ミサキは、その顔を見た時、不思議と不安だった気持ちがほんの少しだけ和らいだ気がしたのだ。