箱舟 第2話
丹羽「ようスメラギぃこんな時間に仕事かぁ?」
ルシア「あ、どうも。」
丹羽「待てよ、待てよ、待てよ、今、警察が呼び止めてるんだぞ?」
ルシア「あ゛あ゛あ゛。丹羽さん、痴漢で訴えますよ?」
丹羽「こっちは仕事。職質、職質、職務質問?・・・お前こそ、破廉恥エロ罪で訴えるぞ?」
ルシア「誰が破廉恥エロだ。」
丹羽「お前だ、お前。」
ルシア「あのぉ私のケツ、勝手に触らないで頂けますか?婦女暴行で訴えますよ?」
丹羽「ほら、これでいいだろ?・・・俺は客。客なんだから体さわっても問題ないだろ?」
ルシア「・・・千円?たかが千円?・・・お店だったら私、三、四万するんですけどねぇ?私、安くないんで?」
丹羽「細かい事、言うなよ?・・・ほら、ここに千円あるだろ?お前のおごりでラーメン食いにいこうぜ?」
ルシア「たった今、私に支払ったお金じゃないんですか?コレぇ。・・・あと、気安く肩に手ぇまわすな!」
丹羽「スメラギぃ、聞いたぜ?アンナちゃん。あの子、店、辞めちゃったんだろ?」
ルシア「・・・その話ですか?ええ。・・・おかしな客を取ったばっかりに。」
丹羽「お前みたいな奴じゃない限り、普通の感覚の持ち主だったら、辞めるわなぁ。・・・死にかけた訳だし。」
ルシア「当然だと思いますけど。」
丹羽「実はさぁ、さっき、死人が出てさぁ。」
ルシア「・・・ど?」
丹羽「駅前の裏通り。売りの女の子。・・・アンナちゃんと同じやり方だぁ。」
ルシア「本当ですか?・・・犯人、捕まえたんですか?」
丹羽「いいや、逃げられた。」
ルシア「・・・チツ。」
丹羽「お前さぁ、もう少し遠慮しろよ?目の前に警察官がいるんだぞ?」
ルシア「もう少し丹羽さん達が優秀だったら、ソイツ、捕まえられていたんでしょ?何やってんの?」
丹羽「お前、そういうのはちゃんと税金、払っている人間が言う台詞だぞ?」
ルシア「失礼ですけど、私、丹羽さんよりかは余計に税金、納めていますけど?」
丹羽「・・・えっ?お前、そういう事、言う?・・・俺、傷ついちゃうよ?・・・安月給でさぁ、こうやって市民の皆様の為に日夜、日夜、奉仕してるわけじゃない?」
ルシア「死んだ子、素人だったんですか?それとも、私達みたいな店で働く?」
丹羽「いやぁ、完全な売りだわ。素人。・・・何もわかんねぇ素人が、売りなんかするから、殺されちゃうんだ?危ねぇ所とか、危ねぇ奴とか、分からねぇから。」
ルシア「それはごもっともだと思います。見た目だけじゃ、おかしい人間の判別なんて出来ませんからね。」
丹羽「それでさぁスメラギぃ。お前、何か知らない?・・・何だったら高く買うぜぇ?・・・経費で落とすけど。」
ルシア「知るわけないでしょ?警察が知らない事、どうして私が知ってるんですか?」
丹羽「お前、顔、利くじゃん?ここいらじゃ?なぁ・・・俺達も情報、欲しいぃんだよ。」
ルシア「情報くれって言う人間が、たったこれっぽっちですか?しかも、ラーメン代に消えるっていう。」
丹羽「お前、これだって、なけなしの捜査費用なんだぞ?血税だよ、血税。住民の皆様の税金ですよ?」
ルシア「・・・その住民の皆様の血税で、私のケツを触ったんですか?・・・丹羽さん、一回死んだ方がいいと思いますけど?」
丹羽「かわいい顔して、ほんと、キツイ事、言うよなぁ、お前は?」
ルシア「どうも、ありがとうございます。」
丹羽「殺された子、心肺停止だったんだぁ。・・・不思議な事に一切の外傷なし。・・・アンナちゃんと一緒だろ?」
ルシア「アンナさんは早めに気づいたので私が助けましたけど。」
丹羽「アンナちゃん含めると、これで三人目だ。」
ルシア「・・・連続殺人って事ですか?」
丹羽「俺はそう思ってる。・・・だが、なんにも証拠がない。殺した跡がないんだ、連続殺人の関連性を証明できるものがない。まあ、唯一、あるとしたら、性風俗の子って事だ。違法合法問わずな。」
ルシア「私達は、裸が商売道具ですから、襲われても、抵抗しづらいっていうのはありますけど、それにしても、おかしいのが、外傷がないって事ですね?」
丹羽「デスノートかな?」
ルシア「あながちデスノートの線も捨てがたいとは思いますけど。全員が全員、心肺停止で見つかっている訳ですよね?・・・そんな、こんな短期間の間に、しかもこの地域で、立て続けに、心臓発作でなくなる女の子達がいますか?おまけに仕事が類似しているっていう。警察も本腰をいれないと被害者はもっと出ますよ?」
丹羽「・・・お前に言われなくても、考えてるんだよぉ、だけどなぁ、上を動かす、説得力がねぇんだ。・・・風俗の子だけが襲われているって言っても、上は動かねぇ。証拠が欲しいぃんだ、証拠がぁ。しかもだよ、殺し方が不明。俺達ぁ、どうすりゃぁいいと思う?」
ルシア「知りませんよ?それを考えるのが丹羽さんの仕事でしょ?・・・犯人の絵とかないんですか?カメラに残ってる奴とか。」
丹羽「スメラギぃ、ホテルの部屋ん中までカメラあると思うか?プライバシー中のプライバシーだよ?あるわけねぇだろ?・・・あったら犯罪だよ?犯罪ぃ!」
ルシア「あ!・・・なるほど。盗撮ぅ。盗撮かぁ。」
丹羽「お前、盗撮犯の知り合い、いるのか!」
ルシア「え?・・・あ?・・・・いる訳ないじゃないですか?そんな犯罪者の知り合い?ねぇ?丹羽さん。」
丹羽「まあ、そうだな。・・・スメラギ、これは独り言だけどよ?・・・俺が欲しいのは証拠だ。殺しの証拠。あと、犯人。犯人の顔が分かればまだ探せる。・・・あとは、分かるな?」
ルシア「あ、私、バカなんで、日本語、ムズカシクテ、ワカリマセン」
丹羽「うるせーな、バカ!・・・これでいいだろ?これで!」
ルシア「また千円?・・・千円出す度に私のおっぱいの間に入れないでくれますか?私のおっぱい、触りたいだけでしょ?」
丹羽「おい!スメラギぃ、ラーメン食いに行くぞ!ついて来い!同伴だ、同伴!」
ルシア「・・・ラーメン屋に同伴もないですけど。ごちそうになります、丹羽さん!」
※本作品は全編会話劇です。ご了承下さい。