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地下迷宮の探索者(仮)  作者: 宮坂貴文
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第三話:突然の告白

 ジャックポット。これが俺の精霊に付けられたあだ名だ。

 大当たりの強い力を持った精霊と言う意味と、当たらなければ何の力も出せないという皮肉が込められている。

 儀式の後、説明会でこの都市の事や今後の活動についての講習を受けた後、俺は別室に呼び出され契約した精霊について色々聞き取り調査をされていたのだ。

 その際に俺はこの力が自分の思うように出せないと伝え、付けられたあだ名がジャックポットだった。


「正直言うと、精霊使いとしては使えないわよ? 貴方。どれだけ強い力があっても、自由に使えないなら意味が無いし、そんな人間を戦力とは考えられないから勧誘も期待できない。悪い事は言わないからこの街を去った方がいいと思うわ。ここは力の無い者にはトコトン非情な街よ?」


 俺から聞き取り調査を担当した女性は同情した表情でそう言った。

 だが俺にはここでやらないといけない事がある。彼女の善意は有難いがその言葉に従うつもりは無いのでなんとか生きて行きますよ、と苦笑いで答えると女性は溜息を一つ付いた後、一人で地下に行くのだけは止めなさいとアドバイスをした後に俺を解放してくれた。


 調査から解放された俺はそのまま割り当てられた宿舎へと足を運ぶ。

 宿舎があるのは説明会が行われた建物のすぐ真裏だ。鉄筋二十階建てのワンルームマンションで一週間だけ使える宿舎だ。その後は自分で住む場所を見つけなければならない。

 まあ、ここには人口以上に住む所があるから見つけるのは簡単だと説明会では言っていた。もっとも良い場所を選ぼうとすればそれなりに苦労がいるとも言っていたが、俺は別に寝る事さえ出来ればいいので問題無い。


 部屋に入ると俺はそのまますぐにベッドに横になる。今日は一日バタバタとしていたので正直疲れたのだ。目を閉じるとあっと言う間に睡魔が襲い掛かってきて俺の意識が無くなった。




「早霧姉さん……」


 俺の目の前にベッドで横になって眠っている早霧姉さんの姿がある。

 黒く長い黒髪に、穏やかで優しげな美しい顔立ちの二十代後半の女性だ。

 二年の入院生活で少し痩せた感じもするが、寧ろ儚げな美しさが加わったように見える。


 早霧姉さんが原因不明の奇病に侵されたのは二年前の冬の事だった。初めの内は良く寝る人だと笑いの種になっていたのだが、次第に眠りから覚めなくなり、今では殆ど目が覚める事が無くなってしまった。

 原因は不明。眠っているのでは無く仮死状態になっているらしいのだが、そんな事はどうでもいい。

 

「俺が必ず助けるから……」


 俺は眠りについている早霧姉さんを前にそう決意する。

 すると突然、早霧姉さんの姿がドンドンと遠く離れて行く。

 

「早霧姉さん……。行かないでくれ早霧姉さん。早霧……」




「早霧姉ーさーん!!」


 俺はそう叫んでベッドから飛び起きる。


「はぁ。はぁ。はぁ……」


 俺は荒い息と共に目を覚ます。


『また早霧の夢を見ておったのか……。人妻に懸想とかお主は本当に歪んでおるなぁ。流石は我の選んだ主様じゃよ』


 うるせぇ……。


 俺はシェルファニールに悪態をつくと、冷蔵庫まで歩いて中から水のペットボトルを取り出すと一気に飲み干す。

 ペットボトルを持ったままカーテンを開いて外を見ると、ちょうど朝日が昇ってきた所だった。

 昨日は帰るなり寝てしまったので、随分と早く目が覚めてしまったようだ。

 街の施設や店が開くにはまだ大分時間があるし、かと言って二度寝する気にもならない。仕方なく俺は昨日渡された腕時計型の端末を装着すると起動して空中に画面と操作パネルを表示させる。

 

「さてと……。取り敢えず俺のプロフィール情報でも確認するか」


 俺は昨日登録された自身の情報に目を通す事にする。

 これは俺の履歴書のようなものだ。この情報はこの街にいる全ての者に閲覧権限があり、これを参考にして企業やギルドなどがスカウトをするのだ。同様に俺もこの情報をもって自身を売り込んだりもする。


「ええっと……。なになに」


名前 小野寺高志

年齢 十八歳

性別 男

精霊 特A級 

名称 ジャックポット

能力 破壊能力S(但し自身の意思での発現は困難)

賞罰 無し


 俺は一通り情報を眺める。他にも色々な項目はあるが、来たばかりの俺には空白の欄が殆どだ。


『特A級とはなんじゃ?』


「特は特殊の特。レア精霊って皆は言ってるけど正式には特殊精霊なんだって。あまり契約者がいない精霊の総称らしい。Aは種別でAが攻撃型、Bが防御型、Cがその他らしい」


 シェルファニールの問いに答えながら俺はスケジュール欄に目を向ける。

 今日は夕方十八時に中央ホールで合格者達の歓迎パーティーか……。明日が研究所や企業主催の就職説明会と……。

 

 まあ、こっちは関係ないな。


 研究所や企業と契約を結べば金銭面や待遇面、装備など様々な恩恵は受けられるが、同時に義務や制約などもついてくる。残念ながらそれは俺にとって都合が悪いのだ。


『くっくっく。まあお主が受けた所で取ってくれる所はあるまいて』


「うっせぇ……」


 シェルファニールの言う通り、いくらレアとは言え自在に力を使えない欠陥精霊使いを雇おうという所はないだろう。それどころか、俺を仲間にしようと言ってくれる人を探すのも難しいかもしれない……。 

 下級精霊ぐらいは契約出来ると高を括っていただけに、今の状況は正直想定外だ。

 雑用しか使い道が無い人間をチームに入れてくれる所が果たしてあるかどうか……。


「最悪……、一人で行くしかないか……」


『我は大歓迎じゃよ。さぞかし力を振るう場面に恵まれる事じゃろうなぁ……』


 くっ、それこそこいつの思うツボだな……。

 まあ、今は目先のやるべき事に集中するか。住む所を探す必要もあるし、各種手続きだってまだ残ってる。取り敢えず今日中に出来る事は全てやってしまおう。


 俺はそう結論づけると、朝食の準備に取り掛かる。

 朝飯を食べたら都市事務局で残った手続きを終わらせて、その後不動産屋巡りだな。

 夕飯は歓迎パーティーでバイキングらしいからタップリ食べて夕食代をしっかり浮かせよう。

 俺はそんな事を考えながら、熱したフライパンの上に卵を落とした。


 

 夕刻。

 俺は歓迎会の会場に足を運ぶ。

 会場は迷宮都市中央にある総合ホールで行われていた。ここは迷宮都市で行われる祭事やイベントなどでよく使われる所で、その広さは東京ドーム三個分ぐらいある巨大な施設だ。その施設の一画、第三イベントホールという小規模イベントスペースで歓迎会は行われていた。


「うわぁ……。すごいな」


 俺は豪勢な料理の数々と綺麗に着飾った人々を交互に見回しながら呟く。

 男は高そうなスーツ、女性もこれまた高そうなドレスを着て優雅に食事を楽しんでいる。

 

 なんなんだ。今回の合格者は金持ちばかりなのか?


 少しくたびれた安物のスーツ姿の俺は少々入りにくい環境だ。

 

 まあいいか。目立たない方が俺にとってもやり易い。

 

 そう考えると俺は会場の片隅に移動し、適当に飲み食いを始める。

 暫くして偉そうなおっさん達の話も終わり、フリートーク的な時間になる。

 会場の中央では端末を起動して自分のプロフィールを表示しながら、お互いに自己紹介などのコミュニケーションをとる連中が目に付くようになるが、俺はひたすら飲み食いを続ける。

 どうせ中に入った所で、欠陥精霊使いという酒の肴になるのが落ちだ。


『お主なぁ……。気持ちは解るがそんなんでは仲間を探す事など出来んぞ。昔からお主は……』


 シェルファニールが説教を始めだすが、俺はそれを右から左に聞き流す。

 

 そもそもこの状況はお前のせいでもあるんだがな……。


「やや! こんな所にいたのかジャックポット君」


 と、突然女性が俺に声を掛けてくる。

 振り向くとそこには儀式の進行役をしていた女性がワイン片手に笑って立っていた。


「あ、あの時の」


「そう言えば自己紹介してなかったっけ。私は城崎あやめ。都市直属の精霊使いよ。よろしくジャックポット君」


 城崎あやめと名乗った女性はそう言って右手を差し出してくる。


「ジャックポット君は止めてください城崎さん。俺は小野寺高志です。こちらこそ宜しくお願いします」


 俺もそう言って右手を差し出して握手を交わす。


「あははははっ。ごめんね小野寺君。聞いたわ、あの力自由には出せないんですって? 折角レア精霊を引いたってのについてないわね」


「ええ。まあ仕方ないですよ。何とか折り合って行く事にします」


「まあ、最初は大変だろうけど、何時か自在に引き出せるようになるかも知れないから頑張ってね。そうなればあの力は最強なんだから、諦めちゃダメよ」


 城崎さんはそういって笑いながら俺の肩をバンバンと叩く。男っぽいというかザッパというか……。

 背も高くてスレンダーなモデル体型なのに、どうにも性格で損をしている人な気がする。


「でも私の担当からレア持ち一人と上位持ち一人が出るなんて久しぶりに嬉しいわ」


「レア持ちは俺として、上位ってもしかして朝霧ですか?」


「そうよ。あの子も上位のそれも回復系っていう超希少精霊を引いたの。それを耳にした連中が早くも争奪戦を繰り広げてるわ」


「回復系って数少ないんですか?」


「ええそうよ。下位も少ないけど、上位となるともう数える程しかいないわ。探索で回復系ほど重宝する精霊使いはいないから、もう上位といってもレアと変わらないわね」


 そうなんだ……。おめでとう朝霧。

 

 俺は心の中で祝辞を述べる。まあ少し会話しただけの少女なんだが知り合いが合格して、しかも上位精霊と契約したというのは嬉しいものだ。


「でもあの子全然嬉しそうじゃなかったの。寧ろがっかりしていた感じだったわね……。何かあんたみたいな力が欲しかった見たいよ? ほんとに贅沢言ってるわよねぇ。私だったら小躍りして喜ぶのに」


 城崎さんはローストビーフをガツガツとパクつきながらそんな事を言ってくる。

 何と言うか、綺麗な人なのに色々と残念な人だ。

 

「おっと。噂をすれば彼女の登場ね」


 城崎さんの視線の先に目を向けると、朝霧がキョロキョロと誰かを探している姿が見える。

 ピンク色のパーティードレスがとても似合っていて思わず目が釘付けになってしまう。

 

「本当にお人形みたいに綺麗な子よね……。家に持って帰って飾りたいわ。あとお人形遊びもしたい」


「発想が変態のおっさんですね……」


 二人で朝霧を見ていると、俺の目と朝霧の目が合う。すると朝霧はツカツカと俺に向かって歩いて来た。どうやら探していたのは俺だったようだ。


「合格おめでとう。聞いたよ、上位の回復系精霊と契約したんだって? すごいな朝霧」


 朝霧が俺の前に立ったので俺は彼女に祝辞を述べる。だが朝霧はそんな祝辞には興味が無いのか嬉しそうな顔もしないまま俺の目をジッと見つめてくる。


「貴方を探していたの」


 朝霧は俺の目をジッと見つめたままそう言ってくる。


「俺を? 何か用でも?」


 俺はそう言って返答を待つが朝霧はジッと俺の目を見たまま言葉を発しない。俺は沈黙に耐えかねて、取り敢えずもっていた水を飲む。


「私と子供を作って欲しい」


 ぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!


 突然の朝霧の言葉に思わず彼女の顔に飲んでいた水を思いっきりぶっ掛けてしまう。


「……ぶっ掛けるのが好きなの? 貴方にそう言う趣味があるのなら私は構わないわ」


「ねぇよ! 違うから。驚いて思わずやっちゃっただけだから。というかすまん」


 俺はそう言うとハンカチを取り出して朝霧の顔を拭いてやる。


「驚く? 何を驚いたの?」


 朝霧が不思議そうな顔で聞いてくる。

 

 こいつ……。マジか……。


「あのなぁ……。いきなりお前が訳解らん事言って来るからだろ?」


「そう……。ごめんなさい。解り易く言うわね。貴方のおちん(ピー)を私のおまん(ピー)にぶち込んで欲しいの」


「ちげーよ! 行為が解らないって言ってんじゃねぇよ!」


 俺は思わず大声で突っ込む。

 朝霧は相変わらず不思議そうな顔(といっても無表情なんだが)をしながら少し小首を傾げている。


 周囲を見渡すと、こちらのやり取りに気が付いた面々がざわざわと騒ぎ出し、横にいた城崎さんは嬉しそうにニヤニヤ笑いながら事の成り行きを見守っている。

 

 まずいな……。


 悪目立ちするのは正直望む所では無い。城崎さんの助けも期待出来そうにない。いや、寧ろこの人は朝霧の方を助ける行動に出る危険もありそうだ。短い付き合いだが、俺の本能がこの人はトラブルメーカーだと訴える。


「朝霧。取り敢えず会場を出よう」


 俺はそう言うと彼女の手をとって会場の外に出ることにした。朝霧も俺に引っ張られるまま素直に後を付いてくる。

 暫く広いホール内を歩き、人気が無い区画を見つけると俺はそこの隅っこに朝霧を立たせる。


「ふう。取り敢えずここなら人目は無さそうだな……」


 俺は周囲を軽く見回すとそう呟く。


「そう。貴方はここがいいのね?」


 朝霧はそう言うと、自分のスカートの中に両手を突っ込んで下着を脱ぎだした。


「まてぇぇぇぇい! やめろバカ。何する気だお前!」


「何って、ナニをするんじゃ……。あっ! ごめんなさい……」


 どうやら朝霧は自分の勘違いに気が付いてくれたようだ。


「……貴方が脱がしたかったのね? ごめんなさい、気が付かなくて……」


「ちゃうわぁぁぁぁ!」


「え? もしかして付けたままの方が?」


「それも違うから! 頼むから俺と会話をしよう。お願いだから話をして下さい」


 俺は思わず涙目になってしまう。


「……そうね。私も少し性急過ぎたわね。ごめんなさい」


 いや。少しじゃねぇだろ……。

 

 まあいい。取り敢えず落ち着いて話が出来そうだから余計な突っ込みは止めよう。


「それで……。何で急にこんな行動に出たんだ? 俺達は昨日会ったばかりのはずだよな?」


「それに何か問題でも? 私は多くの男性から告白された事があるから容姿に問題は無いはずだし、スタイルも小柄だけど問題は無いはず。胸? 小さい胸が問題? ならば豊胸手術も辞さないわ」


「辞していいから。手術とかいらねぇから。お前に問題があるとか言ってる訳じゃない」


「じゃあ貴方に問題が? もしかして立たないの? もしくは男が好きなの?」


「違うわぁ! ちゃんと立つし、女が好きだし……。って俺何言ってるんだろ……」


 俺は思わず深いため息をついてしまう。


「あのなぁ。例えお前がいい女でもだ。昨日今日会ったばかりの女に突然子供を作れと言われて不思議に思わない奴が居る訳ないだろ? ハッキリ言えば怖いとしか思えないよ。まずはそう言う事を思った理由を教えてくれ」


 俺の言葉に朝霧はジッと俺の目を見つめるとコクンと頷いた。


「貴方を選んだ理由は簡単。貴方が最強の精霊使いだから」


 朝霧は俺の目をジッと見つめたままハッキリとした口調でそう言う。


「いや、なんでそれだけで……」


「強い精霊使いを朝霧家に。これが曾祖父の遺言。家訓と言ってもいい。強い精霊使い同士の子供は高確率で強い精霊使いになる。だから貴方を選んだ」


「それなら朝霧がすでになっているじゃないか? 上位でも希少な回復精霊と契約したんだろ? ならそれでもう役目は果たしてるんじゃないか?」


「曾祖父が望んだのは破壊の力。回復精霊は望むものでは無い。だから役目は果たされていない」


 朝霧は少し悲しそうな表情を見せる。

 そうか。本当なら自分が攻撃型の精霊と契約したかったんだろうな。だけど来たのは回復型。だから次代に希望を残そうと考えたのか……。

 だけどそれは感情とかを無視した行いだ。正直俺には納得が出来ない。


「なあ朝霧。遺言とか家訓は解ったけど、それはお前の感情を無視してまで果たさなければならない物なのか? そういうのは好きになった人とやるべき事だと思うし、お前が犠牲になってまで果たすべき事じゃないと思うぞ」


 古臭い考えかもしれないが、俺はやはりこう言った行為は体だけじゃなく心も繋がりたいと思う。

 

『まったく……。これだから童貞は……』


 煩い。これは俺の意地でもあるんだ。外野はすっこんでろ!


「……貴方の言いたい事は解った。でも問題無い。私には人を好きになるといった感情が理解出来ない。欠落していると言ってもいい。だから私にその心配は不要。私にとっては役目を果たす方が重要」


 そう言うと朝霧は俺の頬に両手を当ててジッと俺の目を見てくる。


「だから貴方は欲望の赴くままに行動すればいい。私もその方が嬉しい。大丈夫、責任を取れなんて言わない。生まれた子供も朝霧の家で責任を持って育てる。貴方には何も負担はかけない。貴方に掛かる負担は体力と精力だけ。これは貴方にとってメリットある取引だと思う」


 朝霧の顔が徐々に近づいて来る。

 こ、これは所謂据え膳というやつか? 

 ここまで言うならいっその事……。


「高志ちゃん……」


 突然脳裏に早霧姉さんの声が聞こえた気がする。

 その声に俺は正気に戻らされる。

 ダメだ。やっぱり俺はこういう形は認められない!


「まってくれ朝霧」


 俺は軽く朝霧を振り払うとその両肩に手を置く。


「俺はこういうのはもっとお互いをよく知ってから行う事だと思うんだ。それに俺には好きな人がいるんだ。だから悪いがお前の申し出は断らせてもらう。済まないが他を当たってくれ」


 朝霧は俺の目をジッと見ながら聞いている。


「そう……。わかった」


 朝霧は少し考える素振りをみせるとそう言ってクルリと踵を返してこの場を去って行った。


『なんじゃなんじゃ? 勿体ない事をするんじゃのぉ。これだから童貞は……。お主、こんな事を続けてたら魔法使いになってしまうぞ?』


「うるせぇよ。そこまで拗らせる気はねぇよ。大体俺の事を好きじゃないなんていう女の子とそう言う事するって、なんか悲しいじゃないか……」


『ふむ。確かに完全に種馬扱いじゃからのぉ。じゃがそんな下らんプライドなぞ捨ててしまえば良かろうに。あれはかなりの上玉ではないか』


「上玉言うな、おっさん精霊が。兎に角! 俺はそう言うのは嫌なの」


『かっかっか。若いのぉ……。ところで、あそこに落ちておるのはなんじゃろうな?』


 シェルファニールの言葉に俺は床に目を向ける。

 するとそこには薄いブルーの小さい布きれが落ちていたので拾い上げて見てみると、それは女性用の下着だった。


「……あのバカ、忘れて行きやがった……」


 短いスカートではないが、決して長くも無い。そんなドレス姿でノーパンとか……。

 俺は布きれを握りしめると、朝霧の後を追って走って行った。


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