第五章 激突、三神官 前編
書いていたら一万文字越えたので分割
その日、アバドン。タケミと一緒に、彼女の家で旅の準備を手伝う予定だった。
正確には、彼女の家の彼女の部屋になるが………正直に今の状的確にを三行で言うと…
アバドンがタケミに謝っている。
タケミの部屋は今酷く汚い。
タケミは号泣している。
と言う何ともカオスな状態である。
現在タケミの部屋は、彼女が脱ぎ捨てたであろう服がタンス付近だけでなく、部屋中に散乱し、ベットの横にあるごみ箱らしき物がひっくり返り、中のゴミが飛び散っていた。
オマケに長い間、掃除をしていなかったのか、部屋の一部から異臭がする。
まさに、好きな人に見せたくないと思って当たり前の部屋であった。
「……ごめん、タケミ…」
「だからまだ入らないでって言ったのに~!!」
「ごめん!ごめん!勝手に部屋に入った事は謝るから!だからお願い!!バチバチ鳴っているその棒みたいな物引っ込めて!!何か危ない気がするから!!」
「アバドン様の馬鹿ぁ~!!」
だか断る!そんな事を言っても、おかしくないくらいに、片付ける前の部屋を目撃され、激怒したタケミは涙目でその手に持った、青い電気を放つ棒らしき物を、アバドンの首筋に突き立てるのであった。
以下、その時のアバドンの悲鳴である。
「あばばばばばばぁ!!!?ちょ!なにこれ痺れる!?ちょっとタケミ待ってそれ以上されたら…シビレビレビレ!?ちょ!本当にやめ……ヒギィィィ!!」
数秒後には、彼女に気絶させられ、部屋から放り出されたアバドンがいた。
「すみません!アバドン様!!」
「いや悪いのは私だし、土下座なんかせずに、顔あげてよタケミ」
タケミは我を忘れていたとはいえ、アバドンを気絶させてしまったことに、かなり後悔していた。
それゆえに、彼女は誰が見てもとっても立派な土下座をしていた。
立派過ぎて、額が床にめり込みそうだ。
「と…取り合えず、旅に行くための、荷物類はまとめたかな?」
「あ、はい!あのドタバタの時にまとめたんです♪」
「そっか、それは良かったよ……あ、あとあの時、私を気絶させたアレ何?」
「へ?あぁ、これ?」
アバドンの問いにタケミは答えるべく、例の棒らしき物を取り出した…………胸の谷間から。
「くっ………くっ……」
アバドンは自分の胸を見つめる。
真っ平らで谷間など無い、鉄板でも敷けば、まな板の代わりになりそうなくらいに平たい自身の胸。
それに反してタケミの胸は………
彼女が着ているゴズロリドレスの、胸元がはち切れんばかりの大きな胸。
どうすればあんなに大きくなるのだろうか……アバドンは、彼女の胸を見つつ考えた。
「……アバドン様って、たまに私の胸ばっかり見るよね?初めて会った時も、私の胸を見ていたし……」
「え!?そ、そうかな~あはははっ」
「なんで棒読み?まあ良いけど……あ、話を戻しますね。
先程、アバドン様を気絶させたこれは『スタンロッド』と言いまして、文字通り、相手を気絶させる道具!
原理は………あ~長くなるので省くよ。」
原理にの解説をしようとしたところで、アバドンが嫌な顔をしたのを察し、解説を打ち切るタケミ。
「まあ、簡単に言うと、『電撃で相手を気絶させて無力化する単位武器』ね。
これもお父さんの作品なの!」
タケミが自慢げに話す。
やはり、父をかなり尊敬していたようだ。
「あいかわず、貴女はお父さんが好きなのね~。
さて、暫くの間はこの家に帰ってこないから、今のうちに別れでも言って起きなよ」
「はい!!」
タケミがそう口にした時だった……
謎の爆音が、家の外から聞こえたのは。
ズカァン!!ー
ーまるで家などの家建などが吹き飛んだような轟音に、二人は反射的に窓の外をみた。
「なに!?」
「うにゃあ!?何ですか!!」
二人が外を見つめると、外では家が一件、西側の大通りで潰れていた。
文字通り潰れていたのだ、まるで巨人か何かに、踏みつけられたかのように。
次に、その潰れている家の隣の建物が宙に、残骸を撒き散らしながら翔ばされた。
「あそこで一体何が!!タケミ、ここで待ってて!」
「いいえアバドン様、私も行きます!!魔法は残念ですが、科学に関してならお任せを!!」
アバドンは、駄目だと言うつもりだった。
その時、アバドンの脳裏に、昨日のタケミの言葉が過った。
『家族を心配させるだけですよ!!』
連れていくべきか、置いていくべきか…
アバドンは迷った。
タケミを見つめ、暫し考える…彼女は答えた。
「……はぁ、仕方ない!タケミ!付いてきて、後衛は任せるよ!!」
「は、はい!!」
タケミの返事を聞き、アバドンはその迷いを捨てた。
二人はその建物が吹き飛んだ場所へ急いだ。
建物が吹き飛んだ場所へ行った二人、周囲には、当たり前なのだが警備兵が四、五十人、建物の跡地を取り囲む様にいた。
「どうしたんです、何がありました!」
アバドンは、兵の中でも一番位が高そうな人に話しかけた。
鎧で全身を守っているその人は
「危ないから下がっていろ!!」
と叫んだ。
鎧兜のせいで、表情はまるで分からないが、声の震え具合からして、どうやらかなり焦っているようだ。
「兵長!!」
「どうした!」
「また狂信者です!今度は三神官までいます!」
「またか!!何回人様殺せば気が済むんだあいつらは!!」
狂信者、聞いたことがない単語が飛び交う。
兵士と兵長が何を話しているかは、アバドン達にはわからなかった。
「あの、狂信者って何です?」
タケミが兵長に聴く……が
「まだいたのか!はやく逃げろ!奴等に殺されちまうぞ!!」
聞く耳持たず。
良く言えば、話す時間さえ惜しい非常事態ということだ。
しかし、アバドンは面倒なことに正義感が強い。
それも一度思ったことは、なかなか止めないタイプなだけに、そんな事態だからこそ、余計に協力したがってしまった。
「何があったかは知らないけれど、私達も戦えるよ!貴方達を援護します!!」
彼女が兵長と呼ばれた男に叫ぶ。
男も負けじと叫ぶ。
「君は兎も角、君の後にいるその子を戦わせれるか!!彼女は女の子だぞ!!」
「(あ、また男と勘違いされてるよ……まぁ今は良いや!)彼女はあれでも戦闘センスは多分あります!!大丈夫です!手伝わせてください!!」
「多分とか余計に駄目に決まってるだろ!!良いから速く………」
男がそこから先を喋ろうとした、その時だった。
建物が一つ、また翔んできたのだ。
しかもかなりの速度でだ。
避けれない!!男がそう覚悟を決めた時だった。
「でぇやああぁぁぁぁ!!」
建物がかち割れた。
タケミだ!タケミが建物をかち割ったのだ。
「タケミ!?貴女そんな力があったの!?」
アバドンも流石にそれには驚くが、仕掛けは単純な物だった。
タケミは右手に、奇妙な物を装備していた。
それが建物をかち割る手助けをしたのであった。
「良かった~、一発勝負だったから、失敗したらどうしょうかと……」
「タケミ、右手のそれ何?」
「これですか?よくぞ聞いてくれました!!これ、私の試作品の『ブロウクン・ファントム・スティメン』です!!見た目は只のガントレットですけど、その仕組みは中に火薬を仕込んで、私の意思でいっでも発破できるように………」
「!!タケミ、続きはあとで聴くから、来るよ、さっきの攻撃してきたやつが!」
アバドンが叫ぶ、と同時に、先程建物が翔んできた場所から、一つの影が跳びだし、アバドン達の頭上高くに表れた。
〈うっしゃあぁー先手必勝!!〉
大きな黒い影は、まるで稲妻のような速度で降下し、アバドン達を押し潰そうとした。
「ヤバッ!みんなの下がって!!」
アバドンが叫ぶ、影が地面にぶち当たる、警備兵の一部が宙に舞う、血が白い石畳の地面を赤に染める。
これらの事はほぼ同時に発生した。
影が地面へ衝突したため、巻き起こる白い土煙。
〈そこかぁ!!〉
「なっ!!」
土煙が吹き飛び、影がアバドンに向かう。
影が何か斧のような物を振りかぶる、アバドンも咄嗟にソウルブレーカを喚びだす。
激突ーーー
鉄と鉄のぶつかり合い、花火が飛び散る、アバドンが押される。
そして僅か零点三コンマで、その鍔迫り合いは終わる。
今の一合で、アバドンは『力だけだと絶対に影には勝てない』と考える。
そして、彼女達は見た、影の正体を!
〈人間のクセに、俺様の一撃を受け止めるたぁ……やるじゃねえか、誉めてやるぜ!〉
無機質な機械音声が辺りに響く。
影の正体は簡単に例えるなら、恐竜の姿をしたロボットだった。
三メートル強ありそうな巨体、冷たく緋に輝くモノアイ、鋭い鋼の牙がズラリと並ぶ顎、鉤爪となっている両手は、その身の丈すら小さく見える巨大な、ギロチンを斧にしたかのような物を持っていた。
「あれは……人体改造兵器!!なんでこんな所に!?」
タケミが困惑する。
「あなた、何者?」
タケミの代わりにアバドンが彼に問う。
機械恐竜が答える。
〈俺かぁ?俺の名はガイア、『ガイア・マグナ』!!『砂漠の暴帝』だ!今時珍しいな、俺達マグナス・ボルガを知らねぇなんてよぉ〉
「マグナス・ボルガ?とか言ったわね、貴方達の目的は何?」
〈俺達の目的か?……目的だけならいいか、俺達の目的はな………真の自由を得ることだぁ!!〉
「真の…自由?」
〈ああそうだ!この国は違うみたいだか……世界のほとんどの国は政治も糞も知らねぇ王が国を治めてやがる。
俺達はそれにムズしが走るんだよぉ!!自分の味方するやつの、都合の良い法律しか作らず、その邪魔をしたら謂れの無い罪で即犯罪者、自由を求めて何が悪い!!王族か平民ってだけで差別されるのを嫌って何が悪い!!こんな不平等世界あってたまるか!!『こんな不平等社会をぶち壊す!!』それが……俺達の目的であり、大儀だ!!〉
ガイアが高らかに叫ぶ。
その姿は、まさに自由を求めし獣だった。
だが、アバドンは、その大儀とやらが非常に気に入らなかった。
矛盾しているのだ、彼等か言っている事と、今やっていることが。
「自由を手に入れるだって?その為ならどんなことをしても良いって言うわけ!?貴方が今やっていることは殺人だ!!自分の自由のために他者を傷つけて良い分けない!!」
〈ほう、小娘の癖に生意気言いやがる。
だか仕方ないのだ、こうでもせねば、あの傲慢な王は、打開策すら導かんのでな!ま、どうせ王族なんぞ、自分の身させ安全なら、何が起きようと無視しかしないんだろうがな!〉
「だったら何故!!」
〈おっと、これ以上の会話は俺の地位が危ないんでな………どのみち、お前とは主張が違うから、死ぬまで平行線なんだろうよ。
さて、お喋りはここまでだ!!俺達の大義のため……………死ねぇぇぇぇぇ!!!〉