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5話 私は怒られないけどね

「ね、猫が喋っているだと……!?」


 私が猫を吸っていると一人の男性が現れた。


 青い髪に、赤い瞳。細身だけれど、鍛えられている体。二十代前半ぐらいだろうか。快活な青年といった感じの男性。……敵意は無さそうだ。


「ぷはぁ。この子は猫だけど、猫じゃないの。精霊」

「精霊!? その猫は精霊なのか!?」


 カーバンクルが精霊だと伝えると、男性は前のめりに食い付いてきた。まあ、精霊は珍しいよね。精霊術出来る人もほとんど居ないし。居ても、こんな無意味に呼んだりしないし。


「さ、触ってもいいだろうか……?」

「うん、いいよ」

『ニャアアァ!?』


 男性は恐る恐るといったふうにカーバンクルへと手を伸ばす。こらこら、逃げようとしないの。


「手触りは普通の猫と変わらない。長い尾に、もふもふの毛並み」


 男性は優しくカーバンクルを撫で回す。始めは嫌そうだったカーバンクルも少し大人しくなった。むっ、私の方が撫でるのは上手いはず。


「この額の赤い物は……」

「あっ、それは駄目」

「え、うおおおっ!?」


 カーバンクルの額の宝石を触ろうと手を伸ばした男性は、ブワッと宙へと浮き上がる。


「こら。降ろしてあげて。触られてないでしょ」

『……フン!』


 カーバンクルのサイコキネシスから解放された男性は、そのままどすんと地面へと落ちる。カーバンクルがごめんね。まあ、勝手に触っていいよって言った私が元凶なんだけど。


「カーバンクルはね、額の宝石に触られるのすごく嫌がるの」


 その昔、宝石目当てで多くの人間に襲われたのだとか。それ以来、宝石に触られるのは極度に嫌がるようになったらしい。まあ、私は触っても怒られないんだけど。


「そ、そうだったのか。済まない! 嫌な思いをさせて、悪かった! 申し訳ない、カーバンクル!」


 男性は勢いよく土下座する。まるで地に頭を叩きつけるかのような勢いで。


『お、おい、そこまでしなくても……』


 怒っていたカーバンクルが逆にオロオロしている。やるね、策士だね。


「ん? あっ、まずい! もうこんな時間か! ミーティングに遅れてしまう!」


 土下座していた男性は手元の腕時計を見て、立ち上がる。どうやら次の予定が迫っているらしい。


「ありがとう! 貴重な経験をさせてくれて! 少ないがこれでキャットフードでも買ってくれ! では!」

『キャットフードォ!?』


 男性はシュンと走り去っていった。一枚の金貨を私へと渡して。


『ボクはキャットフードなんて食べない! 新鮮な肉か魚を寄越せ!』

「はいはい。分かった分かった。なんか嵐みたいだったね」


 そういえば、名前を聞くことすら忘れるぐらいすごい勢いだったな、なんて思いながら私達も街へと戻っていった。

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― 新着の感想 ―
仲良しコンビの珍道中に笑わせてもらえました♡(>ਊ<)♡ これから、無自覚に無双な楽しい漫遊記の始まりですかね(笑) シルフもカーバンクルも可愛いし、見かけより強い精霊で前々から好きな精霊ですが(.…
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