15話 青の試練
「よし、着いたぞ。ここが石塔の洞窟だ」
昨日途中で野宿した後から出発して、昼前には着いた。この二日間、ずっとお喋りしてたから、尚更早く感じたな。ヴェンは話がうまいね。もしヴェンが私だったら、終始無言だったよ。
そして、あの時見た光景まんまだ。
石が積まれたものが二本あり、その真ん中に洞窟が。アーチ状の入口から見える中は、薄暗く何があるのかここからでは見えない。
「さて、中の探検といくか」
「うん、楽しみだね」
「…………そうだな」
洞窟探検なんて初めて。中はどうなってるのかな。綺麗な景色とかあったりするかな。
「………………え? 終わり?」
洞窟を探検しだして十分。もう全部見てしまった。
「ああ。これで中は全部だ。何もなかったな」
洞窟は想像以上に小さかった。中はほぼ一本道で、道も平坦ですんなりと歩くことができた。
「ここって、整備された場所だったの?」
「いや、自然でこの状態だったと思うが」
洞窟のことなんて詳しくないけど、誰かが整備したのかなと思うぐらい、簡単に奥までいけた。奥まで行ったところで、何もなかったのだけれど。
中には何もなかったので、外を探索してみる。石の塔や周りの草むらなど、色々見たけど、別に何も見つからなかった。
「あの光景はなんだったんだろう?」
鍵に触れた瞬間ここが見えた。きっと何か意味があると思ったんだけど、違ったのかな。
「そうだ、鍵に触ってみたらどうだ? 何か起こるかもしれない」
「うん。………………何もないね」
ヴェンから鍵を貰って触ってみたけど、何も起こらない。鍵にも何か変化があるわけではない。
「気のせいだったのかな……。ごめんね、こんな所まで来たのに……」
「まだそうと決まった訳じゃない。見落としてるところがあるかもしれないさ。もう少し探索しよう」
『……なあ、この石塔なんか変だぞ?』
「え?」
カーバンクルが石塔を見上げながら言う。何が変なの?
『積んであるように見えるけど、これ一つに繋がってるぞ』
「そうなの?」
改めて石塔を見てみる。石塔に使われてる石の大きさ形は様々。これが一つに? そうは見えないけど。
『じゃあ、ちょっと動かしてみるぞ。……ほら』
カーバンクルはサイコキネシスで石塔の片方を持ち上げた。そして、それを横にしたり、逆さにしたりしても石はバラバラにならずくっついている。
「本当だ。なんでくっついているんだろう」
『この二本、本当は一本だったりしてな〜』
「ちょっとカーバンクル。遊んで……きゃああ!?」
石塔をくるくる回したりして遊んでいたカーバンクル。ふと、片方の石塔をもう片方の上に乗せた瞬間、全ての石がバラバラになり崩れ落ちた。
「なにしてんのよ、あんた!?」
『ボ、ボクじゃない! 勝手に壊れたんだ!』
壊した奴は大抵そう言うの! あーあ、これどうすんのよ。誰かに怒られる前に直しなさいよ。
「……見てくれ。あの石、なんか嵌ってる感じがしないか?」
「え?」
ヴェンが指差したのは一つの石。その石は洞窟の入口の隅で立っていた。ピタッとその淵に沿うように立っており、言われてみると確かに嵌ってるようにも見える。
「…………これか? よっと」
ヴェンはバラバラになった石から一つ持ち出し、立っている石の上に置いてみた。すると、石は倒れることなく、その上にピタリと嵌ってしまった。
「やっぱりそうだ。この石は洞窟の入口に嵌るようになっているらしい」
「え、すごい。何かパズルみたいだね」
「ハハッ、確かにそうだな。よし、ではこのパズルを完成させようじゃないか!」
三人で考えること三十分。遂に、最後のピースとなった。
この石達は本当にパズルの様に、洞窟の入口に嵌っていた。あとはこの中心付近の一ピースを入れれば……。
「……よし、完成だ!」
パズルの完成だ。
「ヴェン、これって……」
「……ああ。鍵穴、みたいだな」
組み立てたパズルの中心部。縦長に少しだけ開いた隙間。ここ以外はピッチリ一つの隙間も無く埋まっている。ここだけが、意図的に隙間が出来ていて、それはまるで鍵穴のような形だった。
「……いくぞ?」
「うん……!」
赤い鍵を取り出し、ヴェンがその鍵穴へ差し込む。鍵はすっとそこへ入っていき、そして、
ゴゴゴゴゴッ……。
地響きと共に嵌っていた石達が動きだし、再び洞窟の入口が開いた。
「……さっきまでと全然違うね」
洞窟内は雰囲気が変わっていた。さっきまでの普通の洞窟といった感じがなくなり、完全に整備された道の様に。内部は岩肌から青い壁へと変わり、私達の音以外は何も聞こえない。
そして、一番奥に辿り着いた私達の前に一枚の扉が現れた。無機質な扉。それはここが外とは別世界であることを象徴しているかのように。
「……行こうか。二人とも」
「うん」
『ああ』
ヴェンが扉を開ける。その先には広い空間が。内部は一面薄い青の壁でドーム型のようになっている。高い天井にガラスのような床。ここはいったい……?
「気をつけろ、二人共!」
ヴェンの声が響く。次の瞬間、目の前には大きな巨人のようなものが降りてきた。これは巨大な人形?
私達よりも遥かに大きなその人形の目が光る。その目は私達を捉え、そして、拳を握り戦闘態勢へ。
「ここの番人という訳か。やるしかないようだな!」
番人との戦闘が始まった。