はる@呂彪 弥欷助
ジャンル:恋愛
付き合い始めて、初めて買ったお揃いはシャーペンだった。子どもみたいだねと、二人で笑った。絶対に同じクラスにはならない。だから、授業中にお揃いのシャーペンで過ごせている事が、いつの間にか二人の心の支えになっていた。
「僕は、先輩が好きなんです……けど」
二人きりの部室で、唐突に言われた言葉に私は驚いた。ハルくんはひとつ下の「可愛い男の子」で、女子からは断トツで人気だった。可愛いでも、美人でも無い私を、ハルくんが異性として見ているなんて思わなかった。私たちは、今まで恋愛相談を互いにしてきた仲だった。
「どうしたの、ハルくん?」
冗談では無い事くらい、ハルくんの顔を見ればわかった。でも、他にどう言えばいいのかわからなかった。
「僕だって、わからないよ。どうして先輩の事が……って。今までは『好きになる瞬間』があったのに、先輩は……。仕方ないじゃん」
「仕方ない」なんて言われようの告白があるだろうかと、私は一瞬固まった。しかし、頬を赤くして照れるハルくんは可愛かった。
そう、私はハルくんを「可愛い」と思っていた。恋愛対象に見る日が、まさか来るとは思わなかった。私が言葉に困っていると、ハルくんは部室から出て行ってしまった。
「ハルくん……暫く部活来なくなっちゃったね。なんでだろ」
副部長の慶の声。
「さぁ……」
私の思い当たる理由を言える訳も無い。
「あと数ヶ月もすれば新入生を迎える準備かぁ……。いいよな~、今の一年は。うちらが二年になる時は三年生が卒業で、一年のうちらが部活を盛り上げなきゃって思ってたよね」
慶の言葉で当時を思い出す。そう、あの時は一年が三人残るだけの部活になるって不安だった。ハルくんが入部してきてからは、あっという間に部員が増えて……。
「それでも、後輩の為には来年も部員が増えてくれるに越したことはないでしょ」
「アンタは頑張るね」
副部長なのに、慶は少し無責任だと思う時がある。
四月には部活紹介がある。原稿書かなきゃ。そろそろ二月だから……。
「あっ」
やだ……電車の中なのに、大きな独り言を言っちゃった。
痛い視線を必死で堪えるには……そうそう。寝たふりだ。
(……だから、十四日には部室に来てね。……送信っと!)
って。ハルくんにメールしたけど、何だか後悔。っていうか……「勘違いでした」って言われたら、それはそれで嫌だなぁ。
当日。――二月十四日
ガラガラ
「ハルくん! 来てくれたんだ」
よかった~と思ったのも束の間、まだ「よかった」と言えるかはわからないけど。
「先輩……渡したい物って何ですか」
眼を逸らしながらも、ほんのり赤面しているハルくん……。可愛い。やばいヤバイ。顔の筋肉が緩んできた。引き締めなくちゃ。
「こ、これ」
ハルくんの視線が私の手元に移った。……驚いてる?
「ほ、ほら。今日は……ね」
ハルくん、今までも……っていうか、今日もたくさん貰ってたりするんじゃないの!? あれ。急に軽くなった。
「嬉しいです。ありがとうございます」
笑ってるハルくん……可愛い。
「先輩の返事はOKだと思っていいんですか?」
「えっ……あ……うん」
ぎこちない返事だったのに、ハルくんはにっこり笑ってくれた。
「二人だけで帰れるなんて、夢みたいです」
「そんな事言って。ハルくんモテるでしょ?」
「それは……」
「そうですね」なんて言っても、全く嫌味じゃないのがまた憎い。
「ヤキモチだと受け取っていいんですか?」
わ~! 可愛い笑顔で攻撃しないでっ!
「か……可愛くない」
「いいですよ。一応、男なんで『可愛く無く』て」
そういえばハルくん。頭もいいんだっけ。
「先輩と『恋人』になった記念に、行きたい所があるんです」
「えっ? ど、どこ?」
弾んだ声だけど、さっきの「男なんで」発言で変な妄想をする私が嫌だ。
「ここです」
見上げると……モール?
「行きましょう」
引っ張られて着いたのは、文具コーナーだった。
「お揃いのシャーペンが欲しいんです」
思考もハルくんは可愛かった。
「子どもみたいだね」
私につられてハルくんも笑ってくれた。
「じゃ、僕は反対方面の電車なので」
改札を抜けたハルくんはあっさりと私に手を振った。……あっさりって、私、何を期待したんだろう。
「うん。じゃぁね」
私の背中は、今、沈んだ雰囲気を漂わせていないかな。
「あっ、先輩」
すぐに振り返る私は、いつから本当にハルくんが好きだったんだろう。
「休みの間にメール送るね、小春ちゃん」
本来は少し違う話でしたが、バレンタインを絡めてみました。
……バレンタインっぽかったでしょうか(苦笑)。
書いてあった部分を前半だけ使っているので、
前半と後半だと雰囲気が違うかもしれません(汗)。
因みに、「ハルくん」は「春人」と言います。
告白の時にタメ語が混ざっているのは、焦りの所為と解釈して下さい(笑)。
読んで頂き、ありがとうございました。




