ピィオナの心情
すみません、最後のほうを改定しました。
バケギツネ・・・・・分類としては、上級モンスターである、名前のとおり、見た目はキツネと全く同じで、人間や、他のモンスターそっくりに化けることができる。弱い固体の場合は、いわゆる、モデルといいう者が居なければ、化けることはできることはできないが、ある一定の強さになれば、自分で想像した、人間や、モンスターに変身できる、さらに強い固体は、幻影を作り出すこともできるという。
そして、そんなバケギツネ達は現在、一族存続の危機に直面していたのであった。
「ピィオナよ!そなたの希望を捨てないという心得は立派だ、それに関しては異論はない、しかし、そんな、ピィオナみたいな新米にすらやられる様な人間の魔法具が、上級モンスターであるヒョルガルを一発で、倒すはずがない、そんなこと、わしですら出来んぞ」
たくさん集団で集まっているキツネの中で、年をとったキツネがそう言った、いや、おそらくバケギツネであろう
しかし、長のその言葉に、ピィオナと言われた、若いめすのバケギツネは、反論した
「しかし、私は見たんです!この魔法具が、ヒョルガルを一撃で倒すところを・・・・」
ピィオナは自信満々に言った、自分は、堺井がこの殺虫スプレーを使って、ヒョルガルを一撃で倒す所を見たのだから。
「はぁー、ならば見してみろ!そんな強力な魔法具なら、ワシの後ろにあるこの大きな石を一撃で壊すことができるはずじゃが?ためしてみい」
バケギツネの長は、溜息をつき、機嫌が悪いような顔でそう言った。
「わかった」
直ちにピィオナは、殺虫スプレーに、魔力を注ぐ、大抵の魔法具はこれで発動するはずである、しかし・・・・・
「嘘・・・・・なんで発動しないの・・・・・・」
ピィオナは驚いたように・・・・そして絶望したように言った・・・・
「ピィオナ?、どうしたんじゃ?」
長が心配そうに言う
「ちょっと待って、もう一度」
ピィオナはそう言い、また、殺虫スプレーに魔力を注ぐ、今度は、さっきより倍で・・・・しかし、
「うそ・・・・・・、なんで・・・、なんで・・・・・・・」
ピィオナは、疲れたように、倒れこんだ、
それを見ていた、他のバケギツネは・・・・・
「なにだ?ピィオナ、俺たちに嘘ついたのか?」
「ふざけるのも大概にしろ!」
「お前はそんな奴だったのか?」
「ちょっと期待したで期待した、俺がバカだった・・」
ピィオナを非難していた・・・・・・
「ピィオナよ・・・・ワシ等は、別にこれで、ピィオナを疑ってはおらん、ピィオナが嘘をつくはずがないからの、確かにヒョルガルを一撃で倒す魔法具なら、確かに、ワシ等の使うどの魔法よりも強いことはわかる、しかし、例えそうだとしても・・・・相手はあいつじゃぞ・・・・・魔法を使う限り不可能じゃ・・・・・・・」
「そんな・・・・・・・嘘・・・・・・幾らアイツでも、これを使えば・・・・・」
あの、優しかった、堺井から奪ってまで、手に入れたもの、そんなはずは・・・・
ピィオナの脳裏に、自分のせいで、木にもたれかかりながら、眠ってしまった堺井の姿が浮かぶ・・・
あんな、ことをしてまで・・・・・折角これを手に入れたのに・・・・・意味がなかったの?
「ピィオナ!いい加減に」
しかし、その言葉は、風のように現れた一匹のバケギツネにより遮られた。
「長よ!緊急事態です!」
「「なんだ?何があった」」
そこに集まったバケギツネ達がいっせいに、その報告にそう言った、しかし、長だけは違った・・・
「・・・・・・ついに来たか・・・・・我々の滅ぶ日が・・・・」
その言葉に、ここに集まっているバケギツネ達全員に、沈黙が走った、
長は、泣いていた・・・・・・・
「・・・・・私は・・・・諦めないわよ・・・・絶対に・・・・」
わたしは走り出した・・・
「何をしているピィオナ!もう何をしても無駄だ!」
「まさか、一人でアイツの元へ?バカ者!少しでも長く生きたいと思わんか!」
「ピィオナ!戻って来い!」
後ろから、みんなの声が聞こえる・・・・・だけど、止まってなんていられない・・・・・・
私は、ただ・・・・あてもなく・・・・走り続けるのであった・・・・
「寒いな・・・・・そう言えば・・・もう夜中だっけ・・・・・」
希望を探すのに忙しくて、時間なんか気にしている暇なんてなかったしな・・・・なんでだろう・・・・
「なんで・・・こんなにも頑張ったのに、あの優しかったマコトまでだまして・・・・・それなのに・・・」
もう、涙が出てくるのを止められない・・川のせせらぎで、私は泣いた・・・・・
涙が、川の中へ・・・ぽつぽつと・・・落ちてゆく・・・・・
「何で・・・・・・何で・・・私たちが死ななければならないのよ・・・何で・・・何で」
私は、ただただ泣くしかなかった・・・・・あのみんなの態度・・・・酷い・・・・
ピィオナもついに希望をなくした・・・・・・・
そして・・・・ピィオナは思う・・・・
「思えば・・・・何でこんなことになったのだろ・・・・」
ピィオナは、今まで体験してきたことを思い出していた・・・・
私たちバケギツネ一族は、この森で、平和で暮らしていた・・・・、マコトには嘘をついてしまったが、本当に私の母はすでに物心がついてた時にはすでに死んでいた、だけど、さびしくなかった、長たちもいたし、何より、お父さんが居たから・・・・
しかし、そんな平和を、踏みにじるやつが現れた・・・・・
災厄級モンスター、鉄皮と呼ばれるモンスターが、突然現れたのである、鉄皮・・・名前のとおり、全身の皮膚が鉄のように固い皮膚で覆われている、普通の剣や矢などはもちろんのこと、大砲でさえはじき返す、まさに、その皮膚に傷つけることさえままならない、しかし、それだけなら別にそれほど脅威ではない、せいぜい、ヒョルガルのような上級モンスター程度である、こいつの恐ろしい所は、魔法が聞かないことである・・・・、山をも吹き飛ばす魔法の矢だろうが、隕石落としだろうが、魔法を使っている限り、すぐさま、無効化されるのである。
私たち、バケギツネ族も、人間も、一番高い攻撃は、すべて、魔法が使われている、ゆえに、その魔法がきかないとなると、ただ、蹂躙されるのみであった・・・・
しかし、こいつは、別に直接、バケギツネに襲ってきたわけではない、襲ってくれば、逃げればいいだけの話である、襲ってこられるだけで、一族存亡の危機になることは、まずあり得ないのである。
そう、こいつは、バケギツネ一族にとって、直接襲われるより、もっと重大なことをしてきたのである。
バケギツネの力、、というよりも、生命の源とも言えるもの、大精霊の石が、奪われたのである。
普通、石に宿っていた、大精霊が本気を出せば、災厄級モンスターと互角に戦えるくらい強いのである。
しかし、災厄級モンスターの中には、大精霊のような強い力を持つ者でも、圧倒する者もいる、鉄皮がその一つである・・・・・・、そう、鉄皮は、大精霊の、強大な力をも無効化にし、そのまま、私たちの生命の源でもある、大精霊の宿る石を奪っていったのである。
奪ったあとは何をするか、それはすぐにわかった、鉄皮は、大精霊の巨大な力をすべて、自分のエネルギーにするため、大精霊の石を、体内に取り込んでいたのである・・・・・さっきのキツネが報告しに来たことは、言わなくてもすぐにわかった、おそらく、数時間後には、すべてのエネルギーを吸い取られるだろうということだった・・・・・・
すべてのエネルギーを吸い取られる、すなわちそれは、大精霊の死を意味していた、そして、その大精霊こそが、命の源である渡したい一族の死も指す・・・・・・・。
もちろん、それを黙って指をくわえてみているほど私たちは馬鹿じゃない、すぐさま、総勢300匹ものバケギツネが、鉄皮を討伐しにいった・・・・・そして・・・・・・・・・・
だれも帰ってこなかった、その中には私の・・・・お父さんもいた・・・
「なんでよ!なんでよ!」
私は、泣き続けた・・・・・・・
「帰ってくるんじゃなかったの、鉄皮なんてあっという間に倒して、またいつもみたいに平和に暮らすんじゃなかったの?・・・・・・・なんで、帰ってこなかったのよ・・・・」
そのあと、なんどもなんども、それこそあきらめずに、300匹さらに400匹と、次々、鉄皮を倒すため、動員されていった、そして、当り前のように、何だれも帰ってこない・・・・・・親戚のおじさんも、従兄も・・・・
わたしは、知り合いの者が死ぬたびに泣き続けた、涙が枯れ果てるまで、ずーっと、そして、バケギツネの死者が、5000を超え・・・・・、皆が、諦めていった・・・・・だけど、親や、親戚を殺されて、黙ってなどいられなかった・・・、決して・・・・・・・・・・死んでいったみんなのためにも・・・
だから、私は、希望を捨てずに、頑張り続けた、危険を冒してでも、人間の国に行き、鉄皮の倒し方を探した、何日も何日も・・・・・、そして、何も見つからなかった・・・・・ただただ、人間や人間の書物はこう言っていた、 鉄皮が現れた場合、蹂躙されるのみ、だからこそ、鉄皮は、災厄級モンスターなのだと、それしか、書かれて、そして言われなかった・・・・・・、
そんな所に、マコトが居た、おかーさーんと言う何とも情けない声は、初めは私たちと同じバケギツネが言っているのかと思った、こんなところまで人間が来るなんてほとんど、ありえないからだ、それなのに人間が居た。
とても、この森に入ってこれる様な服装でもなく、さらに、ただの一撃でヒョルガルを倒しえる人間が居た・・・・・、そして、どうやら、あの細長い魔法具で倒したようだと、そして私はこの瞬間を見た時、こう思った、あれなら・・・・・もしかしたら、鉄皮にも勝てるんじゃないかと・・・・・、あの時の私は、どんな小さな希望でもすがる思いでいた、どんなに小さな希望でも・・・・・・、そのためにも、マコトを騙し、あの魔法具を奪い取ったのだ、バケギツネは伝統的に、人間と共闘などということはできない、どちらかというと敵対関係である、しかし、マコトは、まさしく簡単だった、まるで今まで平和な世界にいたかのようだった、むしろ、あの優しさが逆に罠なのではと思うときもあった、あいつと話をしていると、ついつい、平和だったころの自分に戻ってしまい、目的を忘れるときもあった・・・・・、
こんなことになるんだったら、初めから、希望なんて持たずにいたほうが良かったのかもしれない、マコトは、今頃、どこかのモンスターの餌になってるのかもしれない、こんな危険な森で、一人で眠ってしまうなんて、自殺行為でしかない・・・・・恐らく死んでいるだろう、私のせいで・・・・・・私が希望を持ったせいで・・・・・・・・ごめんねマコト・・・・・・本当にごめんね・・・・・・・
なんでだろう・・・・悲しすぎるよ、どうしてこんなことに成るんだろう・・・・・・
「なんでだろう・・・・・・・なんでだろう・・・・」
そもそも、災厄級モンスターがこんな森に現れる自体がおかしいのである、この森に、そんなものは生息してなどいなかった・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
空を見上げてよく見ると、何か青いカーテンのようなものが見えた、なんだろうあれは?
なんだか、私にはとてもきれいに見える、
「・・・・・・・・気がつかなかった、希望なんてもの探していて・・・・こんなきれいなものが浮かんでいるなんて、気がつかなかった・・・・・」
そのとき、ふと、私の脳裏に大精霊が歌っていた、ある歌が・・・・・・
脳裏に浮かんだ、子供の時から、母親が居ない私を憐れんだ大精霊が、母親代わりに、よく歌を歌ってくれたんだっけ・・・・・・、その中にこの青い空のことが唄われたこもり歌があった・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・」
どうせ死ぬのなら、この、一番懐かしい歌を歌って死ぬため、人間に化けた、人間の形のほうが、うまく歌えるからだ
ある時 天に 青い開始の空が やってきた
その空が、赤く輝くたびに、人々は、死んでいった
人々はその空を恐れ 悲しみ 苦しんだ
そのとき、四人の、勇者が、現れた
赤い空とともに 現れる 苦しみ 倒すため
しかし その四人は 真の意味で 私を 助けてくれなかった
私は 苦しみ 悲しんだ それが 運命だったかのように
さだめされた 運命は 人々を 切り裂き 苦しませ 絶望へ 叩き落した
ただ 絶望と 苦しみが 支配する世界
私は 生きる 意味が なかった
ただ 絶望と 苦しみが 支配する世界
しかし いつか 現れる はずさ
そいつは たとえ 人々から 賛美を 受けなくても 勇者じゃ なくても
そいつは 泣き叫んでいる 私に こう言うはずさ
なに 泣いているのかと
川の岸辺で、青くきらめく空を見ながら、そういえば私もこの歌のように、悲しんだり、泣いたり、苦しんだりしたな、だけど…そいつは現れなかった
「・・・・・・ぐすん・・・・わたしって、結局こんな風に殺される運命で・・・・生きている意味なんか…なかったのかな…」
その時
「なに泣いているんだ?ピィオナ」
「・・・・・・・・・・・・・え?」
そいつは現れた、まさにあの歌のように、そして、そいつはまるで、私の生きる意味を、作ってくれるかのように。
生きる意味を探している奴、マコトが・・・