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10話 そんなに褒めても何も出ないよ

「ただいまー」

「あっ、おかえりなええ!?」


 ギルドに帰って来たら、受付のお姉さんが盛大に迎えてくれた。いいね、そのリアクション。


「これ、クエストのリザードマン。こっちはおまけのワイバーン」

「ワイバーンがおまけなんですか!?」


 だって、私Aランクのクエスト受けられないからね。おまけになるよ。


「と、とりあえず、クエストの処理と、素材の鑑定、換金対応いたしますね」

「うん、よろしく」


 一時間後。


「お待たせしました。これが今回の報酬となります」


 わあ、すごいいっぱい。金、銀、銅。全部の貨幣がいっぱいある。


『ニャッハ! 今夜はパーティーだな!』

「駄目。そんなことしたらすぐ無くなるでしょ」


 これだけの大金があれば、かなりの間遊んで暮らせる。カーバンクルのパーティーなんかしたら、数日で無くなるから駄目。私、働きたくない。


「それと今回の結果を受けて、アリシアさんをAランクにランクアップしました!」

「え、ランクアップ? 試験は?」


 確か、ランクアップには、実績と試験の合格が必要って言われたはず。私はまだ大した実績もないし、試験も受けてないんだけど。


「大丈夫です! アリシアさんの実力なら何の問題もありません! ほぼ、外傷なくワイバーンを仕留めるなんて相当な実力がないと出来ませんから! 上から承認も貰ったので今からAランクです!」


 上の人の承認まで貰ってきたの? クエストの処理と素材の鑑定、換金と、上の人に話しして承認まで貰うのをこの一時間でやってきたの? え、なんなのこの人。シゴデキ過ぎない?


「こちらギルドカードお返しします。これからもご活躍も期待していますね! アリシアさんなら、すぐにSランクになれますよ! 期待の超新星ですよ!」

「あはは、ありがとう」


 人のヨイショまでしちゃって。なんなのこの人。高性能過ぎない? 


 この日は、この後高性能さんと雑談してから宿へと帰っていった。終始ヨイショしてくれて、非常に気持ちよかった。そんなに言うんだったら、これからも頑張ろっと。






「では、行ってらっしゃい! お気をつけて!」

「うん。行ってきます」


 次の日。高性能さんにお見送りされて、私はギルドを出た。今日は初めてのAランククエストに挑戦だ。挑戦するクエストは、


 大海の魔物、シーサーペントの討伐。


 なんでも最近、大きな商船がいくつもこのシーサーペントにやられているらしい。船は沈められ、商品も船員にも被害が出ている。そいつの討伐。


 昨日もう働きたくないと思ったのに、なんで次の日にはもう働いているんだろう。ヨイショされて、頑張ろうとは思ったけど、こんなに早く仕事するつもりは無かった。なんでこんなに早く仕事しないといけないの? 本当にこの猫は。


 最寄りの場所は、港町エルン。ここからは歩いたら数日かかっちゃうな。ということで、


「エルンまで送ってほしいんだ」

『またそんなことであたしを呼んだのー!?』


 だって、シルフに乗っけて貰うのが早いんだもん。


『もっとさー、なんかさー、いい感じのことで呼びなよー』

「ふわふわしてるね」


 言ってることがふわっふわで、結局、どういうことなら呼んで良いのか分からないな。 

 渋ってるシルフ。フッ。でもね、今回こっちには切り札があるんだよ。


「シルフこれあげる」

『こ、これは……!……フッフッフッ。お主も悪よのぉ?』

「いえいえ、領主様程ではございませんよ?」

『「アッハッハ!」』

『……何馬鹿なことやってるんだ』


 スッとシルフに差し出したのはビー玉。こういう綺麗なガラスがシルフ好きなんだよね。


 賄賂を渡し、シルフの風に乗る。さあ、エルンへ向けて出発。


『なんでカーバンクルまで飛ばさないといけないのー!? 自分で飛べるじゃん!』

『ニャハハ! その賄賂はボクが稼いだお金で買ったんだから、当然だろ?』

「はいはい、喧嘩しないー」


 シルフの風に乗りながら、空の旅路を満喫中。このふわふわ感がたまらないよね。カーバンクルのサイコキネシスは動かされてるって感じだし、面白くないけど、シルフのは浮遊感があっていいな。このうるさい二匹がいなければ、今ごろ爆睡してるのに。


 そんなこんなで二匹の喧嘩を眺めていたら、目的の町へと着いた。港町エルン。漁業や、交易が盛んな海の町。


『潮風が気持ちいいねー!』

「そうだね。潮風なんて初めてだよ」


 なんか少し独特の匂いがするような。それに顔に当たる感じも普通の風と違う。


『そうか? なんかベタつくというか……』

『これだから猫はー。風の違いや良さを分かってないねー』

『うるさい! もう用は済んだんだから帰れ!』

『はあ!? 誰のおかげでここまで来れたと思ってんのー!?』

『自分の力でも来れましたー』

『勝手にタダ乗りしたくせにー!』

「はいはい、そこまで。シルフ、ここまでありがとね。もう一個あげるよ」


 シルフにもう一個ビー玉をあげて、別れの挨拶をする。バイバイ。また帰りよろしくね。


 今日はもう遅いし、クエストは明日行くとするか。魚!魚!とうるさい猫は放っておいて、今日の宿を探しにいった。

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