妄想ブロック
僕と町田さんは、屋敷に向けて出発することになった。
情報屋とは、ここでお別れだ。
まさか、こんな事になるなんて思ってもみなかった。
別れ際に聞いた情報屋の話が、僕の不安をさらに倍増させた。
情報屋は、僕と2人になった時を見計らって、真剣な顔をして言った。
「いいか?今から言うことは不確かな情報だし誰にも言わないでもらいたいんだが、警察はどうも警察組織網への不正アクセスについて調べているようだ。私の予想では、おそらく屋敷内の端末から侵入しているんだろうが確証がないのかもしれないな。それに、警察が踏み込むにしても、何せ屋敷の敷地が広すぎる。警察は、おそらく事前に屋敷の内部情報が欲しいんだと思う。
そこで君に頼みたいんだが、屋敷内の構造や外部の出入り口、パソコンが置いてある部屋の情報など確認してきてくれるとありがたい。もちろん、お礼はする。」
なんかよくわからないけど、警察の情報が洩れているってこと?そうだとしたら大問題なんじゃないか?なんでそんな事に僕が巻き込まれなきゃいけないんだ・・・?
正直、お礼なんていらないし、危険なことは避けたかった。
でも子供達との約束もあった。
僕たちが母親の代わりに調べてくると言ったら、まるで僕らをヒーローのように送り出してくれた・・。子供たちのすがるような真剣なまなざしを思い出す。何とかしてあげたいと思ってはいるけど、肝心のトビオは行方不明だし・・
それにしても、よくわからない。屋敷の主人の目的は一体何なんだ?見ず知らずの人をランチに招待するのもそうだが、情報屋の話では職業が奪われたり、退学させられたり、人の生活を脅かすようなことまで発生しているらしい。そんなことして何になるんだ?初対面で恨みもないだろうに・・。
あの屋敷の中で、一体何があるっていうんだろう・・。遠くにそびえたつ屋敷が、不気味に思えた。
「お待たせしました。こちらへどうぞ。」
佐久間さんに案内されたのは、小さな広場だった。床が格子柄になっており、素材は鉄のほかにブロックごとにいろんな素材の石が埋め込まれている。
「黒曜石だ!」
町田さんが子供のように飛びついた。本当だ、隅に小さくプレートがあり”黒曜石”と書いてある。
「こっちは閃緑岩!花崗岩」
な、何が嬉しいんだ?
「ここは、まるで・・?マイクラの世界だ・・・!さすがにダイヤは無いか・・。」
町田さんがブツブツ言いながら、床を高速移動で這いずり回っていた。
佐久間さんは、見慣れている光景らしく、興奮する町田さんを尻目に無言で脇にあるレバーを下げた。
すると、ンゴゴゴゴゴと音がして、レンガ部分の床が動き始めた。
「うおうおうお!トラップ?トラップ?」
町田さんが嬉しさのあまり、飛び跳ねている。
やがて音がやみ、地下通路に続く階段が現れた。
階段の先は、暗くてよくわからない。
町田さんの興奮と比例して、僕の不安は一気に膨れ上がった。
どこへ連れていかれるんだろう・・・?まさか監禁されるのだろうか?
「どうぞ、こちらへ」
町田さんが素直に階段を下りていくのを見ながら、僕は動けずにいた。
なんでこんなことに?
僕は今日、普通に起きてトビオと稽古して、帰るつもりだった、ほんの数時間で、なんでこんなことになっているんだ?地下はさすがにまずいだろ、しかもこんな得体のしれない分厚い石の床、、
僕の脳裏に以前観た映画のシーンがよみがえる。
石造りの建物の地下に連れてかれて・・・?!
僕の中の恐怖が膨れ上がった。
うわあ~だめだ、もう、、
申し訳ないけど‥逃げよう!
僕は限界だった。
僕の決意と同時に、執事の佐久間さんが階段を上がって戻ってきて言った。
「どうされましたか?」
「あ、いや、その、」
どうしよう・・・。
僕が口ごもっていると、階段の下から、町田さんの、のん気な声が聞こえた。
「うわあ~!すっごーい!!」
これ以上にない喜びの声だ。
「え?」
町田さんは戻ってくると
「コージさん!コージさんも早く来てください!すごい!すごいです。」
と手招きしている。
「どうぞ。」
佐久間さんが、忙しい人特有のイライラを隠さずに、僕に言った。
「あ、はい。すみません。」
僕はペコペコしながら、階段を下りていった。




