第5话 ゲームが難しすぎて泣いちゃうアイドルの妹
「ただいま」
エレベーターでマンションの十二階まで上がり、星野 源は指紋と虹彩の認証を経て、無事に自宅の扉を開けた。
部屋はとても広く、少なくとも三百五十平方メートル以上はある。内装は豪華で現代的、まさに本物の豪宅だった。
「おかえりなさい――」
リビングから、軽やかで柔らかな声が聞こえてくる。ただ、その声の主はかなり元気がないように思えた。
星野 源は玄関で靴を履き替え、鞄を提げてリビングへ向かう。
星野家のリビングはかなり広く、とても明るい。二百七十度の湾曲ガラスが組み合わさった大きな窓は、眺望も採光も文句なしだ。
夕陽の最後の輝きがガラス越しに室内へ差し込み、ソファに丸まる華奢な影を包み込んでいる。
少女の髪は濡れたまま肩に掛かり、だぶついたTシャツと短パンを身につけている。どうやら風呂から上がったばかりのようだ。
小柄な体、白い肌、桃の花のような目に柳の葉のような眉、小さくて桜色の唇。少女は無数の女性が夢見る先天的な条件を備え、それらを完璧に融合させていた。その美貌は、多くの人を見てきた星野 源でさえ、この安上がりな妹が前世を含めて自分が見てきた中で最も美しい少女だと認めざるを得ないほどだった。
星野 凛はむっとした顔で、手にゲームコントローラーを抱え、星野 源と同じ異色の瞳で、壁の半分近くを占める大型テレビをじっと見つめている。
星野 源は画面を一瞥する。案の定、ゲーム画面だった。画風からして、彼がすでにクリアした某冒険系3A大作のようだ。
ああ、うちのアイドルの妹はゲーマー少女でもあったのか。どうやらそれは事務所によって、そのままアイドル人設に組み込まれているらしい。今のオタクはそういうのに弱いからな。
星野 源はリビングを通っただけだ。立ち止まるつもりはない。ここは部屋へ戻るための必经之路に過ぎない。
だがその時、ゲームの中の星野 凛のキャラクターがボスに倒された。彼女はようやく兄に気づいたかのように視線を向け、そして甘い標準的なアイドルスマイルを浮かべる。とても可愛らしい。
「おかえり。午後、おじいさまから電話があって、イギリスの親戚が亡くなったんだって。お母さんはイギリスに戻ったよ。夕食は野菜サラダを少し作ったけど、もう食べた。冷蔵庫にもう一人分あるから、よかったら食べて」
「分かった」
星野 源の足はほんの少し止まっただけだった。妹の言葉を聞き終えると、そのまま真っ直ぐ部屋へ戻る。彼と星野 凛の関係は、身体的な血のつながり以外、感情面では赤の他人より少しマシな程度と言えた。
なにせ三歳の時に離れている。普通の子供は三歳以前のことを覚えていない。一年前、両親が復縁してから再び一緒に住むようになったが、その時には星野 凛はすでにアイドルだった。家にいないことも多く、東京にいる時間さえ多いとは言えない。
一緒に過ごす時間はごくわずかで、たまに二人とも休みで家にいても、言葉を交わすことはほとんどなかった。
星野 源の背中が閉じた部屋の扉に遮られるのを見て、星野 凛はようやく視線を戻した。彼女は再びゲーム画面へ向き直るが、その目はどこかぼんやりとしていた。
星野 源という兄について、彼女の感覚は少し複雑で微妙だった。
彼女は小さい頃から母親と一緒にイギリスで暮らし、幼い頃から自分には他の国に兄がいることを知っていた。以前、名前だけしか知らないその兄に幻想を抱いていなかったと言えば、もちろん嘘になる。
彼女の想像の中で、自分の兄はきっと英俊で格好よく、優しくて優秀な完璧な少年だった。だが実際に会ってみると……うん、少なくとも第一印象は非常に満足だった。星野 源の姿は自分の幻想と重なった。なにせ、何はともあれ、彼の顔面偏差値は本当に高かったから。
しかししばらく一緒に過ごしてみると、星野 凛は大いに失望した。別に星野 源のどこが悪いとか、嫌いなところがあるとかではない。ただ、この兄があまりにも平凡だと感じただけだ。
というのも、母方の祖父の家はロンドンでも名門と言える家柄で、彼女の周りには幼い頃から上流社会の優秀な子弟たちが溢れていた。星野 凛の感覚では、星野 源は彼女の友人たちと比べるまでもなく、両親から受け継いだ高い顔面偏差値を除けば、普通の人の中でも最も平凡な部類に入る。
運動能力は普通、成績は中流やや下、これといった特技もない。家庭と容姿を無視すれば、ただの無口で内向的な普通の男子生徒に過ぎない。
正直なところ、星野 凛は自分のこの兄に不満はなかった。しかし、本当に親しみを持てるかと言われれば、そうでもなかった。
小さくため息をつき、星野 凛はゲームコントローラーを押して、再びボスに挑む。
「グォオオ――!!」
テレビの中の巨大で恐ろしい怪物が天地に咆哮する。世界を粉々に砕かんばかりだ。それに比べ、星野 凛が操作するゲームの主人公は、闘技場の隅で縮こまるしかない。うっかり怪物にかすられて体力ゲージが空にならないよう、必死だった。
……
太陽は結局、沈んでしまった。
星野 源の部屋は薄暗い。彼は机の前の絨毯に座り、右手に狼毫筆を持ち、筆先は湿った赤い墨を含んでいる。
腕をそっと下ろすと、柔らかな筆先が矮机の上の黄紙に触れた。
手首を軽く動かすと、黄紙の上に赤い痕が残る。
筆は遊龍のように走り、筆が止まれば符は完成する。書き始めてから終わるまで、わずか二呼吸の間だった。
薄暗い部屋の中、符紙の上で光が一瞬閃き、すぐに消える。
星野 源は濁った息を吐き、筆を置き、描き終えた符を傍らの符紙の山へ投げ入れた。
彼は力なく絨毯の上に倒れ込み、天井を見つめてぼんやりする。
「一人じゃ、やっぱり無理か……」
星野 源は腕で目を覆い、小さく呟いた。
しかし、そのまま横になったのは五時間。ぼんやりと再び目を開けると、星野 源は絨毯に手をついて身を起こした。さっきまで符を描いていて精力を消耗しすぎたのだろう。横になった途端に眠ってしまったらしい。
目を揉み、星野 源はスマホを手に取って見る。すでに夜の十一時を過ぎていた。腹の中は空っぽで、さすがに少し腹が減った。そういえば夕食をまだ食べていない。
力強く頭を振り、眠気をすべて振り払う。星野 源は立ち上がり、部屋の扉を開けた。
リビングの電気はついていない。光源は、ガラスを通して室内へ流れ込む月光と、あの馬鹿みたいに大きなテレビの画面だけだ。
星野 源が部屋へ戻る前と同じように、星野 凛は依然としてソファに丸まり、ゲームをしている。だが気のせいだろうか、星野 源には星野 凛が両腕で膝を抱え、両手でコントローラーを持つ姿がどこか悲しげに見えた。よく見れば、目の縁も赤く、今にも泣き出しそうだった。
彼は少し疑問を抱きながらテレビ画面を見て、すぐに驚く。もし彼の記憶が正しければ、部屋へ戻る前、星野 凛が戦っていたのはこのボスだったはずだ。
口元がわずかに引きつる。星野 源は珍しく星野 凛へ自分から声をかけた。
「……まだ寝ないのか?」
星野 凛は彼を見ない。ゲームコントローラーをパチパチと押し続ける。
数秒後、ゲーム画面が白黒になった。
月光の下、一滴の雫が少女の白い頬を伝って落ちる。星野 源は自分が見間違えていないと確信した。この娘は本当に泣いたのだ。
「……」
星野 源は少し迷い、再び声をかける。
「手伝おうか?」
星野 凛は涙を拭い、黙って首を振った。
星野 源は肩をすくめ、まっすぐリビングを抜けて玄関へ行き、運動靴に履き替えて外へ出た。泣いている妹を無視して自分だけ飯を探しに出るのは、普通の兄にはできないことだ。だが彼は、妹がはっきりと余計な世話は要らないと示したからこそ、飯を探しに出たのだ。だから問題はない。
第5章 ゲームが難しすぎて泣いちゃうアイドルの妹




