VS鉄皮
すいません、テストとかいろいろあったので、更新が停滞してしまいました。
本当にすみません。
ここは、鉄皮の巣である洞窟内、その洞窟内を、一人の少女がキツネ火を照らしながら、ゆっくり、警戒しながら歩いていた、緑色の髪、緑色の美しい瞳、それは、単身鉄皮に戦いを挑みにきたピィオナであった…。
「ぽたっ ぽたっ」
洞窟の周り中から、湧水が大量に漏れ出している洞窟内を、私はキツネ火を照らしながら歩いていた歩いていた、鍾乳洞とかそう言うものがないことから、どうやら、この洞窟は鉄皮自らが掘った洞窟のようだ、天然の洞窟ではない。
「・・・・・・・・」
別に激しい運動をしているわけでもないのに、なぜか汗がだらだらと、まるで滝の様に流れる、心臓もあいえないほどバグバグと動いていた。
やっぱり私は緊張しているのかな・・・だめ、緊張なんてしちゃいけない。
私はそう思い、自分自身の緊張を紛らわすため、耳や目を研ぎ澄ました。
バケギツネの目や耳の良さは人間の比ではない、目や耳に神経をとがらせれば、どんなに暗い場所でも赤外線スコープように暗闇でも見渡せる、たとえ、相手が見えなくても、相手が出す小さな音を聞き逃すことはない、壁越しだろうが、土の中だろうが、バケギツネとしての耳の良さで、相手の居場所がわかるのだ。
だから、私は、鉄皮の奴に、不意打ちは受けないと思っていた。
「ぽた、ぽた、ぽた」
相変わらずこの水の音以外は、もう不気味という域に達しているほど静かだった、そういえば、鉄皮の姿形ってどうなんだろう、人間の書物にもそういうのは全く載っていなかった、体全体、鉄に覆われているのだろうか、それとも厚い皮で覆われているのだろうか・・・私はまだ見ぬ鉄皮の姿を考え、そんなことを考えていた。
「ぽた、ぽた、ぽた、ぽたたたた」
なんだか水の流れが激しくなってきたような・・・何でだろう
「・・・・・・・・っ!!」
その時、私は、まるで、頭の中の霧が一気に晴れるような、ある考えに至った。
まってよ・・・・そもそも、厚い皮、といっても、その皮が、鉄であったり、そのまんまの意味である厚い皮でなければいけないのだろうか・・・・・そう、そんなルールも法律もない、だからもしかしたら!!
私は、その考えにのっとり、そこらじゅうから出てくる水を凝視した、もしかしたら、分厚い皮とは、鉄でもなく、かといってそのまんまの意味である分厚い皮でもない。そう、鉄皮の分厚い皮の正体とは・・・・・
「みず・・・、鉄皮の正体は、切っても焼いても決して、切れずに焼くこともできない、水」
そう、鉄皮の正体は、水のような液体でできた生き物。
しかし、そのような考えに至った時はもう遅かった。
「バ!!」
水がまるで、一つの意思があるように、いったん空中に一つの丸い水たまりみたいにになったかと思うと、一気に、私に襲いかかってきた。
「!!くっ!」
私は一瞬の出来事になすすべの無いまま、その水に飲み込まれてしまった。
しかし、そのままでいるほど、私は馬鹿ではない、すぐさま魔法を使い、鉄皮の水から脱出しようとした、しかし、
…うそ、魔法が使いない!!・・・なんで・・・もしかして!!
この水、いや、鉄皮の水に飲み込まれてから、魔法が使えなくなった・・・。これが、おそらく鉄皮による魔法封じなのだろう。
「・・・・・のは・・・」
もちろん、あっという間に照らしていた、キツネ火はあっという間に消えてしまった。
「・・ぐっぐ!」
私は何とかこの水から逃れようと必死にもがいた、しかし、私を飲み込んだ水は、そんなことにも気に止めず、私を飲み込んだまま、空中に浮かんだ。
「くっ苦しい」
息ができない、一様私たちバケギツネは、人間より長く息をとめていらるが、所詮は人よりは長い程度である、暴れていては、あっという間に溺死してしまう、そのため、私は仕方なく、もがくのをやめた。
「・・・・・・く・・」
私は、まさかこんな攻撃を受けるとは一ミリも思わず、なにか、物理的な攻撃が来ると思い、この鉄皮の奇襲を許してしまった。もし、そのことに早く気いていれば、簡単に避けることなどできるはずであった・・・・おそらく、みんなもまさかこのような攻撃か来るとは思わず、それに気づかず、やられたのだろうか。
そんな悔しさがわいて出てきた時、なにか、暗闇で見えないが、何処からか、せせ笑うような声が聞こえてきた。
「シャワシャわわわわわ、お前さん一人だけでここに来たのかい、シャワワ、勇気あるね、思わずお前さんが死ぬ前に、ちょっとばかり話がしたくなった、シャワワ」
ふざけた笑い声だと私は思った。しかし、おそらくこれは鉄皮の声だと、私はすぐに分かった。
「っく、ゴボボ」
「おおっと、無理にしゃべらないほうがいいぜ、シャワワワワ、ただでさえ少ない空気が、口の中から出ちまうぜ、シャワワワワワ、それに、何を言いたいのか、その目を見れば一目瞭然でわかるしな、シャワワワワ、なに、大丈夫さ、時期になくになる、さて、勇気あるお前さんに面白いことをひとつ教えてやろう、お前らの命より大事な大精霊様な、もうすぐ死ぬんだよ、あと十分ぐらいでな、シャワワワワ」
「・・・・・・・・」
もちろん、私はそんなことを言われても、何一つ言い訳できるはずがなかった。
「シャワワ、そうだ、いいことを思いついた、見るか?お前らの大事にしている石を」
ピィオナを完全に小ばかにしている鉄皮は、余裕の笑みでそう言うと、すぐさま、ピィオナを取り込りこんでいるような普通の青い水ではなく、また色の違う、赤く不気味に光り、なおかつ宙に浮いている水の玉をピィオナに見せてきた。
その赤い水の中には、ところどころひびが入り今にも具だけそうな石があった。おそらく、あれが大精霊の石なんだろう。ピィオナは大精霊の石を見たことはないがバケギツネの本能みたいなもので、すぐさまそれが分かった。
「シャシャワワワワァワワ、そう、これが大精霊の哀れな姿さ、シャワワシャワ、メス狐!!この最強の鉄皮様に、一人で挑んできたことたたえ、特別に見せてやったのだ!!光栄に思えシャワワワ、ついでに、いいことを教えてやろう、俺の弱点のことをな!!シャワワワワ、この赤い水はな、俺様の本体さ、そう、お前らの体で言う所の、心臓部分さ、シャワワワワ、もっと詳しく言ってやろうシャワワ、俺はな、何もできない奴に、こう言うことをするのがとてつもないほど快感なんでな、この、赤い水の先端に、これまた血のように赤い宝石が付いているのが分かるか?こいつはな、言葉で言いあわわすのは難しいが、言い表すと、俺様のすべてさ、赤い水のほうは別に少しぐらい傷ついても大丈夫だが、この宝石はそうはいかねー、こいつに少しでも傷が入ると、シャワワワワ、俺は死ぬのさ、シャワワワワ、さらに、詳しく言うと、この赤い水は、青い水のように、土の中には潜りこめない、つまり土の中へ逃げることができない、シャワワ、何でかわかるか?俺にもわかりませーン、自らにもわからない永遠の謎って奴だな、シャワワワワ、ほら、今まで言ったことは全部本当だぞ、さっさとそこから脱出して、この宝石を砕いてみろ、シャワワワワワワワワ、悔しいだろう、悔しいだろう、何もできない自分が、シャワワワワワワ、この快感、たまんねー、シャワワワワワワワワワ」
「・・・・・・・・・・」
おそらく、鉄皮の言っていることは本当だろう、事実、人間の本の中には、信憑性が薄いながらも、断片的ながら、そんなことが書いてあったような気がする、それが本当だとすれば、私は鉄皮を倒すことができるかもしれない・・・だけど・・・私には鉄皮の言うとおり何もできない。
キツネ火をぶちかまそうにも、魔法は使えない、なぜか人間の姿だけは保っていられるが、おそらくそれは、鉄皮がそうさせているだけだろう、とてもじゃないが、攻撃など不可能である。
そう、せっかくみんなを、救えるチャンスが、こんな目の前にあるのに、ただ、私は、ここで溺死するしかないのである・・・・・・
しかし、私は、何とかしようと、必死に考えた、生きるか死ぬかで、絶望なんてしている暇なんてない、私は考えに考え抜いた。
しかし・・・解決策など、まるで広大な砂漠の中の特定の砂粒を探すがごとく、全然思い浮かばなかった・・それに、だんだん・・・・息ができずに・・・く・・苦しくなってきた・・・
やっぱり…私では何もできない…ただこんな風に鉄皮にからかわれて死ぬことしか・・・なにも救えず、ただただ、絶望と苦しみしかないの?こんな、絶望と苦しみしかない世界で、死ぬしかないの?
そう私は絶望を浮かべながら…鉄皮の水の中で、意識を…失いかけていた。
私は意識が遠くなる中、突然、私の耳に母親代わりをしてくれた大精霊の歌声が聞こえてきた、幻聴なのか、目の前にいる変わり果てた大精霊の石から聞こえてくるのか、意識が遠くなる私には分からなかった。
ある時 天に 青い開始の空が やってきた
その空が、赤く輝くたびに、人々は、死んでいった
人々はその空を恐れ 悲しみ 苦しんだ
そのとき、四人の、勇者が、現れた
赤い空とともに 現れる 苦しみ 倒すため
しかし その四人は 真の意味で 私を 助けてくれなかった
私は 苦しみ 悲しんだ それが 運命だったかのように
さだめされた 運命は 人々を 切り裂き 苦しませ 絶望へ 叩き落した
ただ 絶望と 苦しみが 支配する世界
私は 生きる 意味が なかった
ただ 絶望と 苦しみが 支配する世界
ああ、ついにここに来たか・・・だけど・・・誰も現れないだろうな・・・だれも・・・、そう言えば、この歌を私が歌っているときに、現れたんだよね、マコトが・・・確かに、マコトには裏切られたけど、たけど、嬉しかったな、あの時は、本当の勇者みたいで・・・また現れてくれないかな・・・わたしの生きる意味を作ってくれる人が・・・・・マコトが・・・・・
しかし いつか 現れる はずさ
そいつは たとえ 人々から 賛美を 受けなくても 勇者じゃ なくても
そいつは 泣き叫んでいる 私に こう言うはずさ
「ピィオナを放しやがれ!!!この糞スライムもどきのナメクジドロドロ野郎!!!!」
あれ?
あれれれれれれ?
歌詞が違うような
「ぷしゅーーーーーー」
「しゃーーーーーーーーー!!!ぎゃーーーーーーーー!!」
その悲鳴が聞こえた瞬間、ピィオナを包んでいた鉄皮の体が
「どばーーーー!!」
まるで、はじけるがごとく飛散した。
「ギャーーーー、なんだ?なんだ?この痛みは?初めての感触だ、シャワワワワ、とりあえずものすごく痛い!!」
鉄皮はそう叫んだあと、動かなくなった、どうやらあまりにも痛みで動けないみたいだ
「ごほごほごほ」
「ピィオナ、ごめん、本当にごめん、こんな俺だけど、こんな馬鹿で怖がりでダメな俺を、許してくるか」
・・・・・・現れてくれた、私の生きる意味を作ってくる人が・・・・・・
「ピィオナ、ピィオナ、大丈夫か」
俺はあまりにもの痛み?でもがいているナメクジドロドロ野郎を尻目に、ピィオナにそう言った。
ちなみに、俺の現在の姿は、片手に懐中電灯、右手に殺虫スプレー、腰にクラツさんの木刀がぶら下がっている、ポケットの中には、クラツさんから貰った、石や、あの廃墟の家で拾った、ネックレスもどきがある、ちなみにこのネックレスもどき、ポケットに引っかかっているのか、まったくとれないので、バックに入れずにそのままにしてある、ちなみに、今俺は、あの学生かばんを持っていない、明らかに戦いの時の邪魔だからな、洞窟の入り口の前に置いてきた。
「ごほごほごほ、マコト・・・・・嬉しいな・・・わたし・・・マコトが来てくれてなんだか嬉しいよ」
え?うれしい?なぜに???
「いや、ピィオナなぜに嬉しいんだ?俺は、ピィオナにあんな酷いことをしたのに」
「ううん、それはお互いさまよ・・それに、あなたは私の生きる意味を作ってくれた、それだけで私は嬉しい…」
「え?今何て言った?ピィオナ」
おれはピィオナの言った言葉がよく聞こえなかったので、そう言った。
しかし、それを遮るように、おかしな笑い声が突然、この洞窟内に響き渡った。
「シャワワワワワワワ、何者だ、貴様」
どうやら鉄皮の奴、今までの殺虫スプレーを浴びたことによる痛みからようやく立ち上がり、俺に声をかけてきたようだ。
しかし、普通ならおれたちが話している隙をついて襲ってきてもおかしくなかったのだが、どうやら、殺虫スプレーという謎の攻撃をしてくる俺に警戒しているらしく、おれたちへの攻撃に慎重になっているようだ。
しかし、
「…やべ、鉄皮の奴どこだ」
現在おれは鉄皮を見失っている、さっきおれが攻撃した時には、油断していたのか、簡単に姿を見つけたのだが、今では全くもって、どこに居るのかなんて見当もつかない、持っている懐中電灯をフル活用して辺りを照らすが、どうしても死角というものがあるのか、まったくもって見つからない、やばいな、このまま敵がどこにいるのかもわからなかったら、戦いに不利なことは俺にもわかる、てゆうかこのまま不意打ちを受けて死ぬかもしれない。
それだけはまことに勘弁願いたい、本当に。
しかし、やっぱり鉄皮の姿はどうしても見つからない
「…どうした?何をあわてているのかな?」
まずい、鉄皮の声に余裕が生まれてきている、くそ!せめてあいつの居場所が分かれば結構優位になるのだが。
その時俺かあることに気付いた、ピィオナなら分かるかもしれないと。
なんだか、情けない感じだが、他に方法がないのだから、結局俺はピィオナに聞くことにした。
「ピィオナ、鉄皮の居場所わかるか?」
俺の質問に、案の定、ピィオナはすぐさま小声で答えてくれた、頼りになるぜ。
「無理よ、あいつに特定の居場所なんてない、あいつの体は水でできているから、多分、そこら中の土の中に潜り込んでいるわ」
・・・え、なにそれ、欲に言うチートって奴じゃないか、
しかし、だからと言って、このまま、諦めて死ぬわけにはいかないので、俺は凄く頼りになるピィオナに相談してみた、てゆうかそれしか考えつかん。我ながらこれは断言できると思う。
「ピィオナ、なんかないか、鉄皮の弱点とかそういうの」
俺は、ピィオナにそう言った。
「あるよ」
「え?有るの?」
あまりよい回答を期待していなかったおれは、俺はあまりにも呆気なくピィオナが答えてくれたことを驚きながら、言った。
「うん、鉄皮の弱点は、赤い水よ」
赤い水?
「私が鉄皮の奴に捕らわれていた時見たの、そして、その赤い水の先端に付いている血のように赤い石が弱点、たぶん、そのさっちゅうすぷれーで、赤い石を攻撃すれば、鉄皮を倒せるはず」
なるほど、詰まり何だ、その赤い石というやつは欲に言う核みたいなやつか、それを壊せば倒せるとかそういうやつ、なら
「ピィオナ、その赤い水の居場所、わかるか?」
「…こっち…微かだけど、大精霊の力か感じられる」
そういって、ピィオナは真っ暗な洞窟の奥を指差した。なるほど、いかにも何かいそうな雰囲気だな。
「よし!ピィオナいくぞ」
善は急げだ、すぐさま鉄皮の核に、今すぐ殺虫スプレーをぶちまけなければ。
そうして、俺は走り出そうとした、しかし、その俺の行動にピィオナがストップをかけた。
「待って!!」
「へ?」
どうした?ピィオナ、
「その…わたし、鉄皮の奴に、魔法と同時に、体力も奪っていったみたいで、その…私、自力で歩けないの…」
「・・・・・・・・」
え?自力で歩けないだと…
「どうしようマコト」
ピィオナが困ったような顔でそう言ってくる、そんなこと言われてもな…
「ああ、もう、こうなったら」
俺はヤケクソ的に、ピィオナを抱きかかえた、幸いにもピィオナは軽くて、抱っこできないほどではなかった、逆に軽すぎるぐらいだ。
「え!ちょちょ、恥ずかしい」
ピィオナが顔を赤くしながらそう言う
俺だって結構抵抗あるんだぜ、17年の人生で、女の子を抱っこするだなんて、初めての経験だ、しかしこのままピィオナを放置していくほど、俺はバカではない、必然的にこうするしかないのである。
「仕方ないだろう、お前を置いていくという選択肢はあり得ないし、これしかないことぐらい、ピィオナにもわかるだろう」
「…こくん」
いまだに顔を赤くしながら、ピィオナはうなずいてくれた。
「さて、まずは持ち物をどうするか」
今まで俺は、右手に殺虫スプレー、左手に懐中電灯を持っていた、しかし、ピィオナを抱きかかえることにより、どうしてもどちらか片っぽをピィオナを抱きかかえるのに使用しなくてはいけない、まさか片手に殺虫スプレーと懐中電灯の両方を持ちながら戦えるわけがないからな。
そんなことを考えると、ピィオナが話しかけてきた。
「…ねえ、マコト、私、役に立ちたいの、その、何と言うか、とりあえず、抱っこされるだけじゃ、なんだか失礼じゃない」
うん…そんなこと突然言われても…そうだ
「よし、じゃあピィオナは懐中電灯を持って、俺がちゃんと歩けるように照らしてくれ、それ位できるだろう」
「…分かった」
ピィオナのその言葉を聞いた後、俺は右手に持っていた懐中電灯をピィオナに渡し、ピィオナを落とさないよう、改めてピィオナを抱きかかえた。
「よし、じゃあ、行くぞピィオナ」
俺はそう叫び、洞窟の奥へ進もうとした、しかし、
「シャワワワワワワ、させるか」
「!!マコト、右から攻撃が来る!!」
俺は、ピィオナに言われた方向に懐中電灯を向ける、すると、そこには、まるで無重力空間の水のように浮いている青い水の玉が、ゆっくりとこっちに向かってくる。どうやら鉄皮の奴、俺に対する恐怖やら警戒心を、何とかねじ伏せて、俺に対し攻撃を仕掛けてきたようだ。
「のわっと!!」「しゅー」
すぐさま、俺の主要武器、殺虫スプレーを発射する。
殺虫剤の霧に水の玉が当たった瞬間、あっという間に蒸発するかのように、鉄皮の攻撃?が消える。
「シャワワワーーーーーーー!!何なんだこの痛みは!!しゃわ!!」
「マコト、あいつ、あまりにもの痛みで、攻撃の気配をを隠すことを忘れてる、私ならあいつの攻撃する方向が分かるから、私は、この光る筒を鉄皮が攻撃してくるであろう方向を照らす、だからマコトは、そこにむかってさっちゅうすぷれーを打って」
「わかった、それじゃあ、いくぞ!!ピィオナ!!」
「うん」
俺は改めて、この鉄皮の洞窟の奥に向かって、走り出した。
「ふふっマコトが勇者で、私がその従者、そうして見てみると、なんだか、夢がかなったみたいで、うれしいな」
暗闇の中、そのピィオナのつぶやきは、残念ながら真には届かなかったが、それでも、ピィオナはどこか嬉しそうだった。
「マコト!!右!」
鉄皮の攻撃を探知したのか、すぐさま、ピィオナがその方向に向けて、懐中電灯を照らす。
「ひつけー奴だ!とりゃ!!」
懐中電灯に照らされ、丸見えなその攻撃に向かって殺虫スプレーをすぐさま発射する。
「ぷしゅーーーー」
「そげふ!!」
洞窟の奥に向けて走ること数分、こんな風に鉄皮が俺に攻撃しては阻止され、攻撃しては阻止されを繰り返しながら、俺は順調に洞窟内を進んでいった、それにしてもなんだか、鉄皮の悲鳴、あまりにも痛いのか変わってきてるな、面白い方向へ。
「ピィオナ!鉄皮の赤い水がいる場所まで、後どれくらいだ?」
俺はそのことにふと疑問に思い、ピィオナにそのことを聞いた。
「あと少し!!だんだん大精霊の気配が強く感じる、あ!あれ!あれだわ、あの、赤い奴」
「…あれか」
すごく遠いところにあったが、蛍のようにぽやぽやと薄明るく光るものがあった、と言っても、普通のホタルのように黄色く光るのではなく、無気味な赤色に光っている、さながら、死んだ人の魂のようだ。
「…さ…させるか!!」
「マコト!!上下左右全方位から鉄皮の攻撃が来る!!」
「は?全方位だと?」
いやそんなこといきなり言われてもどうすれば、だって、上下左右全方位から攻撃だなんて、どう防げば…
「こうなったら、もうヤケだ」
考えていても時間の無駄だ、俺はすぐさま殺虫スプレーを地面にまんべんなくまいた後、全方位の空間に向かって殺虫剤をばらまく、環境汚染?そんなこと気にしてられっか!!
次の瞬間、水が全方面から来た、もはや津波だよこれ。
しかし、空気中にこれでもかと言うほどに大量にばらまいた殺虫剤のせいか、すぐさま蒸発するかのように消えてなくなる。
「そげまげらセがバラのゲラはそげふらそげふ!!!!」
ある意味ものすごい悲鳴を上げながら、鉄皮は真っ暗で見えないが、おそらく倒れ伏せた、何と言うか、あれだけの悲鳴を上げる鉄皮に同情してきた。
しかし突然、そんな風に、鉄皮にちょっとばかり俺が同情していると。
「ごほっごほっ」
そんな風にピィオナが突然、激しい咳をし始めたのだ。
「どうしたピィオナ!何があった?」
「ごほっなにか、ごほっ吸い込んだみたい」
まさか・・・殺虫剤でも吸い込んだのか?さっきそこら中にばらまいたせいで・・・やばいな…この世界の生き物の体の仕組みなんてわかんねーし、どんな事になるか未知数だぞ、最悪死ぬかもしれない、そう思うと、自分でもわかるぐらい、自分の顔が真っ青になることが感じられた、マジでシャレにならない。
「ピィオナ、大丈夫か?」
「ごっほ、ごっほ、気分が、ごっほ、悪い、ごほ、それに、ごほ、こんな体調じゃ、鉄皮の気配が分かんない、ごほっごほっ」
え嘘!!えちょどうすれば、この状態はやばい、今まで鉄皮相手にここまで来れたのも、ピィオナが鉄皮の攻撃を探知してくれたおかげだ、しかし、それがなくなったとなると、今度また鉄皮に攻撃されたら、どこから来るのか全く分からず、不意打ちをくらう危険が高まってしまうと言うことだ、これはまずい、死亡フラグだ。
「…どうすれば」
ピィオナが俺の背中で苦しそうに咳をしている中、俺は別に褒められるほどではない頭をこれでもかと言うほど働かせるが、まったくいい考えが思いつかない、頭が真っ白だ。
「…あっ、あいつ」
今気づいたが、赤く光る鉄皮の本体が、ゆっくりと洞窟内を逃走を図っているのが見えた、まずい、ピィオナが使えない今、見失ったらもう二度と見つけられそうにない。
「…走るしかなさそうだな」
このまま居ても、どうせ鉄皮の攻撃をくらってしまうだけだ、なら一か八か、あの鉄皮の本体のところまで行って、殺虫スプレーをぶちかましてやるぐらいしかない。
そう思い、俺は鉄皮が攻撃してこないことを祈りながら、走り出した。
そうして、走ること数分、鉄皮の本体まであと10メートルだという時に。
「シャワワワワワワ!!」
またもやあの特殊な叫び声と聞こえた同時に、「ゴスッ」と俺の背中に強い衝撃が走った。
「のは!!」
完全に不意打ちで、それをもろに浴びた俺は、当然、抱えていたピィオナを放り捨て、殺虫スプレーも暗闇の中へ落とし、そして、そのまま「ズザザザザザ!!」と扱けてしまった。
「く…痛すぎだろこれ…」
怪我をするのは覚悟のうえだったが、痛すぎるだろこれは、怪我を負うだなんて、中学生の時に、寝ぼけててそのまま近所のどぶに落ちた時以来だ、あれは痛かったな、しかしこれはもっと痛い。
「いてててて!!」
真っ暗でよく分からないため、傷口とおもわしき場所を触ると、ぬるっという血の感触と、激しい痛みを感じた。ちくしょ、なんで俺がこんな目に…
「そういえば…そう言えばピィオナは?」
あまりにモノ痛みに一瞬忘れてしまっていた俺の恩人を思い出し、周りを見渡した。
すると、苦しくとも、一生懸命に鉄皮の洞窟を一筋の光で照らす懐中電灯を離すまいと、抱きしめながら、倒れているピィオナがいた。
「ピィオナ!!」
俺はすぐさまピィオナの元へ行こうとした、当たり前だ、この状況下ならだれでもピィオナを助けに行こうともうだろう、しかし、体がまるで石のように重く、立ち上がることができない、あれか?鉄皮の攻撃には、何か相手の体をマヒさせるような効果とかがあるのか?
「いて…」
したかないので、痛む足を引きずりながらピィオナの元へ行こうとした、しかし。
「シャワ…シャワワワワワワワ」
「ぐぼへ!!」
突如俺の真上から水を被ったかと思うと、そのまま、その水の中に飲み込まれた。
「ごぼごぼ…」
もう何が何だかわからん、鉄皮の攻撃受けて、痛みでうめき、ピィオナを助けようとして、突如水の中に取り込まれた、もしこの状況下の中、今の状態を冷静に把握できるやつがいたら、神とほめたたえてもいいだろう、もう本当わけわからん。
「シャワワワワワ、死ね!!」
その時突然、体中に突然水の水圧みたいのがかかってきた、やばい、何が何だか分からないまま押しつぶされる、
「シャワワワワワ、死ね、死ね、ぎゃあああああ!!」
突如聞こえた悲鳴と共に次の瞬間、俺は水の中から放り出された。
「ごっほ、ごっほ」
俺はとりあえずがむしゃらに咳をした、水が気管に入って咳が止まらない、あー、マジ死にそう。
「この…この!!くそメス狐め、ほおっておけばいい気になりおって!!」
混乱している頭で、周りを見渡すと、もう息もとぎれとぎれに、苦しそうに、それでもあきらめずに殺虫スプレーを構えているピィオナがいた。
しかし、それももう限界が来たらしく。
「ごほっごほっ…どさ」
カラン、カララララン
限界が着たピィオナはそのまま倒れてしまい、それと同時に、ピィオナが持っていた殺虫スプレーと懐中電灯が転がり落ちる、懐中電灯はともかく、殺虫スプレーはまたもや暗闇の中へ転がっていってしまった。
「死ねー!!このメス狐が!!!!」
ざば!!という音と共に、俺と同じようにまたピィオナが鉄皮の水に飲みこまれた。
「ごぼごぼ…」
すぐさま鉄皮の水の中で苦しみだすピィオナ、おそらくさっきの俺みたいに、水圧で押しつぶされているのだろう。
「はっはっ…くそどうすれば…」
何とか咳が収まってきた俺は、この状況を打破するべく、そう言った、しかし、鉄皮を攻撃するにも、殺虫スプレーは暗闇の中に転がっていってしまい、行方知らず…探している間にピィオナがやられる可能性を考えると…事実上、殺虫スプレーでの攻撃は不可能だということが、寝ぼけてて、どぶに落ちたことのある俺にでもわかる。
「…そうだ、クラツさんからもらったこの木刀」
俺は今まで、腰にぶら下げていた木刀の存在を思い出し、すぐさま木刀を抜いた。
「…いや待てよ、大砲も効かない鉄皮に、木刀なんて効くのか?」
腰から抜いた木刀を見ながら、俺はそう思った、当たり前である、大砲も効かない奴に木刀とか…戦車に対戦車ミサイルではなく弓矢のような感じだ、効くはずがない。
「…現実的にこんな木刀が効くはずもないが、だけど、ここはファンタジーな世界だ、魔法もあり、バケギツネとあり、モンスターあり、目の前に、ナメクジドロドロスライムみたいな生物あり、そんな世界なら、もしかしたら、この木刀が突如光って最強になるとかそんなことがあってもおかしくはないはず、現にクラツさんがそんなこと言ってたし」
そうだ、この世界ファンタジーな世界、常識に縛られちゃいけねーよな。
そう思い、俺は木刀を構えた。
「とりゃーーー!!」
剣道どころか、スポーツ事態が大の苦手な俺が、ちゃんとした刀の持ち方などわかるわけがない、ただただ、両手で木刀をしっかりと持ち、突進していくのみである。
「くらえ!!」
何とか鉄皮の近くまで来れた俺は、全体重をかけて、そして走ってきた勢いを利用して、鉄皮に向かって木刀を振り下ろした。
だが…
「ずぼ」
「あれ…」
木刀はそのまま鉄皮をぶっ飛ばすのではなく、そのまま鉄皮の水でできた体をすり抜け、そのまま貫いた。もちろん鉄皮にダメージはない、それどころか。
「ってやべ!!」
もちろん、衝撃を想定してでの攻撃だったので、こうも呆気なくすり抜けるのとは思わず、全体重をかけた勢いを抑えきれず、そのまま、「ずざざざざざざ」と、扱けてしまったのであった。
「いててててて」
やばい、痛すぎる、さっき怪我してしまった所を、また擦ってしまったなんて、こんな経験人生で初めてなんですけど!!
「シャワワワワワワワ!!なんだ?お前、もしかしてその木の棒なんかで俺を倒そうってのか?シャワワワワワワワ!!これは素晴らしいね、あれだあれ、その勇気ある行動、勇者だよお前シャワワワワワワ、あの伝説上の勇者みたいだ、シャワワワワワワ!!うん良いね、あのよわよわしい下種の人間どもが作り上げた、物語上の架空人物、勇者そのものだシャワワワワワ、さて、勇者様はそこで木の棒をもって、何もできずに大事な大事なメス狐が殺されるのを黙って見ているがいい、うん?メス狐が死んだら寂しい?何大丈夫さ、メス狐の次は勇者様だ、シャワワワワ!!」
「…くそ」
俺は、そこらに放り投げている木刀をみた、なんなんだよ、ただの木刀じゃないか、クラツの野郎に偽物つかまされたか…
しかし、今ここでクラツを呪っていて仕方がない、そんなことをしていても何も起きないのだから。
「ごぼごぼごぼ」
鉄皮の水の中で、ピィオナが苦しそうに溺れている…なんだよ…最初からやり直しじゃないか、俺が助けに来た時も、ピィオナがこんな風に苦しんでて、助けを求めていた。
しかし、今はどうだ?殺虫スプレーもなくし、負ってしまった怪我の痛みで、俺は動けないでいる…それを思うと、とりあえず…ものすごく悔しい。それに…
これじゃあ生きる意味が作れないじゃないか…
俺はそう思った。
しかし、天はまたもや、意図的にやったのか、それとも気まぐれなのか、それとも別の物は分からないが、堺井を見捨てなかった。
もはや、誰かの計画みたいに。
「今じゃ!!明かりを照らせ!!」
「ピカーーーーーー!!!」
「シャワ?」
「のわ、まぶし!!」
突然老人の声が聞こえたかと思うと、いきなり辺りがフラッシュを焚いたかのように眩しくなった、やべ、眼を開けてられね。
「シャワ?これはもしや…ギャーーーーー!!」
「何だいったい、何が起きた?」
いきなりのこの展開、いきなりの鉄皮の悲鳴、眼を開けようとするが、あまりにもの眩しさで眼なんて開けてられない、目が慣れるまで待つしかないなこりゃ。
そう思っていると、またもや、あの老人の声が聞こえた。いったい何者なんだこの老人?は
「鉄皮よ、油断していたな、貴様がピィオナ達と戦っている最中にこの洞窟内すべてに、今さっき上がったばかりの貴様が嫌いな太陽の光がうまく洞窟内全体にたらされるよう設置した。今この洞窟内はすべて、鏡をつたい太陽の光に満たされている!これで貴様は終わりだ!!」
「ぎゃーーーーーー」
しゃぼん!と
何とかこの眩しさに慣れてきた眼で、鉄皮が蒸発するのを目撃し、そして、鉄皮の水の中に取り込まれていたピィオナは放り出された。
「ピィオナ!大丈夫か?」
またもや、老人じみた声が聞こえた
俺はこの眩しさに慣れてきた眼で、その声のする方向を向いてみた。
そこには、たくさんの狐たちがいた、はい?何でこんな所にキツネがいるんだ?
いきなりの急展開に、ついていけない俺はそう思った。
「長?みんな…なんで…諦めたんじゃないの?」
「「お前を見捨てるわけがないだろうが!!」」
「いいかピィオナ、わし等バケギツネ一族は腐っても全員家族のようなものだ、否、家族だ、それにワシはおぬしの父に言われた、もし自分が死んで、ピィオナがその敵を討とうとするときは止めてくれと、そして、もしピィオナが危機に陥った時は救ってくれと!!わし等はの、本当はおまえさんを鉄皮の元へ行かせないように今まで頑張ってきたのじゃ、しかし、皆、自らの親族、友人を亡くした悲しみに捕らわれ、わしもいつの間にか忘れいた、お前の父との約束もな、だがの」
いったん、一息ついた後
「わし等は結局、お前が悲しげに、わし等から逃げたことを見て、皆お前が、我が一族と同じバケギツネ族、つまり、家族だということを思い出し、お前さんを助けに、玉砕覚悟で、全員で、洞窟へ向かった、そしたらお前さんたちが戦ってたではないか、しかも鉄皮と互角に、それを黙って見ているわけにもいかず、わし等は一度奇襲攻撃をかけようとした、しかしな・・」
ピィオナに言い聞かせている老人の声の人は、もう一度一息つき言った。
「まるで、それを思いとどませるかのように、突然わしの目の前の地面に、古い一冊の本が置いてあった、さっきまではなかったはずのものがあって、わしは一瞬驚いたが、興味がわいてな、その本を読んでみたのじゃ、するとそこには、鉄皮の弱点は太陽の光、と書かれているではないか、しかしまあ、当然、普通ならそんな怪しげな情報など信用しないがな、ところがその本に名前が書いてあっての、そこには、お前さんのおじの名前が書いてあったのじゃ、突然現れた本とその名前、わしは、おそらく死んだお前さんの叔父が持ってきてくれた本と思い、そして、薄明るくなる空を見て、わし等は思いついたのじゃ、鉄皮の唯一の弱点である、太陽の光を、あの洞窟ない全体に照らせば、鉄皮は逃げる場所を失い倒すことができるのではないかと、そう思い、急きょ、魔法を全く使わずとも、広範囲に光を反射できる広反射鏡を大量に持ち出し、鉄皮に気付かれないように、洞窟内全体に太陽の光を照らせるように設置した、まあ、とにかくこの作戦は、鉄皮に気づかれないことこそが成功のカギだった、その点ピィオナ、お前たちが鉄皮の注意を引いてくれたからこそ成功した」
なるほど、今の話をまとめると、このキツネたちはピィオナの仲間か…よかったじゃないかピィオナ、お前は見捨てられてなんかなかったんだ…俺がいなくてもお前は一人じゃなかったんだ…
しかし、その様子を見ていると、俺はあることを思ってしまった。
それに比べ俺は…ピィオナがいなければ一人なんだと…
そう、ここは異世界だ、親も、あのムカつく姉もいない、そんな世界。
ピィオナと違って俺は、俺には…ピィオナみたいな家族すら…いないんだ…
「長…みんな…ありがとう」
仲間たちに囲まれ、ピィオナの顔に涙と笑みが浮かぶのを見ながら、俺はそんな悲しい現実を思っていた…
しかし、次の瞬間起きたことに俺はそれらの思考をいったん中断せざるおえなかった。
「ぐっ・・・!!」
「がはっ!!」
突然、ピィオナ達バケギツネ達が苦しみ始めたからである。
「…は?」
どういうことだ…何故に、みんな苦しんでるんだ…
とりあえず俺は、痛みにも慣れてきたので、それでも痛む足を引きずりながらも、ピィオナのもとへ行きピィオナに話しかけた。
「ピィオナ、大丈夫か!いっいったい何が起こったんだ!!」
俺は胸を押さえて苦しんでいるピィオナの肩を強く持ちながら叫んだ。
「苦しい…ぐ…苦しいよ…」
「は?え?ピィオナ!!どういうことだ?結局どういうことなんだピィオナ?」
その時、あの年おいた老人の声が聞こえた。
「…まさか…もしかして」
「惜しかったな」
「「ッ!!」」
俺の耳にもう二度と聞きたくない声が響いてきた。くそ、どんだけしぶとい奴なんだよ、去年の夏、俺の体を十か所以上刺して挙句の果てに逃走に成功しやがった蚊以上にしぶとい奴だ。
「ま…まさか吸収し終えてしまったのか、精霊の石を」
「…シャワ!シャワワワワワワワワ!!ごめいとう!これがお前さんたちが守ろうとしていた大精霊の石、その成れ果てだ!」
復活しやがった鉄皮はそう言うと、突然、石の破片がボロボロと上からこぼれおちてきた…やばくね…もしかしてこれってあれだよな…大精霊の石じゃ…
「それでだ、どうして大精霊の石がこんな風に粉々に壊れたのにお前らは苦しむだけで死んでいないのか…」
鉄皮が呆然と立っている俺と、苦しんでいるピィオナ達バケギツネに無気味に語りかけながら言った。
「…何でだろうなー、普通ならそのまま意識を一気に手放したあと、深い眠りにつき、そして永遠に起きないのにねー、なんでだろう…それは・・・それはな!」
鉄皮がそう繰り返しながら、そして無気味な笑い声を混じりませながら、叫んだ。
「俺が大精霊の力そのものを譲る受けてしまったからだ!!シャワワワワワまさか大精霊の力吸収するだけのつもりが、そのものを受け継いでしまうだなんて、俺でも予想外だったがなシャワワワワワ、つまり、俺はもう大精霊そのものなんだよ、俺を殺せば、大精霊を殺したと同じようにお前らも死ぬ、この意味がわかるか?お前らは俺を殺せば自らも死んじまうんだよシャワワワワ!!これいいね!!…太陽の光を浴びてもなんともないな」
鉄皮はそう言うと突然あることを思いついたかのように叫んだ。
「そうだ、いいこと思いついちゃった、俺もさっきわかったことなんだが、大精霊の力には、何と、とてつもなく面白い何のためにあったのか分からないような力もあるんだよ、それはな…お前たちを奴隷のごとく強制的に操る力だシャワワワワワワワワワ!!さて、そんな力を持っていることを知った俺は何を命令するつもりでしょう」
「…そんな…いや…いや」
鉄皮のその衝撃的な発言を聞いたピィオナはどうやらその言葉に思い当たる節があるようで、そんな事を苦しみながらつぶやいていた、しかし、なんだか俺結構無視されてるような気がする俺はバケギツネと違って、何ともないのに、確かに俺学校では休憩時間とか99%の確率で一人で過ごすほど、影が薄いけど、頑張ったよお前を攻撃するのにさ。
しかし、次に起こったことは、そんなこんな所でもそのような能天気な俺の思考を完膚無きにまで粉々にするよう衝撃的なものであった。
「お前たちは、確か、皆全員家族だとか言っていたな、いいね、家族っていいね、素晴らしいよ、こんな素晴らしいことをすることができるのだからな!!全員バケギツネ同士で殺しあえ!!!」
「ッ!!」
俺は言葉の意味を理解し、そのことがどのような結果をもたらすのかをもわかった。
そしてすぐさまその結果が表れやがった。
いまだに苦しみもがきながら、そして意識は操られていないのか、涙を流しながら、ピィオナ達バケギツネは立ち上がり、全員一斉にこぶしを握ったかと思うと、今まで生きてきた中で、見たこともないような壮絶な殴り合いを始めた。
「…」
どがっ、ごぎっ、べきっそんな、自分の人生の中で聞いたこともないようなむごい音がまるで俺の耳の中に吸い込まれるように聞えた、もちろん俺は、あまりにもの事態に、ただただ呆然としているだけだった・・・、それはさっきまでは俺は威勢が良かったさ、だけど、こんな悲惨すぎる光景を、まざまざと見せつけられれば、やっぱり俺はそうなってしまうのである、もしかしたら、俺の心の中では今までの出来事を楽観視していたのかもしれない、しかし、この光景は、そんな俺の愚かな心そして考えを、まるで、爆弾でも使ったかのように、粉々になった。
俺はそんなことを思い知らされながら呆然としていると、鉄皮がそんな俺に気付いたのか、声をかけてきた。何でこういう時ばかり俺の存在は認知されるんだろう。
「おや?お前さんは確か、あのメス狐を助けに行った勇者じゃないか、なぜ殴り合っていないのだ?…ああ、そういえば…なるほどお前さん人間だな、すっかり忘れてたぜ、お前を最初に見た時は、てっきりバケギツネを助けに来たのだから、同族かと思ったが…珍しいことに、違ったようだ、バケギツネは他の種族とはあまりかかわらないことで有名なのでな、まあいい、どっちにしろ、なにも変らないからな、シャワワワワワワ、さて、そんな、まさしく人間どもが作り上げた架空上の人物、勇者そっくりな人間様を、どう調理するかな…そうだ!俺様良いこと考えちゃった、シャワワワワワワ、さて…勇者様は、自らが守ろうとしたものによって殺されるがいい!!シャワワワワワワ」
ゾッ!っと俺の全身をまるで雷が走るかのような寒気が走った。
「シャワワワワワ、やれメス狐」
そう鉄皮が言った瞬間、苦しみと悲しみに抵抗すらできず、ただ涙を垂れ流しにし、さらに、そのか弱いこぶしでずっと殴りつづけていたせいか、手が血まみれになっていたピィオナが、こっちに、さながらゾンビのごとく、ゆっくりと、こっちに歩いてきた。
「ピィオナ…落ち着け、俺だ、真だ、頼む正気に戻ってくれ」
しかし、そんな言葉で済むほど世の中楽な仕組みになっているはずもなく、無情にも、ピィオナの血まみれになった手が、俺の顔面に振り下ろされた。
「ぐはへっ!!」
痛って!!!、ちょ、この痛みマジでシャレにならん、だいたい、俺ってもしかしたら殴られたのって人生で初めてなんじゃないのか?しかし、そんなことを考えていても、拳は止むわけではない、すぐさままた俺は殴られた。
「ぐほっ、げほっ、がは」
何回も連続で殴られたおかげか、頭がくらくらしてきて、何が起きているのかどうかも分からなくなってきた。
「がはっ」
混乱する頭の中で、なんだかこんな状況、前にもあったような気がした…ああ、そうだ、あの時の不良と同じだ、何もできずに、ただ殴られているだけのあの時と…
「ぞはっ」
しかもだ…今回はあの時と同じように、逃げることができたり、見捨てられたり、そんなレベルではないのだ…殺されるのである。
そう考えると、結局、俺って、生きる意味を作れずに終わってしまうのかと…また振り出しになったかのように俺はそんなことを思っていた。
だが、俺をこの異世界で、生きる意味を作ることを決心させた声が、何故なのかまったくもってわからないが、俺の耳ではなく、頭に直接ひ響き渡るように聞こえてきた。
「マコト、お前は確か言ったよな、この異世界で、生きる意味を作ると!!」
そんな、クラツさんの声が、頭に響き渡った。
「…っ!!」
俺はなぜか急に回るようになった頭を使い、あの時の不良の時とように、ピィオナの拳の軌道を読み、まるで、敵の剣を華麗にかわす勇者のごとく、かわすことに成功した。
一様俺は足をけがしていたのだが、なぜか痛みを感じなかった…
しかし、なんで怪我しているのにこんなに軽やかに動けるんだ?などのことを考えている暇などない、かわすことに成功した俺は、すぐさま、またもやピィオナに殴られぬよう、ピィオナとの距離を取った、幸いにもピィオナはもう満足にも歩くことができないようで、とても俺の機動に付いていけそうになかった。だが、そのピィオナの姿は俺に利するからと言って、見たいものではなかったがな。
俺がそんな感じにピィオナの攻撃をかわすことに気付いたのか、鉄皮がまたもや俺に、あざけ笑うような声で話しかけてきた。
「なんだ?逃げるのか?シャワワワワ、逃げちゃ面白くないな…そうだ、逃げるのならこうする」
鉄皮がそう言った瞬間、今度はピィオナが自分の顔面を自分で殴り始めた。
「シャワワワワワワワワアワ!!、さて、勇者様、あなたが殴られないと、大事な大事な狐ちゃんが、自分で自分を殴って死んじゃうよ、シャワワワワワ!!」
これほどまでに分かりやすい悪役なことをしながら、そしてあの特有の笑い声を発しながら、鉄皮が言った、こいつの心の中ってどうなってるのかな、否、心がないのか?
「…くそ」
ピィオナが徐々に自分で自分を殴る速度が上がってくる、何とかしたいのは山々なのだが、鉄皮の野郎がどこにいるのか分からないから攻撃の仕様がないし、第一居場所が分かっても、今俺は殺虫スプレーを持っていない、つまり、鉄皮への攻撃は不可能なのだ、さらに悪い事は続くもので、たとえ奇跡が起こって鉄皮が死んだとしても、大精霊が死んだと同じで、ピィオナも結局死んでしまうというおまけつきだ、正直、マジでどうしようもない。
俺が如何すればいいのか分け分かんない事になっていると、また、俺がピィオナに殴られているときに聞こえた声が響く。
「私が渡した石を、木刀で切れ」
「な…」
そう、またもや頭全体に一輪の鈴を鳴らしたのごとく響いたクラツさんの声が聞こえたのだった。
その声の後、少々俺は、突然のことに固まってしまったが、すぐさま、ポケットから精霊の石を取り出した、ピィオナが苦しみながら自分で自分を殴っている最中に迷っている暇はない、だいたい、俺にはどうすればいいかなんてまったくもってわからないんだ、この言葉に頼るしかない。
俺はそう決意し、クラツさんからもらった石を地面に置き、木刀を腰から「さっ」と抜いた。
「…なんだ?その木刀は、それでどうするつもりだ…ああ、なるほど、それで自分の邪魔になるメス狐を殺すか、いいねいいね殺すがいい、殺せ殺せ!!シャワワワワワワワ!!」
「…ちげーよ」
いつからそんな度胸がついたのか分からないが、自分でも気づかないうちに、俺はその言葉に真っ向から反論した。
「てめーを倒すために、生きる意味を作るために、俺は…俺はこの木刀を抜いた!!」
自分でも恥ずかしいとは思いながらも、何故か自然に出てきた言葉を叫びながら、俺はすぐさま次の行動に移った。
「…おんどりゃーーー!!」
少しぐらいの打撃では切れないのかもしれないともった俺は、それこそ全身全霊、総力を挙げて、奇声を発しながら、俺は木刀をクラツさんからもらった、見た目何ともない石に向かって、振り下ろした!!
「ガツッ!」
と、いかにも石が砕けたような音が聞こえ、石が軟弱なのか、それともこの不良品(木刀)が凄いのか、みごと、石は真っ二つに、それこそ数学の問題に出てくる円の図のごとく、綺麗に割れた。
「カッ!!!」
と…
突如、洞窟中を満たす太陽の光より眩しい光が、その真っ二つに割れた石より発せられた。
そして、ピタリと…いままで殴り合っていたバケギツネ達も、そして、俺を殴ろうとしていたピィオナの動きが一瞬で止まったかと思うと、突然、「どさっ」と倒れた。
俺は、この洞窟を、そして、ピィオナ達を元通りにしてくれた光の根源である、真っ二つに割れた石の中にある、光の玉、もしくは照明弾ようなものを、眩しいのながらも、うっすら目で見ながら、こう呟いた。
「これって、あれか…勝ちフラグって奴か…」