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箱舟 第7話

額賀「いやぁルシアちゃん。面倒かけるね。」

ルシア「・・・いえいえ。お願いしたのはこちらですから。それで、この人が、例の?」

額賀「つつもたせ。」

ルシア「よく捕まえられましたね。」

額賀「角のビル、あそこの裏で隠れていたんだ。それをうちの若い子が見つけてね。警察に渡すにしても、おかしな事、言っていてね。そういえば、ルシアちゃんもおかしな事、言っていたから、ま、それで、気になって連絡しただけさ。」

ルシア「ありがとうございます。」

額賀「おい、あんた。用があるのはこの人だ。」

男「待ってくれ、待ってくれ、待ってくれ、俺は本当に関係ないんだ、助けてくれ、頼むよぉおお!」

額賀「さっきからこの調子。ブルブル震えちゃってさ。・・・ほら、失禁している。よほど怖い目に遭ったんだろうね。」

ルシア「あなた、ホームレス風の男から、金を取ろうとしたそうですね?」

男「いや、ちがう。ちがうんだ、あいつが、あいつが、勝手にしたんだ。俺は関係ない。本当だ、関係ないんだ。」

額賀「関係なくないだろう。あんたが逃げた出したから、騒ぎになっているんだ。あんたの連れ、介抱してやったの、誰だと思っているんだ?」

男「だから知らねぇって。知らねぇって言ってんだろ!トモミが勝手にやったんだ!俺は関係ない、トモミが全部、悪いんだ!あんな男にちょっかいかけるから」

ルシア「トモミって言うんですね。あなたの連れの名前は。」

額賀「・・・たまたま、外営業していた子がね。路地裏で倒れている女と、半狂乱で逃げいていくこの男を見つけてね。そりゃまぁ、大騒ぎさ。そのまま警察に届けりゃいいのに、わざわざ僕の所に連絡を入れてきてね。・・・おかげで外営業かけていた子も驚いて帰っちゃったよ。うちとしてはいい迷惑さ。」

ルシア「額賀さんのお店の人は良い判断をしたと思いますよ。この近辺では些細な事も額賀さんに話を通すのが筋です。とくに警察沙汰じゃ。後で隠していたなんて事が分かったら、大目玉で済まされませんからね。・・・おかげで私も、良いネタにありつけました。」

額賀「この男の連れは、僕の判断で救急車を呼んだよ。今頃、救急措置をされているんじゃないか?ビクンビクン、ケイレンして意識も定かじゃなかったって話だから。」

ルシア「それは良かった。男の方も、捕まえた、って事ですね。」

額賀「そういう事。」

ルシア「あなたの連れの女が、ちょっかいかけた男はどういう男だったんですか?」

男「俺は関係ないって言っているだろ!いい加減にしてくれ!・・・本当だ、本当だ、本当なんだ!」

ルシア「分かりました。分かりました。あなたは関係ないんですね。」

男「そうだ、って言っているだろ?ああああ?」

ルシア「そうですか。・・・でも、あなたの連れの女が、あなたに言われて、金を取ろうとした、って警察に言っちゃったら、あなた、指名手配されますよ?強盗です。強盗犯です。」

男「ご、強盗?お前、なに、言ってんだ?」

ルシア「だって強盗でしょ?ホームレスから、女と共謀して、金を取ろうとしたんでしょ?」

男「取ってねぇええよぉ!」

ルシア「私達は警察じゃありません。」

男「はああああああああああああ?あ?・・・おたくら、警察じゃねぇのかよぉおお!だったら、離せよ!帰せよ!俺ぇあ関係ねぇって言ってんだろ?」

ルシア「生憎それは出来ません。」

男「なんでだよおお!」

ルシア「こちらの男性。こんな見た目ですけど、ここら辺を仕切っている、とある団体の顔役です。」

額賀「こんなっていうのは余計だし、顔役って事ではないけど、一応、近隣を預からせてもらってはいけるけど。一番の下っ端だけどね。」

ルシア「こんな下っ端がいる訳ないじゃないですか。謙遜しないで下さいよ。」

男「な、なんなんだよぉお!」

ルシア「ま、早い話、警察より質が悪い方々なんで言う事を聞いた方が良いですよ。・・・だって、あなた、この周辺で、美人局をしたり、弱そうな人がいたら強盗をしていたんでしょ?勝手に。この近隣で勝手にそんな事をして済むと思うんですか?今まで無事だったのは運が良かっただけで、今回、捕まっちゃいましたからね。もう、表には出られないと思いますよ?」

男「はあぁぁぁああああ?」

ルシア「知らないって怖いですね。やっていい所とまずい所があるんですよ。ここの町は、警察も手を出さない組織の方々が縄張りにしている町です。目立つ行動はしない方が良かったんですよ。しかし、もう遅いですけどね。」

額賀「まあ、僕も、上に報告しない訳にもいかないからなぁ。女の子が意識不明の騒動だったから。しかも、あんた、逃げちゃうし。悪手だったね。あんたも一緒に病院に行っていたら、こんな目に遭わずに済んだのに。ご愁傷様だよ。ほんと。」

男「待ってくれよ、待ってくれよ、なぁ。あんた、俺、知らなかったんだよ。そんなルール、知らなかったんだよ。金、金ならある。金、金を出すから、見逃してくれよ!なぁ。あんた、あんた、偉いんだろ?なぁ。見逃してくれよぉおおお!」

額賀「あんたさぁ。こういう世界は義理人情の世界なの。金で見逃したら、僕も、上から何を言われるか分からない。可哀そうだけど、金でどうこう出来る世界じゃないんだよ。悪いけどね。」

男「ちょっと、待って、おね、まって、許して、たの」

額賀「離してくれないかなぁ。僕も困るんだよ。あんた、さっきと全然態度が違うじゃないか。」

ルシア「・・・あなた、私が今から言う事に素直に答えれば、見逃してあげてもいいですよ?」

男「え?あ!・・・ほんとか!本当なのか!言う、なんでも言う!言うから、言うから、言うから、」

額賀「ルシアちゃん、それも困るんだよ。・・・僕にも、それなりに、立場があるんだからさ。」

ルシア「そんな怖い目で見ないで下さいよ?そんな目で見られたら私、濡れてきちゃうじゃないですか。では、こういうのはどうでしょう・・・この男、私が引き取ります。もちろん、連れの女も私が引き取ります。それで、稼いだお金は全て、額賀さん。額賀さんを通してそちらへ差し上げます。病院の代金も世話もこちらが引き受けます。これから、警察が動くでしょうから、大事になると思います。その時、警察の窓口はこちらで引き受けます。要するに、騒がしい厄介ごとは丸々、私が引き受けます。額賀さんにしても、余計な厄介ごとが増えるのは、得策ではないと思います。こんな町でも、平穏無事な方が良いと思いますから。騒がしいと、さっき逃げた女みたいに、金を落としてくれる客も逃げてしまいますよ?そちらの上の方々も気になさるのはそれじゃないですか?」

額賀「・・・まぁ、確かにそうだね。厄介ごとを引き受けてくれるって言うなら、悪くない話だね。」

ルシア「持ちつ持たれつですよ。・・・そちらの上の、奥さんのお一人が、私と長唄の稽古で一緒になる事がありまして。」

額賀「ああ、もちろん聞いているよ。ルシアちゃんを贔屓にしているって。」

ルシア「可愛がってもらっているので。何かあった時には奥さん経由でご報告いたしますよ・・・きひひひひひひひひ」

額賀「ルシアちゃんは抜け目がないからなぁ。まぁ、いいよ。今回は大した話じゃないし。男も女も譲る。ただし、また、同じ事をしたら、ねぇ?」

ルシア「ええ。しっかり教えておきます。二度とお天道様が見えなくなるって。あなた、分かりました?ほら、ほら、ほら、ほら額賀さん。額に血が出るまで頭を下げてお願いしてくれているじゃないですか?ここは私に免じて。」

額賀「そうだね。」

男「グォツ」

額賀「あんた今日はとんだ災難だったね。逃げるならもっと遠くに逃げなきゃ。うちの若い奴等も拍子抜けだったみたいだよ。」

男「すいませんでした、すいませんでした、すいませんでした、すいませんでした、すいま」

額賀「じゃあ、後、よろしくね。」

ルシア「ありがとうございま~す。・・・さて。」

男「・・・」

ルシア「頭を上げていいですよ。もう怖い人はいなくなりましたから。」

男「ありがとうございます。ありがとうございます。」

ルシア「ただ、あなた、命が首の皮、一枚で繋がっているだけなので、そこら辺は、肝に銘じておいて下さいよ?まず、持っているお金、全て、出しなさい。」

男「はい。はい。・・・はい。はい。これだけ、これだけです。」

ルシア「けっこう持っているじゃないですか?これ、全部、美人局とか、詐欺とか強盗で巻き上げたお金ですか?」

男「はい、はい、はい、はい、はい、」

ルシア「持っているお金、もう、無い?あるなら全部、出しなさいよ?」

男「ないです、ないです、ないです、ないで」

ルシア「これ、全部、さっきの人に渡すから。いい?これは、保証金みたいなもん。この保証金で、あんたの首が繋がるの。」

男「ありがとうございます、ありがとうございま」

ルシア「あんたの顔は二度と忘れないから、どっかに逃げても無駄だから。最初に言っておくけど。私、記憶力がいいからね。いい?」

男「わかりました、わかりました、わかりました、わかりました、わか」

ルシア「今からソープ行くから」

男「ソー?」

ルシア「勘違いしないでね。私が勤めるお店だから。・・・話を聞くにも、この格好じゃぁどうしようもないでしょ?いい男が小便もらして、顔、殴られて。血ぃ出てるわよ。・・・使ってない部屋あるから、そこで綺麗にしなさい。いい?ついてきて。」

男「わかりました、わかりました、わかりました、わかりました、わかりま」

ルシア「いいわよ、一回、言えば。」


※本作品は全編会話劇です。ご了承下さい。

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