6話 消去法で決めました
「問題があります」
『問題?』
次の日、泊まった宿から出て、公園のベンチに座っていた。そこで問題発生。発生というか、見て見ぬふりしていたというか。
「お金がありません……」
『………………』
昨日貰った金貨は、カーバンクルへの謝罪ステーキへと消えていった。
それ以外もここに来るまでにかかった費用や、昨日の宿代など、様々なことでお金がかかり、手持ちのお金は底をつこうとしていた。
『仮にも王族の婚約者だったのに、もうお金が無いのか?』
「……普段からお金貰えなくて、出る時も一銭たりともくれなかったから……」
以前から王子は私にお金を一切渡さなかった。欲しいものがある場合はメイドに伝えれば、その物自体がやって来た。
王宮から出る時ももちろんくれなかった。仮にくれって言っていたら、くれないどころか、元々持っていた僅かなお金すら、逆にとられると思ったので言えなかった。
そういう訳で、私の財布はペッシャンコ状態。明日食う分にも困りそうなぐらい。
『それでは、働くしかないな』
「…………その宝石って高く売れそうだよね」
『ニャニッ!?』
カーバンクルの額にある宝石って高そうだよね。こんな大きい宝石ってすごい高いんじゃないの。
『お、お前、ボクを売る気か!?』
「冗談よ。………………」
『なら、なんで無言で見つめる!?』
あははー、冗談冗談。……冗談だよー。
「ま、冗談はさておき。働かないといけないか……」
何故私がここまで働くことに気が重いのかと言うと、単純に働いた経験が無いのと、性格の問題だ。
家にいた子供の時は、両親共に働いていたので、少し余裕があり、私は働かず遊んでいた。
学生時代は寮で一人暮らしいをしていたが、仕送りをもらっていたので働かず。
更にこの性格だ。私は愛想というものが壊滅的に無い。愛想笑いさえ上手く出来ない。王子へ愛想笑いした時は、化け物を見るような目で引かれた。
だから、私は働き先の選択肢自体がそもそも少ない。
「まず、接客業は無理です」
化物スマイルで客を怖がらせる店員がどこにいるのだろうか。お化け屋敷ならいけるか?
「社会人経験もなく、何のスキルもありません」
言ってて悲しくなるが、私は普通の企業で使えるようなスキルが無い。出来ることは精霊術だけ。……精霊を使った芸人ならいける? カーバンクル、お手。………………。
「よって、私が働ける場所はほとんどありません」
私よりもむしろ、カーバンクルの方が働けると思うんだ。看板猫として、店前で寝てるだけでも雇って貰えると思う。どう? 私を養ってみない? ……みない? そうですか……。
『じゃあ、どうするんだお前。……ボクの額を見るな!』
見てないってー。もう、大丈夫だよ。こんな私でも働ける場所はあるんだから。ほら、行くよ。
こんな私でも働ける場所。人と関わることなく、普通の企業で必要なスキルが要らない場所。むしろ、そういう人じゃないと働けない場所。
そこへ向かい、到着し、キィと入口の扉を開ける。
「ようこそ! 冒険者ギルドへ!」
選ばれたのは冒険者でした。