プロローグ~黒髪茨少年~
永遠とこの大地を覆う砂と熱と岩。
西の果て、死の砂漠の唯一の安息の町フレアリー。
ここには、死の砂漠に眠る莫大な遺産を求めて多くの冒険者が集まっていた。
冒険者とは、自らの危険を顧みない命をどぶに捨てるような大馬鹿者たちの総称である。
そんな彼らにあこがれる大馬鹿者の一人がこのフレアリーの酒場’ポックリハゲタカ亭’にも一人いた。
この物語は彼の日常から始まる。
「いらっしゃいませー!ジンおじさん!きょうはどこまで行ったの?」
酒場で給仕として働く猫族のファイは自分の倍の大きさはあるように見える鬼族のジンに対し誰もが微笑み返してしまうような輝くような笑顔を見せる
「よっファイ君。今日はなこの砂漠の近くにあった遺跡をたんさくしたんだ」
「へー、で何かあったの?」
「残念だがおけらだおけらっ。中にはヤバそうな魔物がいたっていうのにさっ。たく骨折り損だってーの」
がっくりと項垂れるジン。
「それは残念ですねー。今日は何を頼みます」
「あぁ、ビールだ、ビール。」
「へーい、お待ち!」
ファイは、黄金色に輝く液体を注ぎながらほくそえんでいた。これは、チャンスであると。
ファイは、ジンが探索した遺跡へと入っていった。狙い通り、内部にはジンが倒したとみられる怪物たちの死骸が転がっており、危険なものは無いように思われたのだ。
遺跡の最奥部へとファイはたどり着く。そこは古代に作られた建物という事で未知の材料で造られた赤さび色をした壁と床で覆われていた。
「気持ち悪いなぁ……でもおじさんバカだなぁ。」
赤さび色の遺跡は夜になると、あちこちで一部分だけ緑色に輝く光が浮かび上がっていた。それは、どこか
ヒトにも見えるシルエットのようなものがあった。
「このシルエットの下には隠し通路!子供でも知ってるのになー」
冒険者ジンは、竜人であり、誰よりも武術に秀で強いと有名であるが、その頭の弱さも有名であった。
意気揚々と光の下にある壁を押すと、壁が回転した。ここには何かある。ファイは目を輝かせた。
どんなものがあるのだろうか。恐る恐る壁の中へと入っていく。
中には、謎の緑色の水が腰の高さまであふれていた。水をかき分けながら進むと、扁平状の鉄の箱を見つける。
ファイは、恐る恐る箱に振れる。箱の感触は恐ろしく冷たく反射でファイは手を引っ込めた。
ファイは箱の近くにあるボタンのようなものを見つけた。ファイはそれをゆっくりと押す。
部屋全体で赤い光と共に警告音が鳴り響く。ファイは箱を見る。
箱からは蒸気のようなものが噴出していた。ファイは、思わず後ずさる。2分ほど噴出し続けただろうか。箱がゆっくりと開く。
ファイはゆっくりと中を覗く。中には少年がいた。
それは、この地方では珍しい黒髪の雪ののようにしろい肌の美しい少年であった。