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Platinum Pride  作者: ポメ
8/22

10分後

10分後、僕たちはドーベルマンに囲まれていた。


12345,全部で5匹いる。

門から堂々と入ったのに、僕たちを最初に出迎えたのはドーベルマンだった。


ウウウ~ウウウ~

僕たちを見て、うなっている。


屋敷はへいに囲まれ、その内側には高い木が植えてあり、中の様子はわからないようになっている。門の中に入ると、まずちょっとした森のような木が生い茂っているエリアがあり、真ん中に小道があった。車が入る門は、また別にあるのかもしれなかった。


その小道の真ん中で、僕とトビオと情報屋、そしてサラリーマンの町田さんの4人は、オブジェみたいに体を寄せ合って、ドーベルマンと向き合っていた。

間近まぢかで見るドーベルマンの歯はするどとがっていて、恐ろしかった。どうしても自分が噛みつかれる場面を想像してしまい、足がすくんでしまう。


ウウウ~ウウウ~

少しでも目をはなしたら、今にもみつかれそうだった。

ドーベルマンの黒くツヤツヤと輝いている短い毛を見ながら、いいもの食べてそうだとか、どうでもいいことを考えてしまう。


僕たちは、お互いに誰かのかげかくれようと、もがいていた。


「あのお、、武道ぶどう心得こころえがある方が、どうぞお先に」


「関係ない、人間以外無理」


人は緊急事態きんきゅうじたいになると言葉も無礼ぶれいになる。

トビオが町田さんの腕をつかんで


「ほーれ、ボンレスハムだよ」


とドーベルマンに言っている。なんて奴だ。


「大丈夫だよ!僕たちは怪しくないよ、」


と僕も犬たちをなだめてみたが、どう考えても僕たちは怪しかった。


「そうだ!怪しい順に並ぼう。」


「誰が一番怪しいんだよ。」


「僕が一番怪しくないです。」


ウウウ~オワン!


ひ~!犬に吠えられて、僕たちは一瞬にしてトーテムポールのごとくコンパクトサイズになった。


「僕が犬語を話してみる。」


またトビオが訳の分からない事を言った。


「そんなん、無理に決まっているだろ!」


「いつも話しかけている。」


そういえば、そうだった。

トビオの奇行きこうは犬にまでおよんでいた。


ウウウ~ウウウ~

犬がうなる。

ううう~ううう~

トビオがうなる。

ゴゴゴ、キュルキュル、、ンゴゴゴゴゴオ~

お腹が鳴る


「わんっ!」


突如とつじょトビオがえると、はじけるようにドーベルマンがおそかってきた。


失敗だ。


トビオが矢のごとく逃げていく。


僕も1匹のドーベルマンにおそわれ、訳がわからない。

犬の荒い息遣いが間近まぢかに聞こえたかと思ったら、服のそでをガッチリまれて、ぶんぶん振り回された。僕はされるがままに、あっちにヨロヨロこっちにヨロヨロとなり、完全に人間としての尊厳そんげんを失っていた。


その時だ。

急にドーベルマンの動きが止まった。


耳を澄ませているようだ。

と同時に僕たちの周りから引き揚げていった。


何があったのか知らないが、助かったようだ。

僕は犬におそわれたショックで、しばらく座り込んでいたが、


「み、皆さん、大丈夫ですかぁ?」


という町田さんの声で、われに返り、やっと立ち上がった。


「僕はなんとか大丈夫です。」


僕がそう言うと、情報屋も無事だったようで手をあげて合図あいずをしていた。


「良かった、、はあ~」


町田さんも、よほど怖かったのか、小刻こきざみにふるえている手を僕に見せて苦笑いした。


「トビオは?」


トビオの姿が見当たらない。


「どこまで逃げたのでしょうか」


町田さんも心配してくれている。無事だといいが・・。

そこへ


「申し訳ございません。大丈夫ですかー!」


と言いながら、小道を歩いてくる人影が見えた。

僕が情報屋に視線を送ると、彼は返事するようにと僕に向かって、うなずいた。


「はーい、大丈夫です。」


と言いながら僕たちも声のする方へ行くと、男の人が歩いてきた。男はハンチング帽をかぶっており、一目ひとめで上質な素材そざいとわかる上着を着ていた。首にふえのようなものをぶら下げている。


「申し訳ない、私の犬たちが失礼なことをした。ケガはなかったでしょうか。」


男は歯切れ良い口調でそう言い、僕たちを観察かんさつするかのように見回した。


「ええ、ケガは幸いありませんでした、大丈夫です。」


僕がそう言うと


「服がひどいことになっていますね。大変申し訳ございませんでした。弁償べんしょういたします。さ、こちらへ」


と言いながら案内してくれた。


「今日は、彼らの自由時間が少し長くなってしまってね。私もすぐに気づいて呼び戻せればよかったのだが、大変申し訳なかった。」


彼らとは、ドーベルマンのことだろう。男はびながらも、高圧的こうあつてき姿勢しせいくずれることはなかった。


「あの!もうひと・・・」


僕がトビオの事を言おうとしたら、そでをグイっと引っ張られた。情報屋が無言で首を横に振っていた。トビオの事は言わないでおいた方がいいという事だろうか・・。


「何でしょうか?」


僕は男に聞かれ、


「ああ、いえ、広いお庭ですね!もうひとりしなきゃ、ハハハ」


と言って、ごまかした。


「ありがとうございます。私は自然が好きなものでね、森林は気持ちがいい。でもほら、もう着きました。出口ですよ!」


森の小道を出ると、そこには開けた風景が広がっていた。

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