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序章
アバドンは天涯孤独の身である。
彼女の母親は、酷く病弱だった。
だから、彼女が生を世に受けたとき、母親が死んでしまったのは、必然だったのかもしれない。
父親はある国の王で、何時も忙しなく業務をこなしていた。
父親は王という立場上、彼女が一緒にいられる時間は非常に少なかった。
彼女は、普通の家庭が羨ましかった。
彼女はただ、普通に朝食を、家族全員で食べ、普通に家や外で遊びたかったのだ。
普通に、・・・・そう普通に彼女は暮らしたかったのだ。
だからこそ彼女は、この世の何よりも、家族を大切にする。
だから、父親が死に、王位を継ぐことになった時、彼女は直ぐに王位を辞退した。
王位を捨てた彼女は、その後家族を求め、様々な国を飛び回った。
砂漠の国、雪の国、日の国と、そんな風に飛び回っていたとき、彼女に転機が訪れるのであった。