第8話 これは私の贖罪なのね…
何でカニが私を…?
いったい、あのカニ達は?
さっきも…
お風呂にカニがいた
あのカニ… 私をジッと見てた
気のせいなんかじゃないわ
気味が悪い…
シャワーのお湯でやっつけたけど
また出てきたら…
そう思うと怖い
ベッドに入っても
なかなか眠れない
睡眠薬を飲んだのに…
今日は少し多めに飲んだ
それなのに…
何度も部屋を確かめた
ベッドも念入りに調べたわ
でも、カニはいなかった…
ああ…
私はおかしい
病気なんだわ
もし、カニがいたとしたって
何でこんなに怯えるのよ
パパも言ってた
近所にカニが集団発生したんだろうって
たまたまだって…
そうよ、そうに決まってる…
うちの家やお店だけじゃない
近所のお宅にだってきっと…
そう思ったら
少し安心した
あんなちっちゃなカニだもの
出て来たって怖くなんてない…
はずだわ
私の考えすぎなんだ
どうしてカニの事を考えると
アイツが思い浮かぶんだろう
王様…
何が王様よ!
サイコパスの変態野郎…
カニから何でアイツの事が…?
アイツは死んだのよ
心配なんて何もない
私はもう自由なの
パパが助けてくれた
島に閉じ込められ
アイツに犯され続けた毎日…
あれはもう終わったわ
パパと私で終わらせた
私がこの手で引き金を引いたんだもの
ロケットランチャー…
あの爆発で生きている訳が無い
吹き飛んだアイツの左腕と両脚…
パパが確認してくれた
もう心配ないって
私に言ってくれた…
本当にどうして…
カニとアイツが結びつくのかしら?
それに店によく来るあの変な客…
あの男も気味が悪い
ただの私目当てのお客さんよね
顔を隠してるのは
恥ずかしがりだからなんだわ
きっと、そう
そうだといいんだけど…
ストーカーって事は…?
だったら、怖い…
王様もそうだったわ
最初は私に惚れた男の一人だった
私に声もかけられなかったわ
でも、だんだんと
私につきまとった
私は当時の彼氏に相談した
彼が追っ払ってくれた
でも何度追い払っても
ストーカーをやめなかった
一度…その彼氏が大勢の友達を集めて
アイツを袋叩きにしたって言ってた
もう来ないだろうって
彼氏は言った
でも結局…
私の前からいなくなったのは…
彼氏の方だった
たくさんいた
私のボーイフレンド達…
私の取り巻きだった全ての男…
みんないなくなった…
みんな死んだって…
アイツが言ってた
私を幽閉した後
毎日私を犯しながら
私の中で動き続けながら
誇らしげにアイツが言った
お前の男はみんな殺したって…
お前のせいで死んだんだって…
さっきの彼氏…
彼の切り取った首を見せられた
やっぱり私を犯しながら
自慢そうに見せやがった
私は泣いた…
私のせいで彼が殺された
他の男友達もそう…
私を愛してくれた男達は
みんなアイツに殺された
私のせい…
パパは違うって言ってくれた
心療内科の先生も…
君はただの被害者なんだって
でも…
殺された人達は戻らない
原因だった私は
こうして助かったのに…
いつも感じてしまう罪悪感…
最後はここに行きつく
カタキは取った
でも…
罪悪感は消えない
この業を私は一生背負っていく
神様に誓ったもの…
私は死んだら地獄へ行くって…
まだ死んでない…けど
今感じている
この恐怖も地獄の一つなの…?
生きていても地獄…
ならいっそ…
でも私はパパに誓った…
パパより先に死なないって…
もちろんママよりも…
だから生きなくちゃ…
どんなに辛くても
これは…
言い寄る男達を弄んできた
私の贖罪なのね…
そう思ったら…
気分が少し楽になった…
きっと、薬が…聞いてきたんだ…わ
やっと…眠れそう
眠い…
……
私を…許して…
スースー…