表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/29

11話 大漁

『……なあ、これで合ってるのか?』

「何が?」


 私達は海にいた。クエスト「大海の魔物、シーサーペントの討伐」のために。


『シーサーペントは大きな商船を狙うんだろ』

「そうらしいね」


 聞いている話しによると、シーサーペントは大きな商船を狙うようで、もう何隻も被害が出ているとのこと。


 だから、私も船を用意した。


『船っていうか、ボートじゃないかこれ……』

「……駄目だったかな」


 私が用意出来た船は、木製の小さな船。二、三人乗れば、もう満員ぐらいのサイズで、勝手に動く魔道具なども付いておらず、自分で手で漕がないといけない。今もギーコギーコとオールを漕いでいる。


「だって、襲われるって分かっているのに、立派な船貸してくれるとこなんか無いよ」


 シーサーペントに襲われる為に、船貸してくださいって言って、貸してくれる人なんか居るのだろうか。


 これは「ああ、丁度処分に困ってたのがあるよ」って言われて貸して貰った。まあ、こっちとしても丁度いいやと思ったけど、間違ってたかな?


「まあ、いいじゃん。気長に待とうよ。それよりさ、釣り竿も借りてきたんだ。釣りしようよ、釣り」

『……お前、それがしたいから、この船にしたんじゃないだろうな』


 あはは、そんな訳ないじゃん。……釣りってするの初めてなんだよね。どれぐらい釣れるのかなぁ? フフッ、大漁だったりしないかなぁ。


 船を止め、釣り竿を取り出す。そして、餌を付けた釣り糸をピュッと海へ投げ入れる。楽しみだなぁ。早く食いつかないかなぁ。ちょっとこう上下とかしたほうがいいんだっけ? 餌が生きてるに見えるほうがいいんだよね?


「……、……、……あっ! あっ、かかった、かかった! かかったよ! おーよいしょお!」


 待つこと数分。ついに釣り竿に当たりが。期待に胸膨らませながら、釣り竿を思いっきり引っ張る。すると、


「釣れたぁ! 釣れたよ! すごくない? 私すごくない? 釣れたよ!?」


 一匹の魚を釣り上げることが出来た。


『うむ、おやつに丁度いいな。よくやったぞ、アリシア!』

「あんたにあげるなんて言ってないよ」


 何勝手に貰おうとしてるんだ、この猫は。なんで私が釣ったのにあげないといけないんだ。これは私が食べます。どうやって食べようかな。この魚の名前も知らないけどね。


 その後も、釣り針を垂らして、獲物を待っていた。でも、ビギナーズラックはもう終わってしまったようで。待てど暮らせど、竿に変化はなかった。


「……カーバンクルさぁ、何か面白い話しして」

『お前飽きてきたんだろ』


 別に飽きてないけどさあ。こうも変化がないとつまらないじゃん。何か面白い話ししてよ。


「あーあ。これでシーサーペントって釣れないかな?」

『いや、無理だろ。こんな小さな餌で』


 釣り竿を貸して貰ったところで餌も一緒に貰った。餌は小魚を貰った。これでシーサーペント釣れないかな。


「じゃあ、餌がもっと大きかったらいけるかな?」

『まあ、今よりは可能性があるんじゃないか』

「……カーバンクル、ちょっと海泳いでみない?」

『ボクを餌にしようとするな!』


 いや、別に餌にするなんて言ってないよ。天気もいいしさ、きっと泳いだら気持ちいいよ。流されないように、ちゃんと釣り糸巻き付けてあげるからさ。


『大きさで言えばお前の方がデカいだろ! お前が泳げばいいじゃないか!』

「私、泳げないんだよね」


 残念ながら、私は泳げない。生粋のカナヅチだ。あーあ、残念だなぁ。私だって、泳げたら泳いでいたんだけどなぁ。……チラッ。


『どれだけ見ても、餌になんかならないからな!』

「むう、残念。じゃあ、呼んで見つけてもらおうかな」


 水面をペチペチとオールでノックする。待てド暮らせど来ないのなら、こっちから行ってあげようじゃない。


『呼んだ? アリシア』


 現れたのは、水の精霊ウンディーネ。長い髪の女性みたいな見た目だけど、その身体は水で出来ている。


「あのね、シーサーペントを探して欲しいの」

『シーサーペントを探す? そんなことであたしを呼んだわけ?』

「……だって、私泳げないし」


 生粋のカナヅチですので。こんな波もある海で泳ぐのなんか無理でございます。

 

『あんたまだ泳げないの? さっさと泳げるようになりなよ。そうだ。今から泳ぎの特訓しようか』

「いいよ別に。水着も無いし」

『水着なんてなくても良いじゃんか。こんな海のド真ん中、誰も来ないって。ほら、服脱ぎな』

「やー! いいって! 助けてカーバンクル!」

『お前が呼んだんじゃないか……』


 人選ミスった! シーサーペントAランクだから、ちょっとでも強いのを思ってウンディーネ呼んだけど、ただのお節介おばさん呼んじゃった! 探してもらうだけなら、マーメイドとかでもよかった!


『まったく。いつなったらカナヅチ卒業するんだい?』

「……予定はありませんので。それより、ほら、シーサーペント探してきてよ」

『別に探す必要なんてないだろう?』

「は?」

『だって、ほら。もう来てるんだから』

「え、うえええ!?」


 突如、下から山のように水が盛り上がってきた。たまらず、転覆してしまうボート。


「あ、ありがとう。カーバンクル」


 カーバンクルにサイコキネシスで宙に立たせて貰って、なんとか海へ転落は防いだ。

 でも、思っていた以上に大っきいな。シーサーペントって。


 転覆したボートは、シーサーペントによって丸呑みされてしまった。そして、ゆらりと海面から現れるその巨体。

 まるでヘビのように細長い体。ボートも余裕で丸呑みする大きな口。これが大海の魔物シーサーペント。


「カーバンクル、あいつ止めれる? 私が頭ぶん殴って……」

『何もしなくていい。アリシア、カーバンクル』

「ウンディーネ?」


 シーサーペントの出現で大波が起こった水面。だが、今はピタリとその波が止んでいた。水が一カ所に集まってきている。


『あいつ、このあたしを食おうとした。ヘビごときがあたしを舐めやがって……』


 あっ、やばい。ウンディーネがなんか怒ってる。


『……アリシア。ヘビの味って知ってるかい?』

「いや、知らないけど……」

『鶏と魚の中間の味なんだって。……腹いっぱい食わせてやるよぉ!!』


 水が大きく形を変える。シーサーペントの巨体、それすらも超える長さの包丁へと。


『三枚おろしじゃ! ヘビ野郎!!』


 ズパァン!! と轟音が響き、海が割れた。振るわれた水の包丁。その鋭さはシーサーペントの鱗をものともせず、右身、左身、中骨と綺麗に三枚におろしてしまった。


『さあ、新鮮なうちに食べちまうよ!』

『た、大将……!』

『あんたは早く泳げるようになるんだよ!』

「……努力します」


 おろされた身を持って、ギルドに帰って食べた。おいしかった。三人では食べきれないから、ギルドのみんなにもあげた。カーバンクルはずっとボクのだってうるさかった。


 ……泳げって八つ当たりされたら嫌なんで、私は静かにしていました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ