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孤独な魔王様  作者: 高梨王牙
全ての始まり
4/10

第三章 疾走少女は夢を語る

輝く太陽、晴れ渡る青空、真っ白な雲、誰もが笑顔になれそうな天気の中、一人だけドンヨリ真っ暗なやつがいた。

アバドンだ、彼女だけ異常に暗かった。

彼女が暗いその原因は、側にいるやらたらと明るいタケミだった。

昨日、タケミはダメな意味で吹っ切れ、アバドンをヤバい方で襲った。

結局それはアバドンが、彼女の胸に押し潰され、意識を失ったものの、色々と失う前に眼を覚まし、彼女を蹴り飛ばし、眠らせた事によって何事もなく(?)その夜は過ごせたアバドンだった。

だがタケミはそれでも諦めず、腕を絡ませ、今だアバドンにベッタリくっついていた。

いわゆる恋人繋ぎだ、だか今の季節は夏。

そんな事をされているアバドンは、暑くて堪らない。

おまけに彼女の豊満な胸が腕に当たり、アバドンは自身の胸を見て、哀しみにうちひしがれていた。

「タケミ…………そろそろ離してくれない?暑い……」

哀しみで、今にも途切れそうな声でアバドンが囁く。

「だめです!アバドン様ぁ~ふへへへ」

だが現実は無慈悲であった。

キリキリと、まるで擬音でも使っているような痛みが、アバドンの胃や心を確実に削っていた。

あぁ、どうしてこうなってしまった。

そんな後悔をするアバドンを他所に、タケミは幸せそうに、彼女の細い腕に絡み着いているのであった。










『そうだ!私の家に来ませんか?』

突然そんな事を言い出したタケミに引っ張られ、アバドンは返答することができず、彼女の家に連れていかれた。

タケミの家は、内装を除けば、何処にでもありそうな平凡な家だった。

そう、外装は普通だった。

「なんで普通の家に地下室があるの?」

少し呆れ気味にアバドンは呟いた。

アバドンは彼女に、半ば強引に地下室に連れて行かれていた。

地下室に続く、薄暗く、湿気を帯びた苔の生えた石階段を、ゆっくりと降りていく二人。

暫くすると、少し年期の入った、錆びまみれの鉄扉に突き当たった。

扉には南京錠三つがかけられており、とても只の泥棒では開けれないであろうと、アバドンは判断した。

「付きました、ここが地下室、もとい私の発明所ラボで~す!!」

「ラボ?」

発明所と言う言葉に、疑問符を浮かべるアバドン。

彼女は、そんなアバドンの疑問に答えるべく、おそらく南京錠の鍵と思わしき物を三つ取り出し、馴れた手つきで三つとも解錠するのであった。

「…………はいアバドン様、どうぞ~!!」

ギギギッ!と重々しい音を立て開く扉。

「う、うん……失礼するよ………!!」

少しおどおどしながら、アバドンはその謎の部屋に入った。

そして彼女は、己の眼を疑った。

そこには魔法とはかけ離れた、様々な機材の廃材や、見たこともない機械や工具らしき物が、棚や机にキチンと整頓された状態で配置されていた。

床は油でも染みているのか、少し汚ならしくなっている。

明かりも、今だ現役の豆電球一つだけと、少し薄暗いが、それがこの部屋に不思議で、何処か現実離れした雰囲気を醸し出していた。

「ようこそ!私のラボへ!!ここに他人を連れてきたのは、アバドン様、あなたが初めて!」

「え?あ、あぁ、そう…」

そんな事を突然言われても、それが彼女の心の中での感想だった。

付け加えると『もう少しこの奇妙な、でも、どこか素敵なこの光景を見ていたかった』が彼女の本音だった。

そんな時、ふとアバドンは思い出す。

タケミの家族らしき人が、家に誰もいない事に。

「そういえば…タケミちゃん、お父さんとお母さんは?二人とも出掛けてるの?」

アバドンの疑問は至極真っ当な質問だった。

その質問に、彼女は顔をさげた。

伏せた彼女の顔は、少し影がさしたようにアバドンには見えた。

そしてタケミは、少し困惑するアバドンに告げた。

「お父さんとお母さんは…………もう…居ないんだ」

「え?」

タケミが言葉を繋ぐ。

まるで、自身に言い聞かせるように、ゆっくりと。

「お父さんもお母さんも、私が三歳の頃に、馬車に轢かれちゃってさ………酒気帯び運転だったんだって……結局馬車の運転士さん、責任感じて自殺リストカットしちゃってさ…………私的には……自殺するより、裁判をキッチリうけて、罪を償って欲しかったんだけどね…………」

「そう…だったんだ………」

「でさ、私お父さんね……………科学者だったんだ~。

その証拠が、このラボ!

今も覚えているよ………お父さん、いっつも『魔法?下らん!!科学こそ最強だ!!アッハッハッハッハッ!!』って言ってたんだ~。

私、お父さんみたいな科学者になってみたかった。

でも、この国は魔法を推奨しているから、科学者の学校なんて無かったんだ~。

だから、せめて可愛い制服の学校に!!って選んだ学校が魔法特化の学校で、あの時はびっくりしたな~」

タケミは語りながら、近くにあった何かの機械を、包むように掴む。

大きなガラスが真ん中にはまった、長方形の箱………

それを大事そうに彼女は抱く。

「それ、ご両親の形見?」

アバドンが彼女の眼を見て、真剣な顔で呟く。

「うん………これ『カメラ』って言ってね、お父さんが造ったの………『世紀の大発明になるぞー』て、言ってたな~

………私ね、小さい頃から『王子様みたいな人と結婚するんだ!!』って言っててね、それでさ……アバドン様を見つけた時、『あぁ、やっと見つけた』って思って、それでお父さんとお母さんに『その人を見つけたよ』って教えたくてね……」

「そうだったの………?」

アバドンは、ちょっと疑問に感じる点はあったものの、少し申し訳なさそうに呟く。

「だからね…………アバドン様~!!」

そのタケミの一言で、この空間の何かが割れた。

「……タケミちゃん!ごめんね!私女の子だからさ!!『ノーマルの女の子』だからさ!!キスも処女も全部男の人にあげたいからさ!!お願い致します諦めてください!!おねがい!!諦めてぇー!!!」

身の危険を感じたアバドンは、自分でも『何を言っているんだ!?』と言う様な事を絶叫し、地下室から逃げ出す。

タケミもそれを追いかける。

昨日と全く同じこと………でも…一つだけ違った。

タケミの顔は、少し明るくなっていたのだった。

科学


もはや魔法のほうがグローバルと化したこの世界で、唯一存在する異常技術オーバーテクノロジー

使える者は異端者とされ、風当たりが悪い。

科学者と呼ばれる者たちしか使えず、使用リスクも魔法より不便だか、その力は魔法を匹敵する。

科学が風当たりが悪いのは、科学によって作られた物の殆どが『戦争』や『人道から外れた下劣な作戦』にしか使われていないからだ。

命の定義を無視した『人体改造形兵器ヒューマゾイド』、後にくる副作が酷い『生体特定部位異常強化クシャトリア』などが、主な科学の産物だ。

科学が人を笑顔にした物は無いに等しい。

電球やコンロ、観覧車や花火、などしかない。

だからこそ、この世界では、科学者と言うだけで、迫害される人もいるのだ………

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