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地下迷宮の探索者(仮)  作者: 宮坂貴文
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プロローグ

 2020年8月。関西を襲ったM7.7の大地震の直後、和歌山県沖合に突如島が出現。


 2020年9月。自衛隊、地質学者を中心とした観測隊が島へと上陸。そこで地下へと続く巨大な入口を発見。周囲に拠点を作ると共に調査終了まで一般人の立ち入り禁止を発表。


 2020年10月。観測隊から第一次調査隊10人を選抜し地下へと進入。数時間後に連絡が途絶。第一次調査隊は未帰還。


 2020年11月。第一次調査隊の捜索と地下空洞の調査をする為の第二次調査隊を編成。完全武装の自衛隊精鋭30人、各分野の専門家5人、電気通信設備等設置の為の作業員10人の計45人が地下へと進入。


 以下、生還した第二次調査隊自衛官のレポートより抜粋。


 私達は第一次調査隊の捜索と地下空洞の調査の為に地下へと続く縦穴を降りて行きました。

 電気通信設備の設置も同時並行して行っていたので、進度は遅かったものの着実に地下深くまで潜って行きました。

 進入して2日目。突然銃声が聞こえ、その時後方にいた私はすぐさま状況確認の為銃声がした場所へと急行しました。

 そこで見た物は、イノシシぐらいの大きさの見た事もない生き物と、壁際でその生き物の額にある一本の鋭利な角に脇腹を刺されて治療を受けている隊員の姿でした。

 私はそれを見てすぐさま状況を理解しました。幸い隊員の命に別状は無かったので、応急手当終了後地上へ搬送し同時に我々を襲ってきた生物、見た目からホーンラビットと命名した死骸も地上の研究施設へと移送しました。

 その後協議の末、一部学者と作業員を地上へと帰し、残る人員は引き続き探索を行う事を決定し、我々は警戒を厳にしながら前進。3日目も数度ホーンラビットに襲われるも無事撃退し我々は更に先へと進みました。

 縦横と十分すぎる程の広さのある洞窟は、進めば進むほど分岐や上下移動などが複雑となりました。地質も我々の知る常識と全く異なっており、何より今までに見た事が無い化け物が存在する点から、我々はこの縦穴が普通の地下空洞では無く、地上の入り口から進入した時点で何処か別の空間に入り込んでいるのではとの仮説をたてました。

 そして4日目……。我々はあの化け物に遭遇したのです。

 最初に見つけたのは私でした。

 前方に二本足で立っている何者かの影が見え、すぐさま警告を発しました。全員がその影に対し銃を構え何時でも撃てる態勢で状況を見守っていました。

 明かりを前方に当て、徐々にその影が近づいて来ると次第に相手の姿がハッキリと見えるようになりました。

 それは無骨な金属製とみられる鎧を着た大きさ2メートルぐらいの人型をした化け物でした。顔は全く毛が無く耳は小さく尖って口には小さな牙が見える凶悪な姿をしており、我々はその対象をトロールと命名しました。手には巨大な棍棒のような武器を持ち、こちらに対して威嚇のような叫び声を上げて襲い掛かって来たので、我々はすぐさま相手を敵と認定。一斉射撃で応戦しました。

 ですが、我々の銃撃は゛まったく効果を発揮しなかった゛のです。

 銃弾は何か見えない壁のような物ですべて弾かれ、気が付くとトロールの振り上げた棍棒が私のすぐ横に振り下ろされたのです。

 そこからはもう思い出したくはありません……。


 上記レポート提出後、隊員は除隊。


 2020年12月。政府は危機的状況と判断。地下入口を厚いコンクリートで完全封鎖。またその周囲に複数の部隊を配置し24時間体制で警戒する事を決定。


 2021年1月。回収したホーンラビットを調査した結果、未知の物質を多数発見。


 2021年5月。未知の物質の一部がガン治療に絶大な効果を発揮する事が確認される。


 2021年12月。地下入口のコンクリートを撤去。アメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、中国、ロシアなど各国が協力を打診。多国籍軍による第三次調査隊を編成。数種数体の新たなサンプル採取に成功するものの、物理攻撃を一切受け付けない化け物に遭遇。多大な損害を受けて撤退。


 2022年2月。日本政府指導の元、多数の企業や研究所が共同研究チームを結成。


 2023年6月。三重県在住の小学生の少年が右手から巨大な火炎弾を放ち小学校校門を破壊。少年は精霊と友達になったという事を友人に信じてもらう為にその行為を行ったと説明。すぐさま研究チームが少年を保護。少年の協力の元、調査研究が行われ少年に力を貸している存在、命名サラマンダーを確認。

 

 2025年3月。調査研究が進み、一部の人間に特異な存在と契約を結ぶ事で特殊能力が発現する事が確認される。また人により契約出来る者も多岐に渡り、それにより発現する能力も多様になる事も確認される。特異な存在、(以後呼称を精霊とする)は契約者本人としかコミュニケーションが取れず、また種類によって意思がある者と無い者、希薄な者など個性もあり研究は困難を極めたが、多くの証言を元に知識を統合し契約出来る者の選定方法から、契約儀式の確立までの理論を策定。


 2025年6月。特殊能力者、(以後呼称を精霊使いとする)を加えた第四次調査隊を編成。サラマンダーを操る精霊使いがトロールなどの物理攻撃を受け付けない敵を撃退出来る事が確認される。


 そして現在……。

 各国の介入や研究機関の競争。精霊使い達への恐怖による差別など様々な混乱、争いが巻き起こったが、数多の困難を乗り越え、迷宮都市が設立される。

 

 迷宮都市。日本領土内にありながら、様々な思惑の末、独立行政区として世界各国の企業や研究所に共同で管理・運営されている島。

 未だ多くの謎を残している地下ダンジョンとそこから発見される数多の貴重な資源。

 夢や希望、そして一攫千金を夢見る多くの人間がこの都市にやってくる。

 ある者は大金を、ある者は名誉を。そして多くの者は……、死を……。

 

 この物語は、そんな地下ダンジョンに挑むある一人の冒険者の物語である。

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