13話 便利屋プロクオリティ
「すまない! 遅れてしまった……」
「いいよ。私も来たとこだよ」
『……珍しい』
カフェで別れた後日、私とヴェンは街の門で待ち合わせをしていた。珍しいって何さ。待ち合わせの時はこう言うのが定番でしょ。
「これを君にと思ったんだが、思った以上に時間がかかってな」
ヴェンは背に長い筒状の物をを背負っていた。そらをスッと私へ差し出される。これは……
「杖!?」
私の背丈程の長さ、手首ぐらいの太さを持った長い杖。まるで以前使っていた杖の様な杖。
「君はこういう杖を使っていたと聞いたからな、準備してきたんだ」
洞窟調査へ行くと決めた日、お開きは無しにして、作戦会議をした。その際に、私の杖のことも話してはいたけれど、まさか準備してくれるなんて。
「すごい。前使っていたのにすごく似てる」
素材が違うからか、手触りなどは違うが、見た目はかなり前に近い。写真を見せた訳でもなく、私の言葉だけでこんなに近づけるなんて。それに前もってたのより、なんかデザインが凝っている。ちょっと装飾されてるし。
「こんなのどこに売ってたの? いくつかお店回ったけど、どこにもなかったよ」
洞窟調査へ行くと決めたので、武器を探していくつかのお店を回ってみた。さすがに角材だと不安なところがあるからね。でも、やっぱりこんな杖を置いてるところはなかった。棍棒は時々あった。
「店売りじゃない。俺が作ったんだ」
「作った!?」
え、これヴェンが作ったの?
「便利屋の仕事で色んな物を作ってきたからな。その経験を活かして作ってみたんだ。こんな杖を作ったのは初めてだから、うまくいったのか分からないけれど」
便利屋ってそんな仕事もするの。まさかこの杖が自作だなんて。
「いや、すごいよ。プロクオリティだよ。こんなの貰っていいの?」
これ普通に売れるよね。武器としてはどうか分からないけど、インテリアとかでも良さそう。ちゃんとデザインしてあるし。どの様に飾るかは、個人のセンスでお願いします。
「もちろん。君の為に作ってきたんだ。調査に行こうと提案したのは俺だ。それぐらいしか用意が出来なかったが、ぜひ使ってくれたら嬉しい」
言い出しっぺだからって、わざわざこんな物を作ってきてくれるなんて。嬉しい。家族以外からプレゼントを貰うのなんていつぶりだろ。
「ありがとう。すっごく嬉しい!」
「そうか。お気に召してくれたならよかった。でも、急だったから、良い素材を使えなくてな。あまり質は良くないんだ」
素材は良くないというが、見た感じは分からない。振ってみると、前より軽い感じがするからそこは違うけど、十分使えそうに思える。少し魔力を流して試し打ちしても何ともない。すごい。
「大丈夫だよ。何か出てきたら、これで退治するね」
「フフッ、期待しているぞ。では、出発だ!」
さあ、装備も整ったし調査へ向けて出発。目指すは石塔の洞窟。ヴェンの鍵の謎を解き行くのだ。