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第33話 戦いが終わり、パパの最後の時が…

白虎(びゃっこ)さんとパパとの戦いが終わった…

私は身を(ひそ)めていた林を出て

二人が向かい合っている場所へと向かった…

パパ…


私は白虎(びゃっこ)さんの背後(はいご)から


(おそ)る恐る顔を覗かせて


そこに()るパパの姿を見た


ああ、神様…


白虎さんの前に倒れたパパは


身体を(ふる)わせて


白虎さんに向かって


自分を早く殺せと懇願(こんがん)していた


私の接近を知ったのだろう


白虎さんが身体をずらして


私に道を開けてくれた


変わり()てたパパの姿を見た私は息を()んだ


不審(ふしん)そうな顔でパパも私を見ている


パパと私の目が合った…


顔の左半分の表面を


カニの甲羅(こうら)状の(かた)い皮膚が(おお)


左目はカニと同じ様に眼球が突出(とっしゅつ)している


その左目と人間のままの右目が


私を見つめている


でも、パパの顔には…


私を見つけた喜びの表情は無かった


パパ、私が分からないの…?


私よ、くみよ!


パパ… お父さん!


私の必死の呼びかけに


パパは困惑(こんわく)の表情を浮かべている


その反応に、とても悲しくなった私の両目から


涙が(あふ)れ、ポロポロと(ほほ)を伝い落ちた


そんな… ひどい…


こんな姿にされただけじゃなく


あの変態サイコ野郎に


パパは記憶まで奪われてしまったの⁉


さっき、私に襲いかかって来たのも


そのせいなのね…


パパには私が分からない…


その事実に私は愕然(がくぜん)とした


私を見るパパの顔付きが


困惑から苦悶(くもん)の表情に変わった


私には分かる…


きっとパパは


両腕を失った痛みより


必死に思い出そうとしても


私を思い出せない事が苦しいんだわ


お願いよ、パパ


私の事を思い出して!


ママや私の事を!


三人で過ごした楽しかった日々を!


半年前… 命()けで


パパが私を救い出してくれた日の事を!


あの日を思い出して!


私は叫びながら


変わり果て、死に(ひん)しているパパを


力いっぱい抱きしめた


パパ! 愛してるわ!


世界で一番、大好きよ!


はっ!


今… パパの右(ほほ)に押し当てた


私の右頬に伝ったのは…?


パパ…?


パパが涙を…?


急いで頬を離した私は


間近(まぢか)でパパの顔を見つめた


間違いなかった


人間のままの右目から


パパは涙を流していた…


パパっ⁉


パパ、泣いてるのね?


私を思い出してくれたの?


ああ、パパ…


私よ、くみよ…


私はパパを抱きかかえていた両手に力を込めた


でも…


パパの両腕全てを焼き()くした青白い炎が


すでに胸にまで及んでいた


私は父の身体を焼く青白い炎を消そうと


必死になって息を吹きかけ


何度も何度も手で(じか)に払った


でも…


どうやっても青白い炎を消す事は出来なかった…


私の手に炎が触れたが


少しも熱くは無かった


不思議な事に…


この炎は人間の身体は焼かないらしい


その時、背後から私の肩に


そっと手が置かれた


パパの(かたわ)らにしゃがみ込んでいた私は


首だけで後ろを振り返り


自分の肩に置かれた手の(ぬし)を見上げた


そこに立っていたのは


白虎(びゃっこ)さんでは無く…


人間の姿に戻った探偵さんだった


爆発でボロボロになった格好(かっこう)


私を見下ろす彼の目に浮かんでいたのは


戦いに勝利した者の輝きなどでは無く


ただ(つら)そうな弱弱しい光だった


私と目を合わせた彼は


悲し気に首を振っていた


探偵さんの苦しそうな表情と仕草(しぐさ)


父がもう助からない事を雄弁に物語っていた


そうなのだ…


この人も昔なじみのパパの事を


(この)もしく思ってくれていたのだ


今日だってパパに()いに


パパの()れたコーヒーを飲むために


遠くから来てくれたんだわ…


そんなパパと…


()(この)んで戦った訳では無く


娘である私の涙ながらの懇願(こんがん)


彼は苦しみながらパパと戦ったのだろう…


ごめんなさい、探偵さん…


こんなに(つら)い役目をあなたに…


その時、ドサッと音がして


不意に私の手が軽くなった…


私は驚いてパパに視線を戻した


はっ!


目の前の光景に私は息を()んだ


両肩からパパの身体を焼いていた


青白い炎が胸の部分で繋がり


パパの身体を上下に両断したのだった


今の音は…


私の手に(かか)えられていた(ささ)えを失った


パパの腹部から下の身体部分が


地面に倒れ込んだ音だった


ああ、神様…


こんな残酷(ざんこく)な事があるのでしょうか?


まだ生きている愛する父親の身体が


娘の私が抱く腕の中で崩壊(ほうかい)していくのだ


私はパパの頭部を


しっかりと自分の胸に抱きしめた


その間も無情な青白い炎は消える事無く


パパの鎖骨辺(さこつあた)りを


チロチロと燃え進んでいく


もうすぐパパの存在が…


この世から消えて無くなってしまう…


あああ… こんな…


こんな残酷な事って…


せめて、せめて神様…


パパの御霊(みたま)を天国に…


あなたの元にお()し下さい


パパの魂をお救い下さい…


お願いです…


はっ…


私の両手の中で


パパの右目が開いた…


私を見つめてる


不思議な事に


もうパパの表情には


困惑(こんわく)苦悶(くもん)も無かった


不思議な事に


安らかな表情にも見えた


解脱(げだつ)


私は仏教用語で聞いた事のある


そんな言葉を思い出した


えっ?


私の目を見ながらパパの唇が動いて


何かを言おうとしている…


何…?


パパ、何が言いたいの?


私はパパの(くちびる)に右耳を近づけた


私の耳に…


安らかな呼吸と共に


(つぶや)きの様な父の言葉が語りかけて来た

ああ…

パパ… 私のパパ…

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