それからetc.
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おわらいのおにいちゃんへ
ぱぱが ごはん たくさん たべたよ
それから おならをして わらいました
とうま
お兄ちゃん、ありがとう。
パパが会社へ行きました。
みさきより
お兄ちゃん、ありがとうございました。
お父さんが元気になりました。
キャッチボールもしました。
お兄ちゃんたちのおかげです。
早く、テレビに出て活躍してください。
大樹より
お元気でいらっしゃいますか?
おかげさまで、夫も会社を辞めなくても済みそうです。
私たちの家庭を救っていただき、本当にありがとうございました。
宅間
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「だってさ!トビオ。みんな元気そうで良かったな!」
手紙をしまうと、僕はテレビゲームの続きをした。
う~ん!平和な日常って素晴らしい♪
トビオは机の上にある、お菓子の空き箱を浮かせようと必死だ。
35回目の挑戦はどうやら失敗したようだった。
紙に正の字を書いている。相変わらず訳わからない。
「あのうちのお父さんのプライドって、何だったと思う?」
トビオがテレビゲームの前に仁王立ちになり、僕に質問してくる。迷惑な奴だ。
「聞いたのか?」
「俺に不可能は無いのさ。」
「何だったの?」
「自分が働いて子供たちを養っている事だって」
そう言うとトビオは36回目の挑戦を始めた。
あの日から、10日がたっていた。
あれから、事情を全て知った荷葉夫人は、警察に連絡した。
後から、わかったことだが、荷葉さんは、資産家の令嬢で、お父さんは某有名会社の取締役なのだそうだ。荷葉さんの3人のお兄さんと一緒に会社を経営している。
ご主人の泰邦さんは、その会社で勤務していた時に荷葉さんと出会い、2人は恋に落ちた。2人の結婚は認められたが、条件があった。
それは、泰邦さんが、会社を辞める事。
会社の経営にも今後一切関わらない事だった。
泰邦さんは承諾した。
そして代わりに、荷葉さんと住む豪邸と、有り余るほどの財産を得た。
最初は泰邦さんも、夢のある空間を作ったり、好きなように屋敷を改造していたそうだが、だんだん方向がおかしくなっていったのだろう。
そんな時に、あの男に会った。
男は元警察官で、容疑者への尋問を得意としていたが、その変質ぶりから警察を追われ、泰邦さんに近づいた。お互いの利害が一致した2人は意気投合し、あの男は屋敷の東棟に住むようになった。
泰邦さんは、警察への不正アクセスや屋敷以外での男の動向については、知らなかったようだ。男は、いろんな人物を執拗なまでに追いまわし、不動産屋やビルのオーナー、人事部長などを買収し、その人物を失脚させた。それがどんな罪になるのか、僕にはわからない。
でも荷葉さんはこれから、そのような被害にあった人たちの元を訪れ、一人一人に償いをするそうだ。そして、泰邦さんに任せていた財産管理も荷葉さんが行い、なんと、余っている財産の半分を慈善事業団体へ寄付をしたそうだ。これにはトビオも一役買っているらしい。どうせ、お金はあり過ぎるとロクなことにならないとか何とか言ったんだろう。トビオの話では荷葉さんはこれから、あの屋敷でレストランを開こうと考えているらしい。素敵なアイディアだと思った。
ちなみに荷葉さんから教えてもらった僕の心の色は、薄いグリーンだ。「安全な色ね」と言って荷葉さんは、にっこり笑った。町田さんは、やまぶき色。トビオにも聞いたけど、教えてくれなかった。
トビオは、あの日、ドーベルマンに追われ、僕たちとはぐれてから、一人で屋敷の撮影をしていたらしい。それで西棟にいた荷葉さんと遭遇し、咄嗟に
「新しい執事のトンビトビオです。」
と名乗ってしまったらしい。それで荷葉さんの悩み事などを、聞いていたということだった。荷葉さんはトビオの嘘に気づかなかったのだろうか?謎だった。
結局、僕たちの撮影の仕事は企画がボツになったが、トビオが撮影した動画は、「屋敷のレストラン紹介動画で使おう!」と勝手に言っている。
そんな訳で、情報屋さんに伝えるべき情報は、全て荷葉さんが警察に話してしまった。
情報屋さんは大損だが、それも仕方ない。
サラリーマンの町田さんは別れ際、
「仕事を、もう少し自分なりに頑張ってみようと思う。納得いくまで頑張って、それでも会社が評価してくれないようだったら、その時は、思い切って会社を辞める。それでラグビーに関わる仕事を探してみようかなって思ってる。
実は僕、スポーツ特待で有名大学に入れて、今の会社にも入れたんだ。
だから僕が会社辞めたいとか言うと、周りからは、
”もったいないから辞めるな。そんな大きな会社もう入れないよ、後で後悔するよ。”
とか言われるんだけど・・・。
年取ってから後悔しないために今を我慢して生きるより、今しか出来ないことに挑戦して生きる方が自分らしいと思って・・・それに、例え後悔しても、自分で決めたことだから、しっかり受け止められると思うんだ。」
と言っていた。
町田さん、元気かな・・?
もう知らない人と朝、競争していないといいけど・・・
トビオが
「あーあ、町田さんのタックルが無かったら、あの男に
”脳民のお笑いコント100連発”
を浴びせてやる予定でいたのに・・・。」
と残念そうに言った。
僕は心底、町田さんに感謝した。
トビオと目が合う。
考えていることは同じだ。
さあ、そろそろ、稽古を始めようか。




