新たなる危機
「君が…何で、ここに?」
荷葉夫人を見て、主人は驚愕の表情をして後ずさった。
夫人の目からは、涙が静かに流れ続けていた。
こんな時でさえ、その美しさに思わず見惚れてしまう。
「僕が連れてきたんです。荷葉さんは、あなたの心の色が変わってしまったと、心配されてました。」
トビオがそう言うと、
「私の、心の…色…」
主人はそう言って力なく座り込んでしまった。
「きっと、私のせい…」
そう言って、目を閉じた夫人の横顔が悲しげに歪んでいた。
「トビオ、トビオ、トビオ〜」
僕はトビオの元に駆け寄り、泣きながら、トビオをポカスカ叩いた。涙が止まらなかった。
「どこ行ってたんだよー、どんだけどんだけ、大変だったと思ってるんだ。お前は、お前はいつも勝手だ、僕がどんだけ、どんだけ...」
僕は、別れ際の彼女みたいに、パンツ1丁で泣きながらトビオを叩いていた。
「お?いよいよケツを出す覚悟が出来たのか?」
僕の格好を見て、またトビオが勝手な事を言う。
「そんな訳あるか!あ!それよりも町田さんを助けなきゃ、町田さんが大変なんだ!」
僕が主人に服を返すように言うと、主人は力なく場所を指差した。ボロボロの自分の服を着ながら、特別室の場所を聞く。
「トビオ!町田さんを助けに行こう!特別室だ、早く!」
荷葉さんをソファーに座らせてあげ、僕とトビオは書斎を飛び出した。
「町田さんが、どうしたんだ?」
走りながらトビオが聞く。
「ちょっと、危険な人物と一緒なんだ。」
「危険?危険てなんだ?」
「うーん、とにかく詳しい説明は後で!ひどい目に遭ってないといいんだけど、あ、ここか?」
まるでホテルのような長い廊下に、ドアがいくつかあった。
その中でも1つだけ、重厚な木で出来ている分厚そうなドアがある。
僕が開けようとしたら、鍵がかかっていた。
「どうしよう?鍵がかかってる。また書斎に戻るか、」
僕が慌てて戻ろうとするとトビオが
「待て!」
と言って辺りを見回し、
「あそこから入ろう!」
と言って上を指差した。
天井に羽目板のような部分がある。換気口かもしれなかった。
「いや、どう考えても無理だ、届かない。」
僕がそう言うと、
「とりあえず、しゃがもう」
と言ってトビオが僕をしゃがませた。
「俺を肩車して.あそこから入れよ」
「入れよって何だよ入れよって!無理だよ、スパイ映画じゃないんだから、怪我するよ。」
「大丈夫だ。不可能な事はない」
トビオはガンとして、譲らない。
仕方がないので、肩車だけしようと試みる。
「ちょっと動かないで!じっとして!」
「ヤバいヤバい、もう少し左.早くしろ」
「ま、前が見えない」
「コージくん、背伸びして」
「出来るか!」
僕たちはヨロヨロしながら、すったもんだした挙句、何とか天井板を外すことに成功した。トビオは換気口の中に頭を入れると、
「おお~なるほど~。」などと言いながら、僕の肩にケリを食らわせ、やっと中に入った。
あ、考えたら僕はどうやって入るんだ?!と思ってたら、特別室の隣の部屋のドアが開き、トビオに手招きされた。
中に入ると、僕は目を疑った。
これは、一体、、、?
「面白いだろ?いわゆる取調べ室ってやつか?、安心しろ、これはマジックミラーみたいだ。」
そう言って、トビオが指差した先には、大きな窓があり、隣の部屋が丸見えだった。
そこに、町田さんと、、
あいつがいる…!
_____瞬時に背中が、ぞわりとした。
ランチの時に見た、あの男がいた。
視界に入った途端、心臓が縮み上がる。
僕は、トビオの腕を強く掴み、呼吸を整えるのがやっとだった。




